ボーカルでヴァイオリニストな彼は   作:春巻(生)

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『麗牙とリサの前に現れた黒コートの男。男はなんとその身体を変貌させ、人智を越えた異形へと姿を変えた。しかし麗牙もまた変身を遂げる。そして王の鎧――吸血の一族の王――キバがこの地に顕現したのだった』


第9話 吸血王:Destiny's Play Re-Union

 紅染めの吸血王が静かに歩を進める。王の意思に反する者を断罪するために。己が守りたいと願う人の音楽を守るために。その断罪の対象となった蜘蛛型の異形──スパイダーは最初こそ狼狽えはしたが、この現状で形振り構っていられるわけもなく、吹っ切れたように雄叫びを上げて麗牙──キバへと遅いかかった。

 

「ゥガァァァッ!」

 

 アスファルトを蹴り、目にも留まらぬ速さでキバに飛びかかるスパイダー。右手の鋭い爪をキバの喉元向けて振りかざすが、キバはそれを左手で難なく振り払い、そしてすぐさま宙に浮いた状態のスパイダーの腹へ鋭く脚を叩き込んだ。

 

「ふッ、ハアッ!」

 

「グギャアッ!?」

 

「ぇ……なに? (全然見えなかった……)」

 

 彼らの戦いを見守るリサには今の一瞬の攻防を目で追うことが出来なかった。彼女から見ればスパイダーが動いて消えたと思った次の瞬間には、その場に転がった状態で現れて呻き声を上げていたのだから。それはまさに人智を超えた戦い。だがキバとスパイダーの戦い……それは異形同士の殺し合いではなく、一方的な殺戮になることをリサは知らない。

 

「ハァァァァアア!」

 

 今度はキバの方から駆け出した。蝙蝠が翼を広げるように腕を広げ、腰を落とした独特の走法でスパイダーに接近する。しかしスパイダーも近付かれるのは不利と判断したのか、新たな手段での攻撃に移る。

 

「ググ……ゲェアッ!!」

 

「ひゃっ!? ……なに……糸?」

 

 スパイダーの口から何かが大量に発射された。焦りからか狙いの定まっていないそれはキバやその後ろのリサに当たることもなく、しかしうち一つがリサの横の石壁に付着する。白色で粘着質で、リサはそれが蜘蛛の糸であるようだと感じていた。

 

「ハッ(……ん?)」

 

 遂にそのうちの一つがキバに迫り、キバは振り払おうとしたが粘着質の糸が弾かれることはなく、そのままキバの右手に付着した。

 

「キシ……シャア!!」

 

「……(これは避けたらダメだ)……ふッ」

 

 それを好機と見たかスパイダーは弾丸のような糸の乱射を止め、今度は口から一本の大縄のような太い糸を吐き出した。それは一筋の光のようにキバに迫り、当然キバは避けようとするも、後ろで自分たちを見ているリサの存在を思い出した。ここで避ければ糸は確実に彼女に届く、そう判断したキバはその足を止め、やがてキバの左手に太い蜘蛛の糸が命中した。

 

「らっ……っ(……麗牙っ)」

 

 リサは麗牙の名を呼ぼうとして、だが飲み込んでしまった。今は自分の出る幕ではないことが分かっていたから……出しゃばったところで何の力にもなれないと分かっていたから、彼女は彼の名前を言い出せなかった。何よりその身を変化させ、人の身体でなくなった彼を、その名で呼んでいいのか自信が持てなかったのだ。アレは本当に麗牙なのだろうか、と変身を目の当たりにした今でもリサは考えてしまう。

 しかしリサは信じていたかった。姿かたちは変わっても、目の前の存在が自分を守ってくれる人だと。あの優しくて温かな麗牙その人であると。だからせめて、と心の中では彼の名を呼んでいたかったのだ。

 

「ギシシ(よぉし……)」

 

