今。ここにもう一つ、希望の光が灯った。
ファイター達を嘲笑うようにこの空間を包んでいた闇を切り裂くように、カービィのフィギュアが金色のまばゆい光を放ったのだ。
「……あれ!? ぼく、なんで復活してるの!?」
復活したカービィは目を丸くし、辺りを見渡した。
「それに、ここどこ?」
現在いるこの場所はどう考えても、先程吹き飛ばされた場所とは違う場所だ。
どうやって、ここまで運ばれたのだろうか。そして、どうしてここにいるのだろうか。
そんな事を考えていると、何かが喉につっかかる感覚があり、思いっきり息を吸い込んで、それを弾幕──とまではいかないが、地面が少し削れるほどの勢いで吐き出した。
それは、見たことのある顔が描かれた金色のブローチだった。
「あれ? こんなのいつ食べたっけ?」
ブローチを見つめながら腕を組み、記憶の糸をたどる。そういえば、デデデ城にマリオ達と行った時、これと似たものを見つけた気がする。その時は何も食べていなかったから、お腹が空いているのを紛らわすためにこれを食べたような。
「う〜ん……多分、ぼく、これを吸い込んだんだなあ……。でも、なんで復活したんだろ……」
一つ疑問は解決したが、また疑問が一つ湧く。
「う〜〜〜ん……まあ、いっか!」
しかし、さすがはカービィ。すぐにどうでも良くなったようだ。
「……とにかく、先にみんなを探さなきゃ。せっかく動けるようになったんだもん!」
カービィはその場から元気よく走りだした。
一つの光として、仲間を救うために。
エリア2 光
少し進んだ場所にピーチが放置されていたので、素早く駆け寄り、フィギュアプレートに触れて復活させる。
一瞬、罠なんじゃないかとも考えた。だが、今は一刻も早く仲間を助けたいという思考が頭の中を埋め尽くしているため、そんな考えはすぐに吹き飛ばした。
「ピーチ! だいじょーぶ!?」
「え、カービィ? な、なんで復活しているの!?」
復活したピーチは彼を見て目を丸くした。ファイター達はとっくに全滅したと思っていたのだから。
「なんで復活したのか、ぼくもよく分からないんだよね……。ぼくの知り合いの顔が描いてあるブローチを飲み込んでたからなのかなぁ」
一人でまた思考に明け暮れようとするカービィにピーチは、「他のみんなは?」と、答えが帰ってくる見込みがない質問をした。やはり、その質問に対してカービィは必死に頭の中の言葉を選びに選んだ。ピーチが仲間を心配する気持ちはよくわかる。自分だってそうなのだから。
「……ごめん、ぼく、まだみんなとは会っていないんだ」
ようやく自分の口から出せたのは、深い罪悪感を感じる暗い音程に乗せた謝罪の言葉だった。
「カービィ……」
「ごめんね、ピーチ」
何か言おうとしたピーチの言葉を遮ってカービィは、再び謝罪をする。自分から目をそらし、うつむく彼はなんともいたたまれない姿だった。
ピーチはゆっくりと立ち上がり、少し体勢を低くしてカービィの頭に手を置いた。まるで、幼い子供をあやすように。
「ごめんなさい、カービィ……。わたし……変なコトを聞いちゃったわね。
これから、一緒に探しましょ。絶対に、みんな見つけ出してやるんだから!」
カービィが顔を上げると、そこにはいつもの明るい姫君の笑顔があった。
そうだ。
ここで立ち止まってなんていられない。復活できたのを糧とし、進まなくては。
「……うん、そうだね。きっと、みんないるはずだもんね!」
カービィもピーチに負けないぐらいのキラキラな笑顔を浮かべる。さすがは星の戦士、切り替えが誰よりも早い。
「よし! そうと決まれば、早速行きましょう!」
「うん!」
桃色の二人は、暗黒の空間を駆け抜ける。ファイターを探すために。
「って、あれ! ゼルダじゃない?」
自動爆弾が大量に設置された地帯を攻略し、ピーチがゼルダを発見したようだ。無造作に置かれたフィギュアは、助けを求めるように佇んでいた。
ピーチはゼルダのフィギュアに近寄り、フィギュアプレートに優しく触れた。待たせてごめんね、と、想いを込めながら。
「っ……! ピーチ! それに、カービィも! 無事だったのですね……!」
ゼルダはやや涙声になって、ほっと胸をなでおろした。
ピーチはゼルダの事を抱きしめ、「貴女のほうこそ、無事で良かったわ」と、姫君らしい優しく包み込むような笑顔をたたえた。
