白熱した曲作りも日が傾き始めたことで再び手を止めることとなり、僕たちは揃って昼食を取ることにした。冷蔵庫には食材も揃っていたのでまた僕が手を振るおうかと考えていたが、結局僕の出番が来ることはなかった。何故なら……。
「は〜い、お待たせー☆」
「ぅぉぉ……」
『え、これ本当に女子高生の料理?』
愛音と、いつの間にやら姿を現したキバットの感嘆の声が漏れていた。その声を出させた理由も、机の上を彩るように並べられたリサさんの手料理のためだ。「せっかくだからアタシに作らせて。お願いっ」と強く頼まれて断れるはずもなく、好きに使っていいとだけ伝えて台所を貸し、リビングで楽しみに待っていたのだけど……いや、まさかここまでとは……。
「この秋刀魚……焼き加減……ちょーいい……」
「愛音のリクエストだったからね。失敗するわけにはいかないよ」
『いやいや、こりゃ見事な焼き具合……どれ、オレ様お先に──』
「キバット……お行儀悪い……」
『いででででっ!? わ、分かった悪かったからっ、愛音ストップ! あだだっ! もげるっ? 翼もげるからァッ!?』
先に料理に手を付けようとしたキバットの翼を両手で抑えつけ……というか引き裂こうとしているようにも見える愛音に皆苦笑する。まあ彼女がリクエストした通り、焼き魚は愛音の好物でもあるから、抜け駆けは許せないのだろう。特に秋刀魚が好きなのだ彼女は。今日の朝だって旬が過ぎたにも関わらず、わざわざ冷凍秋刀魚を買ってきて「これ、焼いて」と言いながら家に上がってきたくらいなのだから。
ただ、焼き秋刀魚がメインに添えられているのは愛音とキバットの分のみだ。元々二尾しかなかったのだから仕方ないと言えば仕方ないのだが。
「その他も丁寧ですね。流石にここまでは僕も出来ないかも」
僕を含めた三人の主菜は生姜焼きだった。生姜焼用のタレなんて買ってなかったから、彼女が自分で台所にある材料から作ったのだろう。それを引き立たせる周りの副菜などもそうだが、本当に料理慣れしている人の出すものだと感じずにはいられなかった。
というか、何故か友希那さんが得意げな顔をしているのが気になるけど……。
「リサさんって、普段から料理とかするんですか?」
「んー、アタシはたまに手伝うくらいなんだけど、誰かのために料理するのって楽しいからすぐ覚えちゃうんだっ♪」
彼女が誰かのためを思う時、いつだって彼女の音楽は癒しのような曲を奏でていたのは分かっていたつもりだ。しかし心から浮かべる笑顔とともに楽しそうに答えるリサさんを見て、やはりこの人はどこまでも優しい人なんだという思いをより強くする。やはり僕じゃとても釣り合うような人じゃないや、リサさんは。
「リサ……フられてからの方が点数稼いでる……」
『しーっ、そういうこと言うなっての!』
「と、とにかく、食べましょうか。リサさんも席に着いて」
愛音の小さな呟きをかき消すように全員に食卓に着くよう声をかける。せっかく平和な時間を過ごしているのだから、これ以上のトラブルはゴメンだ。
「うんっ。みんな、揃ったよね。じゃ、いただきます」
「「いただきます」」
出来ることなら、今日一日は何事も起こらないでほしい。そう願わずにはいられない、穏やかな午後のひとときであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ねぇ、少しいいかな?」
全ての撮影過程を終了し、スタッフさんたちの準備が整うのを待っている私に向けて柔らかな声がかけられた。先ほども少しだけインタビューした、この店で働いているあの可愛いらしい女の子だった。
「どうかしましたか?」
「あー、そこまで大した用じゃないんだけどね。今日は来てくれてありがとう。私ね、千聖ちゃんたちのために用意してるものあるんだ」
「そうなの。ありがとう、私たちのために」
どうやら私たちへの差し入れがあるようだけど、彼女が遠慮がちになってしまうのも自分の立場のせいだろうか。それでも相も変わらず可愛らしく笑顔を見せようとする気兼ねはとても売り子に向いているのかもしれないと、一瞬だけそう感じていた。
しかし、ここまでで抱いていた違和感を思い出して私はその考えを改める。どういうわけなのか先程のインタビューの時もそうだったが、私には彼女が微笑む姿がどうにも腑に落ちなかったのだ。
誰に対しても同じ笑顔。同じ声色。同じ身振り。
まるで笑顔だけを切り取って貼り付けたような、あからさまな作り笑顔に見えて仕方がなかったのだ。
