音撃戦隊バングドリーマー   作:作者アアアア

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アンケートは5月10日の十時まで


8thLive 前にススメ!

「皆、お帰り」

 仲間達の帰投に安堵したのかクラムが手を振って言う。

「クラム様」

「ん? 何?」

「何故、私たちを止めたんですの? もうすぐで終わっていた所なのに」

 真っ先に物申してきたのはウィンド。それに対してクラムは顎に指を当てつつ無邪気に言う。

「う~ん、ライトの言う通りかなって思って」

「はい?」

「面白くない!」

「おお! クラム様も俺の考えに乗ってくれるのか!」

「何故ですの⁉」

 よりにもよってライトに感化されたと感じ、ウィンドは怒鳴る。

「こんなののふざけた思想に惑わされないで下さい! ライトもライトですわ!」

「いいじゃねぇか。まっ、また俺の方が正しいと分かったな!」

「フギギギギギ……」

 ライトの勝ち誇った顔に呻き声を上げるしかできないウィンドはシーに問いただす。

「貴方も、何で何も言わないんですの⁉」

「私は常にクラム様の命に従うまでです」

「キッー!」

 

 

 

「ん……」

 その日香澄は自室以外の場所で目を覚ました。

「んー……」

 掛け布団を払いつつ、意識と体を起こして見渡す。

「そうか、昨日有咲の家に泊まったんだった……」

 そう呟いたその時、香澄の脳裏に昨日の惨状が広がりだした。

「……⁉」

 全身が震えだし、それを止めようと両腕で自分を抱きしめる。

「ハッハッハッ……⁉」

 今度は悲鳴が上がりそうになり、口を両手で必死の形相で押さえた。

「お~い香澄。お前、制服家にあるだ……」

 そこへ何も知らない有咲が襖を開けながら現れる。

「ハッハッハッ……⁉」

「おい⁉ 香澄! どうしたんだ⁉」

 香澄の異変に有咲も開けた襖を閉めずに一気に駆け寄り背中を擦った。

「有咲、有咲、有咲! 私は! こんなじゃ……!」

「しっかりしろ! 私はここだ!」

 香澄の異常事態に今度は抱き寄せるが、変化は起きない。

「こんなのヤダ! りみりん! さーや!」

「クソッ……! どうしたら……!」

「おたえ! 嘘だよね⁉」

「香澄!」

「嫌ああああああああああああああああ!」

 

 

 

「はい、お茶をどうぞ」

 香澄は食卓でお婆さんから一杯の湯呑みを差し出され、何度も頷きながら喉に流し込んでいく。

「どう、美味しいかい?」

「……はい。ありがとうございます」

 あの後、香澄の錯乱に気づいた有咲の祖父母に介抱されある程度、落ち着きを取り戻していた。

「……今日はもう休むか? 学校には私が伝えておくけど……」

「……ううん。今は皆の顔が見たい」

「ホントに大丈夫か? つーかいきなり叫んで何があったんだ?」

「……」

「昨日、あいつらに負けたのが堪えたのか?」

 有咲の質問に肯定の言葉の代わりにぎこちない動きで頷くと、ぽつぽつと気持ちを吐き出していく。

「でも、それだけじゃない。私だけが無事で、私の周りだけが傷ついて、それで、もがけばもがくほど……」

「もういい」

 香澄が再び取り乱さない様に、有咲は話を無理矢理止めた。

「制服貸してやるから、早く学校に行くぞ」

「え? いいの?」

「しょ、しょーがねーだろ。お前が騒ぐから、家に戻る時間も無くなちまったし……」

「有咲……ありがとね」

 香澄は疲れていたが、有咲の優しさに出来る限りの小さな笑顔を見せた。

 

 

 