そんな二人を眺めていたカービィだが、なぜか、何処へ走り出した。まるで、何かを思い出したかのように。
ゼルダは〈この世界〉の湖畔での出来事を思い出し、慌ててカービィのことを追いかけた。訳か分からないピーチは、ゼルダのあとを追いかけるしかなかった。
「待ってください! カービィ!」
彼女の呼びかける声にも答えず、カービィはどこかへ向かう。複雑な地形をひょいひょいと軽く乗り越え、カービィがたどり着いたのは、自動爆弾が鉄格子の代わりをしている牢屋に収容されたメタナイトだった。
「……すぐに助けるから! 待ってて!」
自動爆弾を睨みつけ、
追いついたゼルダ達は、その光景を目の当たりにして唖然とした。恐怖すらも感じたのだ。怒りが頂点を超えてしまったのだろうか、敵を吹き飛ばした時のカービィの目には、光なんて宿っていなかった。
「メタナイトおおっ!!」
フィギュアを吹き飛ばす勢いでプレートに触れるカービィ。メタナイトがまばゆい光に包まれた瞬間、体の奥底から力が抜けた感覚があった。
「カービィ……? なぜ、君がここに?」
メタナイトはカービィを見つめて、問いかける。
カービィはそれには答えずに、目に涙をいっぱいに溜めてメタナイトに飛びついた。堪えきれなかったのだ。ずっとまとわりついていたこの心配が。
「うおっ! ど、どうした?」
「もう! ずっと心配してたんだよ!? 良かった……良かったよメタナイトー!!」
終いには盛大に泣き始めてしまった。
メタナイトは訳が分からなかったが、心配してくれていた事だけはハッキリと理解したので、「……すまないな」と、優しく彼の頭を撫でた。
しばらくして落ち着いたカービィを連れて、メタナイトは牢屋代わりの地形から広い場所に出た。そこでは、ゼルダとピーチと──ここまでメタナイトと共に行動して来たパートナーの少女が二人を待っていた。
「サラ……!」
「……ただいま。メタナイト」
少女──サラはメタナイトに精いっぱいの笑顔を見せた。いつもの大人びた笑顔ではなく、純粋な少女らしい笑顔を。
「……お帰り。君が無事で良かった」
「サラ! お帰りー!」
メタナイトがサラに優しい視線を送り、カービィはサラに飛びつく。カービィの勢いによろけそうになりながらも、サラはカービィを受け止めた。
「良かったわね♪ サラちゃん」
ピーチがサラの頭をゆっくりと撫でる。サラは「すまないわ、ピーチ」と、苦笑いのような顔になった。
「もう、女の子なんだからそんな顔しちゃダーメ! ちゃんと笑顔でいなくちゃ。ね?」
そんなサラに、ピーチはそう指摘した。
一方、ゼルダはメタナイトに事情を説明していた。どうやら、カービィが夢中でメタナイトを救出している最中に彼女のフィギュアが放置してあったのを偶然発見し、救出したそうだ。
「そうか、それはすまなかった……」
「いえいえ、私達を助けてくださったお礼ですよ」
目を伏せたメタナイトにそっと微笑みかけるゼルダ。
その微笑みには、どこか遠くにいる人を想っているような光が宿っていた。
先へ進み、扉へと入った五人は突如、空中に投げ出された。どうやら、地面が無かったらしい。
そんな状況に落ちたとしても、五人は冷静に対処した。カービィはホバリングで、メタナイトはマントを翼に変えて滑空、サラは能力で浮かび、ゼルダは瞬間移動で先に足場に移動し、ピーチはピーチパラソルでふわふわとゆっくり降下している。
ようやく全員が足場に降り立った。
「これは、この赤いブロックを破壊すれば良いという事でしょうか?」
透明なブロックに囲まれた地形に宿る希望のように赤く光るブロックを見つめながら、ゼルダが確認するように言う。
「多分、そうだと思うわ。……まあ、やってみないと分からないけど……ね!」
サラは瞬時に飛び上がり、ゼルダの頭上をかなりの高さで通り越し、赤いブロックに剣を突き刺した。刹那、赤いブロックは周りの透明なブロックを巻き込んで砕け散った。それを見たメタナイトが反対側にある赤いブロックを同じように破壊し、一行が通れるほどの通路が出来上がった。