「そうだ、千聖ちゃんに一つ質問してもいいかな?」
「? ええ、私に答えられることなら」
しかし作り笑顔なんて誰だって作ることはあるものだ。自分だって芸能界を生き抜いていくために、使いたくもない作り笑顔を何度見せてきたことか。確かに彼女の笑顔に関しては不気味に感じることはあるけれど、それを非難しているようではこの先だってやっていけないのだろう。そう思い直して彼女の質問に耳を傾けていたのだけど……。
「もしさ、大事な友達と、あまり好きじゃない見た目の悪い男。どちらかを選べって言われたら……千聖ちゃんは選べる?」
意味の分からない……いや、正確には意味のない質問を繰り出され、私は一瞬言葉を失ってしまう。そもそも普通は選ばせる選択肢なんて、どちらか選ぶことのできない二つを提示するはずなのに、それでは質問が成り立たない。だから、私はこれが意味のある質問だとは思えなかった。
「……あなたが何を言ってるのか分からないわ。選ぶってどういう意味で? 第一、そんな比べようもないものを比べて意味があるの?」
「比べようもない……本当かな……?」
「あなた、さっきから何を……」
この子……やはり少し様子がおかしい。彼女の張り付いた笑顔がとかく恐ろしく感じる。ここにいること自体が間違いなのではという気がして、逃げるように一歩後ろへ引いた時、私たちの間に割って入る影があった。
「失礼。出演者への差し入れと言うことなら間にスタッフを通してもらわないと」
撮影陣の中にいた一人のスタッフさんが、私を守る盾になるかのように彼女の前に立ちはだかっていた。えっと、確か……亀山さんだったはず。おかげで助かって内心でほっと息をつくけど、件の少女の方は浮かべた笑みをより大きなものに……いや……。
「こういうこともちゃんとしておかないと、後から何でも許されてしまうから……悪いけど──」
「……ふふっ」
「っ(な、何……?)」
自分の思い通りにならなかったというのに、彼女は口が裂けるかと思うほど大きく口の端を吊り上げていた。それを見た自分と、そして亀山さんの息を飲む声が空間に溶けていく。
何故こんなにも目の前の少女を不気味だと感じるのか。
生じていた胸騒ぎを信じて私が警戒し始めた時、彼女はぽつりと呟いた。
「自分から来てくれるなんて……嬉しいなぁ」
「っ!」
直後、彼女の姿が変貌を遂げた。
「なっ……!」
少女の身体は僅かに原型を歪め、一回り大きな体躯へと変身していた。獣のように鋭い爪を備えた手脚、背中から生えた巨大な翼、そしてブロンズの彫刻のような整った女性のような上半身。その少女の顔も、今では人間のものとは思えないほどに表情の消え失せた仮面のようなものへと変化していた。
五体こそ人間のそれに近いが、そこにいたのは正しく異形だった。そして、私の知る異形と言えば一つしか当てはまらない。そう思っていたのだが……。
「ファ、ファンガイア!?」
「んー? 違うよ……
「ッグゥッ!? 逃げるんだ! 千聖ちゃん!」
「っ!?」
ファンガイアではないと語る目の前の異形は、その巨大な腕を亀山さんに突き立てようとする。その瞬間、亀山さんの身体も同じように変貌した。全身にステンドグラスのような模様が浮き上がった直後、彼の身体は異形のものへと変身していた。ステンドグラス状のに散りばめられた細胞で形成された、フードを被った亀のような容貌の異形……以前見た異形と同じ特徴を兼ね備えたソレを見て、今度こそ間違うことなく彼がファンガイアだと私は確信した。
「か、亀山さんっ!?」
「早く!」
亀山さんがファンガイアだということに驚きを隠せないが、この状態では彼の言う通り私には逃げることしか出来ない。何がどうなっているのか混乱した今の頭では何も考えようもないが、少なくとも亀山さんが敵ではないということだけは何となく理解できた。そして、少女の変貌した怪物を抑えてている亀山さんに踵を返して駆け出そうとした時、目の前から見知った顔が駆けつけてきた。
「チサトさん! み、皆さんが──キャァァァァァッ!?」
「イ、イヴちゃん!?」
顔に真っ青にしてこちらに駆けてきたイヴちゃんだったけど、二つの異形の姿を目の当たりにした途端に大きな悲鳴を上げてしまう。こんなとんでもない光景を見れば仕方のないことだけど、それよりも彼女の言う「皆さんが」の続きが気になってしまう。だが今はそんな時ではない。急いでイヴちゃん、ひいては皆を連れてここから逃げ出さないと!
