『流石の麗牙さんもタジタジでしたね。そんな彼女のバンドって一体どんなのなんでしょうかね?』
「本当に申し訳ない。なんとお詫びすれば……」
友希那さんたちが到着し、松原さんたちを地上に戻した頃、レジェンドルガの洗脳が解けた黒服の人たちが目を覚まし始めていた。レジェンドルガ化していたファンガイアの男性も正気を取り戻し、事情を打ち明けられて開口一番に謝罪を述べる。巻き込んで怪物にしてしまった黒服と、何よりこころちゃんたちの目の前で怖い思いをさせたことに深く頭を下げていた。
「あなたは何も悪くないんでしょう? だったら謝ることなんてないわ。それよりあなた、さっきのもう一度見せてもらえないかしら?」
「え?」
「ほらっ、さっきのキラキラってした姿よ。今でもなれるんでしょう?」
「えぇ……ま、まあそうだけど……?」
男は僕と同じように、ファンガイアの姿を見ても全く怖がる素振りを見せないこころちゃんにたじろいでいた。やはり僕以外から見ても、ここまでファンガイアの姿に対して好奇心旺盛な存在は物珍しいのだろう。しかも単に珍しいからという理由ではなく、「キラキラしていて楽しそうだから」という独特な理由なのだから。
「あはは……なんか、こういう子みたいで」
「そうなのか……えっと、こころちゃんだったよね。悪いけど、おじさんも今は疲れてあまり出来ないんだ。だから、また会えた時でいいかな?」
「ええいいわ! 約束よ!」
こころちゃんは男の手を掴むと、目を輝かせてそう宣告していた。本当に目の前の存在がさっきまで自分を襲っていた存在かなんて関係ないのだろう。ただ目の前にある楽しそうなものを見つけて、純粋に触れ合いたいと思っているのだ彼女は。彼女の物怖気しない大胆な行動はやはり何度見ても驚かされてしまう。
「あ、ははっ。うん、分かった……あの、それでは私はこの辺で」
「ホンマに大丈夫なんか? 辛かったら青空の会で身体休めていってもええんやで?」
「いえそういうわけにも……ホテルの部屋をとっているので。それでは」
「また会いましょうねっ」
男が言うには、ホテルから買い物がてら散策している途中でレジェンドルガに出会したようなのだ。災難だが、結果としては皆無事で良かったと言わざるを得ない。そうしてこころちゃんが初めて遭遇したファンガイアの男は、静かに僕たちの前から姿を消していった。
「それにしてもファンガイアとレジェンドルガに纏めて出会すとは……花音ちゃんの不幸体質も馬鹿にならんなぁ」
「ち、違うよぉ……なんでそんなイジワル言うの……」
「じ、冗談やって。泣かんといてぇや……」
こころちゃんたちの話では、昨日偶々目撃したキバの姿を探そうとして、異形たちの騒動に巻き込まれることになったのだという。もしキバに近付けばそう言うこともあり得るのだが、まさかこんなに短時間で全くの別件でレジェンドルガに巻き込まれるとは余程運が無いとしか……そしてある意味ではあり過ぎるのだろう。だから健吾さんが弄るのも無理はないと思う。言い方は酷いけど……。
「あのー、リサさん。あの人たちって何者なんですか? さっきもビルに跳んだり飛び降りたり、あの女の子なんてなんか変身してたんですけど……」
「えーっと、何から説明したらいいのかな……。とりあえず彼はアタシたちと同じバンドマンで、それでヴァイオリニストでもあるすごい人……かな? あはは……ほら、聞いたことない? 紅麗牙って名前の高校生ヴァイオリニスト」
「あーなんかどこかで聞いたことあるような……でもそんなの今の見たら全部吹っ飛んじゃいそうな感じですよ。バンドとかヴァイオリニストどころじゃないですって」
リサさんたちの方からそんな会話が聞こえてきたが、そういえばこころちゃんには名乗ったが彼女にはまだ何も伝えていなかったことを思い出す。何とか状況を把握しようと努めている少女に歩み寄り、最後の一人に──恐らくハロハピのメンバーの一人に自己紹介をしていた。
