「ハーハッハッハ!」
項垂れている彩に長井は顔を近付けて、にやけながら誇らしげに語り掛ける。
「君は本当に道化師が似合う滑稽で、惨めで、皆を笑顔に出来る素晴らしいアイドルだな!」
その台詞と共に周りの観客からも笑い声が聞こえる。
「う……うぅ……」
「ハハハ、おもしれー」
香澄は怪訝な顔でチャンネルを変えたその時、自身の携帯からポピパの曲が流れだし、それを手にする。
「友希那先輩?」
画面に書かれた文字に疑問を持ちつつも携帯を耳に当て通話を始める。
「もしもし?」
『私よ。湊よ』
「友希那先輩から電話をかけてくるなんて珍しいですね。何かあったんですか?」
『丸山さんの番組は見た?』
「まぁ……さっきまでは……」
友希那の質問に香澄は俯きながら小声で言うが、友希那は変わらず淡々と言う。
『奇遇ね私もよ。……最も途中で切ったのだけれど』
「彩先輩、大丈夫かな……?」
『何とも言えないわね。かける声も思いつかないし……戸山さんは?』
「分かりません……どうしたら……」
『そう』
「すいません、今日はもう寝ます。気分が良くなくて……」
『そうね、そうしなさい』
「おやすみなさい」
『おやすみ』
そう言って、携帯を切り胸に手を当てる。
「ポップ……」
『香澄?』
「私に皆を守れるのかな?」
『らしくないな。一体どうしたんだ?』
「さっきから何だか心がモヤモヤするっていうか……本当に私が音撃戦隊をしててもいいのかなって考えが離れなくて……ポップはどう思う?」
『ひどい落ち込みようだな。普段の君ならポジティブで何もかもを払うんじゃないのか?』
「……分からない。何だか自分の、他人の言葉が信じられなくて」
「お姉ちゃん、さっきからどうしたの?」
その時、後ろから声が聞こえ急いで振り返ると引きつった顔の明日香が立っていた。
明日香から見て姉が独り言を誰かと話す様に語る姿に戦慄したのだろう。
「あ! あっちゃん⁉」
「今、誰と話してたの?」
「し、してないしてない!」
香澄は手を振りながら逃げる様にリビングから出て行こうとする。
「お姉ちゃん!」
呼び止められ足を止めた香澄。続けて明日香は言う。
「何かあるんだったら言ってよ?」
「……」
それに香澄は何も答えられずに去って行く。
「お姉ちゃん?」
明日香は姉の姿に妙な違和感を得ていた。
「……」
例の番組のオンエアから翌日の放課後、彩を除いたパスパレの四人は完全に暗い空気を出していた。
「彩さん来ませんね」
「マヤさんこういう時って何を言えばいいのですか?」
「ジブンもこんな体験は初めてですので何とも……」
「今思えば、企画を知った時点で彩ちゃん止めるべきだったわ……」
千聖も後悔で頭を抱えている所に日菜が質問をする。
「千聖ちゃん、もしかしてこうなる事が分かってたの?」
「いいえ、ただ虫が良すぎる話だと思っていたから。ちょっと考えればドッキリだって見破れたのに……」
その時、イヴが声を出す。
「けれど、一番悪いのは騙した人達です!」
同時刻、コドウ達が七深のアトリエに集まって、会議を始めようとしていた。
「ななみん、部屋貸してくれた上に席まで外してくれるなんてね」
「そうだな」
「ポップ……今日は何を話すの?」
「香澄の異変を知りたくてな。何か知らないか?」
パスカルの言葉にポップが言うがそれぞれが、反応していく。
「それだったら、ユッキーナも同じになってるだけど」
「蘭もだ。何て言うか、芯がぶれている様に見えると言うか」
「プチミッシェルは?」
バラネコが話を振ると、振られたプチミッシェルが腕を組んで言う。
「こころの事? 確かに、アイツと戦った日から笑ってないと言うか……」
プチミッシェルもこころの異変に違和感を覚えていたがそれが何かはわからなかった。
「みんな、呼んできたよ」
「こっちだ」
そこへましろが部屋に入ってくる。
肩にはフォル、後ろからレイヤが部屋に入ると彼女の中からオーロラが出てきた。
「コドウの会議なんて何か得るものはあるのかな?」
「オーロラ! けれど、どうして私達を呼んだの?」
冷めた態度のオーロラを窘め、レイヤは疑問を当てる。
「我々でも、考えられる範囲は限られる。そこで、君達の協力も欲しい」
「やっぱり香澄さんの事で?」
「ああ」
「私も香澄ちゃんの事なら、花ちゃんから全部聞いたよ。何か思い当たる節は無い?」
二人はソファに座り机上に広がるコドウ達に聞く。
「エクスードと戦った日からだな」
「何かされた?」
「それは無いかな、相手とは無駄話をしただけだし」
スカイの言葉にレイヤは分からなくなる。
「何もされてないのに曇る? 何でだろう?」
考えるレイヤとコドウ達にましろは呟く。
「もしかして……言霊を使ったとか?」
「コトダマ? コドウの様なものか?」
ポップが聞くとましろが続けて言う。
「ううん、七深ちゃんから聞いたんだけど、言葉には力を込める事が出来て、それを言霊って言うの。一言で良い事も悪い事も出来るらしいんだけど」
「五人は相手の言葉だけで負けたというのかい? 舌一枚で戦いに勝てる訳が無い」
「そう……だよね」
ましろの推理にオーロラは呆れて首を振るがレイヤは反対に神妙な顔で頷く。
「いや、ありえない訳じゃない。言葉って言うのは想像しているよりも力があると私も思う」
「レイヤもか……そんな人がいたら是非、連れてきてもらいたいものだね」
「みんなだって相手を選んだ理由を思い出してみて」
「そうだな」
レイヤの言葉に最初に言いだしたのはポップだ。
「私が香澄を選んだ理由は彼女の歌に惹かれたからだ」
「そうなの⁉」
ポップの告白にコドウ達は驚き、レイヤは得意げにオーロラに問う。
「いたね」
「……驚いた」