〈エインシャント島〉が消え去り、藍色の空間──亜空間が口を開けているこの場所。
その亜空間の中から、ズオオオと鈍い音をたてて巨大な砲塔〈亜空砲戦艦〉が顔を覗かせた。
亜空砲戦艦はその全貌を徐々に〈この世界〉に晒す。戦艦というより、最早要塞に近い姿をしているこの戦艦に搭乗しているのは──
「フフフ……とうとうこの日がやって来たようだな」
「これで、我々の勝利が確定するのだな……!」
ガノンドロフとクッパ。不動の悪役コンビだ。
展望デッキに佇む二人は、広い海原を見下ろして嘲笑う。
「まずは……この海原で実験といこうか。……亜空砲戦艦、砲弾発射用意」
ガノンドロフの司令に合わせて、砲台が動く。そして、狙いが定まったのか、とある地点で停止した。
―ズウウウウ……エネルギーが溜まる音。
「……撃てッ!!」
まるで鉄槌を下すように、ガノンドロフは手を砲弾の進行方向に向けた。
──ドォオオンッ!!
直後、空気を震わすほどの轟音と共に、青いエネルギー弾が放たれた。
エネルギー弾は海上線の彼方に消え去ったかと思うと、数秒間を開けてから亜空爆弾のように爆発し、〈亜空爆弾〉以上の規模の大穴を開けた。
「おおっ……! スゴイ、スゴイぞ! これで……〈この世界〉は我々のものだ! ガーッハッハッハッハ!!」
クッパが亜空間に切り取られた場所を見て、喝采した。
ガノンドロフはその姿を呆れるながら見つめていたが、すぐに亜空間の入り口に視線を移した。
(これで……〈この世界〉の覇権は“我の物”となる。無能な創造神共なんぞ、足元にも及ばんわ。……む? 何だ、あれは)
しばらく邪悪な笑みを浮かべていたガノンドロフだが、空間があるすぐ近くからこちらに向かって飛翔する物体が目に入った瞬間、表情を険しくした。
「む? 何だ、ガノンドロフ。キサマは嬉しく無いのか?」
しばらく哄笑していたクッパだが、あまりにも静かすぎるガノンドロフをおかしく思い、ガノンドロフが凝視する一点を同じように見つめた。
「あ!? な、何だあれは!?」
どうやら、彼もガノンドロフと同じ物を見つけたらしい。
彼らが見つけたのは、急速に接近する飛行物体のような物。
「〈戦艦ハルバード〉……! クソッ! どこまで我々のジャマをするのだ、ファイター共めが!」
クッパは苛立って地団駄を踏む。
対するガノンドロフは至って冷静だ。
きっと、彼にとって無謀な突撃にしか見えないのだろう──実際そうである──。
「ここで葬り去ってくれるわ、愚かなるファイター共よ!」
ガノンドロフが叫ぶと同時に、亜空砲戦艦に備え付けられた通常攻撃用の主砲がハルバードを捉え、一斉射撃を開始した。
ハルバードはそのまま一直線に亜空砲戦艦に向かう。
しかし、そんな無謀な事をしていたからか、数発の弾が機体に直撃し黒煙があがった。それでも、ハルバードは直進する。
その後も弾幕はハルバードを撃ち落とそうと射撃の手を止める事はなかった。
次の瞬間、これで決めてくれるわ、と言わんばかりの極太レーザーがハルバードを貫いた。
「おおおお!! 遂に撃墜したか!」
炎をあげて爆発四散したハルバードを見て、クッパは再び歓喜の雄叫びをあげた。
ガノンドロフも先程は見せなかった、してやったという表情で海に消え去るハルバードの残骸を見つめていた。
この後、起こる出来事を知らなければ。
「ん……?」
黒煙の中から、無数の飛行物体が高速でこちらに接近して来るのを確認してしまった。すぐに、自分達は策にハメたのではなくはめられたのだと気付かされた。
「なっ……あの戦艦は囮だったのか!」
「む……!? それだけでは無いぞ、どうやら、あの戦艦……本物では無いな!」
「はあっ!?」
クッパの指摘にガノンドロフは自分の目を疑い、黒煙と焔があがるその場所を凝視した。次の瞬間、彼の目に映ったのは、にわかにも信じ難い現象であった。
火の粉と黒煙は青白い光を帯びてハルバードの残骸と共に、小さな一つの光となり、飛行物体の一つの中に収まったのだ。
こんな事、現実ならあり得ない。確かにハルバードは撃墜されたはず。
これは、一体どういう事なのだろうか。
「……と、いうものなのだけれど……どうかしら?」
話は、一時間ほど前に遡る。
