『紗夜さん! そっちに行きましたよ!』
『任せて下さい! ……はぁ!』
あこの指摘で残った最後の一体のニワトリ魔物を紗夜は手にしている剣で切り裂く。
その一撃でライフが全損、魔物は光を放ちながら消滅した。
『お疲れさまでした』
『あこ達にかかれば余裕でしたね!」
『チキンバードは縄張りから絶対に出ないけれど、足がとにかく速いから中々倒せないんですよ』
『それを十五体……思ったより大変なクエストでしたね……』
チャットという事もあってか今の燐子は流暢に話せ、紗夜は受けた依頼の感想を呟くのだった。
今、彼女らがやっているのはオンラインゲームであるNFO。高い腕前を持つあこと燐子に加え、最近徐々に実力を付けている紗夜の三人は時にゲームの世界を謳歌していた。
『氷川さんはこんな話を聞いた事がありますか?』
『何ですか?』
その時、藪から棒に燐子が紗夜に話しかける。
『運営も知らないプレイヤーの存在です』
『運営も知らない?』
『あこも知ってますよ! 絶対に倒せないけれど、倒せば超絶激レアアイテムを落とすんですよ!』
『確か名前は十字架、黒のコートに二本の剣を逆手に持っていて、プレイヤーに出会うと、剣で十字架を作るらしいです』
『如何にもな話ですね。そもそも運営が知らないって……大方、不正データを使って遊んでいるプレイヤーでしょう』
そんなゲーム特有の都市伝説を聞き流していると、三人の前に見知らぬプレイヤーが現れる。
『……』
プレイヤーネームは十字架、服装も燐子が言った通りのものだった。
『あ! あの人ですよ!』
『……』
十字架は腰の剣を抜くと十字架を作る。
『おおー! ホントにやってくれた!』
『宇田川さん! ジロジロ見ないで行きますよ!』
舞い上がっているあこを紗夜が咎めていると十字架が剣を両手に襲いかかって来た。
二振りの刃を受けてあこは遠くに吹き飛んでいき、地面を転がる。
『え……』
あこの満タンだったライフが大幅に削がれ残り一割になっていた。
『
『あこちゃん!』
オンラインゲームには種類にはよるが、プレイヤーキラーという人を襲う人もおり、二人もこの謎のプレイヤーもその一人だと思っていた。
十字架はあこの前に立ち止めを刺そうとした所へすかさず、紗夜が割って入り盾で刃を防ぐ。
『いきなり何をするんですか!』
盾で押しのけて剣を振るがバックステップで避け、剣から衝撃波を二発放ち紗夜にダメ―ジを与える。
『くっ!』
紗夜は守りに特化した役割、タンクという事もあってかダメージは少なかったが、それでも体力を四割も削がれた。
『一旦村に戻りましょう!』
そう案を出して燐子は、転移魔法を唱え始めた。
それに気づいた十字架はポケットからナイフを出して、燐子に投げつけた。
『え……』
『な……』
『り……』
ナイフは燐子の胸に直撃すると、体力が全損、即死したのだ。
『りんりーん!』
あこの叫ぶが、燐子は断末魔を上げる間もなく、消滅した。
『よくも!』
『宇田川さん!』
怒りに身を任せてあこは自身の持つ最強魔法の詠唱を始める。
明らかに危険だと見た紗夜は、けむり玉を出して十字架の足元に投げつけた。
『!』
十字架は視界を覆われたが剣を振ると煙が払われる。しかし、二人の姿はもうなかった。
『紗夜さん! 何で止めたんですか!』
『あの相手には勝てないと踏んだからです。湊さんや今井さんがいてくれれば結果は変わっていたかもしれませんが……』
『だったら、友希那さんとリサ姉も呼びましょう! 殿様合戦です!』
『それを言うなら弔い合戦です。流石の湊さんでも仇討には協力してくれるか怪しいですが……』
『りんりんが襲われたって言ったら協力してくれますよ!』
始まりの村に撤退し、紗夜は憤るあこを宥めつつ燐子が復活、リスポーンするのを待っていた。
『……白金さん、遅くありませんか?』
『はい……りんりんどうしたんだろう?』
通信状況を見ても、燐子の回線はログイン状態、まだゲームをしているという事だ。
『すいません、一旦ログアウトしますね』
『どうしてですか?』
『りんりんに電話をかけてみます。寝落ちしたかもしれませんし……』
『分かりました』
そう言って二人はログアウト、ゲームを止めたのだった。
「……」
その頃、グランドピアノが置かれた豪勢な部屋では、燐子がパソコンの前でうつ伏せに眠っていた。
