音撃戦隊バングドリーマー   作:作者アアアア

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RASの追加が今週で本当に助かった……。



13thLive Daylight

 最近、白昼夢を見る。

 私はカスミソウが一面に広がる世界で夜空の下、ただ私一人が立っている夢。

 すこし歩いた先には、そこが見えない程の断崖絶壁が下に続いていて、崖の先には荒れ果てた大地が広がり続けているだけ。

「貴女は誰?」

 崖の向こうに立つ私に似ている女の子に向けて声を掛けるとその子は空を飛んでこっちに向かって来てくれる。

 けれど、その子は宙で立ち止まり私の元へは来てくれない。

「どうしてそこにいるの?」

 私が聞いても何も答えてはくれない。

 あの子は手を伸ばして何か言っているみたいだけど今の私にはそれが分からなかった。

 だけど、最近になって様子が変わった。

 荒れた大地には怪物と人が襲われる悪夢としか言えない光景。

 それに怖くなった逃げても女の子が私の前に現れて手を掴んで向こう側へ連れて行こうとする。

「嫌ッ!」

 そう叫ぶとそれは消えるけれど、私の心にはしこりが残ったままだった。

 

 

 

「♪ ~」

 薄暗い研究室でコナモは鼻歌を歌いながら、人一人が入るほどの大きさの円柱を見ていた。そして、その脇にはビーカーが二つ。

「もうすぐだよ、皆」

 ウキウキした様子で見つめているのは、円柱の中で培養液に包まれ眠る一体の黒龍と、脇のビーカーで眠る小さな黄緑のタランチュラ、紫のサソリ。

「楽しそうだな」

 研究室のドアが開かれ、そこから三人の幹部が入り込んできた。

 声を掛けたのは先頭に立つライト、その後ろにはお辞儀をするシー、手を振るウィンド。

「あ、皆! これ見てよ、もうすぐで完成するんだ!」

「これがコドウ? どう見ても禍々しいですわね」

「コナモの趣味だよ。いいでしょ?」

「それより、完成したコイツをどうするんだ?」

「目を付けていた人間に憑りつかせる! 後はコドウ達が導いてくれるよ」

 コナモも目を輝かせて眠る三体を見つめる。すぐに三人の方に振り返り喋りだす。

「皆! どうせだったら何かしてもらいたい事とかある⁉ 今だったら、そういう指示も植え付けるけど」

「例えばどの様なものが?」

「気に入らないエクスードの始末から、音撃戦隊の討伐、Dバレットの収集、何でもござれ!」

「無い」

「無いですわ」

「ありませんね」

 コナモの誇らしげな説明だったが、三人の心には響かず一蹴された。

 

 

 

「……」

 流星堂の地下蔵で、香澄は黙って持っていたブランクDバレットを見つめていた。

「おい香澄、黙って何見てんだ?」

「うーん……このDバレット、温かくない?」

「何だそれ?」

 この日はポピパの五人で練習に精を出していた。昼下がりには終え香澄はそんな疑問を四人に呟く。

「りみりん、試しに握ってみてよ!」

「え? うん」

 香澄に言われ困惑しつつもブランクDバレットを受け取り優しく握る。

「うーん、何も感じないかな?」

「えー、そうかなあ?」

 りみからDバレットを返されつつ今度は沙綾に渡す。

「やっぱり何も感じないかな。でも、香澄がそう言うんだったら何かあるのかもね」

 弱気にバレットを握った沙綾は香澄を宥めつつ有咲にバレットを渡した。

「私には何も感じないがな、お前の気のせいじゃねーか?」

「有咲、次私ね」

「おう」

 沙綾もバレットを手の中で転がせていた有咲も似た感想を述べていると、たえが声を掛け有咲からバレットを受け取る。

「私は感じるよ」

「え⁉」

「マジか⁉」

「本当⁉」

 両手でバレットを握りしめていたたえの思わぬ感想に一行が驚いていると続けて言った。

「うん、温かくて魂を感じる」

「いやよく考えたら、私らが握りまくったから、熱がDバレットに移っただけなんじゃ?」

「じゃあこれが有咲の温もり……私、一生手を洗わない」

「私はアイドルじゃねーんだから洗え!」

「洗ったらまた握ってくれる?」

「何でそうなるんだよ!」

 そんな他愛のない会話をしていたその時、香澄のスマホから着信が入り、持ち主は軽く謝りつつ通話を開始する。

「もしもし?」

『私よ。湊よ』

「友希那先輩からなんて珍しいですね! どうしたんですか?」

『突然で申し訳ないんだけど……今から会えないかしら? 音撃戦隊の今後に関わるかもしれないから』

「今からですか? いいですよ!」

『そう、それじゃあCircleの前で待ってるわ』

「はい!」

 通話を切り、席から立ちあがり皆に言う。

「皆ゴメン! ちょっと用事が出来ちゃった」

「音撃戦隊の事か?」

 たえからDバレットを受け取りつつ話す香澄に、有咲が声を掛ける。

「うん」

「あのさ、香澄」

 そこに沙綾も入って来た。

「戦う事も大切かもしれないけど、程々にね」

「分かってるよ! それじゃ、行ってくるね!」

 

