学園黙示録~ANOTHER OF THE DEAD~   作:聖夜竜

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お待たせしました!最新話です!

今回はちょっと話の展開を修正する必要が出来てしまった為、ヒロイン達のお風呂タイムは残念ながら次回に流れてしまいました……(^_^;)


生き返る心と身体

 

 時刻は夜の19時前。明達を部屋に残して一足先に浴室へと向かった女性陣。

 

 電気ガス水道がまだ使えるうちにやれる事はやっておきたい……明の主張で急遽決まった入浴タイム。

 

 キッチンに向かう前に明が予めお湯を沸かしてくれたらしく、女性陣の中で唯一海動邸の内装を知る麗の案内でやって来た脱衣場。

 

 そこで全員汚れた衣服を脱ぎ、後で洗濯する為に置かれてあった洗濯カゴに衣服を入れていく。下着はお風呂から上がった後も変わらず身に付ける事になった為、衣服とは別に脱衣場のカゴに置いておく事に。

 

 海動邸の浴室は明の母親の趣味なのか、かなり広々とした余裕のある快適空間になっており、恐らく明の母親が以前から入浴の際に使っていたのだろう──見るからに高級な香水まできちんと並べて用意されていた。

 

「ねぇ、お風呂にこれちょっとだけ入れてもいいかしら?」

 

 そう言って脱衣場の棚を全裸の姿で楽しそうに物色していた静香が引っ張り出したのは甘くて良い匂いのする香水だった。

 

「鞠川先生、あなたはまたそうやって……いいですか? 私達はこの子達の教師であって保護者でもあるんですよ? あまり人の家の物を勝手に弄っちゃいけないと思いますが?」

 

 その後ろで腰に手を当てた京子が顔をしかめた呆れ口調で咎めると、静香は不満な態度で京子の説得に乗り出した。

 

「えぇ~……だってこれ、すっごく人気のあるブランド物の香水なのよ? 私達で使わなきゃもったいないと思うんだけど……」

 

「鞠川先生、そういう問題ではなくて──」

 

 教師二人が全裸のまま言い合っているその傍らでは、同じく藤美学園指定のセーラー服と各々の個性が出ている可愛らしい下着を脱ぎ終えた女の子達がお互いの身体を観察していた。

 

「ふわぁ~……夕樹先輩のお胸、すごく大きくて綺麗な形……」

 

「本当、何をしたらこんなになるのかしら……?」

 

 敏美と美鈴は自慢気にGカップは間違いなくあるだろう豊満なバストを揺らす美玖と胸の話題で談笑している最中らしい。その横では麗と智江もしっかり聞く耳立てて会話に加わっている。

 

「フフ♪ 女の秘密よ。それと──いつまでも夕樹先輩じゃアタシが気持ち悪いし、これからは普通に美玖って呼んでくれていいわ。アタシもアンタ達のこと名前で呼ばせてもらうから」

 

「えっ、でもそれじゃ……」

 

「いいのよ別に。アタシは元々後輩とかどうでもよかったし、アンタ達に先輩って呼ばれるほど大した女でもないから」

 

 そう言って小さく笑う美玖からはどこか大人びた哀愁の雰囲気を感じられる。彼女の知られざる過去に何か関係しているのだろうか……

 

「それよりさ。そう言うアンタ達だってなかなかのプロモーションよねぇ? フフフ──もう少し揉んだらアタシみたいにもっとエッチなおっぱいになるかもしれないわよ?」

 

 美玖のニヤリとした発言に彼女達の視線がちらりとお互いの豊満な胸元へと向けられる……なるほど。確かにどの胸を見比べても非常に健康的で見事な発育具合と言えよう……ただ1名を除いて。

 

「……いいのよ、胸なんかなくたって。むしろ周りがやたら大き過ぎなだけ……えぇ、きっとそうよ……私は何も悪くない」

 

 この中にいる女性では唯一の貧乳である美鈴はどんよりと暗い雰囲気で悲しげに呟くが、そこに明るい笑顔を浮かべた全裸の静香が歩み寄って来た。

 

