人っ子一人見当たらない、無機質な倉庫。あるのは、ダンボールに包まれた荷物だけだった。中に何が入っているのかは不明だが、この“戦艦ハルバード”の乗組員にとっては大切な物資が入っているのかもしれない。
ピリリリリッ……ピリリリリッ……
誰もいないはずなのに、鳴り響いく通知音。それは、この逆さまの状態で置かれたダンボールから聞こえたようだ。
『スネーク。無事に、潜入したようだな』
嗄れた男の声が無線機から鳴る。
「……ああ。なんの問題も無く、な」
無線機からの声に、低い声で応答したのはかの有名な戦士──スネークだ。
『そうか。なら、聞いてくれ。これから再度スターフォックスが攻撃を仕掛けるらしい。注意して進むようにしてくれ』
「了解した」
スネークは、無線を切り、ダンボールを脱ぎ捨てた。
「待たせたな」
誰もいない部屋で、誰に言ったわけでもない独り言を、この場に残して、スネークは扉を開いて倉庫をあとにした。
倉庫から少し遠ざかったところに、スネークはいた。
(しかし、なんでこんな戦艦が、一等身の剣士と少女に作れるんだ?)
この戦艦に潜入した瞬間からの疑問が今になって蘇る。この戦艦は、かなりハイテクで、【初代期間】からの参戦者であるピンクボールが撃墜したとは思えないほどの装置が施されている。だが、それでも任務を遂行するしかない、などと考えながら、何度目かの角から様子を伺う。
すると、遠くから複数の足音と、ヒュウウと空を切る音が耳に入った。流石に身の危険を感じ、スネークは咄嗟にどこからともなくダンボールを取り出すと、身を隠した。
足音と羽音の正体は、この戦艦の所有者であるメタナイトとサラ、そして、彼らと行動を共にする波動の勇者・ルカリオだった。メタナイトは、滑るように低空飛行をし、サラとルカリオはその後を追う。
「……?」
ふと、ルカリオが足を止めた。
「ん? どうしたのよ、ルカリオ」
急に後ろに付いて来ていた足音が、急に聞こえなくなったので、サラも足を止めてルカリオを振り返った。ルカリオは、取り憑かれたように、とある一点を凝視している。
「どうかしたのか? 二人とも」
二人の異変に気がついたメタナイトも立ち止まって二人に尋ねた。
「いえ……ルカリオが……」
質問には、サラが答えた。メタナイトとサラは、二人で顔を見合わせていた。
一方、ルカリオの視線の先には柱の陰になっている所に、ぽつんと置かれたダンボールが映っていた。大きさ的に、人一人入れそうな感じだ。
(……怪しいな)
精神を統一させるべく、目を閉じる。すると、先程凝視していた場所が脳裏に映し出される。
「……ん?」
ダンボールの内側も透視されたのだが、そこで、人の姿を確認した。それ故、躊躇せずにダンボールを持ち上げた。その瞬間───
!
スネークが、姿を顕にした。いや、この場合は、変装───ダンボールを被った姿───が見破られた。とでも言うべきか?そして実際、スネークの頭上に、『!』マークが浮かんだのだ。
「……見つかったか」
(いや、あんなのでよく見破られないと思ったわね)
(もう少し、良い方法は無かったのか)
クールに言い残し、俯いたスネークに対し、サラとメタナイトは心の奥でツッコミを入れるしかなかった。
「って、んなこと言ってる場合じゃないわよ!! あんた誰!? なんでここにいるのよ!」
ようやくサラが普段通りのまともな反応を見せてくれたので、ルカリオは「良かった……」とため息をついた。
「
メタナイトが剣を構えると、つられてサラも剣を鞘から抜いた。だが、ルカリオが片手で二人を制し、スネークにもう片方の手を翳し、二人に告げた。
「……彼は、我々の敵ではない。波動で一目瞭然だ」
たったそれだけだった。メタナイトを振り返り、なぜかまた、目を閉じた。現在地からずっと奥まで伸びる廊下の暗がりから、赤黒い波動を放つ人形のような敵がズラズラとおしかけてくる。
目を開けたルカリオは、サラとメタナイトの順で二人を見てから、スネークに目を向けた。
「……何をしに此処にいるか、さっぱり検討がつかないが、今は状況が状況だ。そなたにも奴らの討伐を手伝っていただく」
敵から目を離さずに、ルカリオはスネークに告げた。
「あまり、ここで時間を食いたくないのだが、仕方がない」
観念したのか、スネークも臨戦態勢をとった。
「四人なら、とっとと片付くから安心しなさい」
垂直に〈
四人は、一気にプリムに突っ込んだ。
四人はプリム達を一斉に排除しきったあと、廊下を直進しながら話をしていた。
「それが、あんたが此処に来た理由なのね?」
腕を組みながら、スネークを睨みつけるサラ。
「『この戦艦を撃墜、もしくは、指揮権を奪還』ねぇ……。良く言えば、奪還するための仲間が一人増えた。悪く言えば、余計な真似をしてくれた。ってわけね」
「お前さんは、そんな皮肉しか言えないのか?」
「あら。それは、あんたも同じでしょ?」