カービィの《ストーン》とメタナイトの《ドリルラッシュ》の息ピッタリな連携によって、赤いブロックの爆発連鎖に巻き込まれなかったブロックを順調に削っていく。途中、青い体の者が乱入し「ヘイ、遅すぎるぜ? 俺も手伝ってやるよ!」と、ものすごい速さでブロックを砕いた時には一同唖然としていたというハプニングがあった。だが、その中でただ一人、ピーチはその人物と何か関わりがあるかのようだったが、気のせいだろうか。(ちなみに、青い者はその後すぐに「んじゃ、俺は用事があるから、またな!」と、去って行ってしまったらしい)
そして、上にある足場と同じような足場に、一つのフィギュアが放置されてあった。
「リンク……!!」
ゼルダがいち早くフィギュア化したリンクに駆け寄り、フィギュアプレートに触れて復活させた。
「っ……オレは、何を……」
「良かった……本当に……、貴方が無事で……!」
まだ意識が朦朧としているリンクに、ゼルダは思いっきり抱きついた。
その大胆な行動に、リンクは酷く赤面した。
「ちょ……! ひひひひ姫!? なっ……え!?」
「あらあら、お熱いわねぇ〜」
「ピーチ!! 頼むから誤解されるような言い方しないでくれ!!」
ピーチの茶化しに、リンクはさらに顔を赤らめる。……一言で言ってしまえば、なんだこの空間。
「ねぇ〜? リンク〜? そろそろ、良い加減にしてくれるかなああ?」
そんなたじたじになっている彼に《ハンマー》を発動させ、詰め寄るカービィの笑顔は、まさに悪魔だった。だって、唯一非リアだもの。
(あー……ヤベ、オレこのままだと殺される)
「ほ、ほら、姫! 早く行きましょう! ね?」
焦る(身の危険)リンクの声で我に返ったゼルダは、反射するようにリンクから離れ、「す、すみません……。では……皆さん、参りましょう……!」と、恥じらいを見せない余裕な声を残して、ブロック地帯を下って行った。本当は、自分のした事を心の奥底で叱責していたのだが。
(あ、焦ったー……)
「リンク」
「なんだ……?」
「後で処すよ☆」
人生の中で一番生きた心地がしなかったリンクなのであった。
荒ビィをなんとかなだめすかして、一行は更に下へと進む。(道中、何度かカービィの《ハンマー》に当たりそうになったリンクである)
「ん? あれは、ヨッシー……?」
透明なブロック越しに、見覚えのある緑色の恐竜らしき姿を確認したリンクは、目の前に妨害するように固定されているブロックを剣で砕き、フィギュアに近寄った。間近で見たそのフィギュアは、間違いなく、ここまで自分と行動を共にした恐竜──ヨッシーだった。
「こんな所にいたんだな。……ごめん、待たせて」
その青い瞳に宿っていたのは、本当に仲間を思いやる心だった。リンクはヨッシーのフィギュアプレートに触れて、彼を眠りから覚まさせてやった。
「リンク……。ありがとう、ぼくを見つけてくれて……!」
仲間と再開したヨッシーの目には少しばかり、涙が浮かんでいた。フィギュア化は、仮死状態と同じ。だからその状態だと、ファイター達の意識は真っ暗な空間に閉ざされてしまう。誰もいない、自分ただ一人がそこにいる空間に。そんな所に何時間と放置されたら、どんなに孤独を好む者だろうと、気がおかしくなってしまうだろう。それを一番よく理解していたのは、元の世界でもほとんど孤独と戦っていたリンだけだった。
リンクは固くうなずくと、ヨッシーの肩に手を置き、「さあ、行こうぜ!」と、いつも通りの青年らしい笑顔を見せた。
それに励まされたヨッシーは、光が宿ったかのような笑顔で「うん!」と返答した。
一行は、ブロックを破壊しながら降下して行く。
「ねぇ……あれ、ルカリオじゃない?」
「ん? ああ……確かにそうだな」
そこで、メタナイトとサラの目に飛び込んで来たのは、青い毛並みを持つ二足歩行らしき獣──ルカリオのフィギュアだった。二人は剣撃でブロックをなんとか破壊し、彼に近づく。間違いない。やはり、ルカリオだ。
「遅くなってすまない。ルカリオ殿」
メタナイトがフィギュア化した彼の目を見つめてそう謝る。サラも何か言おうとしたのだが、メタナイトの手前、言えなかった。何となく、恥ずかしさの意味で。メタナイトは一瞬だけサラの目を見て、心の中でそっと彼女に耳打ちした。
「君が言いたい事は分かっているよ」
と、いつも以上に優しい口調で。
メタナイトはサラの代わりにルカリオのフィギュアに近づき、復活させた。
「メタナイト殿……サラ殿……。それに、皆まで……」
