学園黙示録~ANOTHER OF THE DEAD~   作:聖夜竜

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今回から第4章【市街地】スタートです。

第4章のテーマは『女の悲劇と裏切り』。

一時的に海動という力強い存在を失ったヒロイン達。

襲い来る様々な〈奴ら〉、人間、触手を相手に全身血塗れのぼろぼろになりながら、醜くも美しく地獄の戦場へと躍り出る……




第4章 市街地 Bルート
舞い降りた堕天使


 

 ──翌朝、未曾有の緊急事態となった床主市に2日目の朝がやって来る。

 

 昨夜、同じ人間に父親を殺されたばかりの小学生の女の子『希里ありす』と白い仔犬の『ジーク』を危機一髪のところで救出して見せた小室孝とその仲間達。

 

 彼らが南リカ邸に駐車してあったハンヴィーに乗り込んで御別川を渡り、御別橋の向こう側に到着した頃──そこから離れた距離に位置する市街地方面では、〈奴ら〉の軍勢が未だに道路や建物内を徘徊していた。

 

「誰か! 誰か助けてッ! う、うわああああああああああ!!」

 

 ──また一人、生きている人間が必死の抵抗も虚しく〈奴ら〉に喰われては例のウィルスに感染していく。

 

 とある建物の物陰に身を潜め、音を立てずに隠れていた黒いコート姿の女性はその光景を悲しげに眺めていた。

 

(……やっぱりここも……)

 

 腰辺りまで伸ばしたダークブラウンの長髪。女性にしては長身ながらグラマラスなスタイルを持ち、髪と同じダークブラウンの瞳は男女問わず多くの者を魅了してしまうほどに魔性的だ。

 

 外見的にはまだ20代前半の女子大生に見える若々しい容姿の彼女だが、こう見えて既に結婚しており子供もいる人妻の巨乳美女である。彼女の場合は訳あって実年齢不詳となっているが、それは聞かない方が身の為だろう。

 

(だめ……早く行かなきゃ……)

 

 普通の人間が〈奴ら〉に噛まれて化け物へと感染していく過程を見届け、その女性は急いでその場を立ち去ろうと踵を返す。するとそこに……

 

「へへっ、そこの可愛い彼女♪ もしかしていま一人?」

 

「俺達そこのコンビニに避難してるんだけどさー、よかったらお姉さんもこれから一緒しない?」

 

 行く手を塞ぐように数人のチャラチャラした身なりの男達が現れる。彼らはこの近くのコンビニに避難していたらしく、独りで行動している様子の彼女を自分達の領地に案内しようとする。

 

「えっ? あっ……すみません……あの、急いでますから……」

 

 ナンパしてきた男達から言葉巧みに誘導されるが、内気な性格の彼女は控え目に断って現場を立ち去ろうとする。

 

「まあまあ、そう固いこと言わずにさぁ」

 

「俺達ぃ、男だらけで退屈してるんだよねー」

 

「そうそう。やっぱこういう時は可愛い女の子守ってあげなきゃダメっしょ?」

 

「人助け人助け♪ ──へへっ」

 

「いやっ、あの……私、本当に急いでますから……っ!」

 

 しかし彼女は振り返って律儀に軽く頭を下げるだけ……その冷ややかな反応に苛立ちを隠せなくなってきた短気な男達は、人目を気にして逃げようとする彼女を取り囲んで立ち止まらせてしまう。

 

「あぁ? おい、ちょっと待てや。人がせっかく親切で助けてあげようかって言ってんのに、その態度はさすがにないんじゃねぇの?」

 

「姉ちゃん、あんま俺達を怒らせねぇ方がいいかもよ?」

 

「生意気に高そうなコートなんか着やがって」

 

「へへっ、ちょーっと脱ぎ脱ぎしましょうねー」

 

「いやっ、離してっ! あぁ……きゃああああああああああ!!」

 

 男達が包囲していた彼女の着ている黒ずくめのコートを掴んで強引に剥ぎ取ってしまうと、驚いた事にコートの下は見事なまでに綺麗で淫らな彼女の裸が丸見えになっていた。

 

「うひょー! マジかよ!」

 

「なぁ、ひょっとしてこいつ痴女?」

 

「いやーマジでヤバいっしょ。おとなしい顔して実は露出の趣味でもあんのかね?」

 

「しかもなんだよこの身体──馬鹿みたいに乳でけーし乳首もアソコも全部綺麗で丸見えって──エロ過ぎだろ」

 

 男達が興奮して痴女じゃないかと騒ぎ立てるが、恥ずかしい裸体を視られた彼女は慌てて胸元と秘部をその手で隠す。

 

「やっ、やめて……っ! 今ならまだ……!」

 

 お願い、どうか私に関わらないで……

 

 そう呟く彼女は息を吐くのさえ苦しむように小さな怯え声で頼む。そんな彼女を尻目に男達はニヤニヤ笑うと、身動きの取れない彼女を無理やり抱き寄せて推定Fカップはあるであろう豊満な乳房をいやらしく揉み始める。