PCの画面には大きく『GAMEOVER』の字が浮かんでいるだけだ。
『只今電話に出る事は出来ません、ピーという音の後にメッセージをどうぞ』
『りんりん? さっきから反応ないけど、何かあったの? これを聞いていたらあこか紗夜さんに教えてね!』
そばに転がっているスマホが一人喋るだけだった。
翌日の羽丘、リサと友希那の教室にあこがやって来た。
「友希那さーん! リサ姉!」
廊下から手を振るあこにリサと友希那が寄り会話を始める。
「そんな大声を出さなくても分かるわよ」
「教室に来るなんて珍しいね。何かあったの?」
「うん、あのね昨日からりんりんと連絡が取れないの」
「燐子と?」
「確かに、あこだったら迷わずに出そうなのに」
「紗夜さんも何も教えてくれないし……」
「紗夜も関わっているのね。取りあえず私から聞いてみるわ」
「ありがとうございます。何かわかったら絶対に教えてくださいね!」
あこはそう言って自分の教室へと戻って行った。その時、タイミングよく友希那の携帯に着信が入る。
「もしもし?」
『私です。氷川です』
「紗夜?」
『放課後にNFOに関しての話があります』
「私よりあこの方が詳しいんじゃないかしら?」
『いえ……最悪エクスードが関わっている可能性があるので……』
「……簡単な概要を送って来て頂戴、詳しい事は直接聞くわ」
『分かりました。……どうかお願いします』
手短に電話を終え、友希那は会話の内容をリサに話した。
「紗夜、何だって?」
「リサ、美竹さんも呼んで頂戴。エクスードかもしれないわ」
「え⁉ 紗夜また被害に……」
「今回は無事よ」
その時、紗夜からメールが送られてきた。
「来たわね」
メールを開いてリサと画面を覗き込む。
『十字架という名前のプレイヤーに倒された人は現実世界で昏睡状態になってしまう。運営も知らない謎のプレイヤー?』
箇条書きで紗夜の知りえる情報が書かれており、一番下には恐れていた一文が書かれていた。
『白金さんが被害に遭いました』
「燐子……!」
「え⁉ 紗夜の言う通りなら燐子は……!」
「ええ……こんなに放課後が待ち遠しいなんてね……!」
今の友希那は僅かに怒りが混じった声色をしていた。
「皆さん来てくれましたか」
放課後、紗夜はCircleに音撃戦隊の全員に昨日の出来事を全て話そうとしていた。
「戸山さん達も来たのね」
「私が呼んだんです」
「それで紗夜先輩、話って何ですか?」
香澄の疑問に答える前に紗夜は一つの質問で返した。
「皆さんはNFOをご存知ですか?」
「う~ん、知らないですね」
「あたしもあこがハマってる以外詳しくは……」
「私もゲームはちょっと……」
「オンライン……私には無理かな……」
「NFOって何かしら? 面白そうね!」
「弦巻さん、今回は遊ぶわけじゃないんですよ」
こころを窘め、紗夜は続けて説明をする。
「NeoFantasyOnline、宇田川さんと白金さんが遊んでいるオンラインゲームです。最近、ゲーム倒されると現実で昏睡状態にされてしまうプレイヤーの噂が立っているんです」
「確かそうだったわね。紗夜、燐子が被害に遭ったのは本当なの?」
「え⁉ 燐子ちゃんに何かあったの⁉」
「白金さんが問題の相手に襲われて以降、連絡が取れないんです。親御さんから聞いた話ですと、今朝パソコンの前で動かなくなってる姿で発見されたそうです」
「でも、学校では風邪だって……!」
「現生徒会長が不可思議な事件に巻き込まれたと、先生方は生徒を混乱させる訳にはいかなかったのでしょう」
紗夜なりの推測を言うと友希那が紗夜に疑問をぶつける。
「あこには話さなかったの?」
「ええ、宇田川さんを危険に晒す訳には行きませんから」
「そんな噂が立っているなら運営も何かしら行動をとるんじゃないですか?」
今度は蘭の疑問にも紗夜が答える。
「そう思って私もメールを送ったんですが……」
紗夜はそう言いつつスマホに保存した、PCメールのスクリーンショットを見せつけた。
『不具合は一切ありません』
「返って来たのはそれだけでした」
「一会社の反応とは思えないわね」
「NFOのBBSでも同じ内容のメールを受け取ったという反応が多々ありました」
紗夜は続けて言う。
「運営がエクスードの存在を隠したがっている可能性も考えられます」
「私達にそれを調べて欲しいって事ですね! 分かりました!」
香澄が自信満々な顔で快諾する香澄にましろが不安げに言う。
