「さてと……あいつらのおかげでこいつも完成出来たな」
地下帝国でライトは建造していた巨大な機器を見つめる。
貴金属で覆われた円柱、それはまるで鉄製の大樹のようだ。
「決着をつけるぞ。音撃戦隊!」
そしてライトの計画はこの日の内、休日の昼下がりに実行されようとしていた。
それに対しては何も知らないポピパは、地下蔵で練習に勤しむ。
5。
突如、地震が発生しその激しさから、人々は動けずしゃがんで踏ん張るしかない。
ポピパも、テーブルやクッションで頭を守っている。
4。
花咲川の離れにそびえる山から鉄製の大樹が生えてきたのだ。
外の様子が気になった香澄を先頭に、蔵を出ると同じくそれを見つけた。
3。
その大きさに花咲川の人々の視線を一気に集める。
「何だありゃ⁉」
「もしかしたら、エクスードの新兵器かも」
2。
さらにそこから子守歌の様な旋律が流れだすが、それはどこか不安を覚えさせるもので香澄らは警戒をする。
「何……この音楽……」
1。
その旋律は、花咲川の全ての人間、聞き入っている人にも、耳を塞ぐ人間にも入って行き、その音が等しく響き渡る。
0。
その時、香澄の後ろで何かが倒れる音が四つ聞こえ急いで振り返ると、メンバーの四人が倒れていた。
「みんな!」
香澄が膝をついてそれぞれの体を揺するが意識が無いのか全く動かない。
「えっ……⁉」
更に、四人の体が宙に浮かびあがり、光の球に包まれると空へ、鉄製の大樹へと飛んでいく。
香澄が大樹に目を向けると、四つだけではなく、何千何万の光の球がそこに向かって行く様に飛んでいた。
「もしかして……あれって全部人⁉」
その時、戸惑う香澄のスマホに着信が入る。
「もしもし⁉ みんなが!」
『私よ。戸山さん、一度Circleに来て頂戴』
「けれど、皆が!」
『分かってる。一度集まって、作戦を立てましょう。今回はいつものようにはいかないわ』
「……分かりました」
香澄は急かす気持ちを辛うじて押さえ、Circleに向かうのだった。
「友希那先輩!」
「来たわね」
Circle前のカフェテリアに来た香澄を待っていたのは、既に来ていた音撃戦隊の面々。
「やっぱり、被害に遭ってないのは私達だけみたいだね」
香澄も来て七人になった音撃戦隊を見てレイヤが呟く。
「アイツら……何であたし達じゃなくて無関係な人達を……!」
「もしかしたら、エクスード達もあたし達とお話がしたいのかしら?」
こころが推測をしていると、香澄のスマホからまたしても着信が入る。
しかし、流れてきたのは先程の音楽。歪な子守歌に七人は戦慄を隠せない。
「か、香澄さん。この着信音って……⁉」
「し、知らない知らない!」
「……放っておくわけにはいかないわ。出て頂戴」
「わ、分かりました」
知らない音に必死に否定する香澄に友希那が案を出すと香澄はそれに応え、通話を始める。
「もしもし……」
『よおピンク、大方、他の奴もそこにいるんだろ?』
「ライト!」
香澄の叫びに全員が視線を向ける。
香澄も頷いて、スマホの音声をスピーカーに変えてテーブルの中心に置き、それを囲む様に七人が聞きこむ。
「みんなを攫ったのはライトなの⁉」
『ああそうだ』
香澄の質問に答えるライトの声に続いて友希那が聞く。
「どういう事かしら? 貴方の狙いは私達の筈じゃないの?」
『ああそうだ、少しでもやる気を出してもらう為にも、音撃戦隊以外には人質になってもらった』
「人質って……みんなは関係ないでしょ! みんなを解放して!」
憤る彩にライトが再び言う。
『言っただろ。取り戻すものがあるのなら、お前らも俄然やる気になるんじゃないかと思ってな』
微かに物音が聞こえ、レイヤが振り返る。
『場所は分かってるよな? 制限時間は日付が変わるまで、勝って全てを戻すか、負けて花咲川の人口をゼロにするか』
「絶対に勝つ!」
「香澄ちゃん、意気込むのはいいけど……」
「レイさん?」
「まずはこいつらどうにかしないと駄目かもね」
レイヤの言葉に六人が辺りを見渡すと、既に十数体のピラーに取り囲まれていた。
『少なくとも、俺の元に来るまでに死ぬんじゃないぞ』
その言葉を最後にライトからの通話が切れた。
「私達は急いでいるの、下っ端に用は無いわ」
