ボーカルでヴァイオリニストな彼は   作:春巻(生)

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振り返りだけで終わらないのがハイパーバトルDVD

挿入歌:Supernova


幕間 リプレイ:追憶の旋律(後編)

・マミーレジェンドルガ

 麗牙たちの前に姿を現した最初のレジェンドルガ。ミイラを思わせる外見を持ち、コントロールデスマスクを飛ばすことで対象を操ってレジェンドルガと化させることができる。

 

「レジェンドルガ……」

 

「太古の昔に滅んだ、歴史上最悪の魔族。それがレジェンドルガです」

 

 いつ、どうやって復活したのかは麗牙も未だ知るところではない。しかし目の前に迫る脅威に対して、キバは、そして彼らは立ち向かわなければならなかった。

 

 ──『皆の音楽()を一つにすればっ』

 

 キバの身体に三体のモンスターが……ガルル、バッシャー、ドッガの力がキバと一つになった時、その鎧は極彩色に包まれていた。

 

 仮面ライダーキバ ドガバキフォーム

 

 異なる種族の重なる想いが生んだ、絆の姿である。

 

「仮面……ライダー……?」

 

「あこちゃんたちが僕に付けてくれた名前……いや、称号です」

 

「称号……麗牙さん……なんだか嬉しそうですね」

 

「はい……偶然でも、僕にその名が与えられたことが、今はとても誇らしく思うんです」

 

「偶然……?」

 

「またいつか話します。ある旅人から聞いた、仮面ライダーという戦士たちのことも……」

 

 

 

・スケルトンレジェンドルガ

 マミーレジェンドルガによって目覚めた骸骨。自身を模した小型の兵隊を作り出し、愛音や健吾と戦闘を繰り広げた。その本体の行方は未だ知れず。

 

「ミイラ男に骸骨も……」

 

「奴らは今もこの世界のどこかで目覚めつつあります」

 

「どんどん地球が……ファンタジー化していっちゃいますね……」

 

「神話の元となった怪物が殆どですから、レジェンドルガは」

 

 

 

・スフィンクスレジェンドルガ

 元3WAに所属していた春日原(かすがばる) 理那(りた)なる人間が、レジェンドルガの儀式によって眷属化することなくレジェンドルガと化した姿。家族をファンガイアによって殺され、世に存在するファンガイア全てを心の底から憎んでいた。

 

「人間が……レジェンドルガに……」

 

「彼女に至ってはその力を望んでいた節も見られましたからね……」

 

 憎しみに囚われた異形の正義を否定するために、イクサは最後の切り札を発動させた。

 

 ──『R・I・S・I・N・G(ライジング)

 

 仮面ライダーライジングイクサ。自由を守り理不尽を討つ、青空の正義の使者である。

 

 ライジングイクサの必殺技はファイナルライジングブラスト。イクサライザーに込められた高密度のエネルギーが一気に放出され、憎しみに駆られた異形をたちまち飲み込んでしまうのだった。

 

 

 

・トータスファンガイア

真名:尾を引く痴情の縺れ

 千聖と共にスフィンクスのいる店に訪れた撮影スタッフの一人。陸亀型のファンガイアであり、過去に健吾が変身したイクサに助けられたことがある。

 

「彼のように人間と共に不自由なく暮らすファンガイアもいる。本当は皆がそうであってほしいんだけど……」

 

「わたし……応援します。麗牙さんの夢を……麗牙さんの隣で……」

 

「ありがとう……燐子さん」

 

 

 

・ガーゴイルレジェンドルガ

 レジェンドルガ最速の戦士と記録された、悪魔の石造のような異形。つぐみを狙っていたが、現代社会への理解が及ばなかったために、麗牙たちの作戦に嵌り誘き出されてしまった。

 

・シースターレジェンドルガ/元シースターファンガイア

真名:合理の星に生まれた不幸

 ショッピングモールでつぐみを襲おうとするも、麗牙によって邪魔をされ退散する。その後にガーゴイルによって眷属化され、再び麗牙たちの前に姿を現した。

 

「あの日……わたしと別れた後……ですね……」

 

「そうですね。燐子さんにブルースカイのライブに誘ってもらった日です」

 

「でも……どうして羽沢さんが……?」

 

「彼女の中にある魔皇力(まおうりょく)が、彼らにとって必要みたいなんです」

 

「魔皇力……?」

 

