亜空軍襲撃事件。
それは、エンジェランドの神々の間でも騒ぎとなった事件だ。
一応、ピットもその一部始終をこのソーダ色の瞳で見ていたのだが…。
「ど、どうしよう…」
下界に行くにも、大切な上司のパルテナの神殿を留守にする訳にはいかない。だが、このまま下界のこの光景を黙って見過ごす訳にもいかない。
ピットの頭の中は、様々な思考がグルグル渦巻いて大きな竜巻が起こっているほどだ。
「ピット」
そんなピットを冷静にさせたのは背後から聞こえた美しい女性の声だった。驚いて後ろを振り向くと緑の美しい髪を持つ女神───パルテナだった。
「パルテナ様!」
ピットはパルテナの元に駆け寄り、ズバッと跪いた。
「ピット…、地上界で何が起こったか知っていますか?」
「は、はい! 確か、亜空軍とかいうヤツらが襲撃した事件ですよね?」
「ええ…」
ピットから目をそらし、どこか遠くを見つめるその姿は、深い悲しみに満ちていた。
「この世界の創造主は今、消息不明らしく、ファイター達も各地を転々としているので、どうしようもない状態にあります…」
「………! パルテナ様! それなら、ボクに行かせてください!」
ピットはここぞとばかりに言い切った。
「このままヤツらの事を見過ごせません! 少しでも地上界にいる…、みんなの力になりたいんです!」
最後まで言ったものの、無茶振りだということは重々承知していた。だが、パルテナからかけられた言葉は以外なものだった。
「………だから、こうしてあなたの前に現れたのですよ?」
「えっ?」
「ピット、知っていますか? あなたはれっきとしたファイターなのですよ?そして、ここは普段私達がいる世界では無く、【この世界】なのです」
「えっ…ええええええ!?」
「だって、エンジェランドの下でこんな事が起きたらとっくに大変な事になってますもの」
パルテナはふふふっと笑っている。呆れた、というよりかは嬉しいという感情が勝っていた。
これで、みんなの力になれるのだから。
「さてと、それはさておき。ピット。これを持っていきなさい」
パルテナはすっと右腕を差し出す。すると、彼女の手から光が。その光は弓の形に変わり、光が治まると、ピットの手に落ちた。
それは、金色の美しい神弓だ。
「パルテナ様…!」
「さあ、行きなさいピット!」
パルテナはピットにそう命じた。「はい! パルテナ様!」と元気に近くにある階段を駆け上がった。
大きな扉の前にピットが立つと、ギギギキ──と重苦しい音をたてて扉が開いた。
バサッ、目を閉じ、翼を広げ、そのまま後ろ向きに倒れるように落ちた。しばらく落ちると、ピットは目を開け、飛翔した。
雲海にて、ピットは亜空軍の一部であろう敵に出会った。そんな敵は全員、手に持った神弓でぶっ飛ばした。
しばらく進むと、大きな岩があったので、そこに降りたった。
「(亜空軍の敵が多いなあ)」
ピットは薄々そう感じていた。すると。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………
地響きがした。視線をその場所にむけると、なんと、あの黒い戦艦が近くにいたのだ。
「あっ………!」
ゆっくりと戦艦はこちらに向かってくる。そして、自分の上を何事もなく通過した。
───訳ではなかった。
通り過ぎるときに艦体から闇色の粉のような物が自分に向けて降らされたのだ。その粉は所々で一つに固まって、プリムとなった。
「こ、こいつら…!」
あの空中スタジアムで見たものと同じだ。なら、ヤツらの戦闘力は既に読める。
ピットは手に持っていた神弓を二つにし、短剣の様にした。
「さあ!かかって来い!」
その声に反応したのか、一匹のプリムがピットに飛びかかって来た。
ピットは攻撃を交わし素早く短剣で斬りつけた。今度は自分から相手に突っ込み、どんどん倒していった。
「楽勝楽勝!」
叫んだその声には、少年らしい
やがて、呆気なくプリムの群れは全滅した。
「思った以上に弱かったなあ…」
あの光景を見ていたが、弱すぎる。だが、数が多い。ある意味、苦戦させられるとはピットも思わなかったのだろう。
「どうしよう……。………? あ、あれは?」
途方に暮れていたピットだが、近くに赤い何かがあった。───どこかで見たような?