「イヴちゃん! 今は逃げ──」
「ッガァァア゛ッ!?」
「──な──きゃっ!?」
しかしその時、私の背後から亀山さんの悲鳴が聞こえて振り返ってしまう。それと同時に突風が私のすぐ横を通り過ぎ、その勢いで後ろへと倒れ込んでしまう。
そして気付いたのだ。今のは風ではなく、あの少女が変貌した怪物だったのだと。そして、片手に力無くグッタリとしたファンガイアの首を掴んだ怪物が、イヴちゃんの目の前に立っていた光景が目に入った。
「ひぃぃッ!?」
「っ!? 逃げてイヴちゃん!」
「むーだっ。ふふっ……追ってきてよ千聖ちゃん。選ばせてあげるから。じゃあねっ」
「キャァァァァァァァッ!!」
「イヴちゃん!!」
怪物の太い腕がイヴちゃんの細い体に巻きつくと、そのままイヴちゃんを連れて跳び上がり、窓ガラスを割って店の外へと出て行ってしまった。私もこのまま手をこまねいているわけにもいかず、すぐさま玄関へ向かって走り出そうとする。
しかし……。
「な……何よこれ……っ」
目の前の光景に呆然として、私の足は立ち止まってしまう。店の中にいた客や店員、果てはテレビ局のスタッフまでもが虚ろな目をし、その腕は先ほどの怪物と同じような獣の手へと変化していたのだ。覇気もなければ言葉も発さず、ただ呻き声のみをあげる様はゾンビのようだと思わずにはいられなかった。その中にはマネージャーなどの見知った顔もあっただけに、私の中の動揺は決して小さくはなかった。
「ァァ……」
「そんな……っ」
しかしいつまでもここで立ち止まってはいられない。私めがけてゆっくり歩み寄る変貌した集団から逃げて外へと飛び出し、店の扉を思い切り閉めてから私は再び走り出した。目標は今も私を楽しげに見つめながら、両脇にイヴちゃんとファンガイアを抱える怪物のみ。店が人気の少ない場所に建っているためか周りに人影は見当たらず、巻き込まれる人がいないことには安堵しつつも、助けてくれる人がいないことで大きくなる不安を隠せずにはいられなかった。
「ハァ、ハァ……っ、お願い……出て……っ」
たとえあの怪物に追いついたとして私にできることは何もない。あんな人智を超えた怪物からイヴちゃんを助けられるのか、もしかするとイヴちゃんが帰ってこなくなるかもしれない、そう思うだけで計り知れない恐怖や絶望が襲いかかってきた。
だからこそ私は走りながら携帯を取り出し、自分の知る限りこの状況を打破出来る唯一の存在──健吾くんの番号に縋るように電話をかける。一生のお願いをここで使ってもいいから、と願掛けして彼からの応答を待ち焦がれる。
「……出ない……そんなっ」
しかし無情にも私の願いが伝わることがなかった。いくらコールが鳴っても一向に繋がる気配のない想いに心が折れそうになってしまう。それでも怪物を追う脚を止めることはできず、コールが続く携帯をそのままにして一心不乱に走り続けた。
「ハァ、ハァ……ま、待って!」
「あはははっ、心配しなくても待つよ。ほら、もう着くから」
「っ、ハァ、ハァ……(着くって、どこに……)」
もうすぐ追いつくだろうかと、焦る気持ちが私にそう思わせていた。しかし周りの景色なんて目もくれずに走っていたからだろうか、私はいつの間にか更に人気のない場所に……道無き道すら走っていたことにようやく気付いた。もはや周りに人工物らしきものは少なく、目立つものと言えば目の前に見える廃工場くらいだ。いや、その廃工場こそが怪物の目的地だったのだろう。広い土地のど真ん中に建つのに誰の目も届かない忘れ去られた廃工場。ここで何をする気なの……?
