うっそうとした木々をかき分けて、ディディーは進んでいた。
広いジャングルの中、不安と焦りの感情を抱えながら…。
しばらく進むと、開けた所に出た。
「あれ? ここは?」
前を見る限り湖のようだ。
さらによく周りを見渡すと、白い物体が地面に墜落した跡があった。
「誰かいるのかなあ?」
半分好奇心でその白い物体に近づいた。
まさか、自ら恐ろしい目に遭うとは知らずに。
ふと、湖を見ると不思議に思うことが起きいた。
風も何もないのに、水面が揺れている。その不思議な現象に足を止めたディディー。だんだんと揺れが激しくなる。
そして、湖の主が姿を見せた。
バッシャン!
水飛沫を舞い上げ現れたソイツは、東洋龍のような緑の細長くしなやかな体に、見る者を射るような瞳。天空の超古代ポケモン、レックウザだ。
「うわああああ!? な、なんだあああ!?」
思わず大声を上げるディディー。
レックウザはそれ以上の音量で威嚇の咆哮を上げた。口を開けて、墜落したであろう白い物体に向かって何かを吐き出す。それは白に近い水色に光るエネルギー弾だった。
ドガン!!
爆発音がしたかと思うと、今度はメラメラと炎上する音。白い物体にエネルギー弾が命中したのだ。その光景はディディーを恐怖に縛りあげるには十分すぎるぐらいだった。
「あ…………ああ…………」
あえぐように小さい声を漏らす。その声はやはり、恐怖でいっぱいに染まっていた。するとレックウザがいきなりこちらへ突進してきたではないか!
「………!!」
目にも止まらぬ素早い動きでディディーは呆気なく捕まってしまった。
ウウウウ………と低く唸る声は確かに怒りに染まっている。間違いない。
このまま、捕食される。
考えたくなくても無理矢理分からせられる。恐怖と絶望を通り越して生きた心地がしないディディーは目をギュッとつむった。
「(ごめんね…ドンキー。オイラ、ここで死んじゃうや…)」
そして心から[[rb:ドンキー> 相棒]]に謝った。助けられたのに、自分からは助けることすらできないなんて、そんなひどい事はない。
ディディーは黙って自分の死を覚悟した。
まさか、自分が生きてるなんて、思いもしなかった。
あの白い物体から飛び出し、物凄い素早さで自分を救出した人物がいたのだ。
なんとか岸辺に着地しその人物を見た。狐だ。ふわふわとした尻尾を持つ(顔は犬にも見えるが)ファイターだろう。
「大丈夫か?」
狐のファイターはディディーに問いかけた。「う、うん! 大丈夫だよ!」と答えるしかないディディー。
今、大丈夫とは縁遠い状況に立たされているというのに、何言ってんだこの狐!
と内心では思っているのだが、助けて貰ったのだから口にはできない。それ以前に、解決しなければならないのは───
───目の前で未だに怒り狂っているレックウザだ。
レックウザはまた口を開け、先程の白い物体に放ったエネルギー弾を放とうと構えた。
「ま、また来る…!」
またもや恐怖に囚われたディディーは狐のファイターに向かって訴えた。
「ねえ! 危ないよ、コレは! アンタだって体験したんだろ!?」
「ああ。この世界に“死”が無いことがわかっても、一瞬死んだかと思ったよ」
だが、目の前の狐は冷静だ。ディディーは焦りを感じ、さらに声を張り上げる。
「じゃあ、なんで逃げないんだよ!?」
狐はディディーを片手で制し「まあ、見てろって」と合図した。
再び、レックウザからエネルギー弾が放たれる。
狐は素早く腰の装置に触れた。すると、彼の前に薄い水色の六角形が現れた。
こんなので、どうやってエネルギー弾を防げるのだろうか…?
そんなディディーの疑問も、次の瞬間吹き飛んだ。
なんと、六角形にエネルギー弾がぶつかると、エネルギー弾は跳ね返り、レックウザに激突した。
グアアアアッ!!
たったそれだけの攻撃でレックウザは倒れ、水底に沈んで行った。
「え……? えええ?」
あっけらかんと目を丸くするディディー。狐は「な? 大丈夫だったろ?」と微笑みかけた。
「どうして? なんで? え、でも……」
「今のは【リフレクター】。ヤツの攻撃も反射できる装置さ。アイツは、威力が高い自分の攻撃を反射で食らって倒れたんだと思う」
戸惑うディディーに、狐はわかりやすく説明し、自分の仮設を立てた。この狐、ただ者ではない。なら───
「じゃあ、俺はこれで……」
「待ってよ!!」
「ぐっ!?」
立ち去ろうとする目の前の狐の服の襟首をサッと掴んで動きを止め、ディディーは事情を説明した。
「なあ! アンタに頼みたいことがあるんだ! アンタ、結構強いよな!? そうだよな!? なら、ちょっとオイラの話を聞いてくれよ!」
「…………」
助けたいのは山々だが、こちらにもこちらの事情がある。この猿には悪いが、他を当たって貰おう。
「悪い……俺にも事情が……」
「オイラの相棒を助けてくれよ! 相棒わ連れ去った奴はオイラじゃ相手にならないくらい強いんだ! だから、アンタに助けて貰いたいんだ!」
狐の言葉を皆まで言わせずにディディーは続ける。仕方ない。何も言わずに立ち去ろう。
「だから……俺にも事情が……」
適当に理由をつけ、足早に去る狐。
だが。
「待ってよ!!」
「ぐっ!?」
またも自分の服の襟首を掴まれる。しかも、なぜかズルズルと引きずられている…?