「……」

 場所は変わって、羽丘。

 二年の教室では、四人が一つの席に集まってスマホを眺めていた。

「モカ、どうだった?」

「出たよ~」

「本当か⁉」

 モカの台詞に三人が食いつき、顔を見る。

「お留守番サービスが」

「はぁ~、どっちにせよ駄目か……」

 モカの紛らわしい台詞に巴は、画面に目を向ける。

「蘭ちゃん、一体どうしちゃったんだろう……?」

「メッセージも送ったのに既読すらつかないなんて」

 つぐみもひまりも心配している中、モカが一言。

「実は、スマホを落としただけだったり~?」

「あっ……!」

 モカの推測にひまりはハッとさせられ、巴は呟く。

「だったら、蘭の家に掛ければ出るか……?」

「とりあえずやってみよう!」

「ああ!」

 つぐみに押され、巴は迷わず蘭の家、美竹家の電話番号を打ち込んでいき、電話をかけた。

『はい、美竹です』

 電話先から聞こえてきたのは男性の声。

「その声は……蘭のお父さん?」

『君は蘭の……』

「宇田川です。蘭から連絡が無くて心配で」

『そうか、実は私にも分からないんだ』

「分からない?」

『昨日、家に帰って来たと思ったら逃げる様に部屋に籠ってしまって……私が外から何があった聞いても声、いや、物音すら聞こえてこないんだ』

「そんな事が?」

『それで、申し訳ないんだけど……』

「アタシ達で蘭から話を聞いて欲しい、ですか?」

『すまないね、協力してもらえないかな?』

「いいですよ! 放課後にそちらに向かいます!」

『ああ、よろしく頼んだよ』

 この会話を最後に電話を切り巴は取り囲んでいた三人に言った。

「放課後、蘭の家に行くけど大丈夫か?」

「引きこもりと化した蘭に会うんでしょ~。いいよ~」

「勿論だよ! リーダーの私がビシッと決めないと!」

「あの巴ちゃん、何か持って行った方がいいかな?」

「いや、お見舞いに行く訳じゃないからな……」

 四人の幼馴染は一人を救う為に奮起していた。

 

 

 

 再び場所が変わって花咲川。

 授業も時間も、香澄の心情と関係なく滞りなく進んで行き昼休みになる。

 この時間は中庭に集まり、ポピパの皆で弁当を持ち合って過ごす癒しの時間なのだが、香澄は不安を残したままだった。

「香澄ちゃん、有咲ちゃんから話は聞いたよ。大丈夫?」

 りみに声を掛けられ香澄は小さく笑いつつ返す。

「りみりんありがと、朝よりはだいぶ良くなったかな」

「あら? そこにいるのは香澄?」

 その時、遠くから呼び声が聞こえ五人はそこを見ると、こころが走って来た。しかも、音撃戦隊のジャケットを羽織ったままだ。

「!」

 その姿に香澄は一瞬竦むが

 

「弦巻さん!」

 そこへものすごい勢いで紗夜と美咲が走って来た。

「あら? 紗夜と美咲、そんなに慌ててどうしたの?」

「どうしたもこうしたもありません! その服装は校則違反です! 預かります!」

「いやホントすいません。ほらこころ、言う事聞いて!」

「あら?」

 二人はこころの両脇を抱えそのまま連行されていった。

「香澄」

「何?」

 沙綾に声を掛けられ聞く。

「戦い、止めてもいいんだよ? 香澄が無理に傷つく必要なんてないから」

「……」

「私見てたよ。こころのジャケットを見て怯えた所」

「……うん」

 図星だったのか香澄は弱々しく返答するが、鞄からジャケットを出して見つめる。

「……」

 香澄は意を決して頼み込んだ。

「皆! お願いがあるんだけど……」

 

 

 