「こめんなさい、いろいろ混乱させちゃって。紅麗牙です。ヴァイオリンもだけど、TETRA-FANGってバンドでボーカルもやっています」
「あ、はじめまして。
「美咲ってRoseliaとTETRA-FANGの合同ライブって見にこなかったっけ?」
「あっ、そうだ。そういえばあの時の赤毛のボーカルだ。それでなんか見たとこあると思ったんだ……」
彼女もあの時の合同ライブを見に来てくれていたようで、おかげで彼女の固くなった身体が解されたのがその息遣いからも分かった。それにあのライブを見てくれたというが嬉しくて僕も自然と笑みが溢れ、ふとその気持ちを共有したくて友希那さんに振り返っていた。
「なんでこっちを見て笑うのよ」
「だって僕たちの音楽、結構いろんな人たちに聴いてもらっていたみたいで、それが嬉しくて」
「あなたは本当に人の言動に対して素直なのね。確かに聴いてもらえるのはありがたいけれど、それは自分たちの実力があってこそよ。そうでなければ例えステージに立ったところで誰の記憶にも残らないわ」
「だから嬉しいんですよ。僕の音楽が誰かの記憶に残るのが」
「あなたの実力なら当然よ。そう簡単に他のものに塗り潰されるものじゃないわ、あなたの音楽は。ただ……」
「ただ?」
「……いえ、何でもないわ」
何かを言おうとした友希那さんは、しかし口を閉じるとどこか面白くなさそうな表情を浮かべて僕からそっぽを向いていた。何か彼女にとって良くないことを言ったのだろうかと思ったが、原因が僕でないことはすぐに分かった。ほんの一瞬だけ奥沢さんに、解せないと言わんばかりの視線を向けるのが見えたからだ。しかし今の会話の中で彼女にそんな目をさせる理由が思い付かないし、友希那さんがそんな無意味なことをする人とは思えなかった。だから今のは僕の気のせいだと思うことにした。
「それで、ボーカルでヴァイオリニストな紅さんと、あの女の子は結局何者なんですか?」
「それは……」
僕と愛音の不思議に迫ろうと興味深げに訊ねる奥沢さんに対して、僕は答えようとするも言葉を選ぼうとして少しだけ間が開いてしまう。さて、今回は何と言って説明すればいいのやら。また例の如くマル・ダムールに誘ってゆっくり説明会を開くことになるのだろうか。
しかしそう考えていた時、こころちゃんの楽しそうな一声が辺りにこだましたのだった。
「麗牙! あたしたちと一緒に来てくれるかしら?」
一緒に来てくれる……とは、僕はお誘いを受けているのだろうか? どこに? という質問が口から出る前に、彼女はその矛先を愛音にも向けていた。
「そこのあなたもどうかしら?」
「え……マジ……?」
ああ、なんて綺麗な目をしているのだろうかこの子は。こんなにも期待を込めた瞳を向けられて嫌だと突っぱねるのは罪悪感がすごいだろうな……。恐らく同じことを愛音も思っているのだろう、彼女は困ったような顔を浮かべてこちらに振り返っていた。
「因みにどこに?」
「もちろんあたしのお家よ。みんなともいつもあたしの部屋で話すもの」
「(弦巻の……)分かった、僕は行くよ」
「マジか……」
しかし、元々彼女とは話す必要があると思っていたのも事実だ。弦巻家……青空の会と繋がりのある彼女の家がどこまで魔族について把握しているかを知りたいし、それに上手くいけば、こころちゃんと同じ花女でレジェンドルガに狙われている燐子さんや彩さんを守るために協力を仰げるかもしれないからだ。
「じゃあ行きましょう! ハロハピのみんなにも紹介してあげないと!」
「ちょっと待った!? え、紹介って何を?」
「? 何ってあなたたちよ。とってもキラキラした姿に変身する二人の素敵なお友だちのことに決まっているじゃない!」
「兄さん……この人ダメだ……」
「と、とりあえず行く目的は増えたかな……」
