花嫁も五人居ていいんじゃない   作:なでしこの犬

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 ハーレムタグで純愛って笑いますよね。でも選べないですもん(開き直り)。




◯◯の身体は柔らかい②

 

 

 

 

 

 

 

 顔を紅潮させた三玖が、俺と五月の前に立っていた。

 「マッサージ」のことを信じているようだったが、今はソレどころではない。先ほどは「知らない」と断言した三玖が部屋から出てきた。隣にいる五月は理解が追いついていないようだ。それもそうだろうな…。

 

「み、三玖? どうして……?」

 

 そりゃこの部屋で眠っていたから。無論、勝手にベッドに潜り込んできたのだが。

 それだけならまだ言い訳が効く。先ほどのマッサージのことを知られれば、俺は死ぬ。ただ三玖は五月に目もくれず、俺の右手を引いて部屋へと誘おうとする。待て待て。それはそれでマズイ。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 

 五月の性格を考えれば、当たり前の反応だ。

 俺の左手をグッと掴んで行かせるものかと引っ張り返す。関節が伸びるような感覚。痛い。

 三玖も一歩も引かない。五月の引く力が強くなれば強くなるほど、彼女の引っ張り返す力も強くなる。「痛い」と言葉を洩らすと、二人とも気を遣ってか、少しだけ力が弱まった。

 

「説明してください! どうして三玖が居るんですか! それにマッサージって……」

「五月は黙ってて。フータロー早く……」

 

 三玖は完全に発情している。まぁ完全に俺のせいなんだが。

 そんな彼女の様子に、五月も不思議そうに思っているようだ。正直、三玖がここまで色っぽくなるとは思いもしなかった。

 彼女の吐息が桃色に見える。もうしないと考えていたのに、奥底に沈んだはずの性欲が湧き出てきそうな、そんな感覚だ。

 ゴクリと固唾を呑む。五月にバレないように、三玖の方を向いて。

 だがこのままだと埒があかない。関節が伸びるだけで、別に長い手なんて欲しくもない。冷静に考えると、ここは五月より三玖に一歩引いてもらう方が穏便に済む可能性が高いのではないか。

 

「み、三玖。後でまた来るから…」

「駄目。今すぐ」

 

 はい無理でした。

 五月にバレないように小声で話しかけたが、食い気味にそれを却下した。どうやら本格的に発情している気がする。これはいよいよヤバいことになってきた。

 性体験なんてこれまでやったこともない。この流れで行くと、初めての相手は三玖になってしまう。嫌というわけではないが、彼女に申し訳なかった。俺が寝ぼけていたばかりに、こんなことになってしまって。

 

「悪い五月。すぐ戻るから」

「あっ、ちょ、ちょっと!」

 

 彼女の手を振りほどいて、三玖とともに部屋へ押し入った。

 ドアに背中を向けたまま、鍵を閉めて三玖を優しくベッドに押し倒す。

 すぐ戻る、とは言ったものの、「何もしないですぐ戻る」と言ったわけではない。すぐに済ませればいいだけの話だ。

 欲望を振り切ることが出来なかった自分が情けない。だが、俺も一応男だ。こんな三玖を放っておくわけにはいかない。そう言い訳をして、彼女に意識をやる。

 

 仰向けで胸元ははだけたまま。下着はつけていないのだろうか。少しズラせば完全に露わになる状態。分かりやすく固唾を呑む。

 三玖は息が荒い。心臓の音がこちらにまで聞こえてきそうだ。言い方はアレだが、ただ胸を揉んだだけ。それだけでここまでになるということは、彼女もきっとウブなのだろう。何故か安心する自分が居るが、無視して彼女の胸に手をやった。

 

「はぁっ……」

 

 先ほどよりも分かりやすい反応だ。焦らされたことで、身体が感じやすくなっているのだろうか。経験のない俺には分かるはずもなかった。

 三玖ってこんな可愛かったんだな。初めてそんなことを思った。それがこんな時というのは、マジでクズだと思うが。

 もう駄目だ。止められそうもない。こうしている間にも、俺のモノが暴発しそうだ。再びズボンに手をかけた時、背中の方から「ガチャ」っと音がした。聞き間違えではない。ハッキリとだ。

 

