遺跡の最奥部にて、レッドとリュカは困惑した表情で目の前を見つめていた。
その視線の先には…。
「ウぅぅぅぅう……」
巨大な紫色の機械───ガレオムが自分達を睨みつけていたからだ。
ガレオムの体からはところどころ火花が散っている。先程───この最奥部に
「レ……レッド…、これって……」
ふるふる震えながらリュカはレッドの顔を見た。レッドも緊張なのか恐怖なのか、顔が強張っていた。
「……うん。多分……襲ってくるかもな……」
その予想が当たったようだ。
ガレオムはグオォォォ! と咆哮をあげ、二人に拳を振り下ろした。
「あ、危ないっ!!」
二人はそれをスレスレで躱した。
「行けっ! リザードン!」
レッドがボールを投げると中からリザードンが飛び出てきた。
「リザードン! かえんほうしゃ!」
レッドはリザードンに素早く指示を出した。リザードンはレッドの指示に従い、ガレオムに向かって飛び出し、かえんほうしゃを放った。
「《PKサンダー》!」
リュカもすかさずPKサンダーで応戦した。
だが。
「グオオオォォォ!!」
問題のガレオムには命中しつつも全然効果は無いようで、二人を叩き潰すと言わんばかりの勢いで拳を振り下ろした。
「おれは! 絶対に負けない!!」
「ぼくは! 絶対に負けない!!」
二人は拳を避け、そう叫ぶや否や、大技の構えに入った。
「行くぞ…! 《さんみいったい》!」
レッドはゼニガメとフシギソウが入ったボールを投げ、大技《最後の切り札》を発動させた。
ゼニガメ、フシギソウ、リザードンの三体が発動させたのは、それぞれが持つ技を一つにまとめ、一気にアタックをかけたものだ。流石にガレオムもあまりにも突発的な攻撃に判断力が鈍っていたようで、避けきれず直撃していた。
「《PKスターストーム》!」
リュカは両手を今は全て見ることができない大空にかざし、自分の最後の切り札を発動させた。いくつもの流星が降り注ぎ、これもガレオムに直撃した。
「ガッ……ガアアアアアァァァ………」
ガレオムは──そこで力尽きた。
「かっ……勝った?」
ガレオムは膝をつき、動けないようだ。
「ああ……。勝った…勝ったんだよ! おれ達は!」
レッドがよっしゃあ! とジャンプすると、リュカの気持ちも落ち着いてきた。そのためか、不思議と笑顔がその顔からこぼれていた。
「ありがとな! リザードン、フシギソウ、ゼニガメ」
三匹をボールに戻し、レッドはリュカに近づき、肩をぽんと叩いた。
「リュカ、おれ達最強のコンビになった気がするぜ!」
「えっ? 最強の……コンビ?」
レッドの言葉に唖然とするリュカ。
「そうだよ! だって、あんなにデッカイ敵、おれ一人じゃ倒せなかったし、リュカの連携があってこそ倒せたんだ。そうだろ?」
そう言って微笑むレッド。
リュカにとっては初めてであり──いや、もしかしたら、最初で最後の言葉かもしれない。そう思うと胸の奥がジーンと暖かくなる気がした。
「レッド……ありがとう」
リュカはレッドに過去最高の笑顔を見せた。これで…全てが終われば良かったのだが。
グゥウウウウ──
「……!?」
突然響いた謎のうめき声に二人は咄嗟にガレオムのほうを見た。そしたらやはり予感的中。
ガレオムが立ち上がろうとしていたのだ。
「た、倒せてねぇじゃん!」
「もう一回戦うしか……!」
戦闘態勢に入った二人をギッと睨みつけ、その腕で素早く二人を捕らえた。
「わああ!?」
「なっ……なんだよ! 離せよ……!」
ジタバタと激しく暴れるが、ガレオムがそう簡単に離してくれるとは思わないわけではない。
ガレオムは二人を顔の近くに持ってくると頭の上に透明なケースを出した。透明なケースの中にはネイビーブルーよりも深い蒼色の物質が入っていた。ケースの下には起爆装置とタイマーが。
オマエタチモ──ミチズレニシテヤル。
そのような言葉が二人の頭の中に入り込んだ気がした。
「あ……あれって……」
「亜空爆弾!?」
───そうだ。
あれは、旅の途中何度も耳にした亜空爆弾だ。形こそ違えど物質でなんとなくわかった。
二人に考えさせる暇も無く、ガレオムは地を蹴り飛び上がった。
「レッド!」
ガレオムが勢い良く飛び上がった衝撃でレッドは意識を無くしてしまっているようだ。
(どうしよう……。もうこんなに高くなっちゃった……)
見下ろすと地面が…先程いた神殿が……。何もかもがちっぽけに思える。この高さから落ちたら、ひとたまりもないだろう。───それでも。
「……《PKサンダー》!!」
それでも。レッドを助けたい。
自分が助からなくても、レッドが助かりさえすれば、それで良い。
リュカは《PKサンダー》をガレオムの腕に撃った。
ゴッ!! ──見事、命中したようだ。
破壊されたガレオムの腕から二人が開放され、そのまま急降下──
「レッドおおおお!」
リュカは届く範囲でレッドを抱きしめた。
助からないかもしれない。それでも、守りたい友を……守りたかったから。
二人が落ちたところに、およそ数十メートルほどの土煙が上がった。
その土煙の中から飛び出したのは……
「ふう……! なんとかなったわね!」
「うむ。作戦は成功のようだな」
「えっ!?」
すぐ近くから聞こえたのは、つい数時間前に聞いた四人組の中の二人の声だった。
リュカは辺りを見回した。リュカを支えているのは四人組の中で最も謎の生き物感漂う騎士のような男(?)だった。しかし、レッドは?