「なぁ~に、みんなして女の子の身体の話? だったら先生達も混ぜて混ぜて♪」

 

「はぁ……何故でしょうか。私っていつもこんな役回りばっかり……教師なのに……」

 

 ぷるんぷるん暴れるJカップの爆乳を揺らす静香の後ろに控えている京子はどうやら彼女に言いくるめられたらしく、先程から憂鬱な溜息を漏らしていた。

 

 上機嫌な静香の手にはしっかりと香水の瓶が握られており、現在の家主である明には無断で使用するらしい。尤も、後でそれを知ったところで明は別に気にもしないだろうが。

 

「鞠川先生、それにあなた達も……いい加減はしたないですよ? そろそろお風呂に入らないと……海動君や森田君に今村君だって待たせているんですからね?」

 

 京子の言う事は正しい。今後いつ水道やガスが止まるかもわからない状況であまり悠長にしていられないのも事実。ましてやこれだけの人数が入浴するのだ。

 

 盛り上がっていた彼女達もここは素直にチーム年長者である京子の意見に従い、外側からは見えないように設計されている浴室のガラスドアを開いて中へと入る。

 

 リゾートホテル宛らの綺麗な浴室は壁一面が純白で覆われ、清潔且つ上品な空間を演出し、高級感溢れるユニットバスは大人が三人ほど一緒に入ってもまだ僅かに余る広さで、既にちょうどいい熱さのお湯で満たされている。

 

 彼女達は全員ゴクッと生唾を飲み込むと、もう我慢できないとばかりに突撃していった。

 

 

 

 

 

 ──その頃、リビングでは森田と今村が2階の部屋から運び終えたリュックサックが幾つも並んで置かれていく。

 

 乾パンや缶詰めなどの非常食、水の入ったMサイズのペットボトルが数日分、新品の白いタオル複数にポケットティッシュ、ウェットティッシュ、救急箱、ガムテープ、新聞紙、ビニール袋、ゴミ袋、ゴム手袋、軍手、コンパス、ロープ、携帯ラジオ、懐中電灯、キャンプ用のランタンといった災害対策物資のほか。

 

 双眼鏡、発煙筒、床主市の地図、シガレットのココア味1ボックス30個入り、煙草1カートン、マッチ1箱、爆竹(玉タイプ)1箱分、長崎爆竹(20連発式タイプ)1箱分などが大量に用意されてあった。

 

 それらの荷物を一つずつ床に出しながら、森田と今村は改めて明の用意周到振りに感嘆してしまう。

 

「なぁ、海動──お前いつの間にこんなすげーもん買い集めてたんだ?」

 

「そうだぜ。地震とかの災害対策ってならまぁわかるけどよぉ。これはちょっとレベルが違うっていうか──大袈裟過ぎじゃねぇか?」

 

 二人がキッチンに立っている似合わないエプロン姿の明へと質問すると、明は人参やじゃがいもの皮を器用に剥きながら彼らの方も見ずに淡々と答える。

 

「……俺はただ生き残る為に準備してただけさ。それに……同じ悪夢はもう二度と繰り返したくねぇからな」

 

 意味深に呟く明に対して二人は困惑した様子で首を傾げていたが、明はそれを無視して怖い顔付きのまま、先程皮を剥き終えた野菜を調理用の包丁で丁寧に切っていく。

 

(そうだ……“あの地獄”を味わうのは今までもこれから先も俺一人でいい。森田や今村、麗や静香、そして美玖──今のみんなじゃきっと“アレ”には耐えられないだろう……俺が少しでもこうやって助けてやらねぇと)

 

 深い決意に満ちた明。その脳裏には今でも頻繁に夢に見る残酷な光景がはっきりと魂に深く刻まれている。

 

 

 

 

 

 瓦礫の山が延々と広がる廃墟と荒野の地域と化した日本。真っ赤に染まった不気味な空はどこまでも暗黒の業火に包まれ、ありとあらゆる草木や水、そして生物が完全に滅び去っていた。

 

 誰も住めない死の星となってしまったこの地球で唯一神から活動を許された生命体は人間の身を捨てた海動明、そして度重なる進化を続けて遂に不滅の化け物へと成り果てたゾンビ──〈奴ら〉の軍勢だった。