「今度こそ、汚物は消毒だ~!」

 放課後、雄叫びを上げながら花咲川付近で暴れる蛙怪人と変身した香澄とこころが交戦していた。

「香澄ちゃん! こころちゃん! 今行くよ!」

 そこへ彩が駆け付け、叫びながらコンパクトとクローバーバレットを取り出し、填めようとした。

「あ、あれ?」

 しかし、それが装填されない、正確には填める事が出来ない。

「な、何でだろ? 手が、止まらない……」

 震え声で震えを抑えようと念じるが手のブレは一層激しさを増すばかりだ。

「フッ、ハッ! 彩先輩! どうして変身しないんですか⁉」

 香澄は剣戟をしながら、彩の方を向いて叫ぶ。

「喰らえ~!」

 相手は腕を振り回し火をまき散らして二人にダメージを与える。

「キャッ⁉」

「熱っ⁉」

「ひぃ⁉」

 直撃は避けられたが、香澄は肩に僅かに火が当たり熱の強さと痛みに声を上げると彩が小さく悲鳴を上げる。

「コイツもだ~!」

 今度は左手をかざして、冷気を振り撒く。

「うわあ⁉」

 彩は驚きで後ずさりし、更に尻もちを着く。

「あ……」

 彩の足元は凍っており、もし下がっていなかったら足を確実に凍らされていた。

「あ……ああ……」

 その考えが彩の頭を支配しだすと、もう碌に何も考えられなくなる。

「彩!」

「彩先輩!」

 こころと香澄の声は聞こえず。そして

「嫌ああああああああああああああああああ!」

 彩はコンパクトとDバレットを投げ捨てて逃げ出した。

「彩⁉」

「何だか知らねぇが俺が有利みたいだな!」

 そう言って、左手をこころに右腕を香澄に突きつけると火炎と冷気を同時に放った。

「うわああああああああああああ!」

 二人は吹き飛んでいき、元の姿に戻ってしまう。

「今止めを刺してやってもいいが、それだと俺のルールに反する」

「ルール……?」

 息も絶え絶えにこころが聞く。

「無傷でなぶり殺しだ~! 今のお前らなら下っ端共を用意できるからな! あばよ!」

 それだけ言うと、蛙怪人はまたしても氷の塊を生成、火を当てて水蒸気を作ると逃げ出した。

「こころん大丈夫?」

「ええ平気よ。でも、どうして彩は逃げちゃったのかしら?」

「それに、蘭ちゃんと友希那先輩も来なかったし……」

 香澄は彩が捨てた、装備を拾って見つめていた。

 

 

 

 一方、蘭の様子を伺いに四人は美竹家に来ていた。

「やあ皆、いらっしゃい」

 蘭の父に歓迎され四人は入って行く。

「お邪魔します。それで蘭の様子は?」

「部屋から一歩も出ていない。それに、外に置いておいた食事も手を付けた様子が全く無い」

「ご飯すら食べてないって事……?」

「相当ですな~」

 

 

 

 

 

 

「はーっ……はーっ……」

 サークルのスタジオでは、友希那はメンバーとバンドの練習をしていた。

「あの……湊さん、そろそろ休憩を入れた方が……」

「するなら貴女達だけでして頂戴。私はもう少しするわ」

「駄目です。

「私の言う事が聞けないって言うの⁉」

 突如ヒステリックに叫ぶ友希那に四人は竦んでしまい、紗夜、あこ、燐子は真っ先にリサの元へ近づく。

「リサ姉、友希那さん何かあったの?」

「アタシにも分からなくて……友希那昨日からあの調子で聞いても全然相手にしてくれなくて……」

「学校でもあの様子でしたか?」

「少しだけ……でもここまでひどくは無かったよ」

「~~! ~~~~! ~~~!」

 熱唱どころか絶叫で歌唱をする友希那。

 今、友希那は心を蝕んでいる何かを紛らわせようとしているのか、掻き消そうしているのか、とにかく四人には分からない闇と戦っていた。

「~~! ~~……~~! ~~……~……!」

「友希那?」

「湊さん?」

 しかし、白紙に落ちた一粒のインクが紙を穢し、汚れを蝕んでいく様にじわじわと精神を追い詰めていく。

「……! ……~! ……~!」

 歌が止まった。

「あ……あの友希那さん……?」

 あこが恐る恐る近づいて肩を叩いた瞬間。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああ!!!!」

 耳をつんざく程の悲鳴を上げる。

「み、湊さん⁉ 一体どうして……」

「ひいいいいいいいいいいいい!」

 紗夜が近づこうとした途端、友希那は怯えだして、腰が抜けたのか這いずってスタジオの隅にまで行くとうずくまって動かなくなってしまった。

「紗夜! レモンティー! ハチミツ入りね!」

「分かりました!」

「燐子はまりなさんに頼んで毛布を最悪タオルケットでもいい!」

「はい……!」

「リサ姉! あこは?」

「友希那の手を握ってあげて」

「分かった!」

 リサの指示で友希那を宥める行動に移る。

 

