学園黙示録~ANOTHER OF THE DEAD~ 作:聖夜竜
原作では紫藤という人物やその周りの人間が今一わからないままなので、作者の方で勝手に独自設定追加しときました。まぁもう必要なくなるんですけどね(おい
ちなみに今話の失楽園というサブタイトルはストーリー的にかなり重要な意味があったりします。
考察班は頭の片隅にでも入れておきましょう……この作品に考察する要素いるのかわかりませんが。
夕焼けに染まる町の中、マイクロバスを突如として襲った謎の触手たち。
割れた窓ガラスから侵入した触手は近くにいた何人かの生徒を手始めに捕らえ、次々と浮かばせていく。
「ひぃぃっ!? た、助けてッ! 紫藤先生、お願いです助けてくださいッ!」
「紫藤先生!」「紫藤先生!」「紫藤先生!」
紫藤を信頼し、紫藤に依存した生徒達が必死に助けを求めて叫ぶ。しかし紫藤は武器を手にしたまま動けないのか、危機的状況に陥った彼らを助けようという気もないらしい。
そんな紫藤でさえ信者は必要とし、何度ももがき腕を伸ばしては触手に全身を呑み込まれていく。
「これが自分自身を見失った人間共の末路か……いつ見ても嫌なもんだぜ」
それを見据える明は触手に捕獲された生徒達に少し同情しては紫藤の背後に回り込む。
「くっ……! このままでは……!」
完全に追い詰められた紫藤。前方にはにじり寄る触手の群れ、後方には明確な敵意を静かに燃やす明に挟まれ、紫藤の顔にも冷や汗が流れ落ちる。
「か、海動君!? ちょうどいい! ここは共に生き延びる為に協力しましょう! この化け物を何とかしてもらえませんか!?」
このままでは自身の生命が危険だと感じたのだろう。二刀の武器を突き付けて背後に立つ明へと停戦を申し出る紫藤だったが、明は残酷に笑うだけで動きを見せない。
「ククッ……まるで林檎だな」
「なっ!? 何を!? 海動君、あなたは何を言っているんです!?」
明の口から唐突に出た林檎という意味深な単語に焦る紫藤は困惑を隠せない。
「……なぁ、紫藤。このバスはたしか俺達人間に与えられた“楽園”なんだろう? だが現に外からやって来た〈化け物〉に脅かされ、林檎は喰われそうになってるワケだ」
「なっ……!? それはどういう意味です!?」
「神話の通りさ。蛇に林檎を喰われたら人間は安全な楽園を追放されて危険な下界に落ちる……暗闇が支配する醜く穢れたこの世の地獄って場所にな」
「あ……っ! あ、あ、ああぁ……ッ!」
その直後、紫藤はようやく明の言っている言葉の意味を察したのか、その場に力無く崩れては恐怖と不安に唇を激しく震わせる。
「そのおめでたい頭で実感したか? ならば先住民として歓迎してやるよ」
そんな紫藤に対し、明は恐ろしいほどの凶悪な顔で言い放つ。
「さぁ、到着だ──ここがてめぇの地獄の一丁目! 覚悟しな紫藤ッ!!」
「んお!? お、おぉっ……ぐはぁっ!?」
憤怒の表情そのままに明は紫藤の腹部に強烈な足蹴を喰らわせる。続けてもうひとつ目の覚めるような一撃を与え、紫藤は堪らず膝を折ってその場に崩れる。
「今のは俺の女に手ぇ出した痛みと思え。麗と“静香”、それに林先生──俺の両手が武器で塞がってなければ、その“目障り”な顔面にキツい拳を叩き込んでるところだ」
「あがっ……ぐっ……海動っ、ぉ……たかが不良の分際で……教師の、リーダーの私に、暴力など……!」
苦悶の表情で腹部を抑える紫藤の姿を冷たく見下ろす。背後からはいつの間にか忍び寄った新たな触手が紫藤の下半身を捕らえたのか、ズルズルと引き摺るように身体を呑み込んでいく。