これ以上他の人に広めさせないように説得するために……。こころちゃんと、そして最悪紹介された場合にハロハピのみんなに口外しないように釘を刺すという目的が生まれてしまった。
「あの、健吾くんは来てくれないの? 健吾くんだって変し──」
「あーあー! あーそうだ俺この後買い物行くんだったなー! あー忘れてたー!」
「──ふぇっ!?」
健吾さん、そんなあからさまに演技で逃げようとしないでくださいよ……松原さんちょっと涙目じゃないですか……。とは言え、健吾さんまで僕らについて来てしまうことについては僕も反対だった。先ほどのレジェンドルガ本体は未だ野放しのままであり、またいつ襲撃があるか分からないからだ。故にレジェンドルガに対抗できる彼には友希那さんたちを守りつつ、戦闘に備えていてほしかったのだ。
愛音も本当は残しておきたかったのだけど……この眩しいまでの期待に満ちた表情を見ると無駄だなと思ってしまう。これは何が何でも愛音を連れて行こうとする顔だ。
「ということだから、僕たちだけでお邪魔させてもらおうかな」
いろいろと不安が残るが、僕たち兄妹はこころちゃんの家……あの弦巻家に向かうことが決定した。愛音は少しだけ不満そうだけど、申し訳ないがここは我慢してもらおう。
そして意識を取り戻した黒服の人たちが手配した車……というかリムジンに乗り、僕らとこころちゃんたちハロハピを乗せたリムジンは弦巻邸へと走り出した。
「……」
その時、友希那さんの心からどこか不愉快そうな音楽が流れているのが聴こえたが、訊ねようとする前に彼女は踵を返し、リサさんと共にCiRCLEへと歩き出していた。
弦巻邸までは然程距離は離れておらず、ほんの数分車を走らせたところで僕たちはその敷居の中に足を踏み入れていた。大きな門と広大な庭を抜け、ようやく停車した車から降りた僕らを出迎えたのは巨大な豪邸だった。ただ大きいだけではなく、パッと見ただけでも造詣が見事に整って手入れも行き届いているのが分かり、この玄関先の光景だけでもこの家が相当の資産を持っていることが理解できた。
「あ、あの紅さん? なんかあんまり驚いていないようですけど?」
「え? うん、まあ確かに驚くっていうより感心かな……すごく綺麗だし」
「まあ私たち……こういうの見慣れてるから……」
「見慣れてるって、もしかして紅さんたちもこころ寄りの人……?」
「一緒にされると……なんか複雑……」
奥沢さんの言うこころちゃん寄りとはどういう意味で言ってるのか分からないが、少なくとも金銭感覚は彼女と近しいのかもしれない。
そして愛音は早速こころちゃんに苦手意識を持ち始めているようだ。タイプが真逆と言うこともあるのだろうが、悪い子ではないのだし仲良くしていてほしいというのが本音だ。確かに見ていていろいろ疲れる子ではあるんだけどね。
「ついて来てっ。もうすぐ薫とはぐみも来るはずだから」
「ああ、やっぱりみんなに紹介されるんだね……」
とは言いつつも、彼女の元気な背中を見ていると自然と笑顔が湧いてきていた。こころちゃんと出会ってから今まで、彼女はずっと笑顔のままだ。恐怖や悲しみなんていうネガティブな感情とは無縁そうな、心から人生を楽しそうに生きる彼女のパワフルさには感服してしまう。出会ってから間もない僕がこう思えるのだから、普段から彼女と共に活動しているハロハピは一体どのような時間を過ごしてきたのだろうか。僕も彼女に紹介されるのが幾分か楽しみになってきていた。
「薫、はぐみ。紹介するわ。麗牙と愛音よ!」
そしてハロハピがよく集まるという部屋に招かれた僕らは、その後辿り着いた二人の少女の前に立ち、こころちゃんによって紹介されていた……のだが、実はここに至るまでいろいろあったのだ。
少し時を戻して話をしよう。
