各地で起きていたレジェンドルガの侵攻も健吾さんやアゲハたちの活躍により沈静化を迎えていた。各部隊の中心にいた大元と思しきマミーレジェンドルガを撃破したことにより操られていた人たちも無事元に戻り、先ほどようやく全ての人たちの介抱を終えたところだ。未だ混乱する人たちの今後の対応も青空の会がなんとかしてくれるだろう。
そして、僕もまた決断の時が訪れていた。
「リサさん、紗夜さん。待たせてしまってごめんなさい」
星がいくつも光り輝き出し、闇に沈んでいく空の下で僕は二人の少女と向き合っていた。
「ううん、いいよ麗牙。ずっと考えてくれていたんだよね。アタシこそゴメン。麗牙のこと随分悩ませちゃったみたいで」
「私もごめんなさい。あなたのことも考えずにあんなことをして……どんな言葉でも受け止める覚悟は出来ています」
彼女たちは既に僕の答えを聴く覚悟は出来ていた。不安そうな彼女たちの音楽は変わることはなかったが、今も真っ直ぐ僕を見つめる真剣な目を前にして僕も覚悟を決める。
「僕は……好きだと思っていた人がいました。一緒にいると嬉しくなるというか、温かくなるようなそんな人が。僕はそれがずっと恋だと思っていました。でも……それは多分……」
「……」
その先の言葉は口に出さない。
言わずとも彼女たちには伝わっているだろうと感じていたから。
僕が彼女たちに感じていたのは温かい想い、それは間違いない。
しかしそれは恋ではない。
そして……
「ごめんなさい。僕は、二人の想いに応えられません」
僕は彼女たちを拒絶する言葉を口に出してしまう。
「……」
二人の口が開くことはない。しかし、彼女たちの心の音が酷く乱れていくのが聴こえてしまっていた。覚悟していたこととはいえ、大切だと思う二人の心を傷付けてしまうことに僕自身の胸にも激しい痛みを感じてしまう。
「……っ」
二人の揺れる瞳がより潤いを増していく。ようやく開こうとした口も小さく揺れ、震える息が吐き出される。
「僕がそう思った理由は……」
「──いいよ。言わなくて」
「え?」
このままじゃリサさんたちは納得しない。せめて僕が彼女たちの告白を断る理由を言わない限り、いつまでも苦しませてしまうと感じたからだ。しかしそんな僕の考えもリサさんに止められてしまう。
「麗牙がそうしたいって思ったんだよね? だからさ、そこにはそれなりの理由があるってことは分かるよ。麗牙がいい加減な人じゃないってこと、アタシよく知ってるし。ねっ、紗夜」
「はい……もし紅さんがそれを伝えることに苦しさを覚えるなら……私は聞かなくてもいいです。これ以上あなたを苦しませてまで、自分を納得させる必要なんて……ありません……」
「リサさん……紗夜さん……」
心の音は泣いているのに、彼女たちの表情にはどういうわけか薄く笑みが浮かんでいる。確かに彼女たちの想いに応えられない理由を二人に話すのはとても苦しい。しかしそれを彼女たち自身が止めてくれるとは思わず、つい彼女たちの名を呟いてしまう。
「本当にごめんなさい」
彼女たちを選ばなかったこと、それによって彼女たちの心を泣かせてしまったことに詫びを入れ、深く頭を下げる。二人は何も言葉を発することなく、僕の頭に重い視線が降り注いでいるのが感じられた。
何か言いたいことがあるのなら言って欲しい。泣き言でも罵声でも、僕を傷付ける言葉ならなんでもいい。僕は彼女たちのことを酷く傷付けたのだ。二人には僕のことを貶す理由も権利も充分にある。本当はされたくはないが、絶交を突き付けられても仕方なかったのだから。
「……あのさ、麗牙……前にアタシがあげた首飾り……まだ持ってる?」
しかし長い沈黙の後、小さな声でリサさんが僕に呟いた。前にリサさんの言う首飾り……それはリサさんたちから想いを告げられた日、彼女が僕のために取ってくれたクレーンゲームの景品のことだった。
「はい……一応今も……」