「魔力みたいなものと思ってくれていいですよ。でも、魔皇力を持つのはつぐみさんだけじゃありませんでした……」

 

 

 

・マンティコアレジェンドルガ

 燐子の中の魔皇力を感じ取り、彼女を狙ったレジェンドルガ。燐子を攫おうとするもキバにより邪魔をされ、その後黒麓が変身したレイによって倒される。

 

「やっぱりあの時の……夢じゃなかったんですね……」

 

「燐子さんが攫われると思ったあの時、僕、本当に必死でした。何がなんでも、どんな手を使ってでも取り返そうとして……」

 

「……ありがとう……麗牙さん」

 

 そして、燐子をその手に取り戻した麗牙の前に現れたのは黒麓大地。彼はマンティコアの前に立ち、麗牙と同じその言葉を告げたのだ。

 

 ──『変身』

 

 レイ。全ての魔族の根絶を掲げる3WAが作り上げたライダーシステム。ギガント属のイエティクラスの個体を解析、更には魔皇石も人工的に開発することに成功し、全てを詰め込んだ正に人造キバとも言える白銀の戦士であった。

 

 レイの必殺技、ブリザードクロー・エクスキュージョン。両腕の鎖が砕かれて出現した巨爪による破壊的な斬撃がマンティコアを引き裂いた。

 

「もし彼が……本当に味方だったら……」

 

「……」

 

 

 

・ハルピュイアレジェンドルガ

 遊園地でつぐみを狙ったレジェンドルガ。イクサとレイによって倒される。観覧車を止めるために複数のカメレオンファンガイアを眷属化させていた。

 

「遊園地デート……(いいなぁ……)」

 

「……今度、二人で行きましょう。これからも時間はたくさんありますから」

 

「っ……うん……」

 

 

 

・グリズリーファンガイア

真名:葬儀屋に贈る賄賂と謝礼

 幾馬(いくま) 緋史(あかし)という名で、人間の妻、(りょう)と仲睦まじく過ごしていた。妻の高額な手術費を稼ぐために、裏稼業に手を染めていた。熊型のファンガイアに姿を変え、同じく人間と共存するファンガイアの一人──楠和田(くすわだ)を殺害してしまう。

 

・レディバグファンガイア

真名:虚栄に満ちた櫓と腐肉を漁る将

 グリズリーが所属する裏の組織の元締め。悪行を重ねて来ているが筋は通すタイプ。麗牙たちに追い詰められ、後が無くなったと見るや自害し、サバトへと姿を変えた。

 

「……王様でも……手から零れ落ちてしまうものがある……僕はそれを忘れちゃいけないんだ……」

 

「麗牙さん……」

 

「燐子さんのことは……何がなんでも守り抜きますから……」

 

 

 

・ヨルムンガンドレジェンドルガ

 黒麓大地の正体たる世界蛇。かつて闇のキバに魅せられたまま封印され、同じく闇のキバを纏うる麗牙に接触を図る。愛する者同士の間に流れる愛の音を感じることができ、その音が最高潮に高まった時、その正体を現して愛する者たちを食らうことを生涯の喜びとしている。

 

「3WAも本当に余計なものを作ってくれました」

 

 レイシステムがリビルドされ、黒麓が変身する新たな姿。それがレイアライズであった。クルセイダーと名付けられた対ファンガイア殺傷兵器の威力は凄まじく、一撃を喰らうだけで並のファンガイアは息絶え、ビショップまでもが戦闘不能に陥るほどだ。

 

「麗牙さんも……あの時確か……」

 

「もう大丈夫ですよ。僕、身体は丈夫ですから」

 

「本当ですか……?」

 

「も、もちろん……」

 

「……」

 

「あ、あの……?」

 

「……じーっ……」

 

「……じ、実は……まだちょっと痛いです……」

 

「……無理はしないでください……ね?」

 

「はい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ……もう夕方……」

 

 そしていつしか二人がタロットカードから目を離した時、窓の外が赤く染まり始めるのが目に入った。既に陽が地平線に沈みかけ、街に暗闇が伸びようとしていた。

 

「もうこんな時間ですし、送っていきますよ」

 

「早いですね……」

 

「本当ですよ。まだまだ部屋はたくさんあるんですけれど、それはまた今度ということで」

 

