学園黙示録~ANOTHER OF THE DEAD~   作:聖夜竜

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紫藤先生、引き続き調子に乗ってヘイトを稼ぐの回。

なんかすんなりと書けたわりに意外と話のサブタイトルで悩んでたのは内緒(おい

そのうちゾンビ達のダイナミック出勤とかダイナミック握手会とかもあるんだろうなぁ……


ダイナミックな乗車はお止めください

 

「フッフッフ──この状況でよく虚勢が張れるものです。海動君、やはり君がいるとこの先きっと良くない……バスを降りて死んでくれますか?」

 

「なっ!? 紫藤先生ッ! あなた私の教え子になんてことを……教師失格ですッ!」

 

「“黙りなさい”──うるさいですよ?」

 

 同じ教師として生徒を何とも思っていない紫藤を見過ごせなかった京子が勇気を出して怒鳴るが、紫藤は表情一つ変えないまま冷酷に吐き捨てる。

 

 そして直後ビリィッという音と共に、静香と京子の着ていた衣服が紫藤の振るったナイフの刃先で強引に引き裂かれてしまう。

 

「「きゃあああああああッ!?」」

 

 そして勢いよくはだけた豊満な胸元。大人の女性らしく何とも蠱惑でエッチな下着が露出され、全く予測していなかった事態に二人の美女は揃って泣き叫ぶ。その後ろでは紫藤の信者達が興奮と歓喜の雄叫びを上げる中、自分達の胸元を片腕で隠した二人は恥辱のあまり顔を真っ赤に染める。

 

「先程も言いましたが、あなた方を怪我させるつもりはありません。ですがあまりに騒ぐようですと次は──わかりますね?」

 

「「………」」

 

 ナイフを使った古典的な脅迫に屈し、静香と京子は大粒の涙を流して紫藤への抵抗を諦めてしまう。自分より力の強い相手に対しては卑怯ながらも恐ろしく効果的な手段と言えよう。

 

「よろしい。さぁ、海動君。観念してバスを降りてください。そうしたら宮本さんはあなたに譲ってあげてもいいですよ?」

 

「っ……最低な奴ッ!」

 

 今度は明の隣にいた麗の顔が真っ赤に染まる番だった。紫藤の汚い言動の数々で完全に頭に血の上った彼女はモップの柄を宛ら槍術のように構えて突撃を仕掛ける。

 

「絶対に許さない! 紫藤ぉぉぉぉぉッ!!」

 

「よせッ! 行くな麗!」

 

 制止しようと叫ぶ明だが時既に遅し。ニヤリと笑う紫藤がナイフを持たない方の手でパチンと指を鳴らすと、途端に静香と京子の下着が乱暴に剥ぎ取られてしまう。

 

「いやっ! あ、やだ……ダメぇ……そ、そこっ、あっ……!」

 

「あ、あなた達!? や、やめなさ……んっ! こんなこと……ぁんっ!」

 

 見れば無抵抗の二人を取り囲むように、金髪の不良をはじめ何人かの男子生徒が背後から押し寄せ、露になった静香と京子の豊満な乳房をいやらしく揉んでは引っ張っていく。

 

「ま、待って……ひゃっん! ぁ、あんまり触ると……んんっ! おっぱい、感じちゃうからぁ……!」

 

「お、お願い……やめっ、もうやめてぇぇ……っ!」

 

(鞠川先生!? 林先生!? ……くっ!!)

 

 堪らず麗は自分の足に急ブレーキを掛け、紫藤の眼前で突き付けたモップの柄の先端部を僅か数cmのところでピタッと押し留めた。

 

「フー、フー、フー……このッ! 卑怯者ッ!!」

 

 怒りと憎しみのあまり悔し涙を流し、息を荒くした麗は鬼の形相で冷やかな笑みを浮かべる紫藤を激しく睨み付ける。

 

「卑怯? 宮本さん、すべてはこの新しい世界で生きていく為ですよ。我々人間は賢くなくてはいけません。あなたには何の恨みもありませんが……」

 

 言いつつ、紫藤は麗の後ろで立っている明へと鋭い視線を向ける。

 

「海動君は学園でも何かと私の周りを嗅ぎ回っていたようですからねぇ──はっきり言うと“目障り”なんですよ」

 

「……だから女を盾に俺に“見せしめ”になれってか? 生徒思いのクソ教師だよ、あんたは」

 

