「へっくし!」
突然ファルコが大胆なくしゃみをかました。静かに進んでいた一同は──と言ってもスネークだけだが──半ばにらみつける形でファルコを見た。
「大丈夫か? ファルコ」
「ああ。……ったく、風邪でもひいちまったかねェ」
「ゲムヲ、ワカル、ゲムヲ、ファルコ、ウワサ、シテル、ダレカ、ウワサ、シテル」
「ンなわけあるか。噂話されてくしゃみが出るってのはなァ、それこそ単なる噂だろうが──へっくしっ!!」
フォックスに心配され、Mr.ゲーム&ウォッチに指摘されるファルコ。……まあ、これには裏があったのだが。
南エリアを攻略するメンバー達が、こんな話をしていた時だった。
「……以前私がお前たちの情報を収集している際に拾った情報なのだが。ファルコという奴は、“そう麺”という食べ物が好きなのか?」
と、エインシャントが話を持ち出したのが原因で、このプチ騒動の悪夢が始まったのである。
唐突な仲間関連の質問に、ディディー以外思わず「え?」と逆に聞き返してしまう。
「な、なんで急に?」
「いや。ただ気になっただけだ。他に何か理由があるとでも?」
「……特にありません」
逆に質問したピカチュウは、これ以上口を挟むことはなかった。そして、この件はタブーを倒してから直接本人に聞こうということで、保留となった。
と、いう経緯があちら側にあったため、こちら側に多大なる影響(笑)が出ているのである。ファルコは一度鼻をすすってから、いつもの獲物を狩り取る猛禽類のような目に戻り、いつ現れるか分からない敵に警戒心を張り巡らせる。ファルコが元に戻る様子を見て、穏やかに見守っていた美しさと威厳を兼ね備えた姫様二人も真剣な顔つきになり、苦笑いしていたフォックス、呆れて聞いていたスネーク、話を聞いていたのかさえ怪しいMr.ゲーム&ウォッチ、黙って皆の後衛に立っていたルカリオにもスイッチが入り、一行は東エリアの奥へと進んでいく。
とある扉をくぐり抜けると、先程までジャングルとなっていた空間から違う空間にたどり着いたようだ。その証拠に、辺りには錆びついた鉄格子が至るところに放置してある。
「なんだか、哀しい感じがするわね。ここ」
「ええ……。かつてはどれほどの人々がここを訪れたのでしょうか……」
姫様二人の会話に今ひとつついて行けないスネーク。“世界観的”に、ここは“最初から”潰れている動物園だということを事前に大佐から聞かされていた彼にとっては、この場所はあの
「スネーク殿。彼女らもそれは理解していると思うぞ」
と、ルカリオが心を読んだようにスネークに話しかけた。
「……と、言うと?」
「彼女らは、少なくとも我々よりも長くこの世界にいる。〈この世界〉がどのような世界なのか、誰が、なんのために作られたのかなど──少なくとも我々よりかは──理解しているはずだ」
ルカリオの話に「分かっているさ」と反論せずに返した。──やはり、自分が少し変わっているのだろうか? そう思い、ルカリオの目を見てみると、彼と視線が合った。その目には、貴方だけではない、そう伝えたいような光を宿していた。
その後も、彼らは休憩を除いて、立ち止まる事なく荒廃した動物園を進んで行った。大型の動物が居眠りをしていたであろう大きな檻の側を通り、よちよちと歩くペンギンが住んでいたであろう水槽のある部屋をくぐり抜け、色とりどりの鳥類が止まり木に止まってさえずりを奏でていたであろう巨大な鳥かご系のおりを横目に──どことなく懐かしくも切ない雰囲気を醸し出す廃れた楽園の最奥部へと。
大広場のような開けた場所に出た一同は直ぐに、この場所の違和感に気がつく事ができた。他の場所には全く感じられなかった、ねっとりとした重い空気は、沼水の中にいるように気持ちの悪いものである。
「……いるな」
何らかの波動を感じ取ったらしいルカリオがボソリとつぶやいた。
「この空気から悪しき者の波動を感じる。少し程度ではない、かなりの量がどこからか漏れ出ているようだ」
「それって……あっ。あれの事ではないでしょうか?」
ルカリオと同じように魔力を感じ取る事のできるゼルダがとある方向を指さした。その方向を見てみると、そこには黒く禍々しいオーラを放つ赤い扉がポツリと。
何かいる。前回戦ったデュオンと同じパターンだ。この先に、デュオンのような巨大な敵が待ち構えている。そう思えた。
「皆、ここから先は戦闘になるはずだ! ……準備はできているか?」
フォックスがレーザーガンを片手にメンバーに確認をする。もちろん、返ってきたのは完全なる準備万端の返事。
「じゃあ、開けるぞ」
扉に手をかけるフォックス。
その先に待つのは。
──……へっ。
かつて、とあるPSI使いの少年を心の奥底では“本当の親友”であると思っていた少年──の、変わり果てた姿が待ち構えていた。