 燐子を帰さずにいつまでもここに置いておきたいと密かに望む麗牙であるが、そんな態度を露ほども見せず紳士的に燐子を送り届けようとする。自分のエゴに彼女を縛り付けるのは、真の意味で彼女を愛しているとは言えない。彼女に誓った言葉を嘘にしないためにも、麗牙は今は健全な付き合いを重ねようと心に決めていたのだから。

 

「……やっぱり冷えますね」

 

「うん……でも……麗牙さんがくれた……このマフラーがあるから……」

 

「それは……僕もですけどね」

 

 ビルから外へと出た二人に、冬の寒気が襲い掛かる。二月も半分を過ぎて春目前であるにも関わらず、最後の一吹きと言わんばかりに冷たい風が空から吹いていた。それでも燐子は、麗牙に見せつけるように首に巻いた白いマフラーに触れて嬉しそうに笑う。それに対して麗牙も、燐子から貰った真紅のマフラーに触れて笑顔が溢れていた。

 

「さ、行きましょうか……燐子さん」

 

「っ……うん」

 

 麗牙は燐子に向けて手を差し出していた。それを見た燐子は頬を桃色に染め、嬉しそうにはにかみながら彼の手をとり、二人は共に歩き出したのだった。

 

「……」

 

「……」

 

 街を歩く二人は言葉を発することなく、静かに街の空気を感じながら歩く。互いに積極的に会話をするタイプではなかったが、その分彼らは互いの体温も息遣いも、そして心から奏でられる音楽も直に感じられていた。

 恋人同士となっても、二人の付き合い方に大きな変化はない。これまでと同じように二人の間には静かな空間が形成されていた。

 ただ違うものがあるとすれば、その手に握られている互いの愛する者の手の温もりであろう。

 

「……このまま……」

 

「え?」

 

「っ!? い、いえ……なんでも……ありません……」

 

 流れていく温かな時間が愛おしく、燐子の口から自然と別れを惜しむ声が漏れていた。しかし咄嗟に取り繕ってしまい、言葉として出ることはなかった。

 

「僕だって同じですよ」

 

「え……」

 

「このまま、ずっとこうして歩いていたいって……僕もそう思っていますから」

 

「……もぅ」

 

 しかし燐子の気持ちは麗牙に伝わっていた。彼女の心が奏でる調べは間違うことなく彼の心にも届いていたのだ。自分の気持ちも全て見透かされて恥ずかしくなった燐子は握る手の力を強め、肩で麗牙の胸を軽く小突いていた。怒っているわけではなく、ただ溢れそうになる想いを発散させるために、燐子はその想いの吐きどころとして麗牙に形としてぶつけていた。

 

 そんな燐子の態度が愛らしく、麗牙の胸の鼓動は大きくなっていく。本当にこのまま連れ去ってしまおうか。そう思ってしまうほどに、麗牙は燐子に惚れ込んでしまっていた。

 

 こんな平和な時間が一生続けばいいのにと、燐子の手を握る麗牙は思わずにはいられなかった。

 

 しかし、その時であった。

 

 

「……なんだ?」

 

 

 ふと麗牙の足が止まり、燐子もつられて立ち止まってしまう。突然歩みを止めた麗牙に、燐子からの戸惑いの視線が突き刺さっていた。

 

「麗牙さん?」

 

「今、妙な違和感が……」

 

 止まる直前に踏み出した脚が地面に着いた瞬間、彼の身体はその一帯に仕掛けられた魔術に反応していたのだ。これまでも何度も感じたことのあるその魔術は、人払いの結界。余所者が邪魔されないよう、力のあるファンガイアが使うことのある魔術であった。

 

「っ、燐子さん!!」

 

「!? きゃ──」

 

 来る。そう感じた次の瞬間、けたたましく何かが破裂する音が轟いた。それと同時に麗牙は、燐子を抱き寄せるとその姿を変化させた。

 

「っぐゥ……」

 

「ら、麗牙さん……?」

 

 自分を抱きしめる麗牙の身体に何かが炸裂したのを感じ、燐子は恐る恐る目を開けていく。そこにあったのは、視界を埋め尽くすほどの紅色。ゆっくりと顔を上げていき、それがステンドグラス状の美しい模様が散りばめられた人ならざる異形の身体であると燐子は認識した。

 

・バットファンガイア

真名:??