「それさ……ちょっと、こっちに渡してくれないかな」
「……分かりました」
もしかするとこんなこともあるかもしれないと、ポケットに入れていたそれをゆっくりと取り出す。首に掛けても決して重みを感じない筈の小さな首飾りが、今はとても重く感じられた。リサさんに手渡す時だって、あまりの重さに手が震えてしまうほどだ。
首飾りを受け取った直後のリサさんの手が僅かに震えたのも、きっと僕の気のせいではないだろう。
「ありがと……麗牙」
手渡された首飾りをリサさんは慈しむように眺めて、両手で優しく包み込んでいた。
「ホントにありがとう……」
今まで僕のものだったとは思えないくらい大事に、想いを込めるように握りしめ、自分の身体の一部であるかのようにそれを抱きしめるリサさん。
そして……。
「……えいっ!」
「えっ?」
リサさんは首飾り持った腕を思い切り振りかぶり、なんとそれを川へと投げ捨ててしまった。ポチャリと小さな音を立てて黒い水の中へと吸い込まれていく首飾りに反応出来ず、僕はただそれを見ていたまま固まっていた。
「あぁ〜〜……スッキリしたっ」
笑顔を浮かべて高らかに夜空へ声を上げるリサさんに僕は面食らってしまい、間抜けな声を上げたきり何も言えなくなってしまう。そんな僕に、リサさんは空を見上げながら声を張り上げていた。
「いつまでもあんなものあったらさ、アタシきっとダメになっちゃうんだよね……だからこれでおしまい。ねっ」
「リサさん……」
最後にリサさんは僕に向けて可愛らしくウインクし、笑顔を見せてくれた。その心は今もその表情とは正反対の音を奏でているというのに、どうしてそんな顔が出来るのだろうか……。
「だからさ……早く行ってよ……」
あくまで笑顔だけを見せ、僕に去るように求めるリサさん。彼女の見せる笑顔は嘘だったが、その言葉は本心なのだと……それが今の彼女の望みだと僕は感じていた。僕に悲しみを見せたくないのだという切なる願いを訴えているようだった。
それに、無理矢理作ったような笑顔を浮かべるのは彼女だけではなかった。
「紅さん……私も今は……紅さんにここにいて欲しくないです……」
「紗夜さん……」
紗夜さんもまたリサさんのように震えた笑顔を浮かばせて、僕にこの場から消えるよう望んでいた。
「お願いです……明日になればまた……私たちは、前までのようなバンド仲間に戻りますから……だから……っ」
口の端を震わせながら上げて、目尻を下げようとしながら懇願する紗夜さんに僕は居た堪れなくなり、一歩後退りしてしまう。逃げてどうするのだと一瞬思うも、直ぐに立ち止まろうとして、しかしそれが間違いであることに気付く。
「(……いや)」
そう、これでいいのだと、僕は自分に強く言い聞かせる。彼女たちが僕に行ってくれと心から望んでいるのだから、僕はその望みを汲むだけだ。彼女を傷付けた僕に出来るのは、今はそれくらいしかなかったのだから……。
「うん……分かった……じゃあ、行くね……」
「……うん。バイバイ」
「はい……また……」
「うん……また、今度」
踵を返し、僕はその場から重い一歩を踏み出します。一度踏み出した足に続いていくように次の一歩、その次の一歩も自然と前に出て行く。
そして僕は最後まで彼女たちに振り返ることなく、二人の視界から姿を消していた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ただ、いま……」
消えそうな声と共に帰宅した紗夜は、重く止まりそうになる足取りを何とか動かして自室へと入り込み、ベッドの上へと重く腰掛けていた。麗牙が去った後、リサと紗夜は互いに慰め合うことも泣くこともなく、呆気からんと小さく笑いながら別れた。麗牙の前だけでなく、リサの前でも同様に泣き言を言いたくはなかったのだ。リサも紗夜も、互いに傷の舐め合いを望んでいるわけでなかった故だった。