まず席に着こうとした僕らの前に、先程のような黒服を着た人たちが颯爽と現れたかと思えば、僕らが座るための座椅子をなんと別で用意してくれたのだ。明らかに他とは違うような立派な、下手すればこころちゃんの椅子よりも高価そうな椅子に僕らを招いていた。ゲスト向けにしては豪華過ぎる気もするような……魔族の集会でもない限りこんな席に着くことは無いんじゃないかと思うレベルの椅子だ。
それから、愛音がくしゃみをした時のことだ。部屋の空調が僅かに暖かくなったと思えば、機敏な動きで現れた黒服が愛音に毛布を渡そうとしていたのだ。寒いわけじゃないから大丈夫、と言う彼女の言葉で黒服は退室し、直後部屋の温度が戻ったのが分かった。
その他にも愛音が好んで取っていたピンク色のマカロンが真っ先に消えた時には即座に補充されたり、僕のローズティーもカップの半分くらいで継ぎ足されて一向に無くならなかったりと、少しやり過ぎくらいのおもてなしをされていた。元からこれくらいする家なのかと考えたが、それでもやはりお客と呼ぶには些か待遇が厚すぎるとしか思えなかった。
『今日はみんなとっても忙しそうね』
『いや忙しそうっていうか、なんかいつもより気合いの入れようが違くない?』
そんな二人の会話から、僕たちが普段よりも異様なまでに手厚い歓迎をされていることを確信した。単にこころちゃんの客というだけでは説明が付かないほどの扱いを受けているが、その答えについては松原さんが確信めいた理由を述べてくれていた。
『多分……紅さんが王様だからじゃないかな……』
『お、王様?』
『なるほ……うちらの素性……既に丸裸か』
松原さんと愛音の予想が正しければ、この家の人たちは僕がファンガイアのキングであるということを既に知っており、その上で手厚く振る舞うよう手回しされているのだろう。しかしそれでもあからさま過ぎる気はするんだけどね。ファンガイア王とは言え、人間の彼女たちにそこまでしてもらう必要はないとは思うのだが……。誰かの指示だろうか?
『王様!? 麗牙っ、あなたって王様なの!?』
『ああやっぱりかー』
取り留めのない会話を続けていたためにようやく落ち着きかけていたこころちゃんだったが、僕の素性を知ってまた先程までの熱が蘇ってしまった。結果、僕たちはハロハピの残る二人が来るまでじっくりとこころちゃんに絞られることになったのだ。
そして現在、「ハロー、ハッピーワールド!」の全員が揃った部屋で、僕たち兄妹は改めて自分たちのことを話そうとしていた。だが、愛音には気になる人がいるみたいで……。
「えっと、初めまして。紅麗牙です。こっちが妹の愛音で……愛音?」
「……薫じゃん。やほ、元気?」
「やあ愛音、まさか君が私たちの探し求めていた人だったとはね……ああ、運命とはなんて儚いものなんだろうか」
「……知り合い?」
「同じ学校のバンド仲間ってことで……前にリサから紹介された……」
「初めまして、私は
「え? あ、そ、それはどうも……?」
愛音と同じかそれ以上の長身の、羽丘女子の制服を着た少女が僕に向けて綺麗にお辞儀を……というか手も添えてどこかわざとらしく演劇のようにお辞儀をしていた。彼女──瀬田さんに対して愛音がどのように話したのか気にならないでもないが、それよりもこの人、「儚い」の使い方間違っていないだろうか? いや確かにファンガイアだし散り際は儚いなんて揶揄されるけど、愛音と偶然巡り合えた事自体は儚くとも何ともないし、そもそも儚い美貌って何なんだ、病床に伏す薄命美人か僕は。この短いやり取りの中だけでも、彼女もこころちゃんと同じようにぶっ飛んだ人なのかもしれないという予感がしてきて身構え始めていた。
「
そして気を取り直して次の子──北沢さんの方へと視線をやる。こころちゃんと同じで明朗快活で、制服を着ていても少しボーイッシュな雰囲気を感じさせる少女だった。
「こころんが見た金色の人って女の子だったんだね。はぐみ、てっきりもっと大きな男の人かと思ってたよ」
「あはは、確かにそう思うよね」