「でも、ゲームの中のエクスードにどうやって会えばいいんだろう?」
「それじゃあ、皆で会社に行きましょう!」
こころに続いて友希那が言う。
「ええ、現実の人間に問い詰めれば何かわかるでしょう」
そこへタイミングよく黒服が音も無く現れこころに声をかける。
「こころ様、お車を用意しました」
「ひゃっ⁉」
突如として現れたことで驚くましろを横に続けて言う。
「アポインメントも取ってあります。皆さまもこちらへ」
高級リムジンのドアを開けて六人を導き始め、友希那が乗りかかった所で紗夜が叫ぶ。
「湊さん、私と今井さんで色々調べてみます」
「頼んだわよ」
それだけ言うと、ドアが閉まりリムジンは会社へ向けて発進した。
NFO運営本部では、社員達は皆死んだ様な顔でパソコンに向かい淡々と作業をしている。そんな社員らに指示を出すのは、チーターのエクスードが一体。
「さあさあ、皆働け!」
「……」
黙って黙々と作業をしていたが、一人がその環境に耐え切れず叫んだ。
「もう嫌だ! 魂を奪うゲームなんて誰が喜ぶんだ!」
「おい!」
「家に帰してくれよ!」
「……」
叫ぶ者を止める者もいたが、チーターのエクスードは黙って、叫ぶ者の肩を掴むと掴まれた方は、体から光の球が出たかと思うと、パソコンの中へ吸い込まれていった。
「彼の様になりたくなきゃ働きな!」
その光景を見ていた社員達は必至の形相で作業を再開し始める。
「ネットを通して魂を奪い、管理してゆくゆくは人類どもを支配する! NFOはその手始めだ!」
計画の全てを話し、高笑いをし始める。
「アハハハハハ……」
「そういう事だったんだね!」
香澄の大声に社内にいる全員が声の方向を向くと、開かれた扉の前に六人が立っていた。
「人質を作って指揮権を自分の物にしていたなら納得が行くわね」
「皆さん、後は私達に任せて下さい!」
彩の叫びに社員らは意識の無い者も連れて逃げて行った。
「お前らが音撃戦隊?」
「ええそうよ!」
「だったらここで始末してやる!」
チーターのエクスードが襲いかかってきた。
場所は変わり、ビルの前。
六人は横に並んで装備を用意すると叫んだ。
「音撃チェンジ!」
一瞬で姿を変えて戦いを始める。
戦ってる中、因縁の新手が走って戦線に入ってくる。
「Raise Your Hands!」
一組と一体の間に割って入って来たレイヤに蘭は目の色を変える。
「RASブラック!」
鍔迫り合いをしていた蘭は、それを止めてRASブラックの方へ走り出す。
「美竹さん!」
それを見た友希那もその後を追う。
「友希那先輩!」
「や、ヤベェ……」
肩で息をするエクスードは社内へ逃げていき残された四人もその後を追って行った。
「よし」
チーターエクスードがパソコンの前に立つと、上空にホログラムで出来ている穴が現れる。
「いたよ!」
彩が指を指すと逃がさないと四人は走り出す。
「来るな!」
「逃がさない!」
香澄、彩、こころがエクスードを掴むと三人も穴へと吸い込まれていった。
「きゃあああああああ!」
「香澄さーん!」
一足遅かったましろは穴が消滅しパソコンの前でへたり込むしかなかった。
吸い込まれる少し前、
「こいつで……!」
蘭がポケットから出したのはレインフォースバレット、構えて睨みつつ別のDバレットを出そうとする。
「あ……弾無かったんだった」
今何も持っていない事を思いだした蘭は僅かに迷って、フォンからサンセットバレットを抜いた。
「これでいく!」
そう言って蘭はレインフォースバレットにサンセットバレットを装填。
『……』
しかし、音声は流れずそれどころか
「うわあああああああ!」
「美竹さん!」
蘭の全身から電流が流れ悲鳴を上げる。
レイヤは、その隙にバレットを取り返そうとするが友希那が横入りをして妨害をする。
「はぁ……はぁ……」
電流が消えたが、項垂れ悶える蘭を掴むと翼を広げ香澄達の方へ飛んでいった。
社内へ入って来た蘭と友希那は辺りを見渡して四人を探しているとへたり込んでいるましろを見つける。
「ましろ!」
「倉田さん、戸山さんは?」
「あ……」
ゆっくり振り返り、震える声で一言一言呟く。
「穴が出てきて……香澄さん達が……エクスードを追って……その中に……」
「穴?」
その時、友希那の携帯にまたしても着信が入る。
「もしもし」
『私です。氷川です』
