ステージ32「追憶の大迷宮 NorthSide」
マリオ達『スマブラ五戦士』とサラ達『四剣士』は、なんとも幻想的な空間にいた。
「大迷宮に突入したら、“とある場所”に転送する」
そうマスターハンドに聞かされたのだが、それがここなのだろうか。
仮にもここが、マスターハンドが言った“とある場所”ならば、彼から通信が入るはずだ。
そんな事を皆に話そうとしたマリオだが、彼らの前に霧が晴れるように現れたホログラムのスマッシュブラザーズマークがそれを遮った。
『……ファイター達よ、聞こえるか。私だ、マスターハンドだ』
そこから、マスターハンドの声が流れ出た瞬間、九人はなんともいえない安心感に包まれた。同時に、マリオはさっきまで自身を覆っていた心配を振り払うように、〈この世界〉の創造神に声を送った。
「大丈夫、聞こえるよ。マスター」
『そうか……なら、良い。
さて、早速だが、君たちにこの大迷宮の攻略を頼んでしまったわけだが……この場所は今まで君たちが辿って来た旅路を完全に再現している。……が、少し特殊なのだよ」
「特殊? 何か、大きな違いでもあるのかしら?」
『うむ。先程、述べた通り、ここは君たちの旅路を再現した場所だ。ということは、君たちが戦って来た敵とも戦わなくてはならないという事になる』
敵。というのは、亜空軍の差金や自分達を妨害して来た存在達のことを指しているのだろう。
『さらに、君たちのコピー──シャドーファイターと呼ばれる存在も確認済みだ』
プレッシャーにやられそうになっている九人──いや、他のファイターもだろう──に追い打ちをかけるようにマスターハンドは告げた。しかあし! と、マスターハンドが急に大事を張り上げた瞬間、一同はびくりと飛び上がった。
「急に何だよ!?」
『そんな事は、私には想定内。そのために、今、君たちがいるであろう空間〈休憩所〉を設けたのだ! ……こんな事で、埋め合わせになるとは思っていないが……。せめて、何か役に立ちたくてな……』
顔は見えないが、〈この世界〉にいるであろう創造神の切なそうな横顔が目に浮かぶ。何せ責任感が誰よりも強い彼だ。きっと、タブーによって操られた自分がしたことを許せないのだろう。
『すまん、少し話が脱線してしまったな。話を戻そう。この〈休憩所〉では、スマッシュブラザーズの紋章……スマッシュブラザーズマーク──』
「言い直す必要あるのそれ」
『──に触れる事によって、蓄積ダメージと自分達の居場所を確認することができる。
これは各地に設置してあるので、安心したまえ、ファイター達よ』
一通り説明し終えたマスターハンドは、ファイター達が質問を持っているかを確認したところ、特に無かったのでマスターハンドは一度咳払いをした。
『無いようなのであれば問題は無い。……君たちの健闘を祈っているよ』
そう激励の言葉を告げたのを堺に、マスターハンドの音声は聞こえなくなった。この休憩所に残されたのは、静寂と妙な緊張感、そして、これから死地に向かうファイターだけだった。
「……で、ここから出るには、あの扉を利用するってことだよな?」
リンクは、自身のちょうど背後に佇む扉をにらみつける。一見は普通の扉に見えるが、扉の隙間から漏れ出る黒い禍々しいオーラは隠しきれない。
「それしか無いな。……だが、嫌な予感しかしないな……」
「ああ……でも、ここを攻略しないと、タブーの陰謀は防げない……。行くしかないよ」
アイクとマルスは決意を示すようにそれぞれの神剣を鞘から抜き、扉を見据えた。その瞳にはどんな悪意でも切り裂き、戦いを制する光が宿っていた。そんな二人の決意を読み取ったのか、サラとメタナイトも愛剣を手に取った。そんな剣士達の戦意は戦士達にも十分に伝わったようで、五人はそれぞれの顔を見合い、固く、しっかりと頷いた。
「よ〜っし! 絶対に攻略しよう! 北エリアは、ぼくらのだからね!」
「おおぉー!」
五人は拳を天高く突き上げて、戦意を示す。剣士四人も、それぞれの
「行きましょう。あたし達の勝利を掴むために!」
北エリアのファイター達の絆は、他のエリアを征くファイター達の絆よりも強い。それは、誰にも断つことができないものであった。
扉から出た瞬間、見たことのある光景と逃げ惑う人々、そして悲鳴が全員を包み込んだ。
「なっ……なんだ!? それにここは……」
マリオが辺りを見渡し、目を見開いた。
忘れもしない。ここは、ファイター達と奴らとの戦いの火蓋が切られた場所だ。
「空中スタジアム!?」
カービィがマリオの代わりに大声をあげてしまった。彼もマリオと同じ感情を抱いているのかもしれない。それと同時に、嫌な記憶が徐々に浮き上がって来た。
(確か、マスターはぼくらが経験した戦いも再現されるって言ってたっけ……空中スタジアムがあるってことは……!)