 なんだあの音は。冷静を装って考える。

 まるで鍵が開いた音ではないか。いやいやそれはない。外から開けることが出来るとは聞いていないぞ。もしそれなら、俺の人生は終わりだ。

 今度はなんだ。シャッター音のような音が聞こえる。連続でだ。

 うるさい。もう少し静かに出来ないのか。あれ、部屋が明るくなった。電気は消していたのに、どうしてだ。

 

「………最低」

 

 頭に衝撃が走った。痛い。背骨を伝って痛みが全身を巡る。

 薄れゆく意識の中で、自身の頭脳をフル回転させた。あぁ殴られたのだと。ベッドから落ちて床へと叩きつけられる。

 意識が消える寸前に、完全に理解した。どうやら俺の人生はここまでらしい、と。

 

 

❤︎

 

 

 意識が覚醒していく。頭が重い。ヅキヅキと痛みが走っている。

 重く閉じられた瞼を開けると、見慣れた光景が視界に映った。一階のリビング。いつも三人が勉強しているところ。俺は床に座っているようだ。

 だがいつもと違うのは、両手の自由が効かない。後ろの方で縛られていた。何事かと一瞬考えたが、それはすぐに消える。あぁ自業自得じゃないかと。

 あの衝撃の後、どうやら俺は拘束されたらしい。殴ったのが誰かはわからないが、縛るぐらいだ。俺の言い訳を聞くつもりは無いらしい。

 

「目が覚めましたか?」

 

 冷徹な声だ。丁寧語が残っているあたり、五月か。

 殴ったのは五月なのだろう。無理やり振り払ったのだから、そう考えるのが自然。痛む頭を堪えて、顔を上げる。そこには仁王立ちの五月がいた。そこで初めて気付いたが、一花と四葉はソファに座っている。肝心の三玖の姿は無かった。

 

 二乃が居ない。こういう時、真っ先に俺を陥れようとするアイツが居ないのが不気味だった。

 

「――――どうだった? 三玖の身体は」

 

 耳元で囁かれた。甘い息が耳を通り抜けて、身体を痺れさせる。

 この声は居ないと思っていた二乃だった。普段の声より、艶っぽい。視線を動かすと、いつもの通りの彼女がそこには居た。

 

「……なんのことだ。理解出来ないな」

「証拠なら揃ってるわよ。それでも否定する?」

 

 何故コイツは俺の耳元で囁くのだ。そのせいで身体がゾクゾクしてしまう。本意ではないのに、声が洩れてしまうほどに。

 証拠、おそらく写真だろう。パシャパシャと連写している音は聞こえていた。だがその時、俺は三玖の身体を触っていない。ただ()()()()()()()で、何の証拠にもならないのは分かっていた。

 

 そんな脅し文句で、俺を陥れようとしているのだろう。だがそれは無理な話だ。跨っていただけと言い張れば、触っていないということになる。あくまでも、触っていないという証明にしか過ぎないが。

 これから触ろうとしていたと言われれば、それは言い返せない。だって事実なのだから。何とかなってほしいとは願うが、それを突っ込んでくるのが二乃だ。無駄な願いかもしれないが、今は藁にもすがる思い。

 

「どうしてそうなる? 俺は本当に何もしてないぞ」

「何もしてないのに三玖に馬乗りするかしら? これから何かしようとしてたんじゃないの?」

 

 ほら見ろ。想像通りだ。さて、どう切り抜けようか。

 彼女が言うことは事実。これからまさにおっぱじめようとしていた。だがここでそれを認めてみろ。今後こそ殺されるのではないか。

 頭を殴られただけで済んだのは、ある意味奇跡なのかもしれない。このまま眼を覚ますことなく、人生を終えていた可能性だってあった。

 チラリと一花と四葉に視線を送る。彼女たちは五月や二乃とは違って、少しだけ苦笑いを浮かべていた。どうやらまだ俺にも可能性が残されているらしい。

 

「あれはトレーニングだ。今流行りの腹筋法なんだよ」

 

 ゴミのような言い訳だな。つくづく自分はクズだなと。

 こんな言い訳をした理由は一つ。一花や四葉の協力を仰ぐためだ。一見ふざけているように聞こえるかもしれない。だが四葉はかなり馬鹿正直だ。「そうなんですかぁー!?」とか言って食いついてくる筈。一花だって、「そう見えないこともないかなぁ」なんて場の空気を柔らかくしてくれる。そこに賭けたのだ。

 二乃と五月は、俺をゴミのような目で見ている。これ以上無いほど蔑まれているな俺……。だが別にいい。俺は無実なのだから、胸を張っておけばいいのだ。

 

