月から聖杯戦争のマスターが来るそうですよ?   作:sahala

9 / 26
 話が全く進んでない上に、いつもより短いです。でも、ここで投稿しないとモチベーションが保てないだろうなと思って投稿しました。


第七話『What is he?』

「な、なんであの短時間で”フォレス・ガロ”のリーダーと接触して喧嘩を売る状況になったのですか!?」「しかもゲームの日取りは明日!?」「それも敵のテリトリーで戦うなんて!」「準備の時間もお金もありません!」「聞いてるのですか三人とも!」

 

「「「ムシャクシャしてやった。今は反省してます」」」

 

「黙らっしゃい!!」

 

 広場に黒ウサギの怒声が響き渡る。ザビ達と共に箱庭都市に入った黒ウサギを待っていたのは、飛鳥達が近隣で最大規模のコミュニティ・“フォレス・ガロ”にギフトゲームを挑んだという衝撃の展開だった。

 話を聞くと、黒ウサギ達が世界の果てに行っている間に飛鳥達は“フォレス・ガロ”のリーダーであるガルド・ガスパーから勧誘を受けたそうだ。近隣のコミュニティを吸収して勢力を拡大している自分に従えば間違いないと言ってきたガルドの話に飛鳥は疑問を持ち、ギフトを使って“フォレス・ガロ”を拡大させた方法を白状させたところ、ガルドはコミュニティの子供を人質にとってゲームを強要させていた事が判明した。

 そしてーーーガルドは人質の大半を既に殺している事も。

 

「あんな外道を野放しにするなんて、許される事では無いわ。取り逃がしてこちらを狙いに来る前に、ここでキッチリと決着をつけて起きたいの」

「お話は分かりますが……」

 

 複雑な顔で黒ウサギはガルドと取り決めがされた契約書類を見る。

 

①“フォレス・ガロ”は“ノーネーム”に対して明日にギフトゲームを行う。

②“ノーネーム”が勝利した場合はガルド・ガスパーは法の裁きを必ず受ける。残っている人質も無事に帰す。

③“フォレス・ガロ”が勝利した場合は“ノーネーム”はガルド・ガスパーの罪を永久に黙認する。

 

「まあ、自己満足だな。時間を掛ければ捕まえられる相手をわざわざ取り逃がすリスクを背負っているわけだからな」

「あら、リスクに見合うチップはあるわよ。契約書類で記されている以上、あの虎男(ガルド)が箱庭都市の外へ逃げても必ず執行されるわ。それにゲームが終わるまで残った人質に手出しはできない」

 

 十六夜の指摘に飛鳥は勝気な笑顔で返す。自分が負けるとは考えていない自信に満ちた顔だった。これ以上なにかを言っても梃子でも動きそうにない様子を見て、黒ウサギは諦めた様に溜息をつく。

 

「まあ、いいです。“フォレス・ガロ”の狼藉は黒ウサギも腹が立ちますから。十六夜様とザビ様がいればガルド相手なら楽勝でしょうとも」

「十六夜は分かるけど、ザビが頼りになるの?」

 

 耀が懐疑的な視線を向ける。そこには―――

 

「………………」

 

 ぐったりとザビが項垂れていた。今にも「燃え尽きた……真っ白な灰に……」と言いそうなくらい、静かに項垂れていた。

 

「なんでザビ君はあんなに元気無さそうなの?」

「いやな、世界の果てまで行ってきたから急いで帰らにゃならん、という事で黒ウサギに担いで貰ったんだ。その結果、地上十数メートルを連続バンジーする羽目になったわけだ」

「………本当に頼りになるの?」

「ぜ、絶対に力になりますって! 黒ウサギが保証しますとも!」

 

 黒ウサギは必死にアピールするが、異世界女子二人は何とも言えない目を向けていた。十六夜と共に世界の果てに住まう水神を倒したと聞いたが、目の前でぐったりしているザビを見ているとどうしても信じる気になれない。

 

「あの……大丈夫ですか?」

 

 知らない声を自分にかけられて、ザビはようやく顔を上げた。そこには丈が合っていないダボダボのローブを着た少年がいた。

 

「君は……?」

「ジン=ラッセルと申します。その、若輩ながら“ノーネーム”のリーダーを務めさせて貰っています」

 

 どこかオドオドとした様子でジンは挨拶した。11歳でリーダーという大役を任せられた事で緊張しているのだろう。神格保持者を倒したザビに失礼がない様に、とガチガチに硬くなっているのが目に見えた。

 

「神格保持者を倒せるほどの実力者がコミュニティに入って頂けるなんて光栄です。是非ともガルドのゲームにも御力を貸して頂け、」

「は? 俺もザビも参加しねえぞ」

「十六夜様!?」

 

 突然の十六夜の不参加宣言に黒ウサギが驚愕の声を上げる。十六夜は真顔で黒ウサギを睨んだ。

 

「いいか? これはお嬢様達が買った喧嘩だ。そこに俺等が出しゃばるのは無粋だろうが」

「分かってるじゃない。あんな虎男、私達だけで十分よ」

 

 フン、と飛鳥は十六夜に挑発的な笑顔を返す。

 

「というわけでザビ、お前も今回は見学だ」

「……分かったよ。言ってもお互いに聞きそうにないみたいだな」

 

 ザビは溜息を一つつき、飛鳥へ向き直った。

 

「な、なに?」

「もしも手伝える事があったら何でも言ってくれ。必ず力になるよ」

「え? そ、そう………」

 

 真剣なザビの顔に、思わず飛鳥はたじろいた。

 

「ザビ様、もう動いても平気ですか?」

「ああ、大丈夫。この後はどうするんだ?」

「ええと、それではジン坊ちゃんには先に帰って頂いて―――」

 

 黒ウサギと今後の予定を話すザビを、飛鳥は狐につままれた様な顔で見ていた。そこへ十六夜が近寄る。

 

「な? 面白い奴だろ?」

「なんというか……調子が狂うわね」

「一応、弁明してやるとザビはお嬢様達を軽んじたわけじゃねえぞ。あれは完全に善意の申し出だな」

「分かってるわよ、そんな事」

 

 ニヤニヤと笑う十六夜に対し、飛鳥はムスッとした顔になる。

 今まで飛鳥に近付く人間は、飛鳥のギフトを恐れて化け物を見る様な目を向けるか、媚び諂っておこぼれを預かろうとする様な人間ばかりだった。そんな相手を何度も見てきた飛鳥にとって、ザビは今まで見たことない分類だった。

 

(本当によく分からない人よね……)

 

 自称・記憶喪失。容姿はどう見ても平凡。しかし十六夜と共に世界の果てで水神を倒したという。それ程の力があるのに本人の態度は十六夜の様に傲岸でもなければ、耀の様に他人に無頓着でもなく謙虚そのものだ。はっきり言ってギフトの無い一般人と言われた方がまだ納得がいった。

 

「まあ、お嬢様達の初陣にザビが混ざったらどう動くか気にならないわけじゃないが、今回は自粛しますかね」

「言ってなさい。あっという間にクリアして二人の出る幕なんて無かったと言ってあげるから」

「そりゃ楽しみだね」

 

 十六夜の含み笑いに飛鳥は毅然とした態度で返す。もうじき地平線の向こうへと消えていく夕日が、彼等の姿を優しく照らした。




ザビの世界の果てツアー

行き:音速ジェットコースターIZAYOI(安全ベルトなし)
帰り:タワーオブ●ラー(LEVEL:BLACK RABBIT)

舞浜駅付近のテーマパークの看板アトラクションに無料で(しかも並ばずに)乗れたと思えば得だろう。‥‥…多分。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。