「スネークさんは、待っていてくれって言ってたけど♪」
「付き添う相手が“僕”なら、問題は無いはずだ」
金髪に、紅の瞳。顔はほとんど包帯のような布に覆われているが、体格からして男性であることだけは、確認できる。
彼はシーク。ゼルダのもう一つの姿だ。
なぜ、彼女らが倉庫から出たのかというと───ほとんどピーチの意見だが───『暇だったから』らしい。そんな自由気ままな意見から、ゼルダはシークへと姿を変えて、ピーチに付き添うことになったのだとか。
「さて、ここまで来たは良いが、どこに向かおうか」
シークが腕を組み、考える。確かに、ニ人はこの戦艦については無知だ。先程やって来た四人組に着いていくなら、まだなんとかなったかもしれないが、”待て“と言われたうえに、置いていかれてしまっては、どうしようも無い。
「ねぇ。さっき、スネークさん達が向かったほうに行ってみない? 近くに新しい通路があるかもしれないわよ?」
悩んでいたシークに、ピーチが提案を出す。
「なるほど……乗った。行ってみよう」
シークとピーチは、スネーク達が曲がった廊下の方へと進んで行った。
廊下の方から、微かに風が流れ込んでくる。二人が慎重に進んでいると、視界の端っこに、微量だが血で染まったような雲が見られた。周りに敵がいない事を確認すると、二人は一気に風上へと前進した。
「ここから、外に出られそうだな……あそこを足場にできるかもしれない」
シークは出口の左側から身を乗り出し、戦艦の側面に飛び出ている突起物を確認した。
「ん? どこ?」
ピーチが出口から身を乗り出そうとするのを、シークが「やめておけ、落ちるぞ」と右腕で制止した。
「なんとか、行けそうだな。ピーチ、僕について来てくれ」
「分かったわ! 久しぶりに体を動かせるなんて……幸せだわ♪」
シークが得意の瞬発力を利用して出口から足場へと飛び移る。ピーチも姫とは思えないほど素早く、シークのあとを追った。
艦首が近くなってきた付近に、たどり着くと、二人は、怪し気な扉を発見した。
「何かしら、この扉」
「……分からない。分からないが、入ってみよう」
シークが先導し、扉を開けた。ギイイイ……と重苦しい音を立てて、扉は開いた。中を進むと、これまた怪し気な階段が見つかった。登ってみると、扉は無いが、部屋の入り口らしき空洞を見つけた。
「どうするんだ? ピーチ」
「決まっているわ、入って探検するのよ♪」
ピーチがシークよりも先に、部屋に入った。ピーチのあとを追う形で部屋に入ったシークは、部屋の違和感に気がついて息を飲んだ。
「……なんだ……? ここは……」
声にもならないような小さな声で、そうささやく。
この部屋の違和感───それは、透明なガラスケースの中に、これまで戦って来た敵達が標本のように入れられていたという事だ。
「まあ、可愛い子もいるのね!」
ピーチの黄色い声が聞こえた。「可愛い……?」と疑問に思いながら、シークはピーチの声がした方を見る。そこには、人形のような敵──プリムが入ったケースを見つめながら、目を輝かせているピーチがいた。
「ピーチ、あまり敵には……」
「えー? なんでよ?」
「襲って来るかもしれないだろう?」
「そんな事、ある訳ないでしょ?」
「万が一の事を考えてくれ……」
こんなやりとりを数分ほど続けてから、シークは「とにかく! もう行こう!」とピーチの腕を引っ張って標本部屋───後々、ピーチが部屋の名前を確認した───を後にした。
アーウィンに搭乗したフォックスは、ハルバードとの再戦に励んでいた。次こそは、撃墜しなければ。【この世界】の異変の元凶を、倒さなくては。その一心で、フォックスはアーウィンの操縦桿を握っていた。
(次こそは……当てるッ!)
ハルバードに接近しつつ、弾幕を撃ち込む。モニターに映る二連主砲がこちらを捉える。なんとか、あの主砲を破壊しなければ、こちらの勝ち目は無い。なら、一度、一か八か、二連主砲に標準を当てる。
二連主砲がこちらに極太レーザーを放つその前、ほんの少しの時間で、弾幕を撃ち、二連主砲を───
破壊した。
ドガアッ!!
「っ……!」
突然の爆発音に小さな悲鳴をあげ、振り返ってみると丸焦げになった物体が佇んでいま。どうやら、なんらかの衝撃で、背後の二連主砲が爆発したようだ。
そして、二連主砲の近くにいたであろうシークを探すが──見当たらない。
(ど、どこに行ったのかしら?)
「よしっ……! あたった!」
二連主砲を破壊したフォックスは、安堵のため息をついてから、視線を正面に合わせる。───そこに、異変があると気づかずに。
「……え!?」
コックピットのガラスの外に、シークが戦闘体制をとっていたのだ。フォックスは
何か言おうとする事もできずに、シークにガラスを粉砕されてしまう。
「ッ……!」
シークは甲板へと、飛び降りた。フォックスもシークの後を追うようにしてアーウィンから飛び降りた。
二人は同時に着地すると、お互い瞬発力を利用して、向かい打つ。
「はあっ!」
「せやあっ!」
シークの左チョップと、フォックスの右足蹴りが交差し、鍔迫り合いのような状態になる。
「っ……どういう事だ! シーク!」
「…………」
フォックスの牽制する言葉には応じず、ただ、フォックスを睨みつけるシーク。
「まあまあ。お二人さん、落ち着いて♪」
お互い「え?」という声をあげそうになるのをかろうじて耐えた二人は、喧嘩を仲裁するように割って入って来た女性───ピーチに視線を向ける。
「せっかく、人数が揃ったんだから、お茶にしましょうよ♪ ね?」
ソーサーに乗せられた白いティーカップを差し出すピーチ。
「いや、あの……ピーチ? 俺は……なあ、シーk」
「ん? 何か文句でもあるのか? フォックス?」
「いや、飲むんかい!?」
元がゼルダなだけあってか、いつの間にかシークもお茶を楽しんでいた。
「じ、じゃあ……いただきます……」
仕方なく、紅茶を受け取るしか無かったフォックスなのであった。
今、ここに、甲板の上でお茶会をするというなんともいえない光景が繰り広げられていた。