この日、チュチュは湧き上がる高揚を抑えるのに精一杯の状態で、自身のホームページの一ページを眺めていた。
「おい、どうしたんだ?」
横からマスキングがパソコンを覗き込むと大きく書かれた一文が目に入る。
『RAISE A SUILEN、始動』
「始動?」
「はい! この日がRASの初ライブの日になります!」
「ええ、ハナゾノがサポートギターとはいえ入ってくれたおかげでRASがようやく動き始めるのよ!」
パレオとチュチュが舞い上がる感情を上げながら語る。
「そのハナゾノは?」
「今、レイヤ様と練習をしていますよ」
「そうか」
それだけ言うとマスキングは二人から離れ、スタジオルームに行くのだった。
スタジオではたえとレイヤがセッションをしており、一曲を通しでやって終える。
「レイヤのベース、すごく震える……」
「ここに来るまでに色々な場所でやって来たからね。けれど……」
レイヤはたえと彼女のギターを見つめて改めて言う。
「私は花ちゃんと一緒に演奏した今が一番かな」
「よ」
そこにマスキングが入って来てドラム上に置かれているスティックを手にして楽し気な顔で頼む。
「アタシも混ぜてくれないか?」
「いいよ、三人で通してみようか」
椅子に座りスタンバイ状態になったマスキングに答える様に二人もそれぞれギターとベースを構えたその時マスキングが質問する。
「そういえば、ハナゾノはこのままメンバーになるのか?」
「え?」
「確かに、今はサポートギターだし……私はいつでも歓迎するよ」
マスキングとレイヤに聞かれるがたえは迷わず答える。
「うーん……嬉しいけれど、私にはポピパがあるから」
「だったら何で、RASのサポートギターをし始めたんだ?」
「場所が変われば演奏技術が上がるかもしれないって思ったからかな?」
「……そうなんだ」
「レイ?」
「う、ううん何でもない。さ、ますきリズムは任せるよ」
「おう、いくぞ! 1、2、3、4……」
「おはよう」
「おたえ!」
翌日、たえはポピパの四人に声を掛けて五人で学校へ向かって歩き出しその途中で香澄が話を切り出す。
「おたえ、RAsでの練習はどう?」
「うん皆親切だし、演奏しててすごく楽しいから何かを掴めそうな気がするんだ。それに今度ライブもするし」
「ライブ?」
「三日後にgalaxyでするからみんなも来てね」
「勿論だよ。ね、香澄ちゃん」
「三日後だね! 楽しみだな~!」
会話に華を咲かせる三人に対して、物憂げな顔をした沙綾を見た有咲は声を掛ける。
「沙綾? どうしたんだ?」
「え! いや、何でもないよ」
「そうか? まぁ、言いたいことがあったら言っとけよ?」
「ん、ありがと。でも、普段から言いたいことを言わない有咲には言われたくないかな?」
「何だよそれ! 私が心配してるっていうのによー!」
「ふふ、ごめんごめん。けれど、感謝してるのは本当だよ」
時間が進んで放課後、帰り道にポップが香澄に声を掛ける。
『香澄、エクスードだ』
「本当⁉ 場所は⁉」
『この感じだと駅前だな』
「分かった、行こう!」
ポップに言われ香澄は戦場へ駆けていく。
着いた先にはオウムのエクスードが複数のピラーを侍らせて逃げる人々の中で闊歩していた。
「いた!」
「お前は⁉」
「音撃戦隊だよ!」
『スター!』
「戸山さん!」
「友希那先輩! 皆!」
更に友希那達、五人も駆けつけそれぞれDバレットを出して構える。
「音撃チェンジ!」
姿を変えてピラー達を一掃しようと立ち向かう。
ピラー狩りは四人に任せ、後の二人、彩と友希那がオウムのエクスードに立ち向かう。
相手は突きと斬撃をかわして彩に近づく。
「お前の感性、修正してやる!」
彩の腹を撫でると、彼女の腹部が本のページをめくる様にパラパラと開かれた。
「彩さん⁉」