「フッ」
「っ!?」
二人を抱えた怪物が一歩深く踏み込んだ次の瞬間、怪物はその大きな翼を翻して空へと舞い上がった。何故最初から飛ばなかったのかとも思ったが、そもそも怪物は私に付いてきて欲しがっていたのだ。そうでもなければ、二人も抱えて走りながら息切れも起こさない人知を超えた存在に、私が追いつくはずもなかったのだから。
そして怪物は、高くそびえる二つの鉄塔の上にイヴちゃんと、そしていつの間にか人の姿に戻っていた亀山さんをそれぞれ雑に置いた。二人とも意識が失っているのか、ぐったりとしたまま塔のてっぺんから動くことはない。そして距離の離れた二つの鉄塔の丁度真ん中で、怪物は翼を羽ばたかせて浮遊しながら私の方へと楽しげに話しかけてきた。
「ふふふっ。じゃあ、さっきの質問の続きしよっか」
「質問……?」
「うーん、いや、質問じゃなくて問題だね。スフィンクスらしく」
がむしゃらに走り続け、息も絶え絶えになった状態で怪物が何のことを言っているのかすぐには理解できなかった。質問? 問題? この状況で私に何をするというの?
しかし私の混乱など御構い無しに、怪物は両手に火の玉のようなものを作り出して、二人の眠る鉄塔へとその手を向けた。
「ふふんっ」
そして、私の目の前でいとも簡単にそれを放ってみせた。
「っ」
あまりの一瞬の出来事で、止めることも言葉を発することも出来なかった。
しかし怪物の放った火球は塔に触れることなく、そのすぐ横を通り過ぎて地面に着弾し、激しい爆発を起こした。
助かった? いや違う。私の顔を見て怪物は薄く笑ったのだ。
その瞬間、私は怪物が今の攻撃をわざと外したのだと確信した。
もし今のが鉄塔に直撃すれば瞬く間に崩壊し、その上にいる無防備な二人は地面に落下してしまう。
その上で再び怪物は両手に先ほどと同じ火球を作り出した。
そして……。
「では問題。貴女が助けられるのはお友達か、それともあの怪物か。さあ、どーっちだ?」
私に、命を選択させる問題を繰り出してきた。
「え……?」
楽しげに語る怪物を前に、私は一瞬頭の中が空っぽになってしまった。自分は今、何を迫られているのか? 助けられる? どちらかを? 何がどうしてそうなの? 自分の立たされた状況に理解が追いつかず、無言が続いたことに痺れを切らしたのか、怪物は少し面倒くさげに説明を始めた。
「あれ、分からない? さっきも質問したじゃない。大切な友達と、そうでない人、どちらを選ぶかって。そのまんまだよ? 千聖ちゃんが選んだ方を助けてあげる」
「な、何を……え、選ばなかった方は……」
「えー、まだ説明いるー? 空気読んでよね。そんなの死ぬに決まってるじゃない。私と、貴女の共犯ってことでっ」
「っ……」
意味が分からない。理解が出来ない。何で? どうして命を弄んでそんなに楽しそうにしているのか? 言葉が通じるはずなのに、どうしてここまで価値観が違うのか。人間じゃなくて怪物だから? 今の私にはそうとしか思えなかった。
「早く選ばないと両方死んじゃうよ? 両方選ぶなんてつまんない答えでもね」
「っ……私は……」
しかし、選ばなければどうせ死ぬ。
どちらが死んでしまうならば、一番死んでほしくない人を選ぶしかない。そうなれば選択肢として残るのは自然とイヴちゃんだけになる。