「二人の間に流れる空気が随分と重いのだが……」ルカリオが、メタナイトに耳打ちした。「……見た目からして、友好的な関係になれるわけ無いだろう。ルカリオ殿」
「何か言ったか」
サラとスネークの声が重なって、ルカリオとメタナイトに突き刺さる。やはり、似た者同士のようだ。
「三人とも、気をつけろ。波動を感じる」
ふいに、ルカリオがそんな事を言った。
「それは亜空軍の奴らと同じか?」
メタナイトが問いかけるが、ルカリオは「いや。違う」と答えた。
「確かに、亜空軍の刺客達と同じ波動も感じる。しかし、我々と同じ、ファイターの波動も混じっている。しかも二人だ」
二人。それの正体がなんなのか、メタナイトとサラにはわからなかった。スネークは誰なのか、大体想像はできたが。
「この戦艦に囚われている、ファイターだろうな。確か……“ゼルダ”と“ピーチ”だったか」
いつの間に人質がいるなんて事を知らなかったサラとメタナイトにスネークが諭した。「ルカリオ殿。その波動はどちらから感じるのだ?」
「……ちょうど、この扉の向こうからだ」
ルカリオの言葉と共に三人は足を止めた。ルカリオの言うとおり、そこには、大きな鉄製の扉がある。その扉を見上げながらサラが「ここ……格納庫じゃない!」と疑問を吐露した。
「だが、居るからには救出しなければな」
なぜかスネークの目が光った気がしたが、特に気にはしなかった他の三人である。
思い切って扉を開け、戦闘態勢をとりながら中の状況を確認する。そんなだだっ広い倉庫の中央に、頑丈そうな鳥籠が───薄暗いため鉄製なのかなんなのかはわからないが───ぶら下げられていた。中には、人質らしき姿があり、右側の籠にはピーチの姿が。左側の籠にはゼルダの姿があった。
「なるほど、あれが人質か。……それにしても、美しい女性だな」
「ん? スネーク殿、何かあったのか?」
ボソッとつぶやいたスネークに、メタナイトが尋ねる。「いや、なんでもない」とスネークは返したが。
「とにかく、とっとと助けましょうよ」
サラが籠に歩み寄ろうとするのを、ルカリオが片手を上げて制した。「どうしたのよ?」と文句を言おうとしたサラだが、すぐにルカリオの行動の意味が分かったのか、開きかけた口を
天井から湧き出たであろう闇色の粉が、鎖を伝って姫達に降り注いだのだ。それは、すぐにでも姫達を覆い尽くし、鉄製の籠をすり抜けて、床に落ちていく。そして───
それぞれ、ピーチとゼルダの姿を完全にコピーしていた。
「…………」
両者共々、金色の瞳を光らせている。四人をのことを、獲物だと認識したような視線と共に。
「……やる気のようね。先輩方のニセモノさん?」
剣を構え、体制を低くしながら、サラが挑発するような口振りで話しかける。
「無理をするな、サラ。アレは相当手強そうだぞ」
メタナイトがパートナーを心配する声は、何度も聞いても嘘偽りは無いと、サラは思った。
「大丈夫よ、メタナイト。あたしは、負けないから!」
サラが叫ぶと同時に、ニセピーチとニセゼルダは無言でサラに襲いかかった。
「さあ……かかって来なさいよ!!」
ニセピーチとニセゼルダが闇色の粉として消え去った直後、サラは《流星回転斬り》でピーチとゼルダを幽閉していた籠の鎖を一気に断ち切った。そのおかげで、なんとか、ピーチとゼルダを救出することができた───メタナイトがピーチを、ルカリオがゼルダを籠の残骸から救出した───。
スネークが二人のフィギュアプレートに触れると、ピーチとゼルダはもとの姿を取り戻した。
「あら……ここは?」
「っ! ピーチ、無事だったのですね!」
「ゼルダ、貴女もね!」
ピーチとゼルダは、お互いの無事を確かめ合い、再開を喜んだ
「やあ、美しいお嬢さん方。お怪我はありませんかな? 申し遅れました、私、スネークと申します」
なぜか、べつにニセモノと戦った訳でもないスネークがしゃしゃり出て跪く。俗にいう、“ナンパ”だろうか。その手の話に全く縁の無いメタナイトとルカリオは顔を見合わせ、サラは「何言ってんのよ。このオッサン」と小声で毒づいた。
と、その時!
ウウウウウウウウウウ………
パトカーのサイレンのような警報がけたたましく鳴り響いた。
「ねぇ……メタナイト、これって!」
「うむ……間違い無い。外敵を知らせる警報だ!」
この戦艦の所有者であるサラとメタナイトがいち早く反応した。
「なら、二人にとっても、ちょうど良いな?」
ルカリオが微かに微笑む。その笑顔は、希望に満ちていた。
「なら、操縦室に向かいましょう。今なら、奪還できるはずよ!」
サラの言葉に、三人はすぐに頷いた。
すぐに、鉄製の扉を蹴破り、サラ、メタナイト、ルカリオの順で飛び出す。スネークは、少し踏みとどまったが。
「お二人とも、此処からあまり出ないでいただきたい。安全が保証できないのでね」
スネークは下を指差し、名残惜そうに二人に別れを告げた。
四人が出て行った倉庫は、再び、静寂を取り戻した。