それにしても、と紗夜は自分で思う。よくもここまで涙を流さずに耐え抜いたものだと、紗夜は自身でも驚いていた。泣き顔なんて無様なものを見知らぬ他人に見せたくないという彼女の強い気持ちがそうさせていたのだろうか、紗夜には分からない。もしかすると、案外にも自分は然程ショックを受けていなかったのかも知れないとさえ思っていた。
「ぁ……あれ……っ」
しかし、自分の家に辿り着いたことで安心感が生まれてしまったのか、彼女の目から小さな雫が生まれ、彼女の白い頬をなぞっていた。
「どうして……ずっと、耐えてたのに……っ」
先ほどまでの膠着が嘘のように瞳から次々と流れ出す涙に紗夜は困惑する。自分はここまで溜め込んでいたのか、人はここまで涙を生み出せるものなのか、等といった感情は無く、紗夜は呆然と溢れてくる感情に流されるままであった。涙の止め方も思い出せずに、ひたすら流れてくる悲しみの受けどころさえ無いまま紗夜はただただ泣き顔を両手で押さえることしか出来なかった。
その時、彼女の部屋の扉が静かに開かれた。
「っ、おねーちゃん……」
「日菜……っ……」
紗夜の許可もなく勝手に開かれた扉から、日菜が部屋に上がり込んできた。もう見ることはないかも知れないと感じていた姉の泣き顔を前に日菜の表情が曇るも、彼女はそのままゆっくりと紗夜の元へと近づき、同じベッドに紗夜に寄り添うように腰をかけた。
「日菜……」
「いいよ、おねーちゃん……あたし、今日はずっとおねーちゃんの側にいるから……」
そう言い日菜は紗夜の頭を自分の胸に抱き寄せた。
腕の中で震える姉を日菜は優しく包み込む。
他人の気持ちを理解することが難しいとよく言われる日菜であったが、ことこの場において姉の涙の理由を察することのできない彼女ではなかった。紗夜の気持ちも、彼女が望むことも日菜は全て知っていた。だからこそ、紗夜の心が酷く泣きじゃくっていること……彼女の願いが儚く散ったことを日菜は心で感じていた。
「日菜……っ、ひなぁ……っぐ……ぅぅ……ズッ……ぁ……」
「我慢しないで……あたしもさ、一緒に泣いてあげるから。おねーちゃん」
紗夜は日菜の背中に手を回し、彼女の細い身体を折ってしまうかというほど強く抱きしめていた。日菜も震えが大きくなる姉の髪を優しく撫でながら、温かく言葉を投げ掛ける。日菜の言葉の通り、彼女の目尻にもまた薄く涙が溜まっていた。姉の悲しみに呼応するように、日菜の心も同様に悲しんでいた。
日菜も決して見ることはないだろうと思っていた姉の慟哭に僅かながらの動揺もあったが、彼女の涙を拭うハンカチとなれるのは自分しかいないという思いもあったため、日菜は紗夜の悲哀から逃げることはなかった。
「っ……あぁぁぁぁぁぁぁああああああああああっ!!」
そして紗夜は堪えていた全ての悲愴を吐き出した。
声が枯れるほどの叫びを上げ、そのまま果ててしまうかもしれないと日菜が感じてしまうほど、その慟哭は深く痛々しかった。
「ひっぐ! っ、ぐすっ……(紅さん……紅さん……っ)ぅ、ぅっ……あぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!!」
心の中で愛しの人の名を何度も叫びながら、叶わなかった恋に向けての悲哀を紗夜は吐き続ける。
一生分の涙と叫びを出し切るほどに激しく乱れるが、今はそれが彼女にとって大事な時間であった。
大切な妹の胸の中で、本気の失恋に打ちひしがれる紗夜。
その経験はきっと、彼女を一人の人間として大きく成長させるのだから。
日菜はそんな紗夜に何も言うことはなく、ただただ泣き荒ぶ姉を抱き寄せるばかりであった。
同じ頃、リサもまた自室のベッドの上にて一人蹲っていた。その胸の中には、あのウサギのぬいぐるみが……麗牙が彼女にプレゼントしたゲームセンターの景品であり、リサの宝物でもあるそれが抱擁されていた。
「っ……麗牙ぁ……」