 

 

 友希那に言われた通りCircle前にまで来た香澄、ミッシェル像の前に立つ友希那の姿を見て駆け寄る。

「友希那先輩!」

「来たわね」

「それで話って何ですか?」

「以前、私とバラネコが捕まった時があったでしょう」

「はい、本当に解決してよかったです……」

「その時、バラネコは見た事の無いコドウに助けられたと言っていた。つまり私達以外の、六人目の音撃戦士がいるという事になるわ」

「あ、確かに! 友希那先輩、もしかして話って……!」

「呑み込みが早くて助かるわ。貴女にはその六人目を見つけてもらいたいの」

「あれ? でもポップはこの世界に来たコドウは五体だけって言ってたけど……」

『私達以外にコドウが……?』

 呟きつつポップが香澄の肩に現れる。

「ポップは何か知ってるの?」

「知らないな。どう言う事だ……?」

「どうやらそれも知る必要があるようね。バラネコ」

 友希那の一声にバラネコが肩に現れる。

「はいはーい、話は聞いてたよ。ユッキーナは探しにいかないの?」

「今日は練習があるのよ。だから戸山さんと一緒にいて頂戴」

「りょーかいっと絶対に見つけてくるからね!」

 自信満々に言って空いている香澄の肩に飛び移ると、香澄は乗って来たバラネコの頭をそっと撫でる。

「分かりました! 任せて下さい!」

「ええ、頼んだわよ」

 それだけ言って友希那は練習の為にCircleに入って行った。

「さてバラネコ、問題のコドウの行く先に当てはあるのか?」

「ん~ないかな。でも、イイ感じの場所を知ってるからそこに行ってみようよ!」

「……無計画だな」

「でもポップ、バラネコの言う通りまずはそこから探してみようよ!」

「そうだな……闇雲に探すよりマシだろう」

「よし、決まり!」

 香澄の説得にポップが渋々賛同すると、バラネコが香澄の中に入り込み、その後を追う様にポップも入って行く。

『私の言う場所に向かってね! 道案内ならするから!』

「分かった!」

 

 

 

「ここって……駅前だよね?」

 香澄がバラネコの指示でやって来たのは駅前。

 駅構内は勿論、舗装された歩道や広場には花壇があったりと綺麗に整理されている。

『それじゃカスミン、探そうか! 特に花のある所!』

「駅に来るコドウって一体どんなの何だろう……?」

 香澄は疑問を浮かべつつ周囲を探し始めてみる。だがそれにストップをかける者が一人。

『待て香澄』

「何?」

『バラネコ、コドウの特徴を聞いて無かったな。一体どんな姿をしているんだ?』

『あー、それならね。ちょうちょの形をしてたよ』

「蝶々? 成る程、だから花壇だね!」

『だが蝶だからって、花壇を見るのは安直すぎないか? それが必ず来るとは限らないし』

 バラネコの考えに香澄は納得するが、ポップは指摘をした。

『う、うるさいなあ。ポップだって闇雲よりマシって言ってたじゃん!』

『まあ、そうだが』

「それでバラネコ、他に特徴は?」

『えーっと、大きさはモルフォチョウぐらいで、全体的に白かったね』

 その時、香澄の顔面前を一匹の蝶が漂い、香澄の視線もそれに向けられる。

『何故か喋らないんだよね……あ! 水色の光がぼんやりと光ってたよ!』

「……こんな感じ?」

 香澄は問題の蝶を指差す。

『そうそう! こんな感じ、カスミン見つけるの早いね!』

『成程、こんな感じか……』

 漂っていた蝶が正に特徴通りでバラネコはそれを見て感心した。ポップもその美しさに魅入られている。

『……って香澄! 悠長に見ていないで捕まえるんだ!』

「あ! 分かった!」

 ポップの台詞で目的を思い出したのと同時に、蝶は香澄から逃げ出す。

「待って!」

 羽を羽ばたかせて飛ぶそれに香澄はその後を追っていく。

 