 ファンガイアのキングである紅麗牙が正体を現した、ビーストクラスの蝙蝠型のファンガイア。キングの称号に恥じぬとてつもない戦闘力を秘め、相性では最悪のはずのレイアライズを撤退に追い込んでいる。かつてこの姿を晒し、麗牙は燐子に二度も拒絶されることとなった。

 

「燐子さん……大丈夫、ですか?」

 

 何者かによって放たれた銃弾が燐子の命を刈り取ろうとした時、麗牙は咄嗟に身体を変化させて彼女を庇ったのだ。恋人同士とは言え、最後に拒絶されて以降は彼女の前でその姿を晒すことはしなかったが、彼女の命には替えられず麗牙は再びその正体を彼女に見せていた。

 

「うん……麗牙さんが……しっかり守ってくれたから……」

 

「燐子さん……」

 

 しかし異形の腕の中で抱きしめながら、燐子は逃げることなく優しい笑みを麗牙に向けていた。自分はもう彼から逃げない、逃げられるはずがないという強い意志が彼女の心に刻み込まれていた。麗牙が爪を立てないように優しく抱きしめていることにも気付いている燐子が、今さら怪物の姿を晒した愛する人を嫌いになれるはずがなかったのだ。

 

「燐子さん、僕の後ろに」

 

「うん……」

 

「ギギギュ」

 

 麗牙は異形の姿から普段の人間の姿に戻り、燐子を自分の背中へと隠すように前に出る。そして、麗牙たちの前方からそれらは姿を現した。黒く光る身体に散りばめられた、ステンドグラス状の模様。丸い耳に長い鼻先を持つ、鼠のような姿の異形──ラットファンガイアであった。しかしその数は一体や二体どころではなく、軽く二十は超えていた。一個小隊級の数の異形が麗牙に、そして燐子に向けて牙を剥こうとしていたのだ。

 

「キングの命令だ。下がれ」

 

「ギュウグ……」

「ギギギィ」

「ンヂュゥゥ」

 

「……操り人形か?」

 

 燐子を守るため、キングの命を以てして異形の群れを止めようとするも、彼らは全く聞く耳を持たない。聞こうとしていないのではなく、最初から麗牙の言葉が刺激として受け取られていないかのようであった。その様子から、麗牙は目の前の存在たちが自分の意識を持たない人形であると見抜いていた。既に亡くなったファンガイアの身体から再構成された、文字通り死体の人形だと……。

 

「キバット!」

 

 誰が何の目的で彼らの身体を無理に動かしているのかは分からない。死者を冒涜するかのような魔術を行使する黒幕に怒りを感じるも、麗牙は燐子を守るために己の相棒を呼び寄せた。

 

『よっしゃ! キバっていくぜ! ガブッ!』

 

 キバット族の名門、キバットバット家の当主の嫡男であり現当主代理──キバットバット三世。王の鎧を装着するための最終決定権を持つ彼が麗牙の手に咬みつくことで、麗牙の身体に変化が訪れる。キバットの牙から注入される魔皇力──アクティブフォースが麗牙の全身を走り、全身を埋め尽くそうとする。赤と黄を基調としたステンドグラス状の模様が麗牙の白い顔をも埋め尽くそうとしたところで、麗牙はその言葉を告げた。

 

「変身」

 

 偶然にも数多の並行世界で紡がれるその言葉を口にした時、彼の身体は変化を遂げる。全身を白銀のベールが覆い、一瞬のを置いて弾け飛ぶ。そこには紅の鎧──キバが現れていた。

 

「キバ……」

 

「ふっ、ハァァァァアッ!」

 

 腰を落とし、天と地に腕を広げてキバは異形の群れへと駆け出した。

 

「フッ! ハッ! ダァッ!」

 

 目に写る全てを打ち倒すため、キバの拳がいくつもの黒い異形に突き刺さっていく。時折肘打ちや肘による蹴りも加えていくが、キバフォームでの戦闘は基本的に拳による打撃が主となる。素早く的確に、それでいて破壊的なパンチをその身に喰らい、異形たちはキバを中心に倒れていく。

 

「グキャザァ」

「ゥグゥゥゥ」

 

「っ、ふっ!」

 

 しかし敵は決して徒手空拳というわけではない。自身の細胞から剣を作り出したラットファンガイアたちは、キバを剣の錆にせんと振り被ってきた。キバの鎧は堅牢ではあるが、決して万能ではない。故に出来る限りは素早く動いて敵を翻弄し、その攻撃を躱す、或いは受け流して反撃する必要があった。