「彩のお腹が本になっちゃたわ⁉」
驚く、蘭とこころを他所にペンを出すと適当なページに触れる。
「よし、これだ!」
彩の内側に書かれた一文は。
『ドリーマーグリーンは死ぬ!』
それだけを書くと本を閉じ、彩の腹は元に戻った。
「よし! 死ね!」
「わ、私に何をしたの⁉」
「お前は死ぬ! 脈絡もなくな!」
「え⁉」
「彩先輩!」
勝ち誇って指を指し、それにその場の全員が動きを止める。
「……」
「……」
「……」
皆が黙って彩を見つめるが特に何も起きない。
「あの……彩さん、体は……?」
「え? 何ともないけど……」
「……」
ましろの一声に答えた彩を見た友希那は躊躇いなく刺す。
「はぁ!」
「おあ⁉ 何で効かないんだ⁉」
吹っ飛び転がるオウムのエクスードが叫ぶ中香澄が近づいていく。
「Dバレットでも、エクスードの言う事は聞きたくないんだよ!」
「そんなはずでは……」
起き上がった所で香澄の三連撃受けダメージを受けるが何かを閃いたのか、自分の体に何かを書き込んだ。
「これだ!」
『速度、マッハ』
これを書き込んだ途端、目にもとまらぬ速さで戦場から逃げ出した。
「速い⁉」
「逃げられたわね」
散らばっていた六人は集まり元の姿に戻りエクスードの会話を始める。
「彩先輩、身体は本当に大丈夫ですか?」
「うん、何ともないよ」
香澄が彩を労っていると友希那が話を切り出す。
「今回のエクスードは、相手を本に出来る能力を持っているようね」
「しかも、本に書き込まれた変化も起きるって事ですよね?」
「そうね、けれどさっきの丸山さんの様に限度があるみたいだけど」
友希那と蘭が能力の予想をし、次はその対策を考えるだけだがましろが不安げに言う。
「本にされたら何にも出来ないんじゃ……」
「さっきのエクスード、自分の力をうまく使えてなかったわ!」
「……今回の相手は大した相手ではなさそうね」
こころの一言に友希那は頷き、次は倒すと決めるのだった。
「はぁ……はぁ……」
息を切らしながらエクスードが廃工場に迷い込む。
「大変そうだねー」
声の方を向くとコナモが笑いながら手を振っており、オウムのエクスードは真っ直ぐ迫り胸倉を掴む。
「お前! どういうことだ⁉」
「何が?」
「お前がDバレットとやらを貸すといったから乗ったが、全然使えなかったぞ!」
片方の出て本の絵が描かれたDバレットを出して見せつける。
「君の書いた内容が滅茶苦茶だったんじゃいのかな?」
「知るか! 使えなかったのは事実だろ!」
「しょうがないなー。コナモが正しい&役立つ使い方を見せてあげるよ」
「は?」
オウムのエクスードが睨んでいるがコナモは態度を全く変えず、廃工場から出て行く。
「どうしたの? ついてこないの?」
「……ッチ」
オウムのエクスードは舌打ちをして渋々、ついていくのだった。
「友希那、例のエクスードはどうなったの?」
「特に何も聞かないわ」
エクスードとの遭遇から三日、友希那はリサと共にCircleに向かう道中でリサから聞かれ淡々と答える。
「奴らは恐らくどこかで力を溜めている、出来れば早めに見つけたいものだけど……」
「バラネコは何か分からないの?」
『んー……気配をあんまり感じないんだよね。大きく動いて無いか、どこかで力尽きたかも分かんなくて……』
「しっかりして頂戴」
『うん、ゴメン』
友希那の内のバラネコに聞き、会話を終えたと見たリサが聞き出す。
「バラネコ、何て?」
「分からないそうよ」
「う~ん……一体どこに……」
「今は考えてもしょうがないわ。練習、するわよ」
会話している内にCircle前にまでたどり着き、二人は入って行く。
スタジオでは、既にメンバーの三人も来ており早速練習に入ろうとしていた。
「ごめんさい、遅れたわ」
「いえ、時間前ですし大丈夫ですよ」
