姫達が勝手な行動を繰り広げている中、サラ、メタナイト、ルカリオ、スネークは操縦室前にあるエレベーターにたどり着いていた。すぐさま乗り込み、操縦室に向かった。───のは、良いが。
「なっ何これ!?」
「平面だ……! 平面の人間がいる……!」
サラとスネークが驚きの声をあげるのも、無理は無い。なぜなら、真っ黒で真っ平ら───比喩でもなんでもない───なヒトガタの“モノ”達───Mr.ゲーム&ウォッチが複数人で操縦室に居座っているからだ。更に不可思議なことに、彼らがカクカク動くたびに、ピコピコと変な効果音が鳴るのだ。
「いやこれ、ガチでシュールよ?」
顔が引き攣るサラ。
「ど、どうするべきなんだ?」
仮面の下で目を見開くメタナイト。
「と……とにかく! 私とスネーク殿で奴らを吹き飛ばす。サラ殿とメタナイト殿は、この部屋を頼む! ほら、行くぞスネーク殿!」
「ん……? おっと、失敬!」
せーの! でルカリオとスネークは走り、Mr.ゲーム&ウォッチ(以下ゲムヲ)を窓の外に投げ飛ばした。
「ウワアアアアアアアア」
抑揚の無い声でそう叫ぶゲムヲ達。その声に、サラは「アイツら……喋れるのね」と変なところで関心していた。
「ウワアアアアアア」
無機質な叫び声が耳に入った瞬間、[[rb:お茶会>ティーパーティー]]をしていた三人は、操縦室がある方向を見上げた。─なんと、粉々になったガラスと電子音と共に、黒い平面───ゲムヲが降って来たのだ。
「な、なぜ、ゲムヲが?」
フォックスはティーカップをピーチに預けた。
「この戦艦の中枢機関から降って来た。という事は……コイツがこの戦艦を動かしていたのか?」
シークが冷静に分析を始める。そんなシークをよそに、ピーチは「まあ。ゲムヲじゃない! 久しぶりね♪」と手を振っていた。
「ゲムヲ、イタイ。ゲムヲ、オコッタ。ゲムヲ、オマエラ、ユルサナイ」
独特な口調と共に大した恐怖を感じさせない怒りを顕にするゲムヲ。しばらくモゾモゾと蠢いていたゲムヲだが、いきなり闇色の粉に姿を変えた。
「……!」
フォックスはブラスターを構え、シークは戦闘体制に入り、ピーチは手を口元にあてがい驚きの表情で闇色の粉と化したゲムヲを見つめていた。
闇色の粉はどんどん大きくなったかと思うと、一体の巨大ロボット───デュオンに姿を変えた。
「こ、こんなデカい敵どうやって倒せば……!」
流石のフォックスも目を見開いていた。と、その瞬間!
「ソナタら三人では、到底倒せない。我々も力を貸そう……!」
デュオンを踏み台にし、三人のもとに着地するルカリオとスネーク。突然の乱入者にシークとフォックスは目を見開いた。
「君達は……?」
「私はルカリオ。新たなる参戦者だ」
フォックスの質問に、ルカリオは即座に答え、右手をデュオンに翳し、臨戦態勢をとった。一方のスネークは、ピーチを見て一瞬困ったような表情を見せたが、ピーチのウィンクにより直ぐに解除された。
「ったく! まさか、オレを忘れた訳じゃねぇだろうな!」
と、アーウィンの飛翔音と共に、ファルコが甲板に舞い降りた。
「ファルコ! 来てくれたのね!」
ピーチが嬉しそうに叫ぶ。
デュオンは次々と現れるファイター達に苛立っているのか、機械とは思えない咆哮をあげた。
「みんな……行くぞ!!」
フォックスの声が合図となり、戦いの火蓋は切られた。
6人が死闘を繰り広げたかいがあった。デュオンは力尽きたと言わんばかりに、闇色の粉として消え去り、デュオンがいた場所に残されたのは、フィギュア化したゲムヲだけだった。
「なるほどな。あのデカブツは、ゲムヲが化けてたモンだったって事か」
変身した所を見ていないはずのファルコは、かなりクールにコメントした。そのメンタルの強さに、初めて彼を見るファイターは、内心「おぉ……」と関心していた。その一方で、フォックスは牽制のためかブラスターの銃口をゲムヲに向けた。
「ねぇ、フォックス。ちょっと待ってくれないかしら?」