「兄さん、それどういう意味……」
黄金のキバなんてものを身に纏って戦えば、普通は屈強な戦士が装着しているものと思われても仕方がないだろう。その力の恐ろしさを知る者からしてみても、僕や愛音のような若い者が纏っているのは信じ難いものなのだ。
先の二人が凄まじい人物であったために少しだけ身構えてしまっていたが、そんな普通な感想を抱く辺り北沢さんはそこまでぶっ飛んだ人物ではないようだ。そんな風に安堵していたのだが、そんな期待は秒で裏切られることとなった。
「でもそれだけじゃないわはぐみ。二人とも赤くてキラキラした姿に変身するのよ!」
「へ、変身? 二人とも赤色……えっ、だ、ダメだよ! 赤色は一人じゃないと!」
「え……?」
「はい?」
ん? この子は何を言ってるんだ? 赤は一人とか何のことだ? 話す内容の意味が全く理解出来ず、僕は何とか理解しようと頭を動かそうとするも、北沢さんの走り出した口は止まらずどんどん捲し立ててきた。
「変身するならみんな違う色って決まってるんだよ? あかりも言ってたし」
「いやちょっと待って何の話? みんな違う色? ってか誰あかりって?」
「確かにそうね。確かにあの時もみんな違う色だったわね」
「ああ、懐かしいね……みんながヒーローとなって彼女に笑顔を思い出させようとした時だね」
「いやあの、だからこっちの話を……」
「兄さん……これ早く止めないとこっちの世界が壊される……」
北沢さんどころか、こころちゃんや瀬田さんも話に乗っかってきて形容できない混沌とした空間が形成されようていた。彼女たちの間で通じる話はあるのだろうが、こっちは知ったことではないのだ。それに……その、なんだ……集合系のヒーローって、そのノリは多分僕らの専門外だ。よくてお隣さんだが……って違う! そうではなくて、愛音の言う通り早くこの会話を止めないと危険なことになる気がするのだ。いろんな意味で!
「あー……多分さ、はぐみの思ってる集合系のヒーローとは違うと思うよ? えっと、ほら、名乗りとか無かったし」
「そーなのみーくん?」
「うん。だから二人はそのままでいいと思うよ。それとごめんなさい紅さん。みんな気持ちが昂るといつも周りを置いて行っちゃうというか……」
「た、助かります」
「美咲……いいやつ」
だが、助け舟を出してくれた奥沢さんのお陰でなんとかその場は収まることができた。だが正直、もう頭が痛くて帰りたい気分だ。「うちのものがすいません」と言わんばかりに苦笑する奥沢さんも苦労しているのだと思われるが、そんな奥沢さんは既に彼女たちのテンションに慣れている様子で、そこは素直に感心してしまう。
「なんか、異空間に放り込まれたみたいだ……」
本当に全くの異世界に迷い込んだかのような気分にさせられるが、恐らくそんな異世界を作り出した張本人であるこころちゃんが、いつしか僕らの前に躍り出て胸を張って声を上げていた。
「じゃあ今度はあたしたちの番ね! ようこそ二人とも! あたしたちが『ハロー、ハッピーワールド!』よ!」
ドーン、という大きな効果音が付きそうな勢いで自信満々に宣言するこころちゃんと、彼女の周囲でこちらを見やる四人の少女。瀬田さんと北沢さんは楽しそうな視線を送っているが、松原さんと奥沢さんは少し遠慮しがちな目をこちらに向けている。しかし、きっとこれがいつもの彼女たちのあり方なのだろう。それぞれ違う表情を浮かべながらも、その心に流れる音楽は見事に調和されているのが聴こえていた。
今、僕の目の前にいるのは強い絆で結ばれた一つの世界なのだと、彼女たちの音から自然とそう感じさせられていたのだ。
「世界を笑顔に! それがあたしたちの目標よ! だから、あなたたちも協力してくれないかしら?」
本当にとんでもないガールズバンドと巡り合ってしまったものだと、思わず出てしまった笑いと共に僕はしみじみ思うのだった。