荒野にて、エインシャントの話を聞き終わったファイター達は亜空間に突撃するという所まで話を進めていた。
たった今、その突撃するための作戦についてサラが説明し終えたところだ。
作戦の内容はこのようなものだ。
まず、サラの持つ〈流星の笛〉で戦艦ハルバードをコピーする。
しかし、ハルバードで真っ向から突っ込むと撃墜されるのは十分承知であった為、ファルコの〈アーウィン〉、サムスの〈スターシップ〉、キャプテンファルコンの〈ファルコンフライヤー〉、オリマーの〈ドルフィン初号機〉にファイター達は搭乗し、待機する。乗り物は、ハルバードの中に積み込む。
次に、ハルバードが墜落し始めたら、一斉に飛び出し、突撃する。
「でも……ハルバードをコピーしたら、サラの妖力が……」
サラの力を心配したマルスが声をかける。
「大丈夫。流星の笛を他の物の姿に変える術は試した事があるし、あたしは元の世界では最上級の妖力を持っている妖怪の妹なのよ? そのくらい、朝飯前だわ」
マルスの心配をかき消すように、サラは笑顔と共に信憑性のある言葉を送った。
「他に、付け足しなどがあるメンバーはいるかしら?」
誰からも挙手などは無かった。
全員がこの策に乗ったと捉えたサラは右の鞘に収めてある流星の笛を抜き、ハルバードに歩み寄る。
「なら……始めましょう」
サラは笛の吹き口に唇をあて、静かに笛を吹き始めた。
その澄んだ音色は普段音楽に全く興味が無い、あるいは関わった事が無いファイター達をも取り込み、魅了していった。
サラが曲を吹き終えると同時に、流星の笛を青白い光が包み込んだ。
それを確認したサラは、笛を天高く放り投げた。流星の笛がハルバードの高さよりも上に昇ると、意思を持ったかのようにまばゆく輝き始めた。
「っ……!」
眩しさのためか、ファイター達は目を細めて光源を見つめた。
光に包まれた流星の笛は、段々とその姿を変え始めた。近くにあるハルバードに形を似せて行く。
まず艦隊自体を、次に特徴的な艦首を、最後に翼などの装飾を形作る。
やがて光は止み、皆一斉に目を開けた。
「え……えええ!?」
全員が素っ頓狂な声をあげた。
無理もないだろう、ハルバードが二つもあるのだから。
「ハ……ハルバードが……もう一つ……」
カービィが目をまん丸にしてつぶやいた。
確かに外観は、通常のハルバードと全く変わらない。
「本物とは、少し違う仕組みになっているわ。ついて来て」
サラはファイター達に背を向けて、ハルバードに歩んで行った。ファイター達も、そんな彼女について行ったのであった。
館内で一番大きく変わっていたところは、本物のハルバードには無かった“小型機格納庫”があったところだ。
「なるほど、ここに私達の小型機を乗せて、突入作戦を取るって訳だったのか」
サムスが格納庫全体を見渡し、改めてサラの作戦を深く理解していた。
「この大きさなら……多分、全て入ると思うのだけど……大丈夫かしら?」
「ああ。もちろんだ」
「アーウィンは元々小型機だしな。こんぐらいのスペースなら、余裕で入るぜ」
「わざわざお気遣いありがとうございます……!」
「よし、そうと決まれば、誰がどの機体に搭乗するかを決めるぞ!」
サムス、ファルコ、オリマー、ファルコンはサラに心の中で礼をしながら、それぞれの準備に取りかかった。
「あ、そうだわ。カービィ、ちょっと来て」
「ん? どうしたの?」
サラはカービィを呼び、密かに“ある作戦”を伝えた。
そんなファイター達の作戦も知らずに、クッパとガノンドロフに最早勝ち目は無い。それでも、まだ、諦めが悪い悪役の二人は反抗する気満々の目で
「ええい鬱陶しい奴らめ……! おい、この役立たず! とっとと奴らを撃ち落せ!」
先程の子供のような喜び方から手のひらを返すような態度のクッパ。
戦艦はそんな彼の態度に怖気づくような間を開けてから、再び弾幕を放った。機体が格段に小さくなってしまったので、命中率が非常に下がってしまった事など、気にもせずに。
「皆! しっかり掴まっていろ!」
「よしっ……! あと少しだ! 全員踏ん張れ!!」
「ハッ! こんな攻撃、そうめんみたいなモンだぜ!」
「え? ファルコ、今なんて?」
「うわあああああ!! 怖い!マジで怖いですうううう!!」
選ばれた操縦士達は、一直線に進んで行く。
そして───!
