とある研究施設。
この無機質な空間の中を進む二人がいた。
「……さっきから、ロボットばかりだな。こいつら、まさか、最近有名な“亜空軍”の連中か……?」
「多分、そうだと思う」
この空間を進む二人の正体は、光線銃を構えながら慎重に進む女性───サムスと、最強の電気ネズミ───ピカチュウだった。
「……それにしても、暗くておんなじ景色しか無いね……」
ピカチュウは暗い表情になった。
「この場所から早く出よう。私も少し気分が悪くなってきたからな」
サムスとピカチュウはこの場所から出るべく、足を速めた。
その後二人は、ある場所にたどり着いたようだ。
サムスは誰もいないことを確認すると、一気に通路を突き進んだ。ピカチュウはその後を追った。
「こんなところにあったんだな……」
サムスは思わず、笑みをこぼした。本人は探していた物にたどり着いたという達成感のつもりだったのだが、ピカチュウにとっては、凶暴な獣のような笑顔だった。
「よし……ピカチュウ。力を合わせて、パワードスーツを取り戻すぞ!」
サムスに突然話しかけられて、ピカチュウは「ふぇっ!?あ、うん!」と気の抜けた声でしか返事できなかった。
二人はパワードスーツを取り戻すべく、攻撃体制に入った。───しかし。
何かが、動く音がした。
「っ!? な……何っ!?」
驚いてピカチュウは後ろを見た。───なんと、先程通った通路が今、自分達がいる床から切り離されていたのだ!
「しまった! これは、罠だったんだ!!」
サムスが叫んだ。
それと同時に、左右から何かが近づいて来る音がした。サムスは右と左を交互に確認した。
───現れたのは、パワードスーツのコピーだった。「パワードスーツ……! ……盗んだ理由は、このコピーを作るためだったんだな!」
サムスは右側のパワードスーツのコピに光線銃の銃口を向けた。
「亜空軍かなり、考えてるよね。……まあ、その程度でボクらが倒れるって思っているっいうところは、全然学習不足だけど!」
ピカチュウは左のパワードスーツのコピーをにらみながら、ほっぺの電気袋から電流を少し放出した。
「かかって来い!!」
二人はパワードスーツのコピーに向かって叫んだ。
パワードスーツは、闇色の粉となり、消え去った。
「やった! サムス、パワードスーツを!」
「ああ。わかっている」
サムスはパワードスーツが入っているケースを見上げた。銃を構え、───そして。
研究所内にけたたましいサイレンが鳴り響いた。
ピカチュウが驚いて後ろを向くと、先程まで閉まっていた扉が開いており、通路もこちらと繋がっていた。扉からは、大量のロボットが……!
「っ!? ロボット!? サムス! 気づかれたよ!」
「大丈夫……ピカチュウ! ロボット達の足止めを!」
サムスはそう言うと、銃のモードを変え、
「りょ、了解!」
ピカチュウはロボット達に向き直った。
「侵入者発見! 排除スル!」
ロボット達は口々にそう叫んでいた。部屋はロボット達の無機質な声で溢れかえった。
「倒せるものなら……倒してみなよ!!」
ピカチュウが叫ぶと同時に、ロボット達の頭上に黒い雲が出現した。
「ピィィ……カァァァ……チュウウウウウッ!!」
「はああああああっ!!」
ピカチュウの技《かみなり》と、サムスがビームでパワードスーツが入っているケースのガラスを割ったのは、ほぼ同時の出来事だった。
部屋の外で待機しているロボット達は突然起こった爆風に巻き込まれて、全滅してしまった。部屋への入り口から、黒煙が漏れ出ていた。
「……なんとか、成功したな」
黒煙の中から出てきたのは、パワードスーツを装備したサムスだった。
「やっぱり、サムスはその姿が似合ってるよ!」
サムスの後を追ってきたピカチュウは、サムスに微笑んだ。
「ピカチュウ……」
サムスはパワードスーツのヘルメット越しから、小さな相棒を見た。そして、前を見据え、ゆっくりと歩み始めた。
「行こうか、ピカチュウ!」
「うん!」
ピカチュウは元気よく返事をし、サムスの後を追った。
二人は、開けた場所に出た。
「ここ……さっきの狭い感じとは違うね」
ピカチュウはぽつりと、そうつぶやいた。
「そうだな。ここは……この研究施設の最奥部か?」
サムスは、最奥部であろうこの場所を見上げた。天井は高すぎて、見えなかった。
「私達……かなり深い場所にいるんだな」
その声は、誰にも届くことなく消えた。
と、その時。
サムスは自身の体に強い衝撃を感じた。同時に足が地面から離れる感覚。
「っ!?」
「さっ……サムスーー……!!」
ピカチュウの声が遠のいて行く。
サムスは自分を襲った犯人を見極めるべく、辺りを見回した。目に飛び込んで来たのは、自分を拘束する爪のある手だった。間違いない──この姿、どこかで!
「りっ……リドリー!! なんでここに!?」
そう。自分を襲ったのは、宿敵のリドリーだったのだ!
リドリーは咆哮をあげると、サムスを壁に突きつけた。パワードスーツがショートし、サムスに電流が走る。
「ぐっ……!」
サムスがうめき声を漏らしたあと、リドリーはそのままの状態で壁をなぞるように飛行した。
「サムス!!」
リドリーの行動に腹がたったピカチュウは、助走をつけて高くジャンプした。
「サムスを離せよッ!! ピィィ……カァァァ……チュウウウウウッ!!」
リドリーをにらみながら、ゼンリョクの《かみなり》をお見舞いした。
ギャアアアアッ!!
耳をつんざくような叫び声を上げたリドリー。どうやら、《かみなり》をもろに食らったらしい。麻痺したのか、リドリーはサムスを離した。それと同時に、地面に落ちていく。
「サムスーーー!!」
ピカチュウの叫び声が近づいてくる。開放されたということを実感した。
なんとか着地した瞬間、また体に電流が流れ、サムスは膝をついた。
「……すまない……ありがとう……ピカチュウ……」
苦しそうな声で、ピカチュウに感謝した。その時、ピカチュウの後ろから物音がした。
「ピッ……! お前っ!」
ピカチュウが後ろを見ると、リドリーが落ちて来たようだ。リドリーは頭を抑えていたが、すぐに頭を左右に振り、二人を威嚇した。
「お前は……ボクが倒す!」
ピカチュウはリドリーをにらみ、そう叫んだ。
リドリーは、その場に倒れた。
「ピカチュウ!」
サムスはピカチュウに近寄り、ひざまずいた。
「大丈夫? 無理は……してないだろうな……?」
「うん! 大丈夫だよ! ……サムスは? 大丈夫?」
「私は平気だ。良かった……お前が無事で」
サムスは立ち上がり、辺りを見渡した。
「……ここにはもう、用は無いし、出ようか」
「そうだね。でも、出口は……あっ! あそこ!」
ピカチュウは出口らしきところを指(?)さした。
「出口……かな?」
「恐らく、そうだな! 行くぞ!」
二人は出口に向かった。
出口から外に出ると、そこは、遺跡のある場所のようだった。
「何だ……これらは?」
ポツリとサムスはつぶやいた。
「ん? サムス、あれ」
ピカチュウは下を指さした。
見ると、ロボット達が巨大な球体を運んでいる姿があった。
「あれは……亜空爆弾? ……やっぱり、ここは……」
サムスの頭の中に、ひとつの答えが浮かんだ。