グオオオオオオオッ、という地響きがするほどの声を残して、緑色の東洋龍──もといレックウザ──は湖の底へと沈んで行った。そんなレックウザに見下すような視線を向けている三人の者は突如出現した扉を開けて、“
戻ってきた空間には、相変わらず厳しい表情をしたヤツが二人と、心配そうな情けない表情をした髭が一人、自分達の帰りを見張っていた。そんな顔せんでももう裏切るつもりはないと言うのに。
「ずいぶんと早かったじゃあねぇか。褒めてつかわすぜ」
水色のペンギン──デデデ大王は厳しい表情を和らげることなく言った。舐めやがってと言うようにデデデを睨みつけているガノンドロフとクッパをよそに、ワリオはふんと自慢げに鼻を鳴らした。
「あたりめぇだろうがよ! このワリオ様にできねぇこったぁねぇんだ! ワッハッハッハッハッ!!」
「相も変わらずだね……ワリオ」
「なんか言ったかぁ? 永遠の二番手」
「ねぇヒドくない!? 何永遠の二番手って!? せめて緑の人気者でしょ!?」
なぜか始まったワリオとルイージの漫才のような会話にデデデとネスは苦笑いを浮かべていた。だが、この和やか(?)な空間でさえも、残る二人の殺伐としたオーラを緩和することはできないようだ。というか、さっきよりも空気が重くなったような気がするのは気のせいだろう。
二人がこんなに不機嫌なのにはれっきとした理由がある。クッパはガノンドロフに向けて、ガノンドロフはタブーに向けた恨みがそれぞれあるからである。そもそも、こんなふうにチームに分けなくとも、自分らの実力でなんとか乗り切れる。大した実力のないワリオや──先程の戦いでもほとんど加担していなかった──他のファイターなど、邪魔でしかない。ましてや、こんな呉越同舟な状況など、本人らは御免こうむる。
「ねぇ、二人は『この世界』に来るの初めてでしょ?」と、険悪なオーラをものともせずに、ネスが問いかける。しかし、返ってくるのは無視だけだ。それでもネスはめげずに話しかけた。
「二人がボクらや他のファイターにどんなイメージを持っているかは分からないけどさ、ここは……
「フン。誰が好き好んであの配管工なんかと協力するか。それに、キサマらと協力する気も一切無いんだぞ」
「同意見だ。あの小僧やこのウスノロガメと共闘するなどと、吐き気がするわ」
「……もういちど言ってみろ、ブタ」
これが二人にとってのいつもどおりな会話なんだなとそう、ネスは感じた。なんでかって? さあ。それは読者の皆様にお任せしよう。
さて、話のテーマをこの三人のに移動させよう。
時間は亜空間のあの広場でファイター達が全員集合できたあの時に戻る。
マスターから大迷宮攻略にあたって注意すべきことを教えてくれたそのあとから、マリオを筆頭に東西南北それぞれの方角を探索するメンバーを決めていた時のことだった。
「……ここまでは良いけど、西エリアのメンバーがやっぱりたりないと思うんだが」と、マリオが腕を組む。
「うーん……デデデ大王がかなり強いし、僕ら三人だけでも行けるんじゃない? 兄さん」
「……お前らの実力を信用しないわけじゃないけど、手強い奴らが揃っているからなるべく大勢で行ったほうが、メンバーのほとんどがフィギュア化した時に対応しやすいかと思ったんだ」
そう言って、マリオは睨む形でクッパを見た。逆に視線を受け取ったクッパも、マリオを睨み返す。
「……お前に頼んでも良いか? クッパ」
「……フン、生意気なことを言うわい。なぜワガハイがキサマに頼まれなければならんのだ……大体、ワガハイは単独でも──」
「んじゃあよ、オレ様が着いて行ってやろうじゃねぇかよ!」
クッパがブツブツ文句を言い出し始めたのとほぼ同時に、ワリオが二人の間に割って入った。しかも頼んでもいないのに、自分から西エリアを担当すると啖呵を切っている。
「ワ、ワリオ。お前も行ってくれるのか?」
「だから、そう言ってんじゃねぇか! このワリオ様がいりゃあ、亜空軍なんて一握りよ!」
……元々、お前も亜空軍だっただろうが。そうツッコミたいナレーターの気も知られることなく、話し合いは順調に進んで行った。
実は、まだマリオは悩んでいた。
それは、ガノンドロフのフィギュアである。
(……コイツ、どうしようかなぁ……。)
彼のことは〈DX期間〉から知っているが、リンクとの因縁を聞いて、あまりよろしい印象は無かった。今回も、彼は亜空軍側として〈この世界〉に宣戦布告していたのだから、復活させたところでロクな事が無いだろうな、と、一人で考えながら見つめていた──のだが。