「私は、逃げないって決めたから!」
「私達の道は、エクスード如きじゃ終わらない!」
友希那、ましろ、レイヤが語り。
「この街から笑顔を奪わせないわ!」
「アイツの鼻頭、折ってやる!」
「これ以上、好きにはさせないよ!」
こころ、蘭、彩が叫び。
「みんな……行こう!」
香澄の号令と共にDバレットと、それぞれ変身アイテムを出して叫んだ。
「音撃チェンジ!」
「Raise Your Hands!」
姿を変えて、香澄から名乗りを上げていく。
「キラキラのドキドキ! ドリーマーピンク!」
「この景色、忘れない。ドリーマーレッド!」
「私達の歌、聞いて下さい! ドリーマーグリーン!」
「全てを賭ける覚悟はある? ドリーマーブルー!」
「世界を笑顔に! ドリーマーイエロー!」
「輝ける場所を目指して! ドリーマーホワイト!」
「御簾を……上げろ! ドリーマーブラック!」
「放つは夢と希望と光の弾丸!」
「音撃戦隊!」
「バングドリーマー!」
名乗り終えて、ピラーの大群に突撃していく。
だが、所詮は烏合の衆。Dバレットの力を借りずとも、一掃していく。
全滅させると、彩が提案を出す。
「みんな! これを使ってみようよ!」
彩が出したのはバットの絵が描かれたDバレット。ホームランバレットだ。
「みんな、しっかり掴まって!」
彩の指示に従い六人は彩にしがみつく。
『ホームラン!』
センターブレードにホームランバレットを装填し音声が流れ始める。
「ふぅぅぅ……」
深呼吸をして、力を込める。
「はああああ!」
思い切り地面へ振り落すと、ホームランバレットの反動で七人は大樹に向かって吹っ飛んでいった。
「ホームランバレットにこんな使い方があるなんてね」
大樹前に落ちた七人は、外周を回って入り口を探す。
「ここから入れそうだよ!」
香澄の声に六人も集まり、彼女が指差す方を見る。
身の丈を優に超える大きさの扉、香澄はそれを力を込めて思い切り押すと、続けて他の面子も押し始めた。
大扉は軋んだ金属音を発しながら動き、人が通れる隙間を生み出す。
香澄を先頭に入って行くと、まず最初に目の前の光景見る。
妖しい黄緑色を発し、果てしなく上へ伸びている光柱、壁に伝う様に伸びていく螺旋階段だけだ。
「ここを登れって事?」
「かなり高そうですね……」
「一気に駆けるわよ!」
友希那の号令に七人は走り出す。
果てしなく伸びていく螺旋階段を駆け上がっていくと、開けた場所に出た。
登って来た場所から、離れた地点には再び螺旋階段が見える。
「エクスード⁉」
「な、何て数なの⁉」
蘭と彩が驚きの声を上げる。
それもそのはず、いるのは音撃戦隊がかつて倒したエクスード達が復活し、七人に一斉に襲いかかって来たのだ。
「時間が無いってのに!」
蘭は叫びながら弓剣を振り、他の面々も回避しながら、攻撃し、螺旋階段へと向かうが、敵が多すぎて中々たどり着けない。
「ましろちゃん! 道を作って!」
「はい!」
レイヤに言われましろは盾を構え、思い切りタックルをして、エクスード達を文字通り押し退けていく。
「はあああああああ!」
その後ろを六人が付いていき、螺旋階段の前に到達できた。
香澄を先頭に階段を上り始めると、エクスードの一体が香澄を捕まえようと駆け上がっていこうとする個体が出てくるが
「フンッ!」
最後尾を走るレイヤがそれに気づくと、首後ろを掴んで後ろに投げ飛ばす。
エクスード達はまるで、音撃戦隊を倒すのではなく、行かせないようにしようとしている姿にレイヤが香澄達に背を向ける。
「レイさん⁉」
「香澄ちゃん。こいつら、私達を行かせないのが目的かもしれない」
「だったら急ぐよ!」
蘭が怒鳴るがレイヤは、自分の考えを語る。
「いや、この先に何があるのか分からない。挟み撃ちにされるかもしれない!」
ギターアックスを振り下ろし、握り直す。
「ここは私が防ぐから先に行ってて!」
会話に待ちきれなくなったのか、一体が襲いかかるが、ギターアックスで押しのける。
「一人じゃ危ないよ!」
「皆さん!」
彩が叫ぶがそれを遮る様にましろが叫ぶ。
「私もここに残ります!」
「ましろちゃんも⁉」
「レイヤさん一人だと危険なんですよね? でも、二人だったら……!」