「そうなんですかぁー!? って言うとでも思いました?」

「えっ」

「そう見えないこともないかなぁ。 って言うとでも思った?」

「えっ」

 

 結論から言おう。作戦は失敗だ。それも大失敗。背中から冷や汗が止まらない。

 一花と四葉は互いに顔を見合わせて、立ち上がる。俺の目の前に来ると、二乃たちと同じように俺をゴミのように見ていた。あぁここまでか。俺の人生、社会的に死んでおしまいだ。何のために勉強を頑張ってきたのだろうか。

 だが肝心の三玖が居ない。彼女はどこに行ったのだ。

 唯一、現場に居た人間なのだ。三玖が否定すれば一気に形勢は逆転する。視線で彼女を探すが、見つからない。リビングには居ないのか? となると、自分の部屋にこもっているのだろうか。

 

「三玖なら居るじゃない。アンタの後ろに」

「え――――」

 

 心を読んだのか。二乃は嘲笑うようにそう言う。後ろに居るとは言うが、今の俺にそれを確認する術はない。だが言われてみると、たしかに後ろには何か居る。

 顔も見えないが、纏っているオーラがヤバいのは俺にも分かる。まさに八方塞がりというやつか。ここまで追い詰められているのに、冷静すぎる自分が居ることが可笑しい。

 それも自らに罪の意識があるからだろう。俺が好き勝手言える問題ではない。家庭教師と言いながら、生徒に手を出すのはやはり不味かった。でも仕方ない。欲望に負けてしまったのだから。

 何れにしても、このままらいはに会わせる顔がなかった。どんな顔をして妹に会えばいいのか。勉強じゃなくて性の遊びをしてましたなんて五月にバラされれば、それは死ぬことより辛い。

 後悔先に立たずと言うが、まさにソレだ。今さらわかったところで、もう生かす機会はないだろうが。

 

「フータロー。私の胸を揉んだ」

「……そうでしたっけ?」

(とぼ)けるんだ。私悲しかった」

 

 あんなに感じてたくせによく言うよ……。

 元はと言えば俺が悪いかもしれないが、彼女は満更でもない様子だった。仮に胸を揉まれる意味を分かってなかったとしても、普通に考えて男が胸を揉むのはそういう意味だということぐらいは察するはずだ。

 彼女はそれを拒まなかった。ということは、受け入れてくれたと理解していいのではないか。ぶっ飛んだ考え方かもしれないが、嫌なら最初の段階で突き放すのが普通だ。

 

「いい? 三玖に手を出した時点で私たちにも手を出したも同然よ」

「身体もそっくりだからか? それは理不尽な話だ」

 

 さっき俺が考えていたことを言い当てられたようで、思わず否定してしまった。同時に、それがすごくアホらしく聞こえて、欲に溺れている時の考え方ってヤバいんだなと。理性を保つことがどれだけ大事かようやく学べた気がする。

 

「覚悟は出来てますか?」

「警察に突き出すか?」

「いえ、貴方にはここで死んでもらいます」

 

 え、嘘っ。マジで。

 五月の右手には、包丁が握られていた。え、嘘っ。マジで殺されるのか俺は。

 警察に突き出されれば、社会的に死ぬ。それよりはいいのかな。らいはに嫌われて終わるんだな、俺の人生。こんなことになるのなら、金のために家庭教師なんて引き受けなければ良かった。今さらの話だが。

 

 五月は一歩一歩、ゆっくりと近づいてくる。

 顔を見上げても、殺意を持った顔をしていた。許しを乞うても、もう無理だろう。最初から素直になっていれば、こんなことにはならなかったのだろうか。

 諦めて、俺は瞼を閉じた。痛いかなぁ。痛いだろうなぁ。嫌だなぁ。負の感情が湧き出てくる。こうなるなら最後までヤリタカッタなぁ。ここでもすごいクズな発想が出てくることに驚きを隠せないよ俺は。

 

 

「さようなら、上杉くん」

 

 

 その先のことは、もう考えたくもなかった。

 

 

❤︎

 

 

「うわぁぁぁぁ!!!」

 

 

 みっともない声を上げながら、気がついた。

 そこは暗く、でもどこか見慣れた光景が広がっていた。

 「ハァハァ」と息切れが酷い。まるで悪い夢でも見ていたようだ。汗も酷い。まるで水浴びでもしたかのよう。ここはどこだ、辺りを見渡すと、さっきまで見ていた記憶のある場所。