「こうなったら、無理矢理でも付き合ってもらうよ!!」
なぜだ? 一体どうして?
ディディーと狐はジャングルの奥に(半強制的に)向かって行った。
ジャングルの奥を征く二匹。
狐の静止によって、ディディーは軽く───いや、当たり前だが───自己紹介をさせられた。同時に、これまでの経緯なども詳しく聞いた。
ディディーの方も、狐───フォックスから自己紹介とこれまでの経緯を聞いた。
フォックスは宇宙を股にかけて活躍する雇われ遊撃隊【スターフォックス】のリーダーだ。先程見た白い物体は彼の宇宙船、【アーウィン】。どうやら、とある軍を追っているらしいが、その事は詳しくは教えてもらえなかった。
「とにかく、ディディーはドンキーを助けたいんだな?」
フォックスがそう問いかけると、「そうだよ!」と、わかりやすい反応をしてくれるものだ。
ドンキーは、初代期間からの参戦していてフォックスとは同期なのだ。
「で? ドンキーを倒したうえに、連れ去ったヤツは誰なんだ?」
再びディディーに尋ねる。
「クッパってヤツなんだ。へんてこりんなデッカイ亀だよ!」
「ク、クッパ…!?」
初めて見せるフォックスの驚きの反応に、ディディーも驚いた。
ある程度、襲った人物は予想は出来ていたが、まさか、予想が的中してしまうとは…。
「ねえ!? 聞いてる!?」
「ああ、うん…。………!?」
目を見開き、足を止めたフォックス。ディディーも足を止めてフォックスが見る方を見て「あーー!?」と驚きの絶叫をひとつ。
噂をすればなんとやらと言うやつだろう。だって、その
「な、なんでここにいるんだよ!? でも、丁度いいや! ドンキーはどこだ!」
「っ! 待て! ソイツは…!」
フォックスの静止を完全無視し、ディディーは【ピーナッツポップガン】でドンキーを撃った。
クッパはそれをガードし、ディディーに掴みかかろうとした所にをフォックスがブラスターで追撃した。
「フォックス…!」
「ヤツは重量級だ! 動きは鈍いけど、その分火力はある! なるべく遠くから攻撃するんだ!」
フォックスはそのまま【ファイヤー】でクッパに突進した。
「ありがとう…! フォックス!」
クッパの弱点や注意するべき所が分かった今、残されている手はただ一つ。
クッパを倒す事。
「………!!」
まばゆい光を放ち、クッパはフィギュアに戻った。
「あれ…? なんで動かないんだ?」
この現象に恐らく疑問符が頭で大嵐を起こしているだろうディディー。
「……? まさか、フィギュア状態を知らないのか?」
「フィギュア? 何ソレ?」
やはり知らないようだ。フォックスはディディーに分かりやすいように説明した。
「へえ…! じゃあ、ドンキーが光ったのって…」
「ああ、多分、フィギュアになったからだろうな」
それを聞いてホッとした。そして同時に、この世界には死が無い事も知らされた。
そんなこんなで、ディディーはゆっくりとクッパのフィギュアに近づき、「このヤロー!」と体当たりした。すると───
フィギュアが、砂のように溶けたのだ。
「!?」
その現象に驚きを隠せない二匹。だって、そうだ。この世界には“死”なんてあり得ない。ましてやフィギュアになったファイターを少し叩いたり殴ったりしただけで、あんな砂のように溶けるなんて……。
その砂のようなモノはふわあっと中に舞い、最終的には消えていった。
「フォックス……ファイターって、フィギュアになったら、あんな風に消えちゃうの…?」
驚き、恐怖、不安。
全ての負の感情が入り混じった声で、そっと尋ねるディディー。フォックスはそんな事ない、と首を横に振った。
と、その瞬間。草むらから、”ナニカ“が発射される音が聞こえて来た、かと思えばそれはこちらに向かって飛んで来た。
「っ!!」
慌ててジャンプで回避した。二匹に向かってて飛んで来たモノは黒い矢印のような弾だ。
「いでっ!!」
「っ……誰だ!」
ディディーは着地に失敗して転び、フォックスは華麗に着地し怒鳴った。
「久しぶりだな。フォックス?」
帰って来たのは邪悪な声。
間違いない。
「クッパ……!」
草むらから現れたのは、巨大な亀───クッパ。
「さっきは外したが、今度はそうはいかんぞ…!」
クッパは手に持ったダークキャノンを構え、トリガーを引いた。放たれた黒い矢印弾はうつ伏せで倒れているディディーに向かって飛んで行った。
「うわああああああああ!?」
ディディーは緊急回避でフォックスの近くまで後ずさった。
ディディーがいた地面に黒い矢印弾は衝突し、ドガアン! と爆発した。
「オマエ…! なめやがってえ!」
怒り丸出しでクッパに向かおうとするディディー。そのディディーの赤タンクトップの襟首をフォックスが掴み、走りだした。
「フォックス! 離せよ!!」
完全に怒りに取り憑かれたディディーはジタバタと暴れて抵抗した。
「今のアイツは普通じゃない! こんな時に戦っても負けるだけだ!!」
ディディーにそう言い聞かせたフォックスの声は、確かにディディーを心配しているようだった。
フォックスは近くの崖から飛び降り、ジャングルの何処かへ消えて行った。