宝物である麗牙からのプレゼントを強く抱き締めながら、リサは震える声で初恋の人の名を呼ぶ。自分からのプレゼントは捨てたにも関わらず、相手からのプレゼントをどうすることも出来なかった。悲しさと寂しさ、肌寒さを埋めるために彼からの贈り物に縋ってしまう。抱き締めているだけで、そこにあの紅色の青年がいるような気がしたからだ。
しかし自身の恋は哀れにも砕け散った。
自分はもう、彼を想う資格がないのだと、ぬいぐるみの優しい感触が肌に触れるたびに考えてしまう。初めて抱いた恋心。初めて好きになった男の子。それを諦めなければいけないことが、リサにとっては感じたことのない耐え難い苦しみであった。
「っ……っぐ……ぅぅ……」
ぬいぐるみに顔を埋めて涙を流すリサ。ずっと一緒にいたいと思っていた男の子を想い、歯をくいしばる。しかしいくら涙を流そうとも、自分の想いが叶うことはない。それが分かっているからこそ、リサは一人静かに悲しみに沈んでいた。
今日一日だけは誰にも迷惑をかけずに一人で泣いていようと、そう思ってすらいた。
しかしその時、リサの耳に扉を叩く音が聞こえてきた。
「リサ……」
「……ゆきなぁ……」
扉が開き顔を覗かせたのは、リサの様子を心配して訪れた友希那であった。リサの涙に濡れた顔を見た瞬間、友希那はすぐさま彼女の元へと歩み寄った。ゆっくりとベッドに座るリサの隣に腰をかけ、震える肩に手を添える。
「リサ……その様子だと……麗牙は……」
「っ……あ、あははぁ……情けないよね……アタシ……ら、麗牙にさ……けっ、きょく……ふ、フラ……っ、フラれちゃっ……っぐ……ぅぅっ」
「強がらないで……」
事実を事実として言葉にするだけで、リサの胸にナイフが突き立てられるような痛みが走っていた。傷付き泣き伏せるリサの頭を友希那は優しく抱き寄せていた。
「泣きたい時に泣かないと、楽しい時も楽しいと感じれなくなるわよ。だからリサ……今は耐えないで。私はここにいるから」
「っ、ゆきな……ぐ、ぅあああぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!」
友希那の包み込むような言葉が彼女の強がりを押し崩す切っ掛けとなり、リサは自身の慟哭を親友の胸の中に曝け出した。
「好きだった……大好きだったのにぃぃ! あぁぁぁぁはあああああああああぁぁっ!!」
好きで好きで堪らなかった初恋の人。それが届かなくなった時の悲しみを友希那は理解してあげられない。しかし、子どものように泣き叫ぶリサの姿を見て、その哀情の激しさが肌で伝わっていた。痛いほどに肌を、そして自身の胸をも突き刺すような慟哭が、友希那にも感じられていた。
「らいが……麗牙ぁぁぁぁぁあああああああっ!」
初恋の相手の名を泣きながら叫ぶ姿が悲しくて、友希那は胸を痛めていた。しかし、もう二度と見ることはないと……見たくはないと思っていたリサの悲しみの涙……今それを拭えるのは彼女しかいなかった。だからこそ、友希那は最後まで……リサの涙が枯れ果てるまで、大事な人を抱き締めていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ちょっと待てや麗牙」
リサさんと紗夜さんの目の前から消え去った後、僕は健吾さんに呼び止められていた。僕を睨むその目付きは嫌に鋭く、もしかするとこのまま殴られるかもしれないと感じたほどだ。
「何やアレ」
「何がですか」
やはりさっきのやり取りを全部見られていたのだろう。彼が何を言いたいのかは大体分かっているけど、少し惚けて彼に質問を問い直させる。
「何やねんあの答え。二人とも付き合えやんって、それがお前の望みなんかぇ!?」
健吾さんが僕に憤慨するのも無理はないだろう。僕は以前に健吾さんには「リサさんが好き」だと言ってしまっている。彼が密かに僕とリサさんの仲を応援してくれていたことも知っていた。だから、そんな彼のことを裏切ってしまったという罪悪感も僕の中にはあったのだ。