 皮肉を込めて吐き捨てると、黒い笑顔を凍らせた紫藤は目を鋭く細めて行動に移る。悔し涙を流す事しかできない麗が手にするモップの柄を片手で強引に掴み取り、それを彼女の後方に向けて力強く押し返したのだ。

 

「がはっ!? うぐっ、あ、あぐっ……!」

 

 急所は外れたとは言え、脇腹辺りに深々と突き刺さる強烈な衝撃を受けた明は堪らずその場に崩れ落ちる。

 

「!? いやぁぁぁぁぁッ! 明! 明ぁぁぁぁぁぁッ!」

 

 麗をはじめ、普段から明を慕っていた同級生達の悲鳴が車内に響く。麗は咄嗟に武器を捨て、倒れ伏した明に駆け寄って抱き起こす。

 

「ふん、これで少しは鬱憤晴らしになりましたかね……さぁ、これ以上は待てませんよ? どうやら少々バスを停め過ぎたようです……窓の外に〈奴ら〉が集まってきました。さぁ、誰かドアを開けて海動君を外に放り出し──ん? 何の音ですか?」

 

 麗が放棄したモップの柄を奪い取った紫藤が生徒達に指示を告げる直後、窓の外で何やら不気味な物音が聞こえてきた。

 

 ズルッ……ズルッ……ズルッ……

 

 何かを引き摺るような怪音がバスの外から聞こえ、それは次第に大きくなって近付いて来る。

 

「!? 紫藤先生! あ、あ、あれ……!」

 

 その時、不意に一人の男子生徒が窓の外を指差す。釣られて車内にいた全員がその位置に視線を向けると、驚いた事に人影らしき何かが窓ガラスを突き破って侵入してきた。

 

「うわああああッ!!」

 

 場所からして紫藤達に近い後部座席の方……大きな窓ガラスを破って車内に飛び込んできたのは既に活動を停止した〈奴ら〉の腐った死体だった。

 

「ひぃっ!?」

 

「うわっ!?」

 

 突然の襲来に驚き、静香と京子を拘束していた男子生徒が腰を抜かして座席に飛び退く。その僅かな隙を突き、無理やりの愛撫で感じさせられていた静香と京子が行動に出る。

 

 狭い通路を塞ぐ形で立っている紫藤に仕返しとばかりに精一杯の肘打ちを脇腹に喰らわせ、二人して仲間のもとに急ぎ逃げ帰った。

 

「「はぁ、はぁ、はぁ……うぅ……」」

 

「鞠川先生! 林先生! 大丈夫ですか!?」

 

 智江や敏美が迎え入れると、静香と京子はそれぞれ胸を隠したまま泣き崩れてしまう。顔は青ざめ、漏れる声や吐息は酷く震えているものの、どうやら本当に怪我はしていないようだ。

 

「くっ……いったい何が……?」

 

 その一方、抵抗を受けた紫藤には何が起きたか理解できない様子。静香と京子に一瞬だけ視線を向けるも、すぐに思考を切り替えてモップの柄を現れた〈奴ら〉の死体に構え、ゆっくりとした足取りで割れた窓ガラスに近付く。

 

 今のところ他の〈奴ら〉が車内後部の割れた窓を使って侵入してくる気配はない。しかし、どうやって……

 

 窓ガラスを突き破ってきた〈奴ら〉は自分の意思で侵入したというより、別の要因で強制的に車内へと投げ飛ばされたようにも見える。それはこの腐った死体の様子を見てまず間違いないだろう。

 

 死体の損傷が激しく、至るところにガラスの破片が痛々しく突き刺さり、眼球は二つとも抉り取られ、黒く汚れた血を腹部から大量に噴き出しては腐り爛れた筋肉が痙攣している。

 

「これは……普通の死に方とは違う? だとすればいったいどうやってこの高さの窓から侵入を……」

 

 明達から〈奴ら〉へと興味の対象を移した紫藤が不可解な死体を調べている頃、既に先程受けたダメージの回復を終えていた明は麗に助け起こされる。

 

「はぁ、はぁ……心配かけて悪いな……もう大丈夫だ」

 

 苦しそうな口調で喋る明は麗の手を借りて立ち上がる。そんな彼の両眼は今までの人間らしい目とは異なり、何かに呼応するかの如く不気味な赤色に発光していた。明らかに様子がおかしい。

 

「ぐっ……視界がざらつく。またこの現象か……」

 