「ほら、行くわよ。ここから先、あんたの力が必要なのよ」
サラがルカリオに視線を向けずにそう言う。おそらく彼女の事だ。ルカリオにだけは、面と向かって物を言うのが嫌なのだろう。そんな態度にも慣れたルカリオは、しっかりと彼女を見て、了解の意を示した。
この後の乱戦で、一行はつくづくルカリオと合流できて良かったと安心するような表情を見せた。あのブロック地帯を更に下ると──敵の罠だろうか──亜空軍の敵がわんさかと出てきたのだ。それをルカリオが先に感知してくれた事によって、一行は素早く対応する事ができた。
全員の見事な連携によって、なんとか退き、一行は先へと進んでいく。
「待て!」
と、順調な一行に静止をかけたのは、やはり、ルカリオだった。流星の如き勢いで駆け抜けていたファイター達は、なんだなんだと、急停止する。
「……来る。構えろ」
低く、相手に聞こえないような声ではあったが、辺りが異常なまでに静かであったため、よく通った。
ルカリオの予言通り、ファイター達を取り囲むように亜空軍の刺客が続々と湧き出て来た。
「来た来た、とっとと片付けよう!」
《ファイナルカッター》でプリムを吹き飛ばしたカービィが、全員に呼びかけると、すぐに「おー!」という、元気な賛成の声があがった。
近接戦を得意とするカービィとヨッシーが何も持っていないプリムを中心に倒してゆき、遠距離の攻撃を兼ね備えているリンクがバズーカプリムをひるませてから、剣で切り込む。サラとメタナイトは、持ち前の素早さを活かして一気に何体もの敵を一掃する。ゼルダは《ファントム》を召喚し、盾として前衛に躍り出ると、ピーチがすかさず攻撃を入れた。ルカリオはダメージを食らう度に自身の力が増して行くため、積極的に前衛に出て、力を増幅させつつ相手方を不利にさせる。
彼らの共闘は、相手が小枝のような耐久力の無さのおかげか、あっけなく終わった。
「ふぅ……今回、数が多かったな」
地面に着地したメタナイトは翼をマントに戻した。
「確かに、増えていたわね。さっきよりも。だが、どれだけ数が増そうが減ろうが、あたしらは進むだけだわ」
少し欠けた剣先を見つめてから、サラがメタナイトに視線を移して言う。
ふいに、サラが視線をメタナイトから背景に移すと、“とあるモノ”が目に入った。しかし、自分達を覆う闇がそれを見ることを阻む。
「……?」
地面を蹴り、自慢のジャンプ力を駆使してそれに近づく。
それは、ロボット──エインシャントのフィギュアだった。
サラはフィギュアプレートに触れて、エインシャントの意識を呼び覚ました。
「…………。私は……何を」
「あなた、フィギュア化した事無かったのね」
「フィギュア化? ああ……あのファイターがフィギュアになって、仮死状態になる現象のことか。……だが、機械である私がなぜ……。他の仲間はそうはいかなかったのに……」
言ってはならない事を言ってしまったと、サラはエインシャントから目をそらし、血が出るほどの強さで唇を噛み締めた。エインシャントの目の前で仲間を失ったことの辛さは、誰よりも分かっているはずなのに。
「……ごめんなさい」
「いや……お前のせいではない。私の独り言だ。……それよりも、……感謝する」
エインシャントは半ばそっけなく言い残すと、近くの足場に飛び移り、扉に入ってしまった。
「……ありがとうなんて言ったの、いつ以来だったか……」
エインシャントと合流したファイター達は、扉の奥にある空間に進む。
「これ……普通に進んだら、確実にやられるよな」
今、自分がいる足場の下にいるカブトムシ型の敵──シェリーを睨みながら、リンクが言う。
何か突破口がないかと、辺りを見回すが、それらしきモノが見つからない。
「ねぇ! あれ、使えそうじゃない!?」
カービィがまたも勝手に走り出す。
慌ててメタナイトが追いかけると、止まっていたカービィを発見した。カービィのその目には、床に取り付けられているスライド式の装置だった。ぼく、試しに乗ってみるね〜! と、満面の笑みで乗ってしまったカービィを止められる者は、誰もいない。と、次の瞬間。ガチャッと、少々重苦しいスライド音と共に、装置は勢いよく動き、安全ベルトなんて全くないその機械の上に乗っていたカービィは、急停止した装置から投げ出されてしまった。
「わああああっ!!」