「はい……ごめんなさい健吾さん。僕は、やっぱりリサさんに抱いていたのは、ただの親愛だったみたいです。恋では……無かったと思います」
「思いますって……いや、それならそれでもええわ。それでも、お前が二人を気に入ってたんも事実やろ。じゃあ断る決め手は何やったんや。悪いけど俺は聞かせてもらうで」
二人には最後まで話さなかった、想いを絶った理由……健吾さんになら話しても大丈夫だろうと、僕は重い口を開いた。
「欲しいと思えなかったんです……心から」
「……は?」
うん、最低なことを言ってると自分でも思う。だからこそ彼女たちには聞かせたくなかったんだから。
「僕は……言われるまでもなくファンガイアです。そしてファンガイアのキングです。しかし、もし僕に心から愛する人が出来たなら、僕はきっと今ある全てを投げ出してでもその人を守ろうとするでしょう。または、その人に僕の全てを差し出していたでしょう。だけど……僕にはそこまでして二人と付き合いたいとは思えなかった。僕の全てを差し出してもいいとは思えなかったんです」
「……」
リサさんは僕のために自分のライフエナジーを差し出してもいいと言ってくれた。あそこまで献身的な人は滅多に見ないし、だからこそ彼女に惹かれてしまったのだろう。しかし、僕自身は彼女に対してそこまでしてあげられるとは思えなかった。何者にも変えがたい存在、そう思える相手に出会えることこそが恋と言うのなら、僕の気持ちはきっと恋ではない。
僕はただ彼女にずっと笑っていて欲しかった。
ずっと笑い合えるような関係でいたかった。
そう、それだけの……ただの親愛だった。
「僕の半生を捧げてまでの相手だと思えなかった。それが答えです」
「半生って……はぁ……ホンマくそ真面目で腹立つわお前……」
学生時代の恋人はその時だけの関係、なんて言う人もいるけれど僕はそうありたくはなかった。付き合うなら付き合うで真剣に向かい合いたかったし、二人もきっとそれを望んでいたはずだろう。だからこそ、僕は自分の命と向かい合ってその答えを出した。誰になんと言われようと、これが僕の導き出した精一杯の誠実さだった。
「やけどな、そんな泣きそうな顔で話しても説得力ないで、麗牙」
そんな健吾さんの指摘に思わず息を飲んでしまう。
「ど、どうして僕が泣く必要があるんですか。本当に泣きたいのはリサさんと紗夜さんの方なのに」
二人の気持ちを想って顔に出てしまったのだろうか。悲しむべきでないはずの僕がそんな表情を浮かべてしまっていることに自身で驚き、慌てて健吾さんから顔を背けてしまう。
「僕は別に何も悲しいことなんてありません。自分の心と向き合って、その答えを二人に告げた。それだけですから」
「麗牙、お前ホンマは──」
「健吾さん」
それ以上は彼に語らせない。僕の心の声を嘘にさせないために。僕の決意を鈍らせないためにも。
だから僕は、彼の目を見ないように夜空に輝く月を見上げて小さく呟いた。
「僕の恋は、今も昔も
あの日の少女の面影と破れた恋を想い、そして僕は夜の世界へと足を踏み出していく。
明日になればきっとみんな、以前のような関係に戻っていると信じて……。
第一楽章 〜薔薇と牙の邂逅〜
―完―
第一楽章は終わり、物語は黄金と千紫万紅の歌へと続いていく……。
序盤が終わったということで再びアンケートを取りたいと思います。
その上で言わせていただきます。
これは「キバ」で、まだ「序盤」が終わったところです。
最終的に麗牙が結ばれるとすれば相手は誰であってほしいですか?(※予想ではなく貴方の希望でお答えください)
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友希那
-
紗夜
-
リサ
-
あこ
-
燐子