 

 

 辿り着いたのは一軒のアトリエ。その外観を眺めていると蝶は中へと入って行った。

『入って行った! カスミン追っかけて!』

「うん!」

『待て。不法侵入でもするつもりか?』

「あ……」

 ポップに言われ、庭から侵入しようとした香澄を止める。

『何か上手い事を言って、潜入するしかないな』

「分かった、任せて!」

 香澄は玄関に立ち、そのドアをノックする。

「は~い」

 ドア越しからゆったりとした声が聞こえ、開かれると緩い雰囲気にツーサイドアップの少女が出てきた。

「あれ? 香澄先輩どうしてここに? シロちゃんが教えたのかなあ?」

「七深ちゃん⁉」

 知り合いの登場に香澄が驚いていると、内にいるコドウ達が疑問を持つ。

『カスミン、知り合い?』

『反応からしてそうだろう。どんな関係何だ?』

「最近、バンドを始めた子達だよ!」

「? 香澄先輩、いきなりどうしたんですか~」

 先輩の突然の独り言に首を傾げていると、香澄は我に返り質問をする。

「ああゴメン! 七深ちゃん、ここに蝶々が入って行かなかった?」

「それってこの辺じゃ見かけない綺麗な蝶々ですか~?」

「うんそれ! それで……」

「最近家によく来るんですよ~。まさかお客さんを連れてくるなんて、広町びっくりですよ~」

「ねえ、それ見せてくれないかな?」

「いいですよ~。ささ上がってください」

 七深から快諾を貰い香澄は七深のアトリエへと入って行った。

 

 

 

 廊下を歩きつつ香澄は七深から蝶の事を聞き出そうとする。

「ねえ、その蝶はいつから出てきたの?」

「先週ぐらいですかね? 私達の歌が凄く気に入ってるみたいで、演奏をすると喜んで飛び回るんですよ~」

『私達……ここに複数人いるのか……。香澄、誰が契りを交わしているか調べて欲しい』

「七深ちゃん、最近身の回りで何かおかしな事とかあった?」

「特にないですよ~。あ、でも最近シロちゃんが上の空になる事が多いですね~」

「ましろちゃんが?」

 七深の情報を頭に入れつつも続けて聞く。

「それじゃあ……その蝶、誰に一番なついているの?」

「シロちゃんかな~? 指を差し出すと必ず止まってくれるぐらいですし」

「そのましろちゃんはいる?」

「皆来てますよ~。練習を終えて一息付いていた所ですから」

 探りを入れている内にその皆がいる部屋の前に立つ。

「七深ちゃん、誰だったの?」

「香澄先輩だよ。折角だから入れたけどいいよね?」

「え⁉」

 部屋に入った香澄が見たのはそれぞれ席に座っている四人。

 白髪に大人しい少女。

 金髪ロングに勝気な少女。

 ツインテールに小柄で幼さが残る少女。

 黒髪の大人びた女性。

「皆、遊びに来ちゃった!」

「香澄さん⁉」

 笑顔で手を振る香澄に白髪の少女が驚く。

「ましろちゃん、バンド活動はどう?」

「はい、ちょっとづつですけど……何とか出来てます」

「そっか! 分からない事があったらいつでも聞いてね!」

 先輩風を吹かす香澄の脳裏にポップの声が響く。

『香澄、やはり契りを交わしたのはこのましろと言う奴みたいだ』

「そうなの⁉」

『ああ、気配が小さすぎてここまで近づかないと気づけなかった』

 突然大声を出した香澄に何も知らない四人が驚き、一人はビクッと体を震わせた。

「ねえましろちゃん! 蝶々の事知らない?」

「え⁉ さ、最近来てますけど……」

「それじゃあ……光る球が体に……」

「知らない!」

 言いかけたその時、ましろは大声を出して立つと逃げ出そうとした。

 しかし、それよりも早く香澄は腕を掴む。

「待って!」

「わ、私は何も知らない……嫌!」

「倉田さん?」

「シロ?」

 ましろの豹変に何も知らない面々も疑問を持ち、怪訝な目で見る。

「うう……」

 その視線に耐え切れず、抵抗を弱めていくと女性が問いかけた。

「戸山さん、一体何が起きているか説明してもらえませんか? 倉田さんもよ」

「……はい」

 

 

 