 

「ふんッ! ダァァッ!」

 

 敵の剣撃を掻い潜りながら、キバは敵を叩き、更には投げたりして的確にダメージを与えていく。決して雑魚というわけではないが、この程度の敵はキバにとっては日常茶飯事であった。

 

 ただ一つ問題があるとすれば、この数のファンガイアを相手にすることは早々ないということだが。

 

「ギュュゥ」

 

「燐子さん! っぐ!?」

 

「麗牙さん!」

 

 異形のうちの一体が自身の細胞から銃を生成し、燐子に向けて発砲したのだ。すぐさま地を蹴って跳び、燐子の前にその身体を晒すキバ。お陰で燐子の身体に傷が付くことはなかったが、凶弾はキバの体に着弾していた。短く呻き声を上げたキバに燐子は息を飲むが、心配はいらないと言うようにキバは手を広げて安心させるように彼女に見せる。

 

「大丈夫です、燐子さん。燐子さんが後ろにいる限りは、僕は絶対にやられませんから」

 

「……うんっ」

 

 静かに落ち着いた声で答えるキバに、燐子もまた心が落ち着いていくのを感じていた。彼女のキバの──麗牙の言葉を一心に信じていたからだ。愛する者の言葉をどうして疑うことができようか。彼がやられないというのなら、きっと彼は戻ってくるのだと、今の燐子は頑なに信じることができた。

 

 そして、キバは新たなフエッスルを掲げるとキバットにその音を響かせた。

 

「タツロット」

 

『タッちゃーん!』

 

 ♪〜〜♪〜〜

 

 キバットから奏でられる笛の音が辺り一面に轟き渡ったその時、上空から金色に光る小さな竜が飛来した。

 

『ビュンビューン! テンションフォルテッシモ!』

 

 高らかに叫ぶ小型のドラン族、タツロット。

 

 彼こそがキバの鎧の封印を解く存在……麗牙たちを黄金の輝きに導く者である。

 

『それじゃあ行きますよー!』

 

 キバの両肩の鎖がタツロットにより破壊され、巨大な蝙蝠の翼が解き放たれる。無数の黄金の蝙蝠がキバから飛び立ち、彼の周りを朝日のような黄金の光が包み込んでいるようであった。そしてキバの掲げた左腕にタツロットが装着された時、彼の高々な宣言が響いた。

 

『変身!』

 

 その言葉と同時に、放たれた蝙蝠たちがキバに再集結して身体の各部位に吸収されていく。瞬く間にキバの五体は黄金の鎧に包まれ、背中から二枚の真紅のマントが炎と共に現れた。

 

 仮面ライダーキバ エンペラーフォーム

 

 これぞ封印されしキバの真の姿であり、この世に生み出された三番目の王の鎧、そして二番目のキバである。

 

「ザンバット」

 

 キバはその手を掲げると、その手中に王の大剣──ザンバットソードを召喚させた。

 

 この世に二振りと存在しない、紛うことなき王の剣。これを握る者はファンガイア皇帝としての資格を持つに相応しいと称される、至高の大剣である。

 

 しかしキバはタツロットの口に手をやると、そこから更なる剣を引き抜いたのだ。

 

「ふっ!」

 

 タツロットの口から出てきたのは、なんともう一振りのザンバットソード。しかしその唾には4枚の翼を持つ黄金の蝙蝠が刃に食い付いていた。本来ザンバットソードはキングのみが持つ一振りのみであるが、黄金のキバを生成する過程でザンバットソードの複製も行われていたのだ。闇のキバより僅かに性能の劣る黄金のキバ、その性能を補うため二振りのザンバットソードを双剣として扱うように設計されたのだ。

 その性質はオリジナル同様、持ち主のライフエナジーを貪ろうとする妖刀である。強力な反面、キング以外が使おうものならたちまち命を吸い尽くされてしまう死の剣。故に麗牙──現代のキングはその性質を抑制し、自身の妹が扱えるための装置──ザンバットバットをこの二代目の剣に付与したのだ。

 

 二振りのザンバットソード。言わば兄妹剣を両手に握りしめ、キバは乱舞を始めた。

 

「フンッ! ハァッ!」

 

「ィギュ──」

「ンギィェ──」

 