「あ、あれは!」
ピットはジャンプしてそれに近づき、それを拾って岩の足場に戻り、その人物の足元にあるフィギュアプレートに触れた。
予想通り、フィギュアが金色の光を放ち、マリオの姿になった。
「うーん…………。はっ、ここは!?」
マリオは勢いよく起き上がった。そして、周りを見渡した。
「雲海………まさか、俺、ここまで飛ばされたのか?」
「そうですよ…」
いきなり声をかけてはならないのは分かっていたが、ピットはつい、声をかけてはしまった。そのため、マリオは帽子が浮き上がるほど驚いた。
「うわあ!? ……き、キミは?」
「ボクは、ピット、天使です。女神パルテナの命よりエンジェランドから来ました」
「そうか…俺を助けてくれたのはキミだったんだな。俺は、マリオ。よろしくな」
「はい! あの……マリオさん、どうしてここに?」
ピットが聞きづらそうに聞くと、「ああああああ!!忘れてた!!」とマリオはオーバーなリアクションをした。
「スタジアムに戻らねーと! みんなが…!」
「……スタジアムは、もう……爆破されました……」
「…え?」
分かっていた。言ってはならない事ぐらい。
しかし、今から空中スタジアムに向かってはあの戦艦によって被害が拡大してしまう。マリオにとっては残酷な現実だが、ここで、足止めをしておかないと…、本当にマズイ。
「今……なんて?」
「爆破されたんです…。カービィさんやゼルダさんは脱出したんですが…ピーチさんは、マリオさんに似た男に連れ去られてしまって…」
「ウソだろ……ピーチ姫……。みんな……」
マリオは悲しみのためにうつむいた。
『それでも………戦わないとな』
ふと、あの時。カービィに言ったようで自分にも言った言葉を思い出した。
そうだ。郷愁に浸っている暇はない。あの戦艦を食い止めて───亜空軍を食い止めないと、この世界が本当に危ない。
「マリオさん……」
「ピット……ありがとな」
「え?」
「キミのお陰で、戦う覚悟ができたよ」
さっきの絶望が一転。前々から知っている力強い笑顔を見せるマリオに戻ったのを悟るとピットも微笑んだ。
「ボクも一緒に行きます。あなたの、『相棒』として!」
「ああ。よろしくな! 相棒!」
二人はお互いに頷きかけた。そして───
───そのまま、旅だった。
ピットは飛翔し、マリオは地形を利用しながらジャンプしてついて行く。
二人は、新たなる仲間と共に、地上へと向かった。
しばらく進むと、あの戦艦が見えた。
ちょうどいい、あの戦艦に乗り込もうと、一度は決意したマリオ。
だが、当然の如く、ジャンプして届く距離じゃない。
「くっ……やっぱり無理か…」
「あれでは、追いつくのは難しそうですね……」
仕方なく地上から向かうしかない二人。
その時。
「…? なんだ、この音?」
「ん? どうした?」
突然聞こえた何かが飛翔する音にピットは頭に疑問符を浮かべた。それは、マリオも同じでピットと一緒に耳を済ませてみる。
確かに、シュオオオオオオオ……という音が聞こえる。
「(この音は……まさか!?)」
そのまさかだ。
「…!? マリオさん! あれ!」
ピットが指差した方を見ると、遠くからものすごい勢いで飛行するモノが。
「あ、あれは…………」
凄まじい速さ故、一瞬しかその姿は見ることができなかったが、マリオはその物体について知っていた。
「あれは……何だったんでしょうか……」
ピットはまだ、頭に疑問符を浮かべている。
「心配するな。あれは、俺の仲間だ」
「えっ!? そうなんですか!?」
「マリオさんも顔が広いなあ」とのんきなピット。
一方で、マリオは一瞬で通り過ぎた飛行物体を見ていた。
「(あとは、頼んだぜ)」
その飛行物体に乗っている