「ガノンドロフウウウ!!」
そのガノンドロフのフィギュアを思いっきり蹴飛ばした人物──クッパのおかげで我に帰ることができた。
クッパはガノンドロフのフィギュアを睨みつけると、噛み付いたり踏みつけたり、投げ飛ばして日頃の恨みをぶつけていた。
「ガーハッハッハッハ!! ワガハイの力を思い知ったか!」
恨みを晴らせきれた訳ではないが、スッキリしたクッパは、その場から離れて行った。
「な……何やってたんだ……。クッパは」
クッパの行動を離れた場所から見ていたリンクは、苦笑いのような、引きつったような表情になっていた。
「さ、さあ……? それよりも、リンク。マリオさんに話すことがあったのではないのですか?」
「あ……あぁ、そうでした」
リンクは腕を組んでいるマリオの肩をぽんと叩き、オレに任せろという視線を送った。彼の行動がよく分からなかったマリオだが、彼がガノンドロフのフィギュアに近づいたのを見て、理解することができた。止めようと一歩踏み出したが、リンクを信じて、その一歩で踏みとどまった。
リンクは軽く深呼吸をして、ガノンドロフのフィギュアに触れた。まばゆい復活の光がガノンドロフを包み込み──そして、
「……ぐっ。我は一体何を……」
頭を抑えながら、ガノンドロフが起き上がった。彼は自分に視線を向けるファイター達を一人ひとり睨み、マスターハンドに視線を移した。
「マスターハンド。貴様、最初からあの者に操られていたと言うのか」
「そのようだな、私もあまり覚えていないが」
「ふん。創造神がそのような体たらくとは、〈この世界〉も落ちぶれたものよ」
「いい加減にしろ」ドンキーがガノンドロフに殴りかかろうとするのを、リンクが片手で静した。何か、ガノンドロフを説得する術があるのだろうか?
「……ガノンドロフ。お前がオレらの行動を邪魔し、密かに〈この世界〉を狙っていたのは、また別の案件として片付けようぜ。今は、お前も恨んでいるであろう亜空軍の頭首・タブーを倒すことに集中しよう」
「なんだと。我の力を貴様らに貸せと言うのか」
「そんなこと、一言も言うつもりはねぇよ。でも、このまま〈この世界〉が亜空軍に引きずり込まれるのを黙って見過ごす訳にはいかねぇだろ。……まさか元々の作戦もアイツのせいでチャラになったが、そんなに恨んでませんよー、なんてことは無いだろうな?」
皮肉を込めつつ一通り説得すると、リンクはマリオ達の元に帰った。辺りは静まり返っており、聞こえたのはリンクが戻る靴音と、ガノンドロフの低い唸り声だけだった。
エリア2 最終決戦への第一歩
どうして目の前に移る空間はこんなにも色鮮やかで、美しいのだろう。どうしてこの空間はこんなにも暗くて寂しいのだろう。どうして自分はこの空間を治め、世界の禁忌を司る神として生まれたのだろう。どうして、どうして、どうして。
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして!!
どうして〈この世界〉を──いや、この時空を作り出した者は、こんなにも意地悪なのだろう。
そんなことを青年は考えていた。ミルキーブルーのショートヘアに白いワイシャツ、黒いズボンを履いた整った顔立ちの青年はぼんやりと〈この世界〉から奪った空間を見つめ、ただ、美しさに見惚れていた。
──嗚呼、素晴らしい。やはり、〈この世界〉は……どの世界よりも美しい! こんなにも美しい世界は見たことがない! もっと……もっとだ……!
青年はふわりと宙に浮くと、モザイクのようなクリアブルーの光に包まれ──
「もっと……我を満たす〈この世界〉の風景を、寄こせ、マスターハンド! クレイジーハンド!!」
半透明の男の姿──ファイター達が見た、タブーの姿へと変化した。それと同時に、ずぅんと地面が唸る。とうとう、ここまでやって来てしまったか。
──……愚かなるファイターどもよ、かかって来るがいい。
〈この世界〉を破壊し、我が物としようとする者。
〈この世界〉を再生させ、元の姿に返そうとする者達。
長い戦いが、いよいよ終わる。
そして、彼らは進む。
最後の──ステージへ。
どうも皆さん、今日という日をイカがお過ごしでしょう?うp主のふゆめです。
次回はいよいよ最終回となります。グダグダ更新でしたが、読んで下さり、ありがとうございました!