 華麗に舞うように、真紅のマントを靡かせながらキバは異形の群れの中で剣を振るう。彼が一振りすれば黒き異形は瞬く間に切断され、その原型を失っていく。

 

「フッ! ハッ! セェヤァァッ!」

 

「ァギ──」

「フグェ──」

 

 黄金の剣が振るわれるたびに、黒い大群が塵のように薙ぎ払われていく。この世で最高と謳われる神秘の剣、それを二振りも振るう黄金の王を止められる者はいない。

 

「フッ」

 

 ザンバットバットのない本来の王の剣を地面に突き立て、もう片方の剣……ザンバットバットの顔を隠す仮面の笛を取り出したキバは、それをキバットに響かせた。

 

Wake(ウエイク) Up(アップ)!』

 

 鳴り響く笛の音を聴きながらザンバットバットを握り、キバは剣先に向けて黄金の蝙蝠をスライドさせていく。それはまるで、刃を蝙蝠の牙で研ぐように……。蝙蝠の牙が過ぎ去る跡には紅の光が走り、ザンバットバットが剣先に達した時、剣身は激しく紅く光り輝いていた。

 そしてザンバットバットを峰に戻し、地に刺した大剣を地面から引き抜いたキバ。そのまま赤く光るザンザットの刃をもう片方の刃に滑らせた時、その刃もまた紅き光を放ったのだ。

 

「フッ」

 

 二振りの光を放つ剣を握りしめ、キバは駆け出した。先ほどよりもより鋭い斬撃が放たれ、一振りで二体の異形が葬りさられていく。それを二本同時に震えば、より多くの異形が動きを止めていく。

 

「ハッ!」

 

「ガギ──」

「キギァ──」

 

 紅の残光を止められるものは誰もいない。剣を振るう異形も、弾丸を放つ異形も、誰も紅の刃に抗うことなくその活動を止められていく。既にキバが過ぎ去った後には、無数のステンドグラスの塊となったラットファンガイアで埋め尽くされていた。

 

「フンッ!」

 

「ギァァォ──」

「ヂュゥゥ──」

 

 最後に前方に向けて自身の大剣を投げ付け、刃は赤い残光を残して回転し敵を斬り裂いていく。自身の周りにいる異形も全てを叩き斬ったキバはザンバットバットに手をかけると再び剣先にスライドさせ、剣先に達した蝙蝠を再び峰に戻し始めた。先ほどとは逆に、蝙蝠の牙が峰に近づくにつれて剣身から紅い光が消えていく。それはまるで、刃についた血を拭うかのように……。

 

そしてザンバットバットが剣の峰に収まった瞬間、その場に固まる全ての異形は音を立てて砕け散った。

 

 ファイナルザンバット斬──否、二振りで成されたそれは言うなれば、ファイナルザンバット斬・デュオ。

 

 輝ける剣により失効される、王の裁きであった。

 

「フッ」

 

 ブーメランの如く回転してその手に戻ってきた王の剣を掴み、キバはゆっくりと剣先を地へと下ろしていく。その手に持つ二つの剣からは、既に血のような光は消えていた。

 

「ふぅ……」

 

 変身を解除した麗牙は燐子の元へと歩いていく。目の前にある敵は全て倒し、結界が解かれていくのも感じていた麗牙は、すぐにでも燐子の容態を知りたくて堪らなかったのだ。

 

「燐子さんっ、大丈夫でしたか?」

 

「うん……だって、麗牙さんが守って……って、これさっきも言いました……」

 

「あれ? そうでしたっけ?」

 

「うん、言った……ふっ、うふふっ」

 

「ぷっ、あっははっ」

 

 しかし麗牙の活躍によって大事はなく、それどころか戦闘前と同じ言葉を言っていると燐子に指摘されてしまっていた。そんな自分たちがおかしくて、麗牙と燐子はただ笑い合っていた。

 

「ありがとう、麗牙さん……」

 

「僕の方こそ……さっき、僕のことしっかり見てくれて」

 

 ファンガイアとしての正体を再び晒した時、燐子は麗牙を見失うことなくその目に焼き付けていた。それが嬉しくて麗牙は彼女に礼を言わずにはいられなかったのだ。だが燐子はそんな麗牙に向けて真剣な目を向ける。視線だけで逃さないと物語っているような彼女の顔に、麗牙も目を背けることなく、見つめる以外に何もできなかった。

 

「わたし、もう逃げません……だってどんな見た目でも……あなたはわたしの……大切な人ですから……」

 