「わ、私やお友達が襲われていながら見過ごすつもりですか!? もしそうすればあなたを信じ、頼りにしている仲間にも蔑まれ、人間を見殺しにした犯罪者として今後生き恥を晒す事になるんですよ!?」
触手に胸の辺りまで侵食されても尚、余裕を捨て去った様子の紫藤は懸命に訴え続ける。手が届く位置に立つ明の靴を絶対に離すまいと必死に掴み、恐ろしいほどの形相で明を見上げている。
「……紫藤、てめぇは長く生き過ぎた。“新世界ごっこ”の続きは、あの世で勝手にやるんだな。見捨てた仲間もきっとリーダーを待ってるだろうぜ」
「ぐぅぅぅ……ッ!! 私が、私がこの床主でどんな思いで生きてきたかも知らずによくも……よくもぉッ!! ならばこれだけは忘れるな海動ぉッ!! この私を愚かにも見殺しにしたその罪! その事実に未来永劫苦しみ続けるがいい!!」
クールに吐き捨てた明は醜く歪んだ顔で絶叫し続ける紫藤を背に仲間のもとに戻っていく。途中、麗が紫藤に奪われたモップの柄をしっかり回収しておく事も忘れずに。
「さて……みんな、待たせたな。このバスを捨てて逃げるぞ。拠点までの道案内は俺がする。全員最低限の武装をした後、固まってドアから降りるんだ」
「へ、平気なの? だっていま外に出たら触手と〈奴ら〉が──」
当然、不安と恐怖はある。もしかしたら今度は自分達が紫藤や他の生徒達のように捕食されるかもしれない……誰もが緊張する中、明は運転席まで進んでドアを開くスイッチを押す。
「問題ない。あの触手は紫藤達と遊んでる最中だ。俺達がバスの後ろに行かなければ、反対側から気付かれずに走り抜けれる。途中の〈奴ら〉は……ま、全員で強行突破するしかないだろうな」
「うぅ、結局そうなるのね……」
色々と思うところはあれど、明と仲間達は一人ずつ慎重にドアを降りていく。その周囲を塞ぐ〈奴ら〉の群れを前に、各々が近接用の武器を手に突撃した。
「行くぞ!!」
明達がいなくなったマイクロバスの中で蠢く触手の肉塊。捕食された生徒達の身体はぬるぬるとした肉壁の中で大きく膨れ上がっていき、急激な膨張に耐えられなくなった眼球や内臓が肉壁から生えた小さな触手によって次々と喰い破られていく。
「ぅぅ……うぁぁ……」
至るところから聞こえてくるキシィィという触手の鳴き声、そして生徒達の弱々しい呻き声が不気味に響くバスの車内。
ある男子生徒は抉り取られた眼球、耳や鼻、そして口から赤黒とした細長い触手を何本も飛び出させ、それがまた新たな生徒を襲っては着実とその数を増やしていく。
またある女子生徒は妊婦のように膨らんで弾けた腹部から鮮血と粘液を滴らせては、蕩けてぐちゃぐちゃになった内臓を触手に食べられてしまっている。
同じく捕食された紫藤は首から下を一番大きくて太い触手に呑み込まれていた。触手が噴射する溶解液で全身のありとあらゆる肉と皮が時間を掛けて少しずつ蕩けていく様が嫌でも理解できる。
「フフ、フフフフフ……! そうだ、私は“選ばれるべき”人間だ! こんなところで死ぬわけがない!」
全身を圧縮されながらも、眼前で容赦なく行われる無慈悲な虐殺を見届ける紫藤。尋常ではない量の脂汗を掻いており、先程からブツブツと誰かに向かって喋り続けていた。
やがて避けられない死期が目前に迫り、次第に紫藤の顔から血の気が引いていく。薄れゆく視界と意識の中、紫藤はペタペタと裸足でこちらに歩み寄る可愛らしい女の子の姿を朧気に視た。