 

 

「ふーっ……ふーっ……」

 数分後、毛布に包まりハチミツ入りレモンティーをゆっくり飲む友希那。

「友希那さん、大丈夫ですか?」

「ええ、迷惑をかけたわね」

 あこの心配を淡々と返し、立ち上がる。

「練習を再開しましょう」

「いえ、後は私達だけで行います。湊さん、今日は帰ってください」

「でも……!」

「あれほど取り乱して自分は問題無いといえるのですか?」

「お願い……何でもいいから何かしてないとおかしくなってしまうの……」

「……」

 友希那の嘆願に紗夜は迷った末に、判断を下した。

「……駄目ですね」

「……」

「……湊さん、今井さんから聞きましたが昨日から様子が変だとの事でしたね。何かあったのですか?」

「……もう帰るわ」

 友希那は自分の荷物を持つと、おぼつかない足取りでスタジオを出る。

「友希那! アタシ、送ってくる!」

「すいません。お願いします」

 リサはその後を追って出て行った。

 

 

 

 帰り道黙って歩いている中、最初に喋りだしたのはリサだ。

「友希那今は二人きりだし、言えない事を言ってもいいよ」

「……」

「あれって、エクスードにやられたの?」

「……ええ。それも幹部クラスよ」

「え⁉ 大丈夫なの⁉」

「見ての通り無事よ」

「いやいや、あれだけのものを見て無事とは言えないでしょ!」

 ここで会話が止まるが、再びリサが動かしだす。

「その友希那。嫌だったらアタシが変わろうか?」

「どういう事かしら?」

「あのさ、アタシ友希那が契りを交わした時から思ってたんだ。どうしてアタシじゃないのかとか、何で友希那が危険を冒さなきゃいけないの? ってね」

「……」

「まぁ、今友希那は休憩期間って事でゆっくりしててよ! 皆の面倒はアタシが見るからさ」

「……ええ、任せるわ」

 そんな会話をしていると、お互いの家の前に辿り着くと、友希那はブルーローズが入った剣筒を渡す。

「ありがとね」

 手を振って家へ入って行くリサの後姿に友希那の中にはブルーローズを手放した安堵が僅か、後悔が僅差で多く、大半が恐怖で染まっていた。

 

 

 

 

「彩さん、何かいつもより気合入ってますね」

「そうかしら、私には何か必死になっている様に見えるのだけど……」

 彩の敵前逃走から翌日、メンバー達の視線を横目に鏡に向かって一心不乱にポージングの練習をしていた。

「……」

 汗だくになり鏡に手を付けて息を切らしつつ俯く。

 彩が顔を上げたその時、おぞましい光景を見た。

 鏡の中の仲間達が彩の方を見て薄ら笑いを浮かべていたのだ。

「⁉」

 高速で振りかえり、鏡に背を向ける。

「彩ちゃん?」

 当然、現実での四人はそんな顔をしておらず、不安そうにのぞき込む。

「彩ちゃんやっぱり変だよ! どうしちゃったの?」

「な、何でも無いよ!」

「嘘ね、話して頂戴」

「彩さん、無理せず言える範囲でいいですから、ね」

「ここで、困ってるアヤさんを助けなければブシドーの名折れ! 教えてください!」

「うぅ……」

 仲間達に取り囲まれ彩は止む終えず、自分の正体を伏せつつ、心の内を告白した。

 

 

 