 ここは三玖の部屋だ。そうだ、確か昨日は彼女の部屋で寝ることになっていたんだ。だがなんだこの感覚は身体がドッと疲れている。眠っていたという割に、身体の疲れが取れていないようだ。

 

 充電していた携帯で時間を確認する。

 すでに昼の十二時を回っていた。幸い、今日は休日。学校は無かったが、三玖の部屋でそんなに長い時間眠ったことが申し訳なかった。

 しかし、空腹感は無かった。悪夢にうなされて起きたようなもので、今はむしろ食欲はない。

 

 ……俺はとんでもないことをした気がする。

 ふと、そんなことが頭をよぎった。微かに残っている朝の記憶。俺は確かに朝起きたはずだ。それから、何故か隣に居た三玖の胸を――――。

 いやいやいや。それは全て夢なんだ。ただ単に俺が寝過ぎただけ。それだけだ。現にどうだ。まだカーテンは閉め切られたままで、部屋に誰も入った形跡はない。そうだ、夢なんだ。

 

「……フータロー起きた」

「うわぁぁ!!」

 

 またみっともない声を上げてしまった。でも仕方ない。まさか三玖が部屋に居るだなんて思ってもいなかったのだ。

 机の側で、体育座りをして俺を見つめている。服は部屋着のシャツを着ている。第一ボタンと第二ボタンは開いていた。その瞬間、嫌な予感が頭をよぎる。

 

「み、三玖。居たのか」

「ひどい。ずっと居たのに」

「あー……悪い。どうした?」

「頭、もう痛くない?」

「頭?」

 

 痛くない、と言われれば、確かに少しズキズキする。三玖の存在に驚き過ぎたあまり、特に気にならなかったが、何か殴られたような痛みがした。後頭部付近を触ると、タンコブが出来ていた。

 

「あれっ……ぶつけたっけな」

「……覚えてないの?」

 

 朝のことが頭をよぎった。いやいや、それは夢の話。それは関係のない話なのだ。何も覚えていない。うん、それでいい。思い出すだけで頭が痛くなる。

 覚えていないことを伝えると、三玖は少しだけ残念そうな顔をした。部屋は暗いが、彼女の顔はよく見えた。どこか拗ねたようにも見える。

 

「五月に殴られたんだよ。フライパンで」

「えっ、そうだったっけ……」

 

 そういえばそんな夢を見た気がする。そこから気絶して色々とヤバい経験をしたことも。

 あれ、でもなんで殴られたんだ。殴られたことで記憶が飛んでいるのだろうか。だとすると、後で五月を詰めないといけない。危うく記憶喪失になるところだったと。

 そのことを素直に伝えると、三玖は少し驚いた後、残念そうな顔を見せた。またその顔だ。一体俺が何をしたというのか。

 

「本当に覚えてないんだ……わかった」

 

 三玖はそう言うと、立ち上がって俺の元へ近づいてくる。俺が眠っていたベッドに腰掛けると、彼女はシャツのボタンを開け始める。

 

「ちょ、ちょっと三玖!? 何してんだ!?」

「さっきみたいにして」

「えっ」

 

 ……仮にだ。俺が夢だと思い込んでいたことが現実だとしよう。だとすれば、どこまでが夢でどこからが現実なのだ。それがそもそも分からない。いや、そもそも全てが夢であってほしいと願っているのは変わらないが。

 さっきみたいにして、と言うことは、俺が三玖に何かしたことは間違いないようだ。自らに都合の悪いことは忘れるようにしている。仕方ないで押し通せればいいが、そういうわけにもいかなかった。

 

「…俺がその……お前の胸を……」

「思い出したんだ。そうだよ。マッサージ、続けてよ」

 

 五月に殴られた後、あれが夢ということか。

 そうなると、殺されることは無くなったわけだが、別の脅威が俺の目の前に居る。

 完全に思い出した。寝ぼけていた頭が覚醒していく。

 俺は三玖の胸を揉んだ。めっちゃ揉んだ。めっちゃ柔らかかった。それは現実。で、五月に疑いをかけられてそのまま気絶した。何故、今この状況なのかは分からないが、とにかく俺が三玖の胸を揉んだことは事実なようで。

 

 

「さっきの続き……しよ」

 

 

 






 高評価してくださったきっきらー04さんありがとうございます。

 ご感想に評価にお待ちしてます。

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