悲鳴をあげながらもなんとか体制を立て直し、着地したカービィは、ある事に気がついた。
そう、この装置は下にはびこるシェリーの群れを避けて一気に進むためのものだということを。
「カービィー! 大丈夫かー!」
背後からメタナイトが声を張り上げる。
カービィは振り向いて、大丈夫とメタナイトに負けないぐらいの元気な声を聞かせてやった。
「カービィ! 上!」
今度はピーチが声をあげる。
「上?」と首を傾げたカービィだが、すぐに、彼女が言っている事に気がついた。
さっき通り過ぎたブロック地帯のブロックに似たブロックが、何かを囲っている。そして、ブロックの近くには、赤く丸い物が。これは、ブロックを壊せということなのだろうか。
「カービィ! そのバンパーをなんでも良いから勢いがつくように攻撃しろ! そうすれば、ブロックは壊れるはずだ!」
赤く丸い物──バンパーの存在を知っていたリンクは、カービィにそう伝えた。やはり、これは壊す物らしい。
カービィは言われた通りに、スマッシュ攻撃でバンパーを攻撃した。すると、バンパーは弾かれたおはじきのようにブロックへと向かい、次々に砕いていったのだ。
バンパーの勢いが無くなると同時に、あるフィギュアが落ちてきた。ファーがついた防寒着を着た二人組──アイスクライマーのフィギュアだ。
カービィはフィギュアプレートに触れて、二人を復活させた。
「カービィ……! 良かった、無事だったんだ!」
「ありがとう! カービィ!」
二人はいつも通りの笑顔で、カービィに礼を言う。その直後、地面をスライディングするような音が聞こえたので、音がしたほうを見ると、続々と他の仲間たちが装置を使ってこちら側に来ていた。
「じゃあ……行こっか! みんな!」
カービィの元気な声は、この闇を照らす光のようだった。
その後、少し進むんだところに、同じようなブロックとバンパーがあったのだが、サラはそのブロックに囲まれているフィギュアを見て、表情を引きつらせた。その顔はまるで、親と買い物しているところを見られた小学生のようだった。
「げ……スネークじゃないのよ」
正直、スネークが苦手な彼女である。
メタナイトはルカリオと共にバンパーを攻撃してブロックを砕き、スネークを救出した。落ちてきたフィギュアのプレートに素早く触れて、復活も成し遂げたのだ。
「……すまんな」
「何を。我々は仲間だろう?」
彼らしくないスネークと、彼を励ますように問いかけるルカリオ。
「スネークさん♪ 先程はどうも♪」
励ましに来たのか、ピーチが彼の肩に手を置くと、スネークは先程の哀愁漂う表情とは打って変わって、とても頼りがいのあるようなキリッとした表情になった。
「いえ、お嬢さんのほうこそ、ご無事でさたか」
ひざまずき、彼女の手を取る姿を見つめていたサラは「やっぱり、いつも通りじゃない」と、ふんと鼻を鳴らした。
どう見ても、このサラは彼と打ち解けてくれそうにない。
その後、先に進んだ一行は、タブーに破れた場所に無事、たどり着いた。
「ああああああああっ!!」
突然、絶叫が響いたと思うと、カービィになぜか後ろから勢いよく押される感覚が襲った。
「良かった、良かったぜぇ! カービィ!」
「だっ……大王!? なんでいるの!?」
カービィに後ろから抱きついたのは、彼の
なぜいるのか、というカービィの質問に、デデデは簡潔に事情を説明した。
「そうだったんだ……。ぼくらが知らない場所で、そんな事してたんだね」
「おうよ。……ごめんな、黙ってお前の仲間をさらおうとして──」
「カービィ! 無事だったんだな!」
「グフォア!?」
シリアスな雰囲気をぶち壊す勢いでデデデを押しのけたのは、マリオとピットだった。そこに、リンクとヨッシーも合流し、スマブラ五戦士は再集結を果たした。
「マリオ! ピット! きみらも無事だったんだ!」
「ああ! デデデが助けてくれたんだ!」
その後も、つかの間の団らんは続いたのであった。
「マルス! アイク!」
「二人とも! 無事か!」
一方、マルスとアイクに声をかけた小柄の剣士二人組を見て、二人は心の奥底から暖かくなるような感覚があった。
「サラ! メタナイト!」
マルスはサラに駆け寄り、彼女を抱き上げるとくるんと一回点した。
アイクはメタナイトを抱えて、彼らを見守っていた。