「はぁ、はぁ……か、母さん……? ハハ……そこに、そこにいたんですね……? ずっと……探してた……母さん……私はあの父や弟から……あなたを守り……すべてを狂わせた……紫藤の家すべてに復讐を……あぁ、だめだ……もう冷たくなって……母さん……これからも……私の傍に……そしてまた……昔のように……私を……褒めて……ください……母、さ……」
死ぬ間際──涙を流して意味深に問い掛けた紫藤に対し、幼女はただ無邪気にクスクスと嗤うだけ。それでも紫藤にとってはそれで充分救われていたのかもしれない。
生命の灯火が消える瞬間、涙を流したその表情は眠るように穏やかな最期を遂げていた。
──紫藤浩一、死亡確認。
紫藤も殺され、誰もいなくなったマイクロバスの中で幼女は独り吼えた。
「チガウ……チガウチガウチガウッ! “オマエ”じゃない……オマエなんかイラナイ!!」
一本の太い触手に騎乗したまま紫藤の首根っこを華奢な片手で乱暴に掴むと、激情した幼女は紫藤の脊髄を豪快に持ち上げ一気に引っこ抜いてしまった。
「ハァ、ハァ、ハァ……アハァ……コレ、キモチイイッ……♪」
体内にまだ残っていた血液が湯水の如く噴き出しては紫藤の血飛沫をその身に浴び、幼い少女はゾクゾクとした興奮と歓喜に打ち震える。
絶命した紫藤の鮮血で赤黒く染まるワンピースの下から微かに覗く色白い無毛地帯。その下腹部から生暖かく湿った尿液が彼女の太ももを伝って膝下辺りまでいやらしく零れ落ちていく。
──絶頂に達した彼女は今まさに失禁している最中だった。
紫藤を含む何人かの人間を触手で次々と虐殺した事への恍惚とも取れるサディスティックな表情を浮かべた後、次なる獲物を求めてゆっくりとバスの車内を見回すが、既に彼女の探し人は仲間を連れて一目散に逃げ出した後だった。
「むぅ……逃げたナァ……?」
あと少し遅かった事に不満そうに頬をぷくっと膨らませた幼女。鮮血と自身が漏らした尿液で一面水溜まりになった床に転がった、紫藤の脊髄で繋がれた頭部を小さな裸足で力強く踏み砕いてからマイクロバスを降りる。
「……こっち……どっち……?」
幼い子供らしくキョロキョロと首を振っては周辺の景色を見渡す。目指すは明達の向かった方角だ。
ある程度の所在地は明と深く繋がった“血眼の視界”を通じて探知機のように察知できるが、それには明が自分と同じ“人外の力”を使わなくてはならない。
しかしバスを立ち去る途中で〈奴ら〉との戦闘を終えた今、明は恐らく平常の状態に戻っているはず……これでは“血眼”同士による“視界共有”も完全には役立たないだろう。
手掛かりとしては道中に倒れた〈奴ら〉との戦闘の痕跡くらいか……幼女は背中から伸ばしていた無尽蔵の触手を全て小さな体内に収納していくと、微かに薫る血の匂いを頼りに静けさの残る町並みを歩き出す。
──もうじき、地獄と化した床主市に夜の闇が訪れようとしていた。
これで第2章は終わり、ストーリーは序盤最後の舞台となる海動邸に移ります。
またそれに伴い第2章のタイトルを【マイクロバス】に変更、次回以降の更新となる第3章を予定していた【海動邸】にします。
次回からはこれまでのゾンビパニックを一旦忘れて、海動とヒロイン達のエロシーンやイチャイチャが入ってきます(原作で言うなら孝達が南リカの家で色々やってる辺りです)。
殺伐とした中でも和やかシーンというか清涼剤はやはり必要不可欠ですしね。後の惨劇や悲劇、仲間との別れなんかを演出する上で、これらの描写や会話シーンが非常に我々の心に響くっていうか……まぁ伏線です。
もちろん第3章では海動の隠し事や触手幼女ちゃん、ゾンビ絡みのシリアス要素もちゃんと含みますのでそちらもお楽しみに。