「学校で居眠りしてたら悪霊に憑りつかれた⁉」

 ましろの非現実的台詞に香澄以外のメンバーが声を荒げる。

「うん、昼休みに中庭でウトウトしてたら光る球が私の中に入って来て、それからあのちょうちょが出てくるようになって……」

「倉田さん、嘘をつくならもっと現実的な事を言いなさい」

「ううん、ましろちゃんは嘘をついて無いよ」

「じゃ、じゃあましろちゃんは本当に憑りつかれたって事?」

 小柄な少女が恐る恐る聞くが、香澄は大丈夫な顔で言う。

「ううん、ましろちゃんに入ったのはコドウ、音撃戦隊の証だよ」

「音撃戦隊?」

「ルイ知らないの? 最近、噂になってるヒーローだけど」

『香澄』

 その時、ポップが香澄に声を掛ける。

「ポップ?」

『エクスードだ。やむ負えないが、現場に行くぞ』

「うん、分かった」

「あの、誰と話してんすか?」

 香澄が突然、独り言を言いだして透子が若干引き気味に聞く。

「私のコドウ! それじゃあ行ってくるね!」

 香澄は手を振つつも、急ぎつつ言ってその場から去って行った。

 

 

 

「あー……メンドクさ……」

 亀のエクスードが街中の広場に現れ、人々が逃げ惑う中、駆け付けてきた音撃戦隊の香澄を除いた四人が横に並ぶと彩が叫ぶ。

「そこまでだよ!」

「あれは亀さんのエクスードかしら?」

「所で香澄は?」

 蘭は香澄の不在に周囲を見渡す。

「皆!」

 そこへ香澄も遅れて駆け付ける。

「戸山さん、コドウの事は分かった?」

「後で説明します! 今はあれを!」

『スター!』

「そうね」

『ローズ!』

『サンセット!』

『クローバー!』

『スマイル!』

 それぞれがDバレットを起動させ装填すると叫んだ。

「音撃チェンジ!」

 五人の体が光に包まれ姿を変えると武器を構えて突撃していく。

 先陣を切るのは香澄と彩と友希那。

 手にしているキラキラドキドキ剣を上から思い切り振り下ろす。

 相手はそれに対してすかさず、装甲を固めた腕で防ぐ。

 香澄はダメージが入らないどころか、反動で手が痺れだす。

「硬ッ⁉」

 蘭とこころは遠くから射撃で攻めるが、矢弾、光弾でもダメージが全く通らず、亀怪人はつまらなさそうに腕を伸ばしている。

 亀怪人は彩の方を振り返ると胸部が開き、そこから銃身が伸びマシンガンが乱射され始める。

「うわわわわ⁉ 危ない危ない!」

 貼られる弾幕の中で彩は両手足をじたばたさせ、辛うじて避けていく。

「どうやら、これを使う必要あるわね……」

 それを見た友希那は相手から距離を取ってポケットからフェニックスバレットを取り出す。

『フェニックス!』

 バレットを装填すると、蒼炎の不死鳥が舞い降りて亀怪人を襲う。

「何⁉ ぐぁっ⁉」

 相手を不死鳥に任せ友希那はゆっくりとブルーローズを天に掲げる。

『LaLa,LaLaLa,LaLa,LaLaLa……』

「はぁ!」

 力を込めると不死鳥が友希那の背中に回り、翼で友希那を覆うと、ドリーマーブルーはドリーマーブルーファイヤーバードにパワーアップした。

 友希那が念じると左手にスタンドロッドが現れ、口元に近付けて叫ぶ。

「来なさい!」

 彼女の声に答えて、四人の分身が後ろに出現し、それぞれが手にしている長剣を構える。

「あー……増えんなって……」

 気だるげに胸部のマシンガンを友希那に向けて乱射し始めるが、友希那それを右に跳んで避ける。

「無駄よ」

 そのまま相手を睨みながら走り、相手も友希那の後を追う様に撃ちまくる。

 そして分身達もその後を追う様に走り出す。

「ん?」

 そのまま五人で亀怪人を取り囲む様に周囲を一定距離を保ちながら走り続ける。

「やべ……!」

 それに気づき、標準を追っていた友希那から外し分身の方に向けた。走る分身に弾を当てると声も出さず消滅、四体とも消してリロードに入ろうとしたその時

「はああああ!」

