月から聖杯戦争のマスターが来るそうですよ?   作:sahala

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サーヴァントだけでなくポケモンのマスターも始めました。メイちゃんを目当てにポケマスを始めた人は正直に手を上げなさい(。・ω・。)ノ


第十五話『Misunderstanding』

「ルキウス………?」

「今はそう名乗らせて貰うぞ」

 

 尻もちをついたまま見上げるハクノに、少女———ルキウスは鈴を転がす様な声で応える。頭には月桂樹の冠、背中や臀部が大胆に露出した真紅のドレスで小柄だが女性らしい豊かな肢体を包んでいた。獅子の顔を模した肩当てを左肩にかけ、肩当てからメアンドロス模様が縁取られた純白のマントが風にたなびく。まるで舞台役者の様な珍奇な出で立ちながら、ルキウスの威風堂々とした佇まいはそれが自然である様に魅せていた。

 しかし、ハクノは彼女を見ていると何故か胸が騒ついた。

 

(ルキウス………確か古代ローマでよく見る男性名だ。女の子の彼女が名乗るには違和感がある)

 

 いや、とハクノは心の中で首を振る。

 

(違う………俺が感じるのは、そんな些細な事じゃない。俺は………彼女がルキウスと名乗る事に違和感を感じているんだ)

 

「その、君は、」

「待て」

 

 何かを言おうとしたハクノを制し、ルキウスは背後の岩山へと振り向く。

 

「そこにいる貴様は敵か? それともただの野次馬か?」

「………かくれんぼは負けなしだったんだけどな」

 

 岩山の陰から十六夜が姿を現した。

 

「十六夜? どうしてここに?」

「それはこっちの台詞だ。謹慎中のキシナミが何で外をうろついているんだ?」

「………自分だって謹慎中のくせに」

「違いねえな」

 

 十六夜はカラカラと笑うと、真顔になってルキウスと対峙した。

 

「俺の同士が世話になったみたいだな。ありがとうよ。それで………アンタは何者だ?」

 

 半身となっていつでも戦闘態勢に入れるように警戒する十六夜。彼もまたルキウスの実力を肌で感じ取っており、彼女を警戒すべき相手と見定めていた。それに対し、ルキウスは悠然と微笑んでいた。

 

 ***

 

「―――つまり、ルイオス(あの外道)を勝負の場に引き摺り出すには、“ペルセウス”のギフトゲームをクリアすれば良いのね?」

 

 “ノーネーム”の黒ウサギの私室で、飛鳥達は作戦会議をしていた。飛鳥と耀もまたレティシアの救出を諦めていなかった。言い争いをした黒ウサギとの仲直りも兼ねて、彼女を私室を訪ねていた。そこで“ルイオスにその気が無くても、コミュニティとして動かざるを得ない状況"にする方法を話し合っていた。そんな中で見つけた情報に二人は期待に胸を踊ろさせていたが、黒ウサギは暗い顔で首を振る。

 

「はい。ですが………それは厳しいと思います。“ペルセウス”のギフトゲームは下層の中では指折りの難易度。本来なら複数のコミュニティが連携して何日もかけてクリアする様な物です」

「そんな………」

 

 耀が落胆の声を上げる。ルイオスが指定した期日まで、あと三日。今から強行軍をしても間に合わない。黒ウサギも同じ気持ちだ。二人の心遣いはありがたい。出会ってまだ数日の仲だというのに、黒ウサギやかつての同士であるレティシアについて真剣に考えてくれた。だからこそ、そんな二人に実力的にも時間的にも勝てる見込みが低いギフトゲームを強要するなど出来なかった。

 

「十六夜とハクノ………どこに行ったのかな?」

 

 耀がポツリとこの場にいない男子二人について話す。彼等はレティシアの事で黒ウサギと言い争いをした翌日から姿を見せなかった。

 

「ひょっとしたら、お二人は愛想を尽かされたのかもしれません。先日の様にコミュニティの同士が仲違いするくらいなら、他のコミュニティに入った方が良かったと思われても不思議ではないです」

「そ、そんな事無いわよ! 第一、十六夜くんはともかくキシナミくんがそんな理由で出て行くと思う?」

 

 ションボリとうさ耳を垂れる黒ウサギを慰める様に飛鳥は言い募る。耀も気質が常識人なハクノが黒ウサギ達に断りもなく脱退はしないだろうと思っていた。

 

(でも………部屋に残された匂いから察するに、十六夜とハクノが出て行った時間は別々なんだよね。十六夜と一緒だったら、あまり心配はしなくて大丈夫だったけど………)

 