「行けッ!! カービィ!!」
四人は声を合わせて絶叫した。
その声が届いたのだろう。
遥か彼方の上空から、光を超える速さて戦艦に接近する“春風”の姿が。
「っ!?」
「な、なんだぁ!? あれは!?」
ガノンドロフとクッパが突如として現れた乱入者の姿を捉えて目を疑った。
カービィだ。伝説のエアライドマシーン〈ドラグーン〉に搭乗し、神速とも言える速さで戦艦の中枢機関めがけて飛翔する。
『カービィ、あんたは〈ドラグーン〉を使って、邪魔する奴を駆逐して。確か……派遣できるわよね?』
それが、サラがカービィに託した作戦だった。
彼女の作戦通りに、カービィはドラグーンを使って流星の如き速さを叩き出しながら飛翔したのだ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
カービィの雄叫びとドラグーンが中枢機関を貫いたのは、ほぼ、同時の出来事だった。
さすがの戦艦も、中枢機関を射抜かれてはひとたまりもなかったらしく、あっけなく大爆発を起こしはじめた。一つの爆発が大きな連載を呼び起こし、戦艦のあちこちで大爆発が起きる。
「……してやられたな」
「報告だ。何か対策を取らなければならんだろうな……」
忌々しげに宇宙船達を睨みつけ、二人は背後に迫っていた空間へと、姿を消した。その直後、二人が居た甲板は、灼熱の炎に焼かれてしまった。
「よし! 全員突入よ!!」
ドラグーンが戦艦を討ち取ったのを確認すると、サラはテレパシーを利用して操縦士達に合図を送る。低い機動音の中でも、彼女の声は全員の頭の中にしっかりと通った。
最初にアーウィンとファルコンフライヤーが、その次に、スターシップとカービィを乗せたドラグーンが亜空間に突入した。
「おい何やってんだ! オリマー!」
「急げ! あと少しだぞ!」
「ま……待ってくださいいいぃ……」
勢い良く突入した宇宙船の後に、頼りないエンジン音と危なっかしい軌道を描きながら、ドルフィン初号機が亜空間に突入した。
こうして、『亜空間突入作戦』は無事、成功に終わったのだ。
その後、待ち受けている運命の残酷さに気付かずに。
エリア2 現れた禁忌
闇。
それしか、この空間を言い表せる言葉は無かった。
「ここが……亜空間」
普段はお人好しで、誰よりも頼れるリーダーのマリオの声に緊張感が走る。
他のメンバー達も眼前の空間に得体のしれない恐怖を感じていた。
「皆、ここまで来たらやるしかない。万が一マズイ状況になったら、第一に自分の身を守ってくれ。
この空間では、何が起こるかわからないからな」
フォックスの言葉に皆が頷いた。
「よし! 亜空軍のボスをとっとと討伐して、皆で〈この世界〉に帰ろう!」
『おおぉーー!!』
右腕を掲げたマリオに続き、ファイター達は気合満点の意思を見せつけた。
マリオが一番先に進み、他のメンバー達も、それに続くように亜空間を進む。
「クソッ……マリオめ。どこまでワガハイのジャマをすれば気がすむのだ」
ドスドスと足音を響かせながら、クッパは悪態をついた。
「……そんな事を言っても仕方がなかろう。貴様とマリオとの縁は絶対に切れぬ。一度結びついてしまった縁は断金の交わりの如く、我々を苛むのだ」
詩を謳うかのような言葉に、クッパはあの意地悪い笑みをいやでも想像してしまい、段々と頭に血が登り始めた。
「そんなもの知っておるわ!! ったく……キサマと組むとロクでもない事が起こるというのに……あの右手袋めが……」
「……その言葉、そっくりそのまま返してやる」
クッパが更に反論しようと振り向く直前、クッパは───