ピンと張り詰めた糸を緩めるような声で、ピーチがフォックスに言う。フォックスの答えを待つ前に、ピーチはゲムヲに近づいた。そして、ゲムヲのフィギュアプレートに、ぽん、と触れる───ゲムヲのフィギュアがまばゆい光に包まれる───。やがて、光は止み、復活したゲムヲがそこにいた。
「ゲムヲ、ナニシテタ、ワカラナイ」
どうやら、デュオンになった記憶が完全に無いようだ。ゲムヲは「ゲムヲ、ウーン、
ウーン。ゲムヲ、ワカラナイ」と独特な口調で考えている。
「……ふざけているのか?」
あまりにも、態度がわざとらしいと感じたのか、スネークが眉根を寄せた。そんなスネークを「気にすんな。アレでも相当真剣に考えてんだよ」となだめるファルコ。
「ゲムヲ。あなたがこれまでして来た事は、言える?」
「ゲムヲ、ウン、イエル。ゲムヲ、コノ、センカン、ノットッタ。ゲムヲ、フエタ、ゴ、クライ、フエタ。ゲムヲ、ヘンナ、チカラ、イッパイマイタ。ゲムヲ、ソレカラ、ワカラナイ」
───翻訳すると、ゲムヲは恐らく亜空軍の幹部に抜擢され、ハルバードを乗っ取り、戦艦の全体の指揮(?)を取るために分身させられた。その後は、各地に亜空軍の使徒をばら撒いたらしい。
上記した内容を大体理解したピーチはもう一つ、ゲムヲに質問する。
「OK。じゃあ、ゲムヲ。あなたがして来た事は良い事だと思う? それとも、悪い事だと思う?」
ゲムヲは、その質問をされてからしばらくして「ゲムヲ、ワカラナイ。ゲムヲ、ドッチ、ワカラナイ」と答えた。───やはり。善悪の区別がつかないようだ。
「じゃあ、教えてあげるわね。あなたがした事が良い事か悪い事かを」
ピーチは幼い子供を諭すような口調と声色で説明し始めた。
「あなたがした事は、悪い事よ? みんなに迷惑がかかってしまったの」
「ゲムヲ、ヒドイ、コト、シタ? ゲムヲ、ナラ、ドウスル?」
「簡単よ! ちゃんと、みんなに“ごめんなさい”って、謝るの。そうすれば、みんな許してくれるはずよ。ね? みんな?」
そう諭し、皆に視線を向けるピーチ。
ピーチ自身、こんな大事になるまで敵側に協力して、謝って許されないという事は十分に分かっている。
しかし、ゲムヲに事の重大さを気づかせて、少しでも仲間を増やせたらと考えたのだ。
それを悟ったのか、みんな、ゆっくりと首を縦に振った。ピーチは優しくもどこか安心したような笑顔になり、ゲムヲに視線を移した。
「ゲムヲ、ヒドイ、コト、シタ。ゲムヲ、アヤマル。ゲムヲ、ゴメン、ミンナ、メイワクカケタ、ゴメン。ゲムヲ、ホントニ、ゴメン」
平面ゆえ、こちらを向いているのか分からないが、確かに謝る仕草を確認できた。その仕草を見て、ピーチ以外のファイター達は「ああ、これから、一緒に戦おう!」や「次は気をつけろよな!」などといった言葉をゲムヲに届けた。
「うん、これで、私達とあなたはこれで仲直りよ♪ だから、一緒に悪い事をしたヤツをやっつけて、“本当の良い事”をしましょ?」
そう言って、ピーチはゲムヲに日傘を差し出した。「仲直りの印よ♪」と言葉を付け足して。
「ゲムヲ、ウレシイ。ゲムヲ、アリガトウ。ゲムヲ、タタカウ、ガンバル、イイコト、スル!」
ゲムヲはその日傘を受け取り、嬉しそうにピコピコと動いた。その様子を、ピーチは「うふふ♪」と微笑みを浮かべて見ていた。他のファイター達も、同じように見守っていた。
「……うまく、解決したようだな」
「そのようね。良かったわ」
そんな彼らを操縦室からメタナイトとサラも見守っていた。
「やったわね、メタナイト。これで、奴らにも対抗できるわね」
「ああ……サラ、私は舵を握る。君は彼らの回復を頼む」
「了解したわ」
サラは、腕をクロスさせ、残光と共に一瞬で甲板に移動した。
「……さあ、行こうか」
それだけ言い残して、メタナイトは舵を切る。
真の主たちのもとに帰還したハルバードは、真っ赤な暗雲を抜け、青空へと進路を変えた。