 耀はハクノが十六夜の様に身体能力が優れてはいないと感じ取っていた。十六夜はともかく、ハクノがコミュニティを離れて一人で活動するのは自殺行為じゃないのか? これ以上、黒ウサギに精神的な負担をかけたくないから黙っていたが、そろそろ探しに行くべきだろう。

その時だった。

 

「っ!?」

 

 黒ウサギがバッと窓の外を見る。

 

「黒ウサギ? 何があったの?」

「誰かが近付いています。この霊格………まさか!」

 

 黒ウサギは飛鳥達に返事することなく窓から飛び出した。自分のギフトカードから愛用の金剛杵を取り出して臨戦態勢となる。やがて、黒ウサギの超人的な視力が空から“ノーネーム”の敷地へまっすぐと向かってくる相手を捉えた。

 それは古風な戦車(チャリオット)だった。全体的に赤く塗装され、縁取りや装飾に眩いばかりの黄金が施されていた。そんな戦車を牽くのは四頭の筋骨隆々とした馬だ。それもただの馬ではない。鬣から赤々とした炎を噴き出し、背中からもまた炎の翼を広げていた。彼等が宙を蹴る度に大輪の薔薇が咲く様に爆炎が奔る。その姿はまさに———。

 

「もしかして………ペガサス!? すごい、本物!?」

「耀さん、お下がり下さい!」

 

炎の天馬(ファイヤー・ペガサス)とでも呼ぶべき幻獣に、遅れて窓から出てきた耀が歓喜の声を上げるが、黒ウサギは耀を庇う様に前に出た。

 

「黒ウサギ?」

「そんな………まさか、こんな大事になるなんて………!」

 

 様子のおかしい黒ウサギに声をかけるが、彼女は遠くに見える戦車を青褪めた顔で凝視していた。そこへ廊下や階段を走って漸く追い付いた飛鳥が玄関から出て来た。

 

「ハア、ハア……もう、二人とも! いきなり飛び出してどうしたというの?」

「………お二人とも。手短に言います。今すぐジン坊ちゃんと子供達を連れてここからお逃げ下さい」

「なっ……!?」

 

 突然の宣告に飛鳥は言葉を失う。黒ウサギの表情は真剣そのもので、冗談を言っているわけではないと分かった。しかし、それでハイそうですかと納得できるわけがない。

 

「いったい何だというの!? いきなりそんな事を言われて納得できるわけないじゃない!」

「今ここに、強力な神霊が近付いています。それも太陽の神格を宿した神霊です」

 

 今度こそ飛鳥は言葉を失った。数多の神話で太陽は崇拝と信仰の中心となっていた。太陽神はあらゆる神話で最上位に位置する。その太陽神の神格を宿した神霊となれば、その力は飛鳥の想像を絶するだろう。

 

「炎の天馬が牽引する戦車………あれはギリシャ神群の太陽神(ヘリオス)の戦車に違いありません! ヘリオス本人か彼に縁を持つ者かは分かりませんが、恐らくはギリシャ神群に所縁を持つ“ペルセウス”に歯向かった我々を粛正に来たのかも………」

「そ、そんなの子供の喧嘩に軍隊を派遣する様なものじゃない! あの外道(ルイオス)にそんなコネクションがあったというの!?」

「いいえ。ですが、先代の“ペルセウス”のリーダーはギリシャ神群にも覚えがめでたかったと聞きます。先代の縁で派遣されるのは十分に考えられます」

「そんな………」

 

 藪をつついて蛇どころか竜が出て来たと言うのか。どうやら自分達は想像以上に強力な相手を敵に回した様だ。

 

「どうかお逃げ下さい。太陽の神霊が相手では、飛鳥様達では勝ち目がありません。黒ウサギが出来る限りの時間を稼ぐので、お急ぎを………!」

 

 切羽詰まった黒ウサギの声は必死だった。決して飛鳥達の実力を軽んじてはいない。しかしそれでも神霊を相手するには力不足だ。相手の霊格を察するに、自分でも歯が立たないかもしれない。ならば、黒ウサギが出来るのは飛鳥達が逃げる時間を稼ぐこと。いつか“ノーネーム"を救ってくれる素晴らしい才能(ギフト)を持った二人をこんな所で潰されるわけにはいかない。

 

「…………………」

 

 飛鳥は黒ウサギの視線の先に目を向ける。彼女の視力では豆粒にしか見えないが、そんな遠くからでも強力なオーラが近付いてきてる事を感じていた。そんな距離からでも肌が焼き付く様な熱気が感じられた。間違いなく自分では相手にすらならない。

故にこそ、飛鳥は———黒ウサギの前に出た。

 