───ガノンドロフが所持していた〈ダークキャノン〉によって、フィギュアにされていたのだ。
「ふん……哀れな奴よ。最早、貴様に用など無いわ」
ダークキャノンを投げ捨て、クッパのフィギュアを蹴り飛ばした。
彼はそのまま前進し、崖のように切り立った場所にたどり着いた。両手を広げて“彼”を呼び出した。
「マスターハンド様。ガノンドロフ、只今帰還いたしました」
恭しい口調でかしずく。
すると、漆黒の闇に飲まれた空間から、白い巨大な右手袋───マスターハンドが現れた。
彼は、〈この世界〉の創造神である。
「……その様子……だと。まんまと奴らの……罠にハメられたよう……だな」
「ええ。この失態、いつか必ず──む?」
形だけの謝罪をしようと頭を垂れたガノンドロフだが、そこで、ある異変に気づく。
いつもならマスターハンドの台詞はここまで途切れ途切れな感じではない。だが、今回はなぜか苦しそうに話している。
「……どうかなされましたか?」
「っ……! な、なんでも……っない…」
明らかに来るしげだ。
ガノンドロフは視線をマスターハンドの上に向けた。
そこには、手の甲、指一本一本に光る鎖が突き刺さっていたのだ。
「……何者だ」
低く唸るように、相手に問う。
「ふふふふふふ……ここまで我の存在に全く気づかなかった癖に……そのような態度をとるとはな。ふふふ、滑稽だ。ファイターという存在は」
不気味な笑い声とこちらを嘲笑うような言い草と謎の言葉を放つ“何者か”に苛立ちが隠せないガノンドロフ。
そして、段々と“何者か”が姿を現した。
ヒトガタをしたその身体の色は、青く澄み渡った空とは程遠い禍々しさを持つ水色。胸には心臓の代わりであろう赤紫色の水晶体が埋め込まれている。
「我が名はタブー。〈この世界〉の“新たなる支配者”だ」
支配者? と、ガノンドロフは元々眉間に刻まれていたシワを更に深くする。
「簡単に言ってしまえば、“亜空軍の頭領”だ。
タブーが明かした事実に、ガノンドロフは腹の奥がふつふつと湧き上がる感覚があった。
自分はマスターハンドに利用されていたのではなく、その上の存在に利用されていたのだ。しかも、その存在は、自分を差し置いて〈この世界〉の頂点に立つと宣言したのだ。
「……ふざけるな。貴様が我の上に立つだと? ……フン。馬鹿馬鹿しい」
地を蹴り、物凄い勢いでタブーに飛びかかる。
「〈この世界〉の“新たなる支配者”になるのは……この我だ!!」
タブーの心臓部を潰すべく、左手に黒い魔力を纏う。あと少しで、ヤツに手が届くそう思った刹那。
見えない壁に阻まれた。
決して比喩などではない。タブーの周りを結界が覆っていたようで、ガノンドロフは弾き飛ばされてしまった。
「がはっ……!」
「がっ……!!」
落ちた反動でマスターハンドと激突した。それのお陰で──という表現はおかしいが──マスターハンドの意識と身体を拘束していた光の鎖がブチッと血管が切れるような痛ましい音を立てて、引き抜かれた。
マスターハンドとほぼ同時に、フィギュアと化したガノンドロフも地面に叩きつけられた。
「つっ……ぅぅ……」
呼吸をする度に、全身に激痛が走る。
満身創痍になった〈この世界〉の創造神は、心の中で自分の愚かさを嘆いていた。
(私は………
傷更に痛むのは、悔しさからなのか傷口が空気に触れているからなのか分からなかった。
ふいに、先程タブーが宣言していた言葉が脳裏に蘇る。
『〈この世界〉の“新たなる支配者”だ』
「……させるか」
自分は創造神だ。
「〈この世界〉を、お前に渡す訳にはいかない!!」
最後ぐらい、足掻いてやる。
マスターハンドは固く拳を握りしめてタブーに殴りかかった。