「心配したんだよ……君たちがどうなっているのか……全然分からなかったから……」
「それはあたしらも一緒よ。だけど、こうやって再会できたんだから、良いじゃない。ね?」
「うむ。……二人とも、本当に無事でなによりだ」
「あんたらもな」
四剣士の表情が、今日はいつも以上に、輝いていたようにも見えた。
「ぐううぅ……」
和やかな雰囲気に似合わない、苦しげなうめき声が聞こえたので、ファイター達は一度は構えたものの、すぐに声の主に気がつき、武器をしまった。
「マ、マスター!」
声の主は、今まで気を失っていたマスターハンドだった。マルスとリンクが彼に駆け寄ろうと、一歩踏み出したその時、マスターの体を柔らかな白い光が包んだ。氷が溶けるように光が消えると、そこには、一人の男性の姿があった。
白いロングヘアに白いタキシード、右手に白手袋をはめた美しい男性。
初めてこの姿を見たメンバーは、首をかしげていたが、両方から支えていたマルスとリンクが説明すると、「ええっ!?」 と、拍子抜けしたような声をあげた。
「かっ……彼が、マスター!?」
「全然違うわね!?」
そう。この男性は、マスターハンドの普段の姿である。親しみやすいようにというマスターの配慮らしい。
「大丈夫か? マスター」
「あまり、無理はしないでください。傷が思ったよりも深いので……」
「くっ……すまない……。私が不甲斐ないばかりに……」
「……回復させるわ」
マスターハンドの前に立ったサラは、剣の鞘とは逆につけている鞘に収めてある〈流星の笛〉を取り出し、吹き口を唇にあてて息を吹き込み、奏でた。冬の夜空のような透き通った音色は、闇を切り裂き、亜空間のどこかへと消えていった。
その後、どこからか聞こえてくるメロディに合わせてサラは、命の力が宿った歌を謳う。
謳い終わると、マスターハンドの体にあった痛々しい傷は、全て癒えていた。
「すごい……君の能力かい?」
サラの能力に驚いたマスターハンド。
「ええ。でも、あまり無理はしないで。傷口が開いてしまうかもしれないから」
笛を鞘に収めながら、そう言った。その時のサラの表情に、どことなく悔しさが混じっているように見えたのは気のせいだろうか。
「ファイターたちよ。君たちに伝えなくてはいけない事がある」
そう言った直後に、マスターハンドは自分を支えている二人に仲間のもとに戻るよう促し、二人は素直に従った。
二人が戻るのを確認すると、マスターハンドは深く息を吸い、話を続けた。
「皆、あそこに〈この世界〉が集まって、球体になっているのが分かるだろう? あれは、タブーによって作られた〈大迷宮〉だ。そして、タブーはあの中の中心部にいる。……要するに、私が言いたい事は、君たちで手分けしてあれを捜索してほしいということだ」
一同がどよめく。
「マスター。あの大迷宮の規模って……」
ピットが挙手をして質問する。
「……おそらく、東西南北に分かれて探索しなければならないほどの広さだろう」
今度は、全員に沈黙が流れ込んだ。
だが、すぐに彼らのリーダーはすぐに決断を下す。
「……よし。チーム決めるか!」
マリオのその決断に、一度は顔を見合わせたファイター達だったが、すぐに頷き、「おお!」と賛同のために拳を突き上げた。
これから大変な場所に行くチームを決めるというのに、一同は和気あいあいと話し合っていた。
だが、決して彼らが油断しているわけではない。大変な場所に行くからこそ、今、この場では自分の不安や恐怖を和らげるために、このような雰囲気を作っているのだ。
「じゃあ、これで決まりだな! マスター! チーム分けできたぞ!」
「よし、なら、気をつけて行ってくるんだ。私は〈この世界〉に戻って、少し用を済ませて来るよ」
マスターハンドが両手を祈るように握りしめると、どこからともなく純白の布が現れ、彼を包み込んだ。布は彼を人から創造神としての姿──右手袋の姿へと変えたのだ。
「……君たちの検討を祈る」
マスターハンドは、そう言い残し、〈この世界〉へと駆け戻った。
マスターハンドがいなくなるのを確認すると、ファイター達は一斉に大迷宮の階段を我先にと駆け上がる。
階段を登る靴音は、雨音のように辺りに響き渡り、消えていく。
「……さーて。俺も行こうかな」
そんなファイター達を見送っていたのは、青い“アイツ”だった。