それぞれ、楽器を構え演奏を始めようとする。
リサのベースを始まりに一斉に旋律を奏でようとした。
「⁉」
だがその場の面々、紗夜以外のメンバーが手と口を止める。
紗夜が奏でているのは、汚らしい音で耳を覆いたくなるような騒音に四人は旋律していた。
「ストップストップ!」
聞くに堪えなかった友希那が即座に止めて紗夜に聞き出す。
「紗夜……貴女のギターの腕、落ちたの?」
「? 私は普段通りに引いているだけですが?」
紗夜はむしろ友希那がおかしいと言わんばかりに見つめる。
「ええ⁉ 絶対おかしいですよ! 紗夜さんどうしちゃったんですか⁉」
「昨日までは、何ともありませんでしたよね……? 一日の内に何が……?」
あこも燐子も納得いかず問い詰め、友希那が燐子に聞き出し始めた。
「燐子、今日の学校での紗夜の様子は?」
「いえ……特に何もありませんでした」
「……紗夜、昨日何かあったの?」
「いえ……ただ昨日の帰りに憶えて無い部分があるんです」
「三人はそれぞれ練習してて頂戴。紗夜、来なさい」
友希那はそれだけ言ってスタジオから出て紗夜もその後を追って行った。
「ちょ……湊さん!」
その頃、RASのデビューライブの為にgalaxyに向かっていたたえの前に一人の人物が立ち塞がる。
「誰?」
「一応聞くが、それはギターか?」
たえが背負っている、ギターを見て聞いて来たのでたえは疑いも無くベラベラと喋りだす。
「ああ、これですか。はい、これからRASのライブがあって……そうだ! 是非一緒に来ませんか」
「よし! ギタリスト、発見!」
人物はそう叫んで本来の姿に戻る。
本来の姿、それはオウムのエクスードの事だった。
「エクスード⁉」
たえが驚き、次の行動をとる間もなくエクスードは彼女の腹に触れ本にした。
まずたえに十秒前後の記憶を失うと書き込み、彼女のギターに関するページを握る。
『私がギターを始めた訳』
『憶えた楽曲』
『震える音色』
「ふんっ!」
力んでページを引っ張ると彼女のほんの一部分が裂かれ奪われた。
「花園さん!」
そこへ、友希那と紗夜が駆け付ける。
「花ちゃん!」
だが来たのは一人ではないレイヤもベースとギターアックスを両手に迫っていく。
「Reise Your Hands!」
一瞬で姿を変えてエクスードに斬りかかる。
「紗夜! 花園さんを連れて安全な場所へ!」
「はい!」
「音撃チェンジ!」
紗夜に指示だししつつ変身し、立ち向かう。
それを見たレイヤは、友希那にエクスードを押し付け、たえに向かって行く。
「何ですか⁉」
「これからライブがあるんです、花ちゃんは私が連れて行きます!」
「駄目です、今はそれどころでは無いでしょう!」
紗夜は怒鳴って追い払おうとするが食い下がる。
「今日はRASの今後に関わってくるんです! それに私の方が守れる自信があります!」
「ですが……」
レイヤはたえを奪い取ると、Dバレットを装填する。
『スチーム!』
水蒸気を発し二人の姿は影も残さず消えてしまった。
「花園さん!」
「紗夜、ここから離れて戸山さんに!」
「分かりました!」
エクスードと鍔迫り合いした状態で叫ぶと紗夜は戦線から逃げて香澄に連絡を取り始めた。
着信音だけが響き、紗夜の焦りは収まらない。
『ただいま、電話に出る事が……』
「戸山さん、一体どこに……」
紗夜が必至になっていた頃、友希那はエクスードと戦いを繰り広げていた。
「ここからは使わせてもらうわ!」
友希那はフェニックスバレットを出して、パワーアップすると更に攻勢に出て行く。
友希那の猛攻に思わずエクスードはたえのページを手放してしまう。
「ヤベッ!」
それを見た友希那はヒラヒラと落ちていくページの着地地点に向かって跳び手を伸ばした。
だが、現れた三人目の手によって手にする事は叶わなかった。