「あ、明……その目、真っ赤になって光ってる……本当に大丈夫なの?」

 

 頭を抑えて意味深に呟く明の隣で心配そうに彼の顔色を覗き込む。青ざめた表情の麗が目元にいっぱいの涙を溜めて恐る恐る訊いてみると、明は珍しく疲れた表情で尋常じゃない量の汗を流していた。

 

「わかってる……無事に家まで帰れたら、麗やみんなが俺に聞きたいこと、ちゃんと話してやるから……お前はみんなと一緒に少し下がっていろ」

 

 苦しそうに吐く明の息が草臥れた熱を帯びる。まるで急な高熱でも出して身体が不調だと悲鳴を上げているようだ。

 

「でも……ッ! 顔色だってすごく悪いし、汗もそんなに──」

 

「うるせぇ! いいから下がってろ! 俺は死なねぇから大丈夫だ!」

 

 鬼気迫る明の怒声に麗の身体がビクッと怯む。そして再び溜め込んだ大粒の涙を流すと、麗は紫藤達を睨み付ける明の学ランを控え目に掴んで一歩後退した。

 

 言われた通りに少し後退しながらも袖を通さずに羽織る学ランを指先で摘まむように掴んだのは、それでも簡単には引き下がりたくない、離したくないという彼女自身の強い意思の表れなのだろう。

 

 ならば明もそれ以上は言わない。思えば昔から麗は一度言い出すとなかなか意思を曲げない頑固な女の子だった。

 

「明……ごめんね。私、あなたのこと……」

 

 小さく呟く麗の涙混じりの切ない言葉。しかし明からの返事はない……ただ、麗の立ち位置から見て明の横顔が少し微笑んだように一瞬見えた。

 

 その間に明は無言でドア近くに置いてあった愛用のゲーターマチェットとトマホークを掴み取り、ふらふらとした足取りで紫藤達のもとに向かおうとするが……

 

「海動君、行っちゃダメ! そんなボロボロの身体じゃまたすぐに倒れちゃう!」

 

 不意に背中へと押し当てられる柔らかな感触──後ろから抱き着いてきた静香が麗と一緒になって彼の学ランを掴んで離そうとしない。その学ランからは吐き気を催すほどの血生臭い香りが染み込んでいた。

 

「えっ? なに、それ……鞠川先生、明がボロボロの身体って……どういう、こと?」

 

 何の事かわからない様子の麗が困惑したまま訊いてみると、豊満な胸を明に押し当て彼を抱き止める静香は重苦しい表情で口を開いた。

 

「宮本さん……海動君の身体はあちこち傷だらけになってるの……普通の人なら間違いなく満足に歩けなくなっているほどの酷い怪我よ」

 

 静香が明かす衝撃の事実。それは幼少期から明と長く過ごしてきた幼馴染みの麗すら全く知らない情報だった。

 

「海動君は『ずっと前に喧嘩して出来た名誉の古傷だ』なんて言ってたけれども……その後遺症かはわからないけど、海動君は時々今みたいに酷い高熱を出したり目が赤く光ったりすることがあるの……無茶のし過ぎね」

 

「うそ……なんで、なんで明が……私、今までそんなこと……」

 

「宮本さん、ごめんなさい……海動君に自分の身体のことは誰にも言うなって頼まれてたの。それまでは私が学校の保健室で包帯とか取り替えたりベッドに寝かせてたんだけれど……」

 

 悲しげに目を伏せる静香の頬を透き通った涙が伝う。麗はもちろん、いきなりショッキングな話を聞かされた仲間は何も言えずにただ明の危なっかしい後ろ姿を見つめるしかできなかった。

 

「ったく、いちいち大袈裟なんだよ……これは一時的なものだ。後でゆっくり休めば勝手に治る。それよりみんな、気を付けろ──」

 

 言うと同時に前方を鋭く睨んだ明が二刀の武器を構えた直後、後部座席の割れた窓ガラスから突如として無数の触手が押し寄せてきた。

 

「どうやら本当の〈化け物〉が来ちまったらしいぜ……!」

 

 ──今ここに、地獄再び。

 

 

 

 

 

 




前回の話で皆さんの紫藤に対する評価はとてもよくわかりました(笑)

次回はそんな紫藤と海動がついに対決!

ゾンビと触手、そして二刀流の海動に囲まれ完全に逃げ場なしの哀れ紫藤の壮絶な最期を見よ!
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