私は無力だ。
無力な自分にできるのは、ただこうして強い者に任せるしかない。生殺与奪さえも……。
そして私は一歩、イヴちゃんの方へと足を踏み出そうとした。
イヴちゃんだけでも助けないと……そう自分に言い聞かせて。
「ま、当然お友達を選ぶよね。うん、さっさと選んじゃってよ。私早くそのファンガイア殺したいから」
「っ(だ、ダメっ!)」
しかし怪物の声を聞いて、踏み出そうとする身体を無理矢理押し留めた。今、自分は何をしようとしたのか。命を……かけがえのないものを天秤にかけようとしていた……? 幾ら選ぶしかない状況とは言え、私なんかが誰かの命の価値を決めようとしたなんて……。そんな自分の行動が恥ずかしくて、そして恐ろしくて、激しい自己嫌悪に陥ってしまう。
「なんで……なんでこんな酷いこと……」
体の奥底からくる吐き気に耐えながらも、自分のそれ以上に吐き気を催す目の前の怪物につい問い質してしまう。何が面白くてこんなことを仕掛けてくるのか。本当に自分と同じ言葉を話しているのか。自分の理解を超えた怪物相手にどうしても疑問が拭えずにはいられなかった。
「酷いって……ねぇ? 私はファンガイアを殺せれば後はどうでもいいんだよ? でもさ、人間の中で暮らしてる奴が人間の所為で死んだらさ、そりゃあもっと気持ちいいかなって? ざまぁみろって感じ」
「どうしてそこまで……」
「……いいから早く答えて。もう時間ないよ?」
「っ……!」
初めてつまらなさそうな声を出しながら、私に答えを催促する怪物。これ以上は待たないと言わんばかりに、手から作り出した火球を大きくしていく。本当に選ばなければダメなのか? 最悪の結果を免れるためにはどちらかを選べばいい。どちらも選んだなら、きっと最悪の結果が訪れる。
それでも私は……。
「(どっちの命なんて……命なんて比べられるはずないじゃない……っ!)」
友達であろうが、関わりの薄い人であろうが命は命だ。そこに好みはあっても価値に違いなんてない。私が……人間が選んでいいようなものではない。ましてや目の前の怪物にだってそんな権利はないのに……。そんな怪物の手によって、目の前にある二つの命が弄ばれている現実が悔しくて仕方がなかった。
「そう……選べないんだ。それが答えなんだ。ふーん……」
何も言えない私に向けて、至極つまらなさそうに吐き捨てる怪物。
もう、その時は迫っているのだと感じた。
だけど、私がそう思う頃には全てが遅すぎた。
「待っ──」
「ざーんねーん。時間切れ。貴女が助けられるのはお友達か、それともあの怪物か。正解は両方救えないでしたー。またの挑戦をお待ちしてまーす」
劇的な変調があるわけでもなく、先程までと変わらない調子で、余りにも呆気なく怪物は掌から火球を放った。
「──!」
もはや声は出ない。
二人の眠る鉄塔へ向かって飛んでいく火球の動きがゆっくりに見える。
アレが到達すれば鉄塔は崩壊し、二人の命は失われてしまう。
全てが最悪の未来へと動いていく様を前に、私はただただ見ているしか、そして絶望するしかなかった。
「その問題、俺が答えさせてもらうで」
しかしその時、青空から白き戦士が舞い降りた。
次回、イクサの真の力が解き放たれる。
「第67話 青空の正義:Fight for Justice」