「おっと」
三人目はうつ伏せで倒れる友希那を傍にページを手にして見せつける。
「貴方は……!」
「憶えててくれた? コナモだよ」
「それを渡しなさい!」
すぐに立ち上がりコナモに手を伸ばすが相手はそれをひらりとかわす。
「嫌だよ~。それじゃあね~」
コナモは自分の後ろに穴を生み出すとその中に入って行って消えた。
「まずいわ……皆に連絡しましょう」
「いよいよだな……」
その香澄は今、たえの晴れ舞台を見るためメンバーと共にgalaxyに来ている。
「うう……緊張してきた……」
「お前が出る訳じゃねーだろ」
「でも、香澄ちゃんの気持ちも分かるかな。有咲ちゃんも本当はそうでしょ?」
「い、いやまあ、おたえの奴上手くやれるかどうかだけどな」
『……香澄』
「ポップ?」
『エクスードだ。この感じだとgalaxy内にいるのか?』
「え⁉」
ポップの突然の台詞に困惑を隠せていないでいる状態で続けて言う。
『……消えた?』
「え?」
『ほんの一瞬だけ感じた。一体何だったんだ?』
「……」
香澄は俯いて考えると三人に言いだす。
「みんなゴメン、エクスードが出たみたい。行ってくる!」
「はぁ? おたえはどうするんだ?」
「伝えといて!」
「香澄!」
「香澄ちゃん!」
一方的に伝え香澄は、会場から飛び出し呼び止めるが止まる事は無い。
そんな会話をしている四人がいる客席側に対して舞台袖ではRASの四人とたえの姿があった。
「いよいよね、ここからRASの伝説が始まるのよ!」
「はい! 私もチュチュ様と共にこの現場に立ち敢えて嬉しい限りです!」
「だな」
「……」
それぞれが会話を進めているがたえだけがギターを訝し気に見つめていた。
「花ちゃん?」
「何だろ……何も感じない……」
「感じない? 一体どういう……」
「さあ時間よ!」
レイヤの台詞を遮りチュチュが叫ぶと三人は舞台へと歩んでいく。
「行こ」
「……うん」
二人もそれについてくのだった。
戦場は変わって植物園。
「はぁ!」
オウムのエクスードと交戦中の友希那は、優勢に戦いを進めていた。
友希那に突き飛ばされ、地面を転がると手元に草木があるのを見つける。
「これだ!」
エクスードは草木を本にして文を書き込む。
『女性を狙う、有機生物』
すると草木は触手を伸ばして友希那を襲う。
「!」
一度はそれを避けるがその物量から拘束されてしまった。
「くっ!」
簀巻きにされた友希那を本にすると更に書き込む。
『ドリーマーブルーは変身出来ない』
それを書くと友希那は無理矢理元の姿に戻された。
「変身が⁉」
「止めだ!」
腕を振り上げたその時、エクスードの手にバックラーが当たり手首を押さえながら叫ぶ。
「誰だ!」
それに答えるどころか、光弾と矢弾が触手に全弾命中し拘束が解かれる。
すかさず友希那は相手から距離を取ると
「はぁぁ!」
香澄の斬撃を受け大きくのけ反った。
ポピパの楽曲と言えば?(採用されたものがフォーム名になります)
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STAR BEAT!~ホシノコドウ~
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二重の虹(ダブル レインボウ)
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キズナミュージック♪
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Returns
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ティアドロップス