 スパイダーはキバの左手を捕まえたと判断するや否や、その糸を手元に手繰り寄せようとした。正確には口から出た糸をそのまま口の中に戻そうとしているのだが。己の糸と力に絶対的な自信を持っていたスパイダーに余裕が戻ってきたのか、内心でほくそ笑んだ。捕まえた、と。そしてリサにも、スパイダーの身体に張り巡らされたステンドグラスに男のニヤリと笑う顔が見えていた。

 

 しかし──

 

「ッ……フンッ!……な、何故……?」

 

 スパイダーがいくら力を込めても糸は戻ってこない。糸はずっとスパイダーとキバの左手の間で張り詰めたままで、肝心のキバは一歩足りとも動かなかった。そしてスパイダーは察した。この程度のことで捕まえられるほどキバは甘くはなかったのだ、と。

 

「ハァッ!」

 

「うおァァ!?」

 

 そしてキバは逆に、絡め取られた左手を振り回し始めた。

 

 キバを捕まえたと思ったスパイダーだったがそれは間違いで、自身の糸によって空中でジャイアントスイングのように振り回されて、ようやく自分が捕まえられたのだと悟った。

 

「フンッ!」

 

「ゥガァァ!?」

 

「っ(め……めちゃくちゃ過ぎるよ……)」

 

 スパイダーの口から糸が切られる前に、キバはスパイダーを勢いよく地面に叩きつけた。その豪快さ、無頼さには、麗牙を心配して見守っていたリサも呆然とするしかなかった。叩き付けられた衝撃は凄まじく、あまりの威力にアスファルトが砕け、その欠片がパラパラと地へと降り注いでいた。しかしそれが全て地に落ちる前にキバはスパイダーに飛びかかり、目に見えぬ速度で拳の連打を浴びせ始めた。

 

「ハァァァァァァァァア!!」

 

「ゥゴババババババァッ!!?」

 

 一撃一撃が人間にとっては即死レベルの拳を、休めることなく地に倒れるスパイダーに浴びせ続けるキバ。

 どうやったのかはスパイダーにも分からないがその両手には既に蜘蛛の糸は無く、彼にはキバの真っ赤な拳の一つ一つがまるで心臓を貫く杭のようにも見えていた。

 

「ハァッ!」

 

 ラッシュの最後にキバはスパイダーを蹴り上げ、その勢いのまま宙返りをして距離をとった。一方のスパイダーは地面に叩きつけられてからの拳の応酬で既に虫の息であり、蹴り飛ばされてからは立つことすらままならず、やっと立ち上がってもフラフラと揺れていた。

 

「ア……ゥグ……ガ……」

 

 その様子を見てキバは判断する。

 

 もはやこれ以上の痛ぶりは無用であると。

 

「……」

 

 キバは、ベルトの右側に取り付けられたホルダーから紅色の笛を取り出した。

 

 それを大事そうに仮面の前に掲げるキバ。リサにはその姿が、まるで十字架を片手に祈りを捧げているかのようにも見えていた。

 

 その笛をキバは、バックルに逆さ吊りで止まっている“ソレ”の口元に加えさせ、そして──

 

 

 

 

 

 

 ──ソレは笛を鳴り響かせた。

 

 

 

 

 

 

 

Wake(ウェイク) Up(アップ)!』

 

 

 

 

 

 

 

 ソレが叫んだ瞬間、世界は変貌する。

 

 

「ウグゥ? な、んだ……?」

 

 

 紅の濃霧が立ち込め、空を覆い太陽すら飲み込む。

 

 

 青空の失せる漆黒の闇夜が訪れた。

 

 

「えっ、何!? 何で急に夜に!?」

 

 

 リサは突然の現象に動揺を隠しきれなかった。太陽が昇っている筈の空に闇が立ち込め、辺りは一瞬にして夜に包まれた。それは彼女が生きている世界の中では絶対にあり得ない非常識な体験であった。

 

 

 空に太陽が登ろうとも──

 

 

 地上を光で埋め尽くそうとも──

 

 

 一瞬で世界を夜に変える。

 

 

 世の(ことわり)すらいとも簡単に捻じ曲げてしまう。

 

 

 それがキバ。

 

 

 吸血の一族の王。

 

 

「ハァッ!」

 

 

 暗闇の中で巨大な三日月がキバを照らすように出現する。

 

 キバは鎖に封印された右脚を、諸人に示さんとするように高々と振り上げた。

 

 そしてバックルから飛び立った黄金のソレが、キバの(カテナ)を解き放った!