「あんたの友達……だったかしら? その子はあたしが支えてるから平気よ」
その声のする方を見ると、四人組の中で唯一の少女がレッドを支えていた。
「あ……ありがとう……ございます……」
リュカは少し涙目で礼を述べた。
その直後、亜空爆弾が……ガレオムが爆発する音が聞こえた。
時は、少し遡る。
「まずいわ! あの速度じゃ、追いつかない可能性もあり得るかもしれない……!」
一方で、全速力で飛んでいたサラとメタナイトはただならぬ危機感に襲われていた。
「ああ……。やはり、先程の戦いのダメージがまだ抜けないのが一番の痛手だったか……!」
メタナイトも仮面の奥で厳しい表情をしながら言った。二人が更にスピードを上げようとしたその時───
急速に上昇して行く物体から、激しい光が出たかと思うと、何かが破損したようにも見えた。
「メタナイト! あのデカブツ、誰か捕まえてたんだわ!!」
「……だとすると、……サラ、瞬間移動系の技は持っているか?」
「……一応、あるにはあるわ」
「……よし。なら急いで着地地点に移動するぞ!」
メタナイトはそう言うと、自身の翼をマントに変え、その身を覆うようにして消える技───《ディメンションマント》で移動した。
「ちょ……あたしが移動地点わかんないでしょうよ! ……全く……」
サラも腕をクロスさせて消え、移動した。
「それで、着地点でまた急上昇してあんたらを見事ひっ捕まえることができたってこと」
「そ、そうだったんですか……」
リュカはサラと名乗った少女とメタナイトと名乗った球体から二人を助けた経緯を聞いていた。
「ですが……すごいですよね。あの速さの中、ぼくらを助けることなんて……無理だって思ってました」
「私達はスピードには自信がある身でね」
「そういうこと。これからあたし達の仲間のもとに行くわ。あんたの友達が目を覚ますまで、あたし達も一緒にいるわね」
サラはそう微笑んだ。
「ありがとうございます……! サラさん、メタナイトさん!」
「サラ! メタナイト!」
「無事か!」
ようやく陸地についたニ人は、静かに着地した。リュカはメタナイトから降り、サラと共にレッドを地面に寝かせた。
「良かった……二人共無事で」
安心しきった表情でマルスが二人を交互に見つめる。
「心配かけてすまなかった。……リュカ、紹介しよう。彼はマルス。DX期間からの参戦歴を持つファイターだ。そして彼が──」
「……アイクだ」
四人組の中で一番背が高い男が自ら名乗った。
「ぼくは、リュカです。よろしくお願いします」
二人には、どういう状況かわからなかった。
リュカは丁寧に名乗り、ペコリとお辞儀をした。
(どことなく……似ているな)
マルスはリュカを見てなんとなく、そんな事を考えていたが、すぐに「気のせいか」と考えるのを止めた。
「う……う〜ん……ここは? おれ……生きてる……!?」
どうやら、レッドが目を覚ましたようだ。
「レッド!!」
泣きそうになるのをなんとか堪えて、リュカはレッドに手を差し伸べた。とびきりの笑顔を添えて。
「……無事で良かった!」