 

「へへっ、たまんねーぜ」

 

「やっ、やめっ……ぁ、んっ……」

 

 男達の強引な愛撫に思わずエッチな喘ぎ声を漏らしてしまい、彼女は恥ずかしそうに頬を赤らめて顔を背ける。

 

「今までの世界は終わったんだよ。もう何もかも忘れて、俺達と一緒に死ぬまで気持ちいいことして楽しもうぜ?」

 

「ぶっちゃけ男探してたから、そんなコートに裸だけの痴女みたいな格好して街ん中歩いてたんだろ?」

 

「ち、違っ……ん、やぁ……」

 

「違わないでしょ? 知らない男達におっぱい揉まれてこんなに乳首立たせちゃってんのにさ」

 

「そ、それは……あっ、んぁ……お、おねがいです……もうやめて……はぁ、はぁ……じゃないと、っ……わた、しっ……あなたたちを……!」

 

「はいはい、続きはこっちでね」

 

「へへっ! 女の子ひとりお持ち帰り~!」

 

 口では嫌がる素振りを見せながらも何故か身体は抵抗できず、未だに乳房を触り続ける下品な笑みを浮かべた男達にコンビニ横の駐車場まで連れ込まれ……

 

 

 

 

 

「名前なんて言うの? おっぱいのサイズは? 彼氏いるの? 教えてよ、ねぇ」

 

「素直に話してくれないと、身体に聞いちゃうよ?」

 

「はぁ、はぁ、はぁ……ぁ、くっ、ぅん……だ、だめっ……!」

 

 逃がさないように取り囲む男達の下劣な声に混じって、彼女の脳内に聞こえてくるのはノイズ混じりの謎の囁き。

 

 

 

 狂え──この人達に犯されたい。

 狂え──この人達から逃げたい。

 狂え──この人達を殺したい。

 

 

 

 様々な欲望が頭の中に煩く響いては彼女の精神を酷く混乱させる。

 

(だ、だめ……これ以上は、もうっ……!)

 

 徐々に乱れ始める精神状態──人間としての理性を辛うじて抑え込むその全裸の肉体にいやらしく絡み付く鋼鉄の鎖が、ブチ、ブチっと音を立てては一つずつ解かれていく。そして……

 

「ぁ、いやっ……ぁ、あぁ……っ!」

 

 痺れを切らした男の一人が無理やり彼女の顎を掴み上げ、小さく震えるその柔らかい唇へと顔を近付け始める。

 

 

 

 いや、知らない男に無理やりキスされる……!!

 

 

 

 そう思った瞬間、全く違う意味でドキドキが止まらない彼女の胸の鼓動が更に激しくなっていく。その間にも別の男が彼女の大きな乳房に吸い着き、綺麗なピンク色の乳首を舌先で何度も執拗に舐め回しては転がし始める。

 

「はぁ、はぁ……はっ、はっ……んはぁあぁ……だめ、そこは、ひぅんっ! あっ、あぁん……いやっ、ぃんんっ!」

 

 性欲を促す刺激が高まり、徐々に乱れていく弱々しい息遣い。そんな中、男の一人に乳首を歯でカリッと噛まれた途端、ぽろぽろと涙を流して恥辱に耐えていた彼女の瞳が花開くように突如として真っ赤な閃光を放つ。

 

「うわっ!?」

 

「な、なんだ!?」

 

「この女、目が赤く光って……!」

 

 その不気味な怪奇現象に怯んだ男達が思わず拘束を解いて距離を置く。力無く地面に座り込む彼女の目は双方共に赤く煌めいており、そこから溢れ出すように透明の涙が頬を伝っていく。

 

「はっ、はっ、はっ、はっ……ぁ、ぅぅ……うぁぁ……うがぁああああ……!」

 

 苦しみながら好き勝手に弄ばれた豊満な胸を片手で抑え、女性とは思えない獣にも似た低い唸り声を出してその場に踞る。

 

「お、おい……こいつヤバいんじゃ!?」

 

「なぁ、逃げた方がよくね?」

 

「あぁ、なんか明らかに様子おかしくなってるし……」

 

「いやでも、ここでこの女から逃げたらせっかく手に入れた俺達のコンビニが──」

 

 動揺のあまりに男達がどうするかの判断を躊躇していると、その中の一人が小刻みに身体を震わす彼女に向かって歩み寄る。

 

「おい女、いい加減に──」

 

 言い掛けた刹那、俯く顔を高く上げた彼女は耳をつんざく恐ろしい悲鳴を上げ、華奢な両腕の肘から皮や肉を突き破るようにして蝙蝠の羽根にも似た酷く歪に折れ曲がった漆黒の刃翼を勢いよく出現させ、不用意に近付いてきた男を一人その禍々しい翼で引き裂いては無惨にも胴体を真っ二つに切断してしまう。