「ふん……無駄な事を」
だが、そんな超足ロケットパンチもタブーを覆う結界によって阻まれてしまった。
「ぐぁっ……!」
先刻よりも強く地面に叩きつけられ、マスターハンドは意識を強制的に手放してしまった。
「ん? アレ、マスターじゃないか!?」
それから少し経った。
亜空間を進んでいたファイター達は、ぐったりと倒れているマスターハンドの存在にようやく気がついたようだ。
更に他のファイターは、ガノンドロフ、クッパのフィギュアが放置してあるのに気がついた。
「マスター!」
「大丈夫か!?」
マルスとリンクが素早く駆け寄った。しかし、マスターハンドからの返事はない。
「……この人が……創造神?」
サラは「イメージと全然違うんだけど……」と表情を引きつらせた。
「マルス、マスターの様子は?」
「気を失っているだけみたい……でも、なんでここにマスターがいるんだろう? だって、彼は〈
「ふふふ……なぜ、ここにソイツがいるのか? ふふふふふふ……やはり、滑稽だな、ファイターという存在は」
突如、不気味な笑い声がファイター達の耳に入った。
各々が戦闘体勢に入ると、先頭に立っていたマリオが声の主を見つけたようで「誰だ!」と声を荒げた。
彼らの目に入ったのは、水色の身体を持つ人間の形をした“ナニカ”だった。
「我が名はタブー。その創造神を討ち取り、数々の試練を乗り越えたキサマらを絶望へと陥れる“神を超越した存在”だ」
意味不明な言葉を述べながら、タブーはファイター達を憐れむような目で見下した。
どれもこれも、さして強そうではない。
「アイツだ………」
ふと、ファイター達の後方で援護していたエインシャントがつぶやいた。その声には、恐怖というよりも、怒りに近い色が混ざっていた。
「アイツが……私の島を…私の部下を人質にとったのだ!! 私の大切な物を…全て奪った!」
「ほう、誰かと思えばエインシャントか。ふふふ…随分と醜い姿になってしまったな。いや、元からそんな姿だったか? いずれにせよ、我には勝てないだろうな。ふふふふふふ……」
不気味。
それが、ファイター達が抱いたタブーの第一印象だ。
「お前が本当の悪者だな! 許さないぞ!」
カービィがぴょんぴょん跳ねながら怒鳴るが、タブーは取り合う様子がない。
「我が悪か。ふふふ、なら、正義を司るキサマらに、試練を与えてくれよう。この試練を乗り越えられれば、キサマらは“本物”の正義だ」
タブーは意味不明な言葉をまた述べると、タブーの背後に禍々しい翼が現れた。
翼にどんどんエネルギーが溜まっていくのが、ルカリオにはよく分かった。
まずい、逃げろ!! と叫ぶその直前。
「《OFF波動》」
タブーの翼から、凄まじい衝撃波が放たれた。
「うあっ……!」
誰があげたのか分からない呻き声が、タブーには聞こえた。
ファイター達は宙に放り投げられ、それぞれ、まばゆい光に包まれた。
エリア3 破滅的大敗北
ドサ。
ドサドサドサドサドサドサ。
フィギュアが落ちる音がいくつも響いた。
今、この場にタブーに逆らう者はいない。
「ふふふふふふ……はははははははは!!」
自分によって、“正義”は“偽善”に変わった。
〈この世界〉の敗北が確定した。
「ざまあみろ! 我に逆らうからそうなるのだ! あーハッハッハッハ!!」
再度高笑いをすると、切り取った〈この世界〉が意思を持ったかのようにタブーの周りを覆った。
愚かなるファイター共よ。悔しければ、この〈大迷宮〉に来るがいい。我はその中枢部にいる。
ただし、“復活できれば”の話だがな。
今、ここに〈この世界〉の敗北が確定した。
彼らを助けられる存在は、いない。
訳ではなかった。