 

 

「(悪魔の……翼)」

 

 

 右脚の鎖が砕かれ、ヘルズゲートと呼ばれる拘束具が解放される。

 

 紅に染まった悪魔の翼がキバの右脚に顕現した。

 

 それと同時にキバは右脚を高く掲げたまま左脚で地面を蹴り、空中へと飛び上がる。

 

 見えなくなるかと思うほどまで高く跳躍したキバは、しかしその標的を捉えたまま逃しはしなかった。

 

 巨大な月を背に受けて、彼は己の最大の武器である右脚をスパイダーに向けて突き出し……

 

 そして──

 

 

 

 

 

「ハァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

 

 

 

 

 

 ──激しく急降下し、その右脚を罪人の身体へと突き刺した!

 

 

 

 

「ゥグアァァアアア゛ア゛ァァァァ!!」

 

 

 

 

 ──ダークネスムーンブレイク。悪魔の鉄槌とも呼べるキバの必殺の一撃がスパイダーを貫いた。

 

 その衝撃はスパイダーの強靭な身体ですら殺しきれず、衝撃波によって地面すらえぐり削られ、そこにはキバを司る紋章が刻まれていた。

 

「ァァ……ァ──」

 

 その断末魔を最期に、スパイダーの身体は本物のステンドグラスのように固まり、そして──

 

「ハッ!」

 

 キバがその身体を踏み砕くと、スパイダーの身体はガラスのように砕け散り、跡形も無く消え去ってしまった。だがその欠片は色鮮やかで煌びやかで、スパイダーの最期の生命の輝きのようであった。

 

 反逆者の最期は、しかし闇夜の中で確かにキラキラと光り輝いていたのである。

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 蜘蛛の異形が粉砕されると共に空に光が差し込み、アタシの知る元の平穏な青空が戻ってくる。

 

「……すごい」

 

 アタシは麗牙が変わった戦士の戦いをただ眺めていることしかできなかった。人間の手には余るほどの異形を前にしても麗牙は全く臆することなく、姿が変わったと思えばその異形を終始圧倒していた。あまりにも常識外れなその光景に何度も呆気に取られていたけど、最終的には圧倒的なあの紅の勇姿が心に刻まれてしまっていた。恐怖心なんてものも、あの紅の姿が全て塗りつぶしてしまった。

 

 そして紅色の鎧が消え去ると、中からアタシの知っている麗牙の姿が現れて──

 

「──え……?(麗牙……なんでそんな顔するの……?)」

 

 仮面が消えた次の瞬間に見えた麗牙の顔は、すごく哀しそうで、今にも泣きそうな顔をしていた。今まで見たことのない彼の悲哀に満ちた表情にこっちまで動揺してしまい、一瞬だけ視線を逸らしてしまう。もう一度彼の顔を見た時、そこには既に悲しみの色は消えていたけど、今の絶対に見間違いじゃなかったはずだ。

 

 そして戦いを終えた麗牙は、静かに私の方へと歩み寄る。だけど側まで近寄ることはなく、アタシの身体三つ分くらい開けたところで麗牙は立ち止まってしまった。身体三つ分……たったそれだけのはずなのに、アタシには彼がとても遠くにいるように感じてしまっていた。

 

「ごめんなさい。怖がらせちゃったよね?」

 

 遠慮がちにアタシを気遣う麗牙の声色は透き通っていたけど、何故か震えているようにも感じられた。いや違う、震えているのは彼の声じゃなくて彼の心の音なんだ……そう今のアタシは気付くことができた。何が貴方をそんなに悲しませるの? どうしてそんなに怯える必要があるの? そう聞きたくて堪らなかった。