 

「し、ろ……? えっ……?」

 

 それはまるで、カッターのような凄まじい切れ味を誇る漆黒の翼だった。見えないピアノ線に引っ掛かったかの如く胴体を綺麗に切断された男は自分が死んだ事にも気付かないまま、仲間の男達が見ている目の前でぐちゃぐちゃになって地面に崩れてしまった。

 

 また、それと同時にムチムチっとした魅力的な白い桃尻の上辺りから突然ボゴッと得体の知れない肉らしきモノが彼女の体内で膨れ上がり、それはやがて彼女の人皮を引き裂くような惨い音を鳴らして大きく突き破って現れた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……うぅ……っ!」

 

 全裸の美女が苦しそうに吐息を漏らしつつ、そのギラギラと光る恐ろしい血眼で残りの男達を睨み付ける。

 

 触手にも似たグロテスクな形状の黒い尻尾は彼女のお尻から醜く露出しており、まるで化け物のような恐ろしい変身を遂げてしまった。

 

「「「ひぃいいいい!! ば、ばば化け物!?」」」

 

 男達が一斉に腰を抜かして地面に尻餅つく中、彼女は吸血鬼のように鋭く尖った白い歯を妖しく覗かせた。本物の悪魔でも憑依してしまったのか、得体の知れない恐怖に震える男達を赤く光る血眼で見下ろした彼女は微かに残る理性で必死に呼び掛ける。

 

「はぁ、はぁ……お願い……っ! こんなこと、もうしないで……私のせいで誰かが傷付くのも、私が人を傷付けるのも……もう、いやなのっ! 私の心が、堪えられないっ……!」

 

 辛そうな口調で彼女に頼まれ、青ざめた表情の男達は歯をガチガチ鳴らしながら何度も頷く。それを見た彼女はどこか安心した様子で疲れながらも微笑み、肘から生えた歪な形状の翼を器用に折り畳んで自らの露出した胸や秘部を上手い具合に覆い隠す。

 

 その様子を見ていた男達は途端に全員立ち上がり、変貌した彼女を何度も「化け物!」と叫んでからどこかへと逃げ出していった……

 

 

 

 

 

 ──誰もいなくなった早朝の路地裏。美しい人間から醜い化け物へと進化した彼女は逃げ惑う男達の後ろ姿を見届けると同時に、腰が抜けたようにその場に崩れ落ちると、自分が殺してしまった男の遺体の前で嗚咽を漏らし泣き始めた。

 

「ごめん、なさ……っ! こんなはずじゃ……私、ヒトを殺すつもりなんて……!」

 

 彼女の名前は──海動ジュン。明の母親にして海動博士の妻でもある。彼女は半月ほど前に日本で発生した研究所の大規模な爆発事故から奇跡的に生還し、明の待つ自宅に帰ろうと今まで独りぼっちで床主市を目指し旅していたのだ。

 

 その道中で親切そうに声を掛けてきた男達に幾度となく騙されては、毎回似たような展開で睡眠中に──あるいは彼らに渡された睡眠薬入りの飲み物を知らずうちに飲まされ、混濁した意識が朦朧とする間に数え切れない男達に散々レイプされてきた。

 

 そうして彼女の意識が回復したと同時に身体に宿る未知なるウィルスの力が覚醒し、自らの意志とは無関係に翼を持った化け物へと自動変身したその異形な姿で人間から逃げ続けていた。

 

 同意なしに自分を騙して好き勝手に犯し、容赦なく膣内射精まで散々決めてきた最低な男達だが、心の優しいジュンは拒絶しつつも結局はその性行為を受け入れ、“なるべく”自分からは殺さずに犯された後で何も知らない彼らを逃がしてあげてきた。

 

 しかし床主市に入った辺りから身体に宿るウィルスの影響が日に日に増大化し、ジュンは先程のようにレイプしてきた男を誤って殺害してしまう事が増えていた。

 

 ……どんな形にしろ、普段は虫一匹さえ殺せなさそうな清楚で内気な弱々しい性格のジュンが少なからず自分を傷付けてくる人間を拒絶し、殺してきたのは疑いのない事実。

 

 それが彼女の良心を痛く傷付け、人間への罪悪感に怯える彼女の心中を縛り付けて離さない。

 

「ごめんなさい……ごめんなさい……っ!」

 

 赤く染まる眼から涙を溢し、彼女は未だに独り人間である事を求めながら同じ人間に忌み嫌われ、怯えている薄幸の堕天使なのだろうか……?

 

 




ついに海動ママンことジュンちゃん(さん?)登場。

彼女も第4章では欠かせないキャラです。

そして次回、ある目的を達成する為に二手に別れたチームが安全だった海動邸を出発する事に……
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総合評価:7707/評価:7.44/連載:31話/更新日時:2018年11月03日(土) 14:15 小説情報


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