 友希那が飛び掛かってがら空きになった胴体を縦に斬りつけ、横に二振り、締めにサマーソルトキックを受け飛ばされる。

「ぐえー……!」

 地面に叩きつけられ、止めを刺す準備を始めていた友希那を見てぼやく。

「青いの強すぎだろ……」

 亀は首と四肢を胴体に引っ込めると高速で回転を始め、宙に浮かぶとフリスビーの様に飛んで逃げ出した。

「待ちなさい!」

 逃げようとするターゲットを追うべく両足に力を込めて高く飛ぼうとしたその時

「うっ⁉」

 友希那はブルーローズを落として両手、両膝を地面について悶えだす。

「友希那先輩⁉」

 その姿に四人が駆け寄り、香澄は背中をさすりだす。

「うっ……ぐっ……」

 苦しそうに呻くと友希那は元の姿に戻ってしまった。

「はぁ……はぁ……」

 苦しみが消えたからか友希那は呼吸を整え出しそれを見た蘭は疑問を吐く。

「何でいきなり変身が……?」

「もしかしたらまだ私には制御が出来てないから……?」

 友希那はフェニックスバレットを恨めし気に見つめながら呟くのであった。

 

 

 

「さて、あの亀怪人の事だけど」

 五人は戦場から離れ、市ヶ谷家で次の対策を練っていた。

 六人でちゃぶ台を囲んでの会議、その光景に住人である有咲が香澄に耳打ちをする。

「何で作戦会議を家でやるんだよ」

「だってあそこからだと有咲の家が一番近かったから」

「まあ、必要だから別にいいけどよ」

 香澄と有咲が二人だけで会話をしている中で友希那は話し続ける。

「まず相手の防御はとてつもなく硬い。側面や後面を狙うのは無しよ」

 友希那の台詞に香澄は有咲に耳打ちした。

「ねえ有咲、亀の弱点ってどこにあるのかな?」

「亀? 甲羅が硬いから腹が弱いんじゃねぇか?」

「だよねえ……」

「でも、あの銃弾の雨をどうしたら……」

「それについては心配ないわ」

 友希那は腕を組みつつ語る。

「恐らく弾は無限ではない。だとしたら、装填している隙を狙うのが一番でしょう」

「だったら今日の湊さんみたく、誰かが囮になって弾が尽きた所を四人で攻めるってのはどうですか?」

「それが得策ね」

 取り敢えずは蘭のアイデアを採用し、友希那は次の話題に変える。

「次は戸山さん、頼んでおいた事はしてくれたかしら?」

「はい! そこはバッチリ見つけてきました!」

「見つける?」

「ええ、戸山さんには六人目の音撃戦士を調べてもらっていたの」

「六人目⁉」

 友希那の台詞に三人がざわめく。

「それで、その人は?」

「はい! 実は……」

 

 

 

「まさか倉田さんがね……」

「ましろちゃんかぁ……流石に戦ってもらうのは……」

「確かに、どう考えてもそういう性格じゃないし」

「そうかしら? きっとあたし達に協力してるわ!」

 香澄は四人に見つけるまでの経緯とあのコドウは誰のものだったのかを全て話し、それを聞いた四人は各々感想を述べる。

「……戸山さん、わざわざ調べてくれてありがとう」

「どうするんですか?」

「これからもこの五人でやっていきましょう」

「……ですね。ましろちゃん嫌がってみたいですし」

「どうして? 皆で頼めば、きっと聞いてくれるわ!」

 こころ以外は、入れないという空気で進めていたがこころがそれを壊そうとする。

「私は嫌がる人を無理矢理、戦場に放り込む程、酷な人間じゃないわ」

「ますます、負けられなくなりましたね……!」

 そう言って決意を固める香澄達だった。

 

 

 

「青い奴が邪魔?」

 自身の拠点にまで退いた亀怪人は早速、上司の一人であるシーに相談。シーの復唱に頷いていた。

「そうですね、装填中にダメージを負ったとなると隙を消せる武装をするのがよろしいのかと」

「じゃあ、それで……」

「分かりました。それでは胸部と貴方の内部のマガジンを改造しますがよろしいですか?」

「何でもいいから頼む……」

 

 

 