「燐子さん……」

 

「麗牙さんの本当の姿も……名前も……わたしは全部……受け止めます……」

 

 共に生きることを決めた燐子へと、麗牙は自身の真名を既に告げていた。真名を告げるという麗牙の覚悟を裏切りたくない。そんな想いもあった燐子にとって、彼の姿というものはさして重要ではなくなっていた。

 

 ここにいるのは紅麗牙。自分を愛し、そして自分が愛する人なのだから。

 

「燐子さ──」

 

 麗牙が再び燐子の名を呼ぼうとしたその時、再び銃声が鳴り響いた。

 

「っ!」

 

「えっ!?」

 

 しかし、麗牙は一切動じることなく腕を伸ばし、自身に迫る銃弾を握り受け止めたのである。

 

 それに驚いたのは燐子と、そして麗牙が油断したと思い込んでいた一体のラットファンガイアであった。

 

「油断するのを待っていた……貴方、人形じゃなくて生きていますね?」

 

「ッグ……くそっ──」

 

 不意打ちが失敗したと理解した異形はすぐさまその場から撤退を図ろうとし、麗牙に背中を向けようとする。

 

「──ヒグゥアッ!?」

 

 しかしそれは叶うことはなかった。

 

 麗牙のためではない。

 

 今も異形の胸から突き出している、血の如く赤く光る剣身のためにだ。

 

「っ」

 

「えっ??」

 

 突然のことで息を飲む麗牙と燐子。しかし驚くのも束の間、貫かれた異形の身体から赤い光が引き抜かれるのと同時に、異形の身体は音を立てて破裂してしまったのだ。

 

「ィギャァァァア゛ア゛ッ!!?」

 

 断末魔と共に崩壊し、その残骸が煌びやかな雨のように辺りに降り注ぐ。

 

「……」

 

 降り注ぐ光の中心に、その影は静かに立っていた。

 

 全身を覆うは白銀。

 

 胸に広がる色鮮やかなステンドグラスの防壁。

 

 西洋の教会を思わせる荘厳な造りの甲冑。

 

 その手に持つは、今し方異形を滅ぼしたレイピア状の赤い刃を伸ばす剣。

 

 王冠を被る蛇を模した、青き瞳を持つ仮面。

 

 そして……

 

 

 

 

「その人が……次のクイーン……」

 

 

 

 

「え……?」

 

 燐子へと向けられた静かな女性の声。

 

 その言葉の意味をすぐに理解できず、燐子は小さく疑問の声を漏らしてしまう。

 

 しかし白き鎧はただそれだけ告げると、麗牙たちに踵を返してその場から立ち去っていくのだった。

 

「あれは……?」

 

 燐子の疑問の声が、誰もが消え去った夜の世界に響く。

 

 その問いに対して、答えをただ一人知る麗牙はその名を告げるのであった。

 

 

 それこそが最初にこの世に生み出された王の鎧。

 

 

 またの名を「運命の鎧」。

 

 

 その名は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……サガ」

 

 

 物語は第三楽章へと続く……。




ボーカルでヴァイオリニストな彼は

ここから先は……。


「王の判決を言い渡す。『死』だ……サガーク!」

麗牙と共に現れる運命の鎧。


『久々にキバっていくぜ、愛音』

「変身」

愛音に委ねられる黄金の鎧。


「イクサ爆現」

「師匠ぉぉっ!?」

遂に現れる健吾の師匠。


更に……


「まんまるお山に彩りを!」

「いやぁ本当偶然っすね〜」

アイドルな彼女たちの日常。


「ふぇぇ……」

「あぁ、儚い……」

「ああ、あんまり深く考えなくていいですから」

音楽で笑顔をもたらす少女たち。


「実はわたし……生徒会長……やってみようと……」

「ええっ!? 燐子先輩って彼氏いるんですか!?」

……花女の生徒会事情?


……
















「お前が未来のキバ……俺の息子か」

「父さん……」

邂逅する父と子


「まさか……ロードは……」

訪れるロードの復活


「ッぐふ……ぁ……」

「ィヤァァア゛ア゛ァァァァァアアッッ!!!!」

麗牙、死す!?


そして……












『ありがたく思え。絶滅タイムだ』

……闇の鎧が蘇る。




ボーカルでヴァイオリニストな彼は

第三楽章、まもなく開演。
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