「いいえ。私は逃げないわよ」

 

 ギフトカードからガルドのゲームで手に入れた白銀の剣を引き抜く。そんな飛鳥を見て、黒ウサギは慌てた。

 

「な、何を仰っているのですか!? 神霊相手に飛鳥様が、」

「勝てるわけがない。ええ、それはよく分かっているわよ」

「ならば何故!」

 

 飛鳥は黒ウサギへと向き直る。黒ウサギは強い光を宿した目を見て、一瞬たじろいだ。

 

「たかがギフトゲームで太陽神がしゃしゃり出てくる。ええ、なんて大人気ないのでしょう。ギリシャ神群の名も地に堕ちたわ。直接力で捩じ伏せにくるなんて、思ってもみなかった」

 

でも———、と飛鳥は言葉を切る。

 

「それでも、私は屈しない。こんな風に人を捩じ伏せるのがどんなに相手を傷つけるか、()()()()()()()()()()()()。相手に文句の一つでも言わないと気が済まないわよ」

「無謀です! 相手はガルドやルイオスとは格が違うのですよ!?」

「だから神霊にはっきり言ってやるわよ。貴方達の可愛いルイオスに土下座させようとしたのは、この私だって」

 

 ハッ、と黒ウサギは気付く。“ノーネーム”が“ペルセウス”に直接攻撃した事があるとすれば、白夜叉の店でルイオスのあまりに横暴な態度に飛鳥が頭にきてギフトを使った事だろう。ある意味、それが原因で“ペルセウス"と口火を切ったと言える。飛鳥はその責任を取ると言っているのだ。決して自分では勝てない。そう理解しながら。

 

「黒ウサギこそジンくん達を連れて逃げなさい。今までコミュニティを支えてきたのは貴方よ。貴方こそが“ノーネーム”に必要だわ」

「いいえ、黒ウサギなんかよりも飛鳥様の方がこれからの“ノーネーム”に必要です! 飛鳥様がお逃げ下さい!」

「黒ウサギ!」

「あのさ、二人とも。喧嘩しているところ悪いけど………」

 

 二人が押し問答を始めそうな時に、耀が声をかけた。その声は緊張感よりも戸惑いの色が強かった。

 

「二人が考えているほど悪い状況じゃないみたいだよ?」

 

 へ? と二人仲良く声を上げる。遠くに見えていた戦車は飛鳥達に近づくと同時にどんどん高度を落としていき、飛鳥達の目の前で停車した。

 

「どうどう!」

 

 戦車から鈴が鳴る様な少女の声が響く。屈強な炎の天馬達の手綱を握っていたのは小柄な少女だ。150cm程度の小柄な体からは考えられない見事な手綱さばきで自分より倍以上に大きな天馬を操っていた。そして、彼女の後ろには———。

 

「十六夜様! それにハクノ様も!」

「よっ。総出で出迎えか? 御苦労さん」

「その………ただいま」

 

 驚く黒ウサギに十六夜は軽く手を上げ、ハクノは気まずそうに挨拶をする。

 

「些か侘しい所だが———」

 

 御者台から降りながら少女———ルキウスは“ノーネーム”の本拠を見上げた。

 

「ここが余のマスターの拠点か。まあ、悪くない」

 

 




・黒ウサギ、盛大に勘違いするの巻。題名を英語に統一するのは止めようかと考えました。

・ネ、じゃなくてルキウスがチャリに乗って来た! ただそれだけの話。以下にオリジナル宝具の設定を記載。こんな感じで、このssはオリジナル設定盛り盛りで書いていきます。でも作者の気紛れで設定が変わるかも………。

駆け蕩う太陽戦車(アエストゥス・クアドリガ)

 対軍宝具。クアドリガとはローマ帝国において戦場はもちろん、競技でも花形となった四頭立てのチャリオットである。古代の神話において、神が乗る戦車とされている。ギリシャ神話のヘリオス神やアポロン神、ローマ神話のソル神はクアドリガに乗って天空を駆けていた。黒ウサギが勘違いしたのはその為とも言える。
 ルキウスを名乗る少女は(色々と疑わしい所があるが)チャリオットの名手である為、この宝具が顕現した。とある魔術儀式で騎手として召喚された場合、チャリオットを駆る姿を見れるという。加えて今回は太陽神の神格を得ている為、牽引する軍馬も炎の天馬に変わっている。そして霊格が上がっただけにサーヴァント時とは比較にならない速度と威力を発揮する。まさに超高速で天を駆け、焼夷弾の如く太陽の炎熱を振り撒く爆撃機の様な宝具である。
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