 

 それはまさしくこの世の地獄。かつて『床主市』と呼ばれていたこの都市も今では見る影もなく、降り注ぐ放射線の雨によってどろどろに蕩けた廃墟のビル群は人類が過去に存在したという文明を表す冷たい墓場のようで、人間が一人残らず絶滅した醜く穢れた世界は燃え盛る灼熱の業火と吹き荒れる砂塵の風に曝されていた。

 

『みんな、俺を残して死んじまった……麗、静香、美玖……俺は、俺はこれからどうすればいい……?』

 

 つい先程、この地球上で最後に残った唯一無二の人間『夕樹美玖』はほぼ無限に迫り来る〈奴ら〉の前で世界の全てに絶望──自ら命を絶ってしまった。

 

 今となっては既に懐かしい、最初のパンデミック発生から年季が経って随分ぼろぼろになった藤美学園のセーラー服を着た彼女の血に染まった綺麗な亡骸を優しく抱き締め、静かに涙を流す明は眠るように瞳を閉ざした彼女をお姫様抱っこで安全に運び終えたのだ。

 

『……また、俺だけが生き残るのか? こんなにも無意味な世界で俺だけが死ねないまま……』

 

 荒れ果てた荒野に座り込んだ明の眼前には美玖の亡骸が眠る墓標が作られてある。その辺に積まれた瓦礫の山から適当に発掘したコンクリートの残骸を掘り出した土の中に力ずくで突き刺し、美玖が生前愛着していたカチューシャを墓前に供えた。

 

『……なぁ、どうせ俺の姿をどこかで見ているんだろ? だったら頼む……さっさと俺を終わらせてくれないか? もう何もかも疲れたんだ……少しくらい休ませてくれ……』

 

 言ったところで無駄だとはわかり切っている。何しろこれが初めての経験ではない。

 

 海動明という存在は既に幾百という次元世界を孤独のままに渡り歩いてきた。その過程で世界は必ずパンデミックに襲われ、何度も繰り返しこの世界が終わる瞬間を目の当たりにしてきた。

 

 それと同時に愛する者達の悲しい死に様も……

 

 ある時は長年の恋愛を経てめでたく恋人になった宮本麗を性欲過剰な〈奴ら〉に目の前でレイプされたまま、無惨にも〈奴ら〉の度重なる膣内射精でパンパンに膨らんだ腹部を子宮諸とも残酷に破裂させられた。

 

 またある時は放浪癖のある母親代わりに不良同然だった自分を大切に育ててくれた静香と禁断の恋仲になるも、二人で一緒に避難したショッピングモールで協力していた仲間の男数名にいつの間にか彼女を連れ去られてしまい、必死に探した結果そこで見るも無惨な亡骸へと変わり果てた全裸の彼女を発見してしまったり……

 

 それまでに明の選択した行動次第で微妙に世界の出来事は変わるも、最終的にはどの世界も仲間達の命は惨劇と共に奪われ、日本を含む世界は降り注ぐ破滅の光によって地獄へと変貌してしまう……

 

 気が遠くなる時間、過酷な人生をもう嫌というほど経験してきた明の心と肉体は既に限界まで擦り切れていた。

 

『…………クスクス♪』

 

 世界が終わるその最期の瞬間、心身共に深い傷を負った明はまた独り静かに眠りに就く。頭の中で心地よく聞こえる可愛らしい女の子の声と共に、明に与えられた時間は今一度始まりへと巻き戻っていく……

 

 

 

 

 

 




いよいよ海動の秘密その1が明らかになりました!

まぁ所謂逆行、タイムリープですね。

海動のやたら都合の良い用意周到さ、1話から続いていた意味深な言動の数々はすべてタイムリープによるそれまでの経験値上乗せと知識を持って何度も繰り返しパンデミック世界を転生しているからです。

と言ってもこれは謎のほんの一部……第3章では引き続き海動の人間離れした秘密が明らかになっていきますので。

そして次回こそヒロイン達のちょっとエッチなお風呂タイムが!?

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