湿地帯にて。なんとも奇妙な二人組───いや、この場合は、二匹組と称するのがふさわしいだろうか? そんな二匹が、歩いていた。
「それでね! ドンキーとオイラは二匹でバナナを追ったんだ!」
その二匹組の一匹───ディディーはもう一匹───フォックスに自分と相棒の武勇伝を話していた。
「へえ、お前とドンキーって、結構仲が良かったんだな」
「仲が良いってもんじゃないよ! 最高の相棒さ!」
こんな話を続けながら、二匹は、湖畔を歩き続けた。
「ギャッ……!?」
湿地帯をしばらく歩き続けたがところで、ふいにディディーが悲鳴をあげた。フォックスは何事かと思い、ディディのほうを見た。
「っ!?」
なんと、ディディーの体を黒い矢印弾が貫通していたのだ。そして、この黒い矢印弾には見覚えがあった。
「ディディー!」
フォックスはフィギュアになってしまったディディーに向かって叫んだ。ディディーのフィギュアは、フォックスと少し離れたところに吹き飛ばされていた。
「グワッハッハッハッハ! 油断大敵という言葉が、その猿の中には無かったようだな!」
後ろを向くと自分達よりも随分離れたところに、大きな魔物───クッパがダークキャノンを構えていた。
「クッパ……!」
「キサマも、我々の戦力にしてくれるわ!」
クッパはダークキャノンにパワーをチャージし、トリガーを引いた。ダークキャノンから、黒い矢印弾が放たれた。
「ッ…!」
フォックスは黒い矢印弾をギリギリのところで躱した。クッパは小さく舌打ちし、ディディーのフィギュアに目を向けた。指をさし、何者かに合図を出した。
すると、クッパのその合図に反応したかのように闇色の粉がディディーのフィギュアに纏わりついた。やがて闇色の粉はディディーのフィギュアから離れ、ある人物を形造った。
「ッ!?」
その人物が誰なのかを理解すると、フォックスは目を丸くした。
「ディ……ディディー!?」
そう。フォックスの目の前に現れたのは、ディディーのコピーだった。
「クッパ、お前っ……! なんで、こんな事を……!?」
「ふん、それは、今すぐ答えなければならんのか?」
クッパはダークキャノンの発射口をフォックスに向けた。
「キサマもあの猿と同じように───」
その時だ。
バシュッバシュッ!! ──クッパの足元に緑色の光線が撃ち込まれた。
「っ!? 誰だ!」
(……? なんだ? 何かが近づいてくる……)
何が起こったかが理解ができていないクッパをよそに、フォックスは突然の乱入者の足音に耳を傾けた。やはり、遠くから戦闘機のような音が、こちらに近づいて来る。
(まさか……この音は……!?)
フォックスが空を見上げると、以前、自分が乗っていた戦闘機───アーウィンがこちらに近づいて来た。アーウィンの窓を突き破り、一人───いや、一匹のファイターが飛び出した。そのファイターは地面に華麗に着地した。
「ファルコ!」
フォックスが叫んだ。
ファイター───ファルコはクッパのダークキャノンめがけて走り、ムーンサルトキックで蹴り上げ、両手に持った二丁の光線銃でダークキャノンを迎撃した。
ダークキャノンは凄まじい爆破音を轟かせて壊れた。
「これでも、お前は俺達に対抗しようってのか? クッパさんよ?」
「グウゥ……おのれ、ファルコめ……!」
クッパは高くジャンプし、茂みの奥に消えて行った───かと思いきや、お手製のクッパクラウンに乗って、今度こそ、大空に消えて行った。
ファルコは、フォックスとディディーのコピーがいるほうを見た。
ディディーのコピーは、どこからか湧き出した闇色の粉を吸収し、通常のディディーの数倍の大きさになった。
「っ!?」
「ほーう……コイツはマズイかもな」
フォックスはすぐさまディディーのフィギュアのプレートに触れ、ディディーを復活させた。
「うーん……オイラ……何をしてたんだ? ───って、うわあああっ!? なんだ、こりゃ!?」
自分のコピーを見て、ディディーは驚いて飛び上がった。
「とにかく、コイツを倒さないとな! ファルコ、ディディー、準備は良いか!」
「ああ。もちろんだぜ」
「と、とりあえず、ぶっ飛ばせば良いんだね!?」
光線銃を構え既に準備万端なファルコと、訳がわからないが、とにかく戦うことになったディディーを引き連れ、フォックスはディディーのコピーと戦うのであった。
三匹はなんとかディディーのコピーを倒したようだ。コピーは闇色の粉となって、風に流れて消えて行った。
「ふぅ……ありがとうな。ファルコ」
フォックスがお礼を言うと、ファルコは「大した事ねえよ」とだけ返した。
「じゃ、俺はこの辺でな」
そう言って、ファルコは立ち去ろうとした。
「ちょっ───と待ったぁぁぁぁ!!」
「ぐっ!?」
そんなファルコの襟首を、ディディーがひっ捕まえた。
「なあ! アンタも強いんだろ!? それなら、手伝ってくれよ!」
「はあ? お前、何言ってんだ?俺は忙しいんだよ」
(なんか、この会話、前にも見た記憶が……)
少しデジャブを感じているフォックス。
「とにかく、俺は忙しいんだよ。頼み事なら、フォックスに言え」
ファルコは、足早に立ち去ろうとした。
だが、
「待ってよ!!」
「ぐっ!?」
またも自分の服の襟首を掴まれる。しかも、なぜかズルズルと引きずられてる……?
「こうなったら、無理矢理でも付き合ってもらうよ!」
こうして、(フォックスにとっては)どこかで見たことのある光景が繰り広げられたのであった。
水上を空中移動する飛行船のような乗り物の上に、鎖で繋がれたドンキーのフィギュアを最初に見つけたのは、フォックスだった。
三匹はすぐに追いかけたが、飛行船は水しぶきを立ててスピードを上げ、大空に消えて行った。
「オイ! 待てよ!!」
ディディーは声を荒げた。
しかし、目の前はゆるい滝になっており、これ以上先に進むことができない。その一方、ファルコとフォックスは空に浮かぶ“あるもの”が気になっていた。
「なあ、ファルコ。あれなんなんだ……?」
「……? あれは……島か?」
“あるもの”は浮遊島のようにも見えた。そして、先程の飛行船は、あの浮遊島に向かって行ったようにも見えた。
「……まあ、ゴチャゴチャ考えていても仕方ねえだろ。オイ、フォックス。お前のアーウィンはどうした?」
ファルコがすばやく話を切り替えた。
「それが、以前破壊されてしまったんだ……」
フォックスはディディーと出会ったときの事を思い出し、少し苦笑いで答えた。
「……そうか。それなら、尚更コイツが必要だな」
ファルコがそう笑うと、滝の下からアーウィンとは違う飛行船が浮かび上がってきた。
「“グレードフォックス”!?」
飛行船───グレードフォックスを見て、フォックスは目を丸くした。
「お前のために派遣したんだぜ? あと、ディディーだっけか? お前」
「えっ!? あ、うん。そうだよ」
「あの島に向かう。俺のアーウィンでドンキーを追うぞ」
「ファルコ……うん! わかったよ!」
「よし。決まりだな。すぐに行くぞ!」
ファルコとディディーはアーウィンのもとに急いだ。
一方のフォックスは、不時着したグレードフォックスに乗り込んだ。───浮遊島とは違う