「数の問題じゃ……」
彩が反論しようとしたその時こころが言う。
「二人なら大丈夫ね! 行きましょう!」
「倉田さん、本気なの?」
「……はい」
「ましろちゃん……」
香澄はましろの真剣な顔に掛ける言葉をなくす。
「今の私達は一刻の猶予もないわ。戸山さん」
「……二人共、絶対に会おうね!」
香澄の応援を残して、五人は階段を駆け上がっていく。
螺旋階段を上がっていった先にあったのは、最上階へつながるであろう巨大な鉄の扉、そしてその前に佇むのはシー。
「あれは……!」
「来ましたか」
五人は武器を構え、睨むがシーは気にせずに近づいていく。
「邪魔をするのなら、倒してでも通させてもらうわ」
シーは手をゆっくりと動かし五人に向けてかざそうとする。
「避けて!」
それに対し香澄は、叫んで各々シーの側面に回り込む様に跳ぶ。
だが、シーの行動はフェイントで、前と見せかけて両手を広げ、左右に漆黒の衝撃波を飛ばし五人を巻き込んだ。
シーの悪夢を見せる力に呑まれた五人はそのまま意識を失った。
「さて……」
シーは倒れる香澄に近づくと抱きかかえる。
「ライトも面倒な事を頼みますね……」
そう愚痴を言いながら、香澄と共に扉の先へと消えていった。
「あれ……?」
香澄は気が付くと、流星堂の前にいた。
だが、変身アイテムも、音撃戦隊ジャケットも無く。
私服姿の上に空は真っ赤に染まり、正に世界の終わりが来たような状況下にいた。
「もしかして、これって……」
「ぎゃああああああああああああああ!」
その時、流星堂から有咲の断末魔が耳を突き抜け香澄は迷わず、入って行く。
「有咲!」
市ヶ谷家の庭は死屍累々となっており、転がっている死体は全て香澄の友、家族、仲間ばかりだ。
「……貴方が全部やったの?」
目の前に立つ、ライトが淡々と答える。
「いいや、犯人は別にいる」
「……それって、私?」
「何だ、分かってるじゃないか」
ライトが嬉し気に言ったその時、香澄の足に誰かがしがみ付く。
「香澄~全部お前のせいだぞ~」
有咲の呪詛を皮切りに地面から血だらけのポピパが這い出てきて香澄の体にまとわりつき始める。
「香澄ちゃん……私、もっと生きていたかったよ……」
「私は死んだのに、どうして香澄が生きてるの?」
「香澄は……誰も守れないウソつきだったんだね」
「りみりん……おたえ……さーや……」
他の呪詛も受けるが、香澄の顔に動揺は全く見えない。
「ハッキリ言う、お前は、誰も、救えない」
ライトが止めと言わんばかりに吐き捨てるが
「そんな事は無い」
「?」
絶望する様子を見せない香澄にライトは違和感を持つが、香澄は語る。
「みんなが待っている、だから私はここから出ないといけないんだ」
「そんな奴はいない」
「ううんいるよ」
「何を根拠に……」
「ほら!」
死体だった有咲はいつの間にか傷が全快し、された本人も困惑をする。
「か、香澄……お前、何したんだ?」
「何もしてないよ。ただ私は、皆と……五人でこの先も生きていたいって思い続けていただけ」
更に、いつの間にか香澄の手にはキラキラドキドキ剣が握られており、強く握ると刀身が光り始める。
剣をゆっくり振り上げ空虚に向けて力いっぱい振り下ろす。
「はぁ!」
すると、空間が裂かれて香澄は迷わずそこに飛び込んだ。
「悪夢でも、所詮は自分の夢だ。それと意思があれば簡単に突破できる」
「うう~ん……」
ライトが見ている中、香澄が目を覚まし上体を起こす。
「目覚めたか」
「ライト! ……みんな!」
相手を見た瞬間香澄は、即座に立ち上がり、Dバレットを構える。
「あれ?」
しかし、周りには香澄とライトの二人だけで誰もいない。
「みんなはどこなの⁉」
「俺はお前と邪魔者一切なしの勝負がしたいんだ。アイツらなら少しの間眠って貰ってる」
「眠ってるって……!」
「さてと……例のあれを呼べ。話はそれからだ」
「……」
「時間が無いんじゃなかったか?」
ライトに言われ、香澄は手を空に伸ばして叫んだ。
「来て! ランダムスター!」
それに応え、真紅のDバレットが宇宙から香澄の手元に飛んできた。
『ランダムスター!』
「音撃チェンジ!」
ドリーマーピンクスターに変身し、夢剣大砲バンドリを構え走り出す。