 そのはずなのに、聞くことがあまりにも多すぎるアタシの口から出たのは、そんな心配の言葉ではなかった。

 

「麗牙、その……今のって? あなたは……何者なの……?」

 

「僕は……」

 

 ──違う! そんなことを言いたいんじゃないの! と心の中で叫ぶも、口から出た好奇心を今更撤回もできず、アタシは麗牙が自分の質問に顔を曇らせる様子を見守るしかなかった。

 

「僕は……今の人と同じ。リサさんから見たら……怪物なんだ」

 

「っ!?」

 

 麗牙が告げた途端、先ほどの異形に姿を変えた男が見せたのと全く同じステンドグラス状の模様が、彼の顔を覆っていた。その光景を見てアタシは確信せざるを得なかった。麗牙もまた、さっきの怪物と同じで……人間じゃないんだと。

 色鮮やかに変貌する麗牙の顔を見て短く息を飲んでしまう。だって怖いものは怖い……太陽の昇った昼間に一人で学校に置かれてある井戸にすら近づけないほどお化けの類が苦手な自分が、今この場で叫び声を上げなかったのが奇跡なくらいだから。

 

 ……いや、叫び声なんて上げられるはずがなかった。

 

 だって、それは麗牙だから。アタシを救い出してくれた優しい人だから。そんな彼がアタシの目の前で、こんなにも悲しそうな顔をしているから。

 

 だから、彼を拒絶するそれ(叫び)だけは絶対に出来なかった。

 

 

「やっぱり、怖い……かな?」

 

 表情では笑っていても、彼の奏でる音楽は曇っていく。ずっと彼の音を聴いていたアタシにはそれがよく分かった。ここでアタシが認めたら、彼はきっとすごく悲しむことになる。そんな思いを、アタシは麗牙にさせたくはなかった。

 だから私は言わなければならない。アタシは彼から預かったヴァイオリンのケースを胸にしっかりと抱きしめて、軽く息を整えて、そして彼の紅い瞳を見据えて言った。

 

「でも、麗牙なんだよね?」

 

「えっ?」

 

 彼が立ち止まった距離を埋めるように、アタシは一歩麗牙へ向けて歩み出す。

 

 彼が逃げないように、その眼を一切逸らさず見つめ続けて……。

 

「アタシ、お化けは苦手だけど、でも……でも麗牙のことは好きだよっ。だから、その……アタシ、麗牙だったらどんなでも平気だから」

 

 未だ一歩も動かない彼にどんどんと近付き、やがて手を伸ばせば届く距離にまでアタシは迫っていた。

 

 いつしか麗牙の顔からは、ステンドグラス状の模様は消え失せていた。

 

「アタシ、麗牙に会えて本当によかったって思ってるから……だから、これでサヨナラなんてイヤだからね」

 

 それがアタシの本心だった。これからも一緒に話をしたり、音楽のことで盛り上がったり、そんな関係がずっと続いていられることをアタシは今でも心から願っていたから。

 人に正体を知られたら姿を消す、なんて昔話から続くよくある話だけど、何となく今の麗牙からもそんな空気が漂っているように感じられた。アタシがここで抑えておかないと麗牙がいなくなるような、そんな気がしていた。

 

 それだけは絶対に嫌だった。

 

「それにアタシ、もっと麗牙のことが知りたいし……」

 

「リサさん……」

 

 彼とは会ってから時間もそんなに経っていないし、分からないことが多い。いい人? 優しい人? 強い人? ううん、そんな言葉だけじゃ足りないし、相応しくない。姿を変えて戦う麗牙も、悲しそうに戦う麗牙も、全部アタシの知らない麗牙だった。

 

 ──何故戦うの? どうして悲しそうなの? ねぇ、教えてよ。

 

 ボーカルでもヴァイオリニストでもないもう一つの顔を持つ彼……いや、もしかするともっと隠している顔があるのかもしれない。アタシは純粋に、そんな彼のことがもっと知りたいと思うようになっていた。

