序曲 TETRA-FANG
「ねぇりんりん!
あこがそんな事を言い出したのは、私たち
そんな時だった。あこ──Roseliaのドラム担当の
「こめん……わたし、聞いたことないかも……」
「ねぇあこ? そのTETRA-FANGって何?」
燐子が知らないと答えるや否や間髪入れず、リサ──Roseliaのベース担当であり私の幼馴染みの
「最近人気急上昇中の四人組のロックバンドのことでさ、名前の意味は『四つの牙』なんだって! でねでね! その歌がね、すっごくカッコいいの! もうなんて言うか、あこの心にクアッてきた感じ」
興奮がすぎて彼女が何を言っているか理解しかねるが、言わんとすることは分かる。私も一曲だけだが誰かが撮影した動画で聴いたことはあるけれど、第一印象としては「あこが気に入りそうな曲」だった。曲調はあくまでもロックだが、そこに載せられた詞は幻想的で、どこか切なくて、でも力強い。不思議な調べであったが私は嫌いではなかった。ただ、私個人の感想として更に言うならば、その詞は「誰かのことを謳っている」ような気がした。Roseliaとして普段から作詞も担当している身としては、その誰かは気にならなくもないが、ともかく彼らの曲は一度は生で聴いてみてもいいだろうという気にはなっていた。
「あ、あこ、あのさ、もうちょっと分かりやすく言ってくれたらなぁ〜って」
「ああっと、ゴメンねリサ
なるほど、これがあこの狙いだったのね。とは口には出さない。最初からTETRA-FANGのライブを見に行きたいがために、燐子を始めとしてRoseliaを誘おうとしたのだ。しかし、まあちょうどいいと言うのやらなんとやら。彼らを気になっていたのも事実だし、ここは素直に乗ることにしよう。
「そうね。せっかくだし私も見に行くわ」
いつものように腕を組んでそう答える私を見て、あこは飛び跳ねてオーバー気味に喜ぶ。リサも「友希那が行くならアタシも行くかな〜」とあまりにも軽いノリで参加を決めていた。燐子もあこと一緒に喜んでいるようだし、この調子なら燐子も間違いなく行くことになるだろう。
「意外ですね。
そんな私の様子を、
「別に。ただ自分の見聞を広げるいい機会だと思っただけよ。それで、紗夜はどうするの?」
すると彼女の垂れ目が閉じられ、ほんのしばらく考えるような素振りを見せたと思えばすぐに瞼が開かれ、彼女の綺麗な瞳が私に向けられる。
「そうですね。せっかくですから私も見に行くことにします」
そう紗夜が口にしたことで、Roselia全員がTETRA-FANGのライブを見に行くことになった。彼女が何に迷っていたのか少しだけ気になったが、そう決めたと言った紗夜の真剣な表情を前に口を出すのはお節介だと感じたため、私は言葉を飲んだ。きっと当日になれば教えてくれるだろうと確信できたのも、私たちの短くも濃い付き合いの賜物だろう。
その後はあこからライブの開催場所と時間を聞いてからの解散となった。最初から分かっていたかのように、あこから当日のチケットは既に予約していると言われた時は恐ろしいほどまでの用意周到さだと軽く驚いたけれど。
きっかけは本当に些細なことであった。
しかしこの選択があの結末に至る道に繋がったとするならば……。
これは