 翌日、花咲川でもなく羽丘でもない女子高、月ノ森女子学園。

 名だたる名門校であるこの校舎の一画で、五人の少女が一つのスマホの映像を眺めていた。

『音撃戦隊が戦っている所を見た!』

 SNSにはそんな一文と共に音撃戦隊とエクスードの交戦の一部の映像が流れている。

 だが、コメント欄の殆どは手の込んだフェイク動画だと、本物とは信じていなかった。

 そうこの五人以外には。

「透子ちゃんこれは?」

「フォロワーが撮った動画、まさかと思って履歴を探ってみたらマジだったなんて……」

 透子は話し続ける。

「アタシの知ってる噂だと、音撃戦隊はそれぞれ道具で変身して、一人一体コドウってのを持ってるらしい。目的は人類の敵であるエクスードを倒す事」

「それで、ましろちゃんはそのコドウを持っているって事?」

「ええ……私いらないよ!」

「何言ってんの! シロ、上手く行けばアンタ英雄になれるよ!」

「シロちゃん、その道具って言うのはあるの?」

「持ってない……」

「それじゃあ無理だね~。でもそれがいいかも」

「ええ、仮にあったとしても倉田さんの性格上この映像の様になるかどうか怪しいし」

「うう……」

「ましろちゃん、もしよかったそのコドウ私に譲ってくれない?」

「ふーすけどうしたんだ?」

「だって、エクスードで困っている人が沢山いるんだよ! だったら、これで沢山の人を助けたい!」

強い意志を持つつくしに押され、ましろは俯きぽつぽつと言いだす。

「確かに、つくしちゃんは逃げてばかりな私と違って何時も頑張ってて、はぁ……何で私なんだろう……」

後ろ向きな考えが頭の中に貼られたその時、ましろの足が一人でに教室の外へと向けられる。

「あ、あれ?」

「シロどうしたんだ?」

「た、助けて! か、身体が勝手に⁉」

フラフラと外へ向かおうとする、ましろに瑠唯と透子が取り押さえるがそれをも振り払って教室の扉を開く。

「うわあああああん! 助けてええええええ!」

「ましろちゃん!」

彼女の悲鳴も空しく、普段ではありえない程のスピードで学校の外へと出て行った。

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

ようやく足の暴走が収まり息を切らしながら辺りを羽丘に来ていた。

「ここって……」

その時、校庭内から爆音が響きそれに驚いたましろは逃げ出そうとしたが、再び足が暴走を始め、音源の方へ歩みだす。

「やだやだやだやだ!」

嫌がる彼女が見たものは音撃戦隊が亀のエクスードと戦っている場面だった。

「あれって……」

 

 

 

「何でよりにもよってうちにの近くに現れるのさ!」

「仕方がないわ、作戦変更よ」

以前だした、弾切れにさせてから攻撃という案だったが、自分の校舎、最悪逃げ遅れた生徒や教員に被弾する可能性を考えて案をボツ。やむ負えず他の作戦で倒す事にした。

「皆、エクスードを羽交い締めにして!」

「分かった!」

香澄の指示に蘭と友希那が右側、彩とこころが左側を羽交い締めにする。

「放せ……」

そこへ香澄が真っ直ぐ走ってくる。

「喰らえ……!」

弾を香澄に向けて一斉に放ち、香澄は痛みに顔を歪めつつも真正面から全て受け止め目の前にまで来ると剣を振り上げる。

「はああああ!」

しかし、銃身が引っ込んだと思うと亀の頭が生えてきた。

「え?」

首を伸ばして香澄の胴に噛みついてきた。

「うわあああああああああ!」

痛みに叫ぶと投げ飛ばされ、校舎の壁に叩き付けられ元の姿へと戻る。

「香澄さん……⁉」

「戸山さん!」

友希那が叫ぶと同時に四人を振り払い、四肢を引っ込めて高速回転四人にダメージを与えつつ香澄の方へ吹き飛ばす。

「うわあああああ!」

四人も元の姿に戻り地面に転がる。

「止めだ……」

胸の亀の頭に光が集束していき五人は、当たれば命は無いと嫌でも思い知らされる。

「ぐっ……」

五人は動けずそれを睨み続ける。

 

 

 

「ここは……」

気が付くとましろは白昼夢の世界に立っていた。

「今はここに居る訳にかいないのに……!」

だが、崖の先の光景が普段とは違っていた。

「香澄さん?」

エクスードと倒れる音撃戦隊それを見たましろは叫ぶ。

「だ、誰か助けて! このままじゃ皆が!」

『まだ分からないのか!』

「……⁉」

突然の怒鳴り声に身を縮こませると、例の女の子が目の前に現れる。

「貴女、飛べるんでしょ! 香澄さんが!」

『お前がやるんだよ!』

「無、無理だよ。こんな所、落ちちゃうよ」

『いや行ける! お前の力を引き出せるのは今しかない!』

足元に広がるのは底の見えない崖、視線を上げれば今にも力尽きそうな五人。

『走れええええ!』

「う……」

ましろは意を決して、足を踏み出し走り出した。

「うわあああああああああああああ!」

 

 

 