「紗夜、何かわかったの?」
『いえ、唯気になるものを見つけまして』
「何かしら?」
『例のプレイヤーを見つける為にNFOをプレイしているんですが……その中に戸山さんらしきNPCを見つけまして』
「NPC?」
『コンピューターが操作するキャラです。とにかく見て下さい』
「分かったわ」
「……うん?」
気を失っていた香澄が目を覚ましゆっくりと体を起こす。
「ここは?」
「うーん……」
傍で倒れていた彩とこころも意識を取り戻し、三人は立ち上がり辺りを見渡す。
変身は解けておらず、その姿に疑問を持ちつつも最初に香澄が声を出した。
「ここは草原?」
「あの穴に吸い込まれてここに来たって事?」
『すいません』
香澄と彩が考えていたその時、後ろから声を掛けられ振り返る。
「紗夜先輩⁉」
「どうしたのその格好⁉」
「まるで騎士みたいね!」
現れたのはNFOでの紗夜。銀の甲冑で武装したファンタジーテイスト溢れる姿に驚く。
『失礼ですが、戸山さんですか?』
「は、はい」
『どうやらチャットでなら意思疎通が出来るみたいですね』
「チャット?」
『詳しい話はそこの村に向かいながら話します。今はついて来て下さい』
「分かりました」
香澄らは紗夜の言葉に従いついていくのだった。
NFOをやるべくネットカフェに来た蘭、友希那、ましろ。
「三人共、こっち」
既にゲームを起動しているリサに導かれ用意された席に座る。
蘭とましろはアカウントが無いので作る所から始めなければいけない。
「美竹さん」
PCを起動させながら、友希那は蘭に問い詰める。
「貴女、エクスードを放ってRASの方に向かったでしょう」
「それがなんですか?」
「私達のすべき事は何? RASを倒す事ではないはずよ」
「アイツらも敵だって事忘れたんですか?」
「いいえ、けれど優先順位はエクスードより下じゃないかしら?」
「どっちも大差は無いとあたしは思います」
「あの、二人共……」
空気が悪くなりだし、ましろが恐る恐る止めようとする。
「青葉さんの事?」
「……そう言う訳じゃ、それに湊さんには関係ないでしょう」
「無くても、口出しするなとは聞いて無いわ」
「だったらもうしないで下さい」
「はぁ……貴女ね」
会話勝負は徐々に過熱していき、友希那の声に怒声が混じりだしたその時
「ストーップ! 友希那も蘭もそこまで! 今するべき事は香澄達を助ける事でしょ?」
リサが仲裁に入った事で流石に二人共大人しくなり、
「兎に角、次はちゃんとやって頂戴」
「だったら、これだけは聞かせてください」
「蘭!」
「リサさんがモカと同じ目に遭ったら湊さんはどうするんですか?」
食い下がる蘭にリサが怒鳴り、その問いに友希那は僅かに間が作られてから言った。
「別に、やるべき事は変わらないわ」
「皆さん、私が呼んだ理由を忘れたんですか?」
紗夜が全員に言うと友希那が返す。
「……確か戸山さんを見た。だったわね」
「はい。たった今、目を覚ましたようなので、はじまりの村にまで来てもらいましょう」
ゲームの画面には紗夜のキャラを中心に変身している香澄達が草原に立っている。
『すいません』
紗夜がチャットを打ち込むと、即座に返信が来た。
『紗夜先輩⁉』
『どうしたのその格好⁉』
『まるで騎士みたいね!』
「紗夜、どう出来そう?」
リサが横から画面を覗き込み、紗夜に聞く。
「はい、どうやらチャットでなら意思疎通は出来そうです。……三人にも伝えておきましょう」
『どうやらチャットでなら意思疎通が出来るみたいですね』
その後、紗夜は三人を無事に村に連れていくことが出来た。
『はっきり言います。貴女達はゲームの世界に入ってしまったんです』
「ええええええええ⁉」
宿屋に集まって、紗夜から発せられた言葉に驚きを隠せない香澄と彩。
「凄いわ! ゲームの中ってこんなにも綺麗なのね!」
こころは平常運行だ。
『弦巻さん、はしゃいでいる場合じゃないわ』
『香澄の言う通りだと、エクスードもそっち側にいるかもしれないけど……』
吟遊詩人友希那と僧侶リサが一度考えこむが、香澄がすぐに案を出す。
「まずは情報収集をしましょう!」
『そうね』
『では、皆さんは』
ポピパの楽曲と言えば?(採用されたものがフォーム名になります)
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