次の瞬間、耳を塞ぎたくなるような雄叫びが、彼らの耳に飛び込んだ。嫌な予感がして、カービィは大きく息を吸い込み吐き出す。そして、腹を決めたようにすばやくグルッと振り向いた。そこにいたのは──
「……みんな、戦う準備を!!」
カービィが叫ぶと同時に、何かが振り下ろされた。一同は瞬時に飛び退くと、一斉に戦闘態勢に入った。リンクが振り下ろされた物に視線を移すと、それは、囚われた者がいない鳥籠のような檻だった。
「ボスパックン!! なんでコイツが!?」
少なからずボスパックンの存在を知っていたヨッシーが目を丸くして叫ぶ。その叫びに反応するかのように、ボスパックンは檻を振り下ろし、一行を薙ぎ払おうと檻を横に引きずる。一行はニ段ジャンプでそれを避けた。
「はああっ!」
「とりゃあッ!」
一行はボスパックンに空中での攻撃を試みるが、ボスパックンには全く効果が見られない。まともに攻撃しても意味がないと判断したサラは生物の全ての核があるであろう体の部位に連続斬りの技《スターライトスラッシュ》を当てる。しかし、ボスパックンは痛みでひるむどころか、更に攻撃を激しくしてしまう。さすがに焦りを覚え始めた。
「なっ……全く攻撃が通らないぞ……!?」
「それに弱点も見当たらない……一体どうやって……!」
《ドリルスラッシュ》で攻撃を躱したメタナイトが驚きの色を見せ、マルスは額から流れる汗を拭い、ボスパックンを睨みつけた。
マズイ、このままじゃやられる……! そう察したカービィは必死に、あの時の戦いの記憶を辿る。
『要するに、この籠自体がこの魔物なのです! 花のようなこれはただの偶像です!』
「……! みんな! 籠! どっちでも良いから籠を集中攻撃して! そこが、こいつの本体だから!」
ようやく思い出すことができたのは、最初の戦いが繰り広げられた場所、空中スタジアムでの出来事の一部だった。ゼルダが解析してくれたおかけで、なんとかボスパックンを倒すことに成功したのだ。
──だから……今回はぼくがみんなを助ける番だ!
心の中で一つの決意を灯し、カービィはボスパックンに《ファイナルカッター》をお見舞いするのであった。
エリア2 コピー
ぐがああぁぁぁ…………
あの日と同じように嫌な意味で耳に残る断末魔をあげながら、ボスパックンは力尽きた。
なんとか危機を乗り越えた九人は、疲れ切ったと言わんばかりの勢いで座り込んでしまった。
「つ……疲れた……。体力が落ちたかなあ……」
「弱点が見つからなかっただけで……ここまで疲れるとは思ってなかったしなあ……仕方ねぇよ……」
帽子を脱いで汗を拭いながらそう独り言をこぼすマリオに、リンクは息を整えながら反応する。
「こ、こんなのが……あと何回か続くんでしょ? これ……一回休憩しましょうよ〜……」
珍しく弱音を吐くサラ。
「サラの回復妖術ってやつでなんとかならないのか?」
「妖力大量消費するから、お断りさせていただくわ」
『サラ、良い判断だな』
「わあ!? びっくりした……」
アイクとサラがやり取りしている中、全員の頭の中に、聞き覚えのある声が流れ、サラとアイク以外は一瞬だが、目を丸くして飛び上がった。
「お願いですから、急に通信を開かないでくれません!? マスター!」
『そこに丸い装飾がある扉があるだろう?』
「もしもーし!! 僕の声聞こえてますかあ!?」
「マスター……マルスの話聞いてやってくれよ……オレ達のメンタルっていうか、ドッキリの耐性にも──」
『ちょっと入って休憩したほうが良いぞ。そこは、休憩所だ』
「オイコラ、右手袋テメェ、人の話聞けや」
マルスとリンクのツッコミを完全無視したマスターハンド。しかながない。これが、いつもの彼なのである。
なんとかリンクをなだめすかして、一同は扉の中へと入る。そこには、この迷宮に入った瞬間、飛ばされた空間と同じ空間があった。
「確かマスターは、あれに触れば蓄積ダメージを回復できるって言ってたよね?」
ヨッシーが見上げてホログラムのスマッシュブラザーズマークを指差す。
「うん。じゃあ、早く回復して、次行こうよ!」
カービィがいち早くスマッシュブラザーズマークに向かって走り出す。それに押されたのか、ピットもずるいぞ! と言わんばかりの勢いでカービィを追った。あとに残ったメンバー達も遅れをとりながらも、マークへと向かった。
先に到着していたカービィとピットは、もう回復し終えたようで、ここに入った時よりもスッキリとした表情になっている気がする。
「ちょっと触れただけで、全回復! すごいよ、マスター!」
カービィはマスターハンドに対して称賛の言葉を送る。返事はこないが、きっと、〈この世界〉で受け止めてくれているだろう。
これから先、先程のボスパックンのような強敵が出てきて、戦闘になる。そして、まだ出会っていないが、シャドーファイターと呼ばれる自分のコピーとも戦うことになる。そうなると、ここを見つけたらすぐに回復して次に臨む必要がありそうだ。
できれば、ここを活用せずにスパスパと攻略したいところだが、敵は以前戦った時の何倍も強くなっている。やはり、マスターハンドはそれを想定して、各地にこのような場所を提供してくれた。そう思うと、あの創造神はどれほど自分達に期待し、どれほど自分達を心配してくれているのだろうかが手に取るように分かる。
「おーい、マリオ! そろそろ行くよー!」
なんて事を考えているうちに、他のメンバーは回復を終えて、ここを離れる準備をしていたようだ。
ヨッシーの呼びかけにマリオはすぐ行くと返事し、マークに触れた。
ホログラムであるはずなのに、固いプラスチックのボードに触れているような感触と、すっと、肩に乗っかっていた重荷が取れる感覚に感嘆の声をあげていると、再び呼びかけられる。
「早く早く! 置いてっちゃうよ!」
「ああ、ごめん! すぐ行くよ!」
マリオは足場から降りて、仲間達と合流し、足早にこの場をあとにした。