「うわあああああああああああああ!」

現実世界、突然、ましろが音撃戦隊とエクスードの間、射線上に走って入ったその時、光線が放たれましろに直撃した。

「ましろちゃん!」

煙が晴れていき、そこにいたのは一匹の蝶、白銀色のバックラー、蝶の絵が描かれたDバレット、そして倉田ましろだった。

「これは……?」

盾をまじまじ見ていると脳裏から声が響く。

『今のお前なら使い方も分かるはずだ!』

「や、やってみる……」

声に導かれDバレットのヘッドを押し込む。

『バタフライ!』

盾の握り手についている装填口にバレットを挿す。

 美しいバイオリンの音色が響く中、ゆっくりと盾を上に掲げ縁の部分に手を添える。

「音撃チェンジ!」

 ましろの足元から大量の蝶が飛び立ちその中で姿が変わっていく、純白のドレスに水色のラインが入っていき。

 そして蝶の形の仮面が付けられ姿を完全に変えた。

「輝ける場所を目指して!」

「ドリーマーホワイト!」

 名乗りを終え、改めて自分姿を見る。

「って何これ⁉」

『うおおおおおおお! ついに変身キター!』

「だ、誰⁉」

 突如ましろの脳内で歓喜の叫びが響き、驚いて辺りを急いで見渡すが誰も声の主は見えない。

『俺だよ! いつもお前を見ていたやつだよ!』

「もしかして……あのちょうちょ?」

『ああ! お前のおかげでようやく喋れるようになったぜ!』

「しゃべ……え?」

『よろしく頼むぜ! ましろ、いや……相棒!』

「え、ええ⁉」

「もういいかー……? 喰らえ」

「ましろちゃん!」

 ましろの一人劇場に飽きた亀怪人は胸部からまたしても弾幕をましろ目掛けて打ち出す。

「え? きゃあああああ!」

 迫りくる弾の雨に盾で顔を隠す様に塞ぐ。

 だが弾は盾が全て弾き、ましろ自身も体に被弾をしたが全く傷ついていない。

「ああああああ……。あ、あれ?」

『相棒の力なら、こんなの豆鉄砲以下だな』

「えっと……どうしたら……?」

『突撃一択! ぶん殴れ!』

「わ、分かった……!」

 ましろは被弾も関わらず、弾の雨あられをまっすぐに突き進んで左拳で相手の胸を殴った。

「ええ⁉」

「ましろちゃん!」

 困惑の声を出しながら飛ばされた亀怪人を見た香澄はすかさず、ましろに向かってキラキラドキドキ剣を投げつける。

「それを使って!」

「は、はい!」

 足元に転がった剣を拾って改めて突撃していく。

「うわあああ!」

 素人全開のやけっぱちな連続斬りは全部ヒット。確実にダメージを与えていってる。

 亀怪人は胸を押さえながらのけ反る。

「あれ? これって?」

 キラキラドキドキ剣の鍔部分とバックラーが合わせられると思ったましろは二つを連結させる。

 そして、バックラーの縁を回す。

『フィニッシュモード!』

 刀身は白く光りだし、ましろの背中から蝶の羽が生えると高速で地面すれすれを飛び出す。

「わあああああああ!」

 悲鳴を上げながら、その剣で相手を二つに裂いた。

「あれ……? 負けた……?」

 それだけ言うと爆散。跡形も無く消し飛んだ。

「やったねましろちゃん!」

「え? あ、は、はい」

 実感の湧かないましろに喜ぶ香澄。だが、まだそれは早かった。

『リカバリーシステム、起動』

「こ、今度は何⁉」

 音声と共に巨大化する異形にましろは戸惑いを隠せず、香澄に助けを求める。

「か、香澄さん! あんな大きなの、どうしようも……!」

「大丈夫! 皆で力を合わせれば!」

 香澄は、巨大化した相手を見ても臆せず自信満々に膝をつく四人に振り返る。

「ごめんなさい、傷が……」

 だが深手を負った四人には戦う余力は残っていなかった。

『諦めるのはまだ早いぜ! 相棒!』

 蝶々がましろから現れ、続けて言う。

「さあ、お前のコドウを見せてくれ!」

「分かった! ポップ!」

 香澄が叫ぶとポップが肩に現れる。

「何か策があるのか?」

「オレ達も合体するんだよ!」

「我々だけでか?」

「ポップ! やってみようよ!」

 一歩前に出てポップを突き出す香澄。そこでましろの事を考えいますることを手短に教える。

「ましろちゃん! 銃弾をその蝶々に!」

 それだけ言って香澄はポップにDバレットを与える。

「ポップ!」

「え、えーっと……力を貸して!」

 ましろも香澄の真似をしてDバレットを与えると二体が巨大化していく。

「さあましろちゃん、行くよ!」

「え? ええ⁉」

 宙に浮かびだした香澄に手を掴まれましろも空へ上がって行き、悲鳴を上げるながらコドウに吸い込まれていった。

「きゃあああああああ!」

 ポップは腕と頭の無い人型に変形すると、蝶々が縦二つに割れ二枚の羽が腕の代わりになる様に連結、最後に人型の頭が現れると一体のロボットとなる。その姿はさながらハーピーのようだ。