 

 だからこれっきりで終わりなんて絶対にさせたくないから。

 

 もっと彼と共にいたいから。

 

「月並みな言葉だけど、麗牙……ありがとう。これからもさ、友達でいてくれるかな……?」

 

「っ……うん……うん! 僕だってっ、これからもよろしくお願いしますっ」

 

「うん、もちろんだよっ(やっとだ。やっと麗牙の心も笑ってくれた……っ)」

 

 心から嬉しそうな表情と、そして感じる幸せそうな音色。アタシが見たかった顔を見せてくれたことに、自分勝手ながらも満足していた。アタシに笑顔を取り戻してくれた彼が、アタシのせいで笑顔が消えるなんて、そんなことになったらアタシは自分を許せなくなる。だから彼がやっと心から嬉しそうに笑う姿を目に出来て、ようやくアタシの心も落ち着いた気がした。

 

「麗牙。あの、これ……」

 

「ああ、ありがとう。大事に持っててくれて」

 

「当たり前だよ。麗牙の宝物なんでしょ?」

 

 アタシはずっと両腕で抱えていたヴァイオリンのケースを麗牙に返した。本当は最初、これを返したら麗牙がどこかへ行ってしまうような気がして渡す勇気が出せなかった。でも今なら大丈夫だと、麗牙はアタシの前から消えたりしないと自信が持てた。だからアタシは、彼に供物をささげるように大事にそれを差し出す。

 

 麗牙は自分の元に戻ってきた宝物を慈しむように眺め、そして再びアタシの方へと向き直した。

 

「じゃあ、行こうか」

 

「え?」

 

「え? いやだって、リサさん練習に行くんでしょ?」

 

「……あ~そうだった~……てへっ☆」

 

 だけど正直、あんなことがあった後だから忘れてても仕方ないよね? 何だったらここ数日間の記憶が全部ぶっ飛んじゃうくらいの衝撃だったからねアレ。そんな冗談はさておき、そろそろ友希那たちを待たせているのも事実だから早いところ行かなくちゃ!

 そう意気込んでいたところで、今度は麗牙からまた声が掛けられた。

 

「うん、そうだねっ。行こっ、麗牙」

 

「あ、そのまえにリサさん」

 

「ん? どうしたの?」

 

「今日の事……その、みんなには秘密にしておいてください」

 

 麗牙そう言って可愛らしく人差し指を口元に当てて、でも困ったような顔してお願いしてきた。みんなには秘密……つまり今日のことはアタシと麗牙だけの秘密ということ。そう考えるとちょっとドキドキしてきちゃって、また顔が熱くなりそうだった。二人だけの秘密なんてロマンティックな響きに弱いのは、女の子なのだから仕方のないことだよね?

 

「うんっ。そっか~二人だけの秘密か~……ふふっ♪」

 

 一人で勝手に舞い上がっていることなど麗牙はきっと知らないだろう。でも確かにこんなこと話したところで誰も信じてくれやしない。精々病院を進められるのがオチなんだろうなぁ。

 

 でも、これから麗牙とこんな内緒話を共有できるのかな? どんな話を聞かせてくれるのかな?

 

 ……なんてこれからのことを思いながら内心ワクワクしていた時だった。

 

 

 それは突然、何の前触れもなくアタシと麗牙の間に上から(・・・)入り込んできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『こ~らこら! 勝手に二人だけの話にするんじゃない! オレ様もいるんだぜっての! 全く……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如、アタシの目の前に小さな金色の……一頭身の蝙蝠のような何かが舞い降りた。

 

 

 あまりにも突然だったことと、しかも妙にイイ声で人間の言葉で話しかけられたことで、それで冷静にいられるほどアタシは強くはなかった。

 

 

 

 

「キャアァァァァァァァ!!? 蝙蝠のお化けェェェェ!!」

 

『ってなんでだァァァァ!?』

 

 

 アタシの非日常はまだまだ始まったばかりだと、この蝙蝠お化けを見て痛感したのだった。

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