 二人と二体の心が一つになった時、隠された力が目覚めた。

「完成! ツーマンライブ!」

「な、何が起きたんですか……?」

『どうだ相棒! これがオレ達の力だ!』

 誇らしげな蝶々に戸惑うましろに対して、香澄は指示を出す。

「来るよ! しっかり掴まってて!」

 両腕の羽ばたかせ空へ飛ぶ、今までには無いコクピットの激しい揺れに香澄は歯を食いしばりながらもコントロールをする。

「きゃあああああああああ!」

 一方、何も出来ないましろは操縦桿にしがみついて悲鳴をあげていた。

 亀怪人は、胸部を開いて弾幕を貼る。

「避けるな……!」

 だが、相手の弾幕を宙を舞って華麗に回避していく。

『そろそろ決めようぜ! 相棒!』

『香澄、ここは言う通りにするぞ。彼女が危ない』

「勿論! ましろちゃん、いいかな?」

「は、はやく……」

 顔を真っ青にして口を塞ぐましろはただ頷くしかなかった。

『よし行くぜ!』

 ツーマンライブは両腕の翼を激しく羽ばたかせると何個のも小さい竜巻を生み出し、亀怪人に向かって行く。

 その途中で竜巻達が合わさっていき、一つの大きな竜巻となり亀怪人の全身を縛り付けた。

 ドリルの様に回転しながら亀怪人に迫っていく。

「はああああ!」

 そして、ツーマンライブの突撃が亀怪人を貫いた。

「ああ……マジでだる……」

 気だるげな断末魔と共に爆散、今度こそ逝った。

「やったー! 今度こそ勝ったよー!」

 歓喜を上げながらましろの抱きつく香澄、だが本人はそれどころではなく。

「う、うぅ……きゅーん……」

「ま、ましろちゃん!」

 ましろはジェットコースター以上の運転に耐え切れず気絶してしまった。

 

 

 

 後日、弦巻邸ではましろの入隊式が行われていた。

 四人が後ろで見守っている中、ましろはこころから音撃戦隊のジャケットを両手で手渡しされていた。

 黒地に白のラインを所々に入れ、左胸に水色の蝶、背中には『月夜に飛び立つ』の一文。

 音撃戦隊の証に袖を通し、

「あの……変じゃないですか?」

「悪くないんじゃない」

「うんうん、すごく似合ってる!」

「最後にましろから一言言ってもらうわよ!」

「ええ⁉」

 香澄に助けを求める様に視線を向けるが

「ましろちゃん、ファイト!」

「うう……」

 ガッツポーズをする香澄を見たましろは思い切り叫ぶ。

「あ、あの! く、倉田ましろです! 戦うなんてできませんと思いますが、皆さんの迷惑にならないように頑張ります! ど、どうぞよろしくお願いします!」

 思い切り早口で必死に叫ぶ。

「ええ、よろしく」

「よろしくね! 分からない事があったら何でも聞いてね!」

 友希那と彩に迎えられた所で香澄が聞く。

「ところでましろちゃん。その子の名前はもう決まった?」

「あ……まだです」

「今後の事も考えてつけておいたほうがいいわよ」

「頼むぜ! 相棒!」

 友希那に言われ、ましろは少し考えると呟く。

「……フォル。って言うのはどうですか? モルフォニカから取ってみたんですけど……」

「……いいよ! すごくいい名前!」

 

 

 

 こうして六人目を迎え入れまた一歩、ステップした音撃戦隊。

 学生、バンドマン、音撃戦隊の三足の草鞋を履いたましろは今度どうなるか。

 音撃戦隊の戦いはまだ続く。

ポピパの楽曲と言えば?(採用されたものがフォーム名になります)

  • STAR BEAT!~ホシノコドウ~
  • 二重の虹(ダブル レインボウ)
  • キズナミュージック♪
  • Returns
  • ティアドロップス
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