「怖い夢を見た……と」

「うん、皆笑ってた。でも、それが不気味で笑顔とは程遠くて……」

「笑顔とは違う笑い……嘲笑のようなものでしょうか?」

「多分そんな感じ」

 麻弥の推理を聞いたイヴはある事が気になり聞く。

「チョウショウって何ですか?」

「確か、相手を見下したり笑い者にする時の笑いだよ」

「アヤさんが笑い者⁉ 一体アヤさんのどこがおかしいんですか⁉」

 その言葉の意味を知ったイヴは自分の事の様に怒り出す。

「ねぇ彩ちゃん」

「な、何かな?」

「参考にまで聞くけどその中に私達はいた?」

「えっ、え~っと……」

 あからさまに視線を逸らし答えに迷う彩を見た千聖は答えられる前に答える。

「……いたのね」

「ち、違うよ! えっと……」

「怒ってるわけじゃないわ」

 千聖は、しどろもどろな彩の手を握り優しく語る。

「私達は味方よ。決して笑ったりなんてしない、この手の感覚が何よりの証拠」

「千聖ちゃん……」

「それに、もしそんな人がいたら、今の私はその人を本気で軽蔑するわ」

「うん……ありがとう……」

 千聖の言葉に彩は静かに涙を流す。

「それにしても、彩ちゃんが悪夢を見るなんてね!」

「でも、ジブンには何て言うか妙なリアリティを感じましたね……」

「マヤさん、ヒナさん。もしこれからそんなひどい人が出てきたら私達はどうすればいいんですか?」

「そうですね……無視が一番ですが……」

「でも、彩ちゃんだったら聞いた上で立ちそうだよね! 百回ズデーンっていったら百一回立ちそうっていうか……」

 日菜達の会話を横で聞いていた彩は一人思う。

「何度でも立つ……」

 

 

 

「出てこい! 小娘ども~!」

 蛙怪人が今度は駅前にしかも、二桁はいるであろう下っ端怪人を連れて現れた。

「こころん!」

「ええ!」

「音撃チェンジ!」

 現場へ来た二人はすぐに変身し立ち向かう。

 そこへ二つの人影が現れた。

 片方は赤髪を靡かせ、下っ端に渾身パンチを打ち込んでいき、もう一人はブルーローズを逆手に持ち、蹴りと速さに賭けた戦いをするもの。

「巴!」

「リサさん⁉」

「話はスカイから聞いた、助太刀に来たぜ」

「アタシも今日からよろしくね!」

 それを見た蛙怪人は腹を抱えると笑いだした。

「ハッ……ハッーッハー! ついに代理人を呼んだか!」

「アタシ達を甘く見ないで欲しいけどなぁ」

 そう言いつつリサと巴は本来ならば友希那と蘭が持っているはずの変身アイテムを出す。

「音撃チェンジ!」

 姿を変え四人で複数の相手に立ち向かった。

 

 

 

「……」

 彩は自室で一人、日菜の台詞を思い返していた。

「彩……エクスードだよ……」

 それと同時に、スマホに一通のメールが届く。

「!」

 パスカルと知らせを聞いた彩は立ち上がると迷わず、走り出す。

 蘭と友希那の元にも一通のメールが届いた。

『今すぐ駅前に来てください 戸山香澄』

 それを見た二人も動き出した。

 

 

 

「これで皆来るはずだよ……」

 変身を解いた香澄はそう言って蛙怪人を睨む。

 変身アイテムも怪人と自分達の間に無造作に置かれている。

 下っ端は全滅させれたが、四人とは言え、契りを交わしたわけでもない巴とリサだけではリーダー格を倒すまでには行けず、二人は左腕で捕らえられ、火炎放射器を突き付けられていた。

「そうか! お前は生きたいか⁉」

「……うん」

「じゃあ帰っていいぞ」

「⁉」

 相手の思わぬ台詞に驚くが続けて非情な事を言いだす。

「ただし、どっちを火だるまにしたいか決めたらな!」

「え⁉」

「香澄! アタシを選んで!」

 残酷な仕打ちに香澄が驚くがリサが迷わず、後輩を助けようと奮闘する。

「うらぁ!」

 その時、蛙怪人の後ろから蘭のドロップキックが直撃。

「ぐえっ⁉」

 怯んだ隙に二人は抜け出し、すかさず香澄とこころは装備へ向かい、こころはハッピー砲で追撃。

「皆!」

 その間に香澄は回収した。装備を駆け付けた。三人に渡した。

「お、お前ら……何故来たんだ~!」

「言いたい事があるからよ」

「大人しく死ねばいいんだよ~!」

「私に……それは出来ない!」

 そう言って、香澄は着ていた音撃戦隊のジャケットを抜いで裏面を見せる。

 そこには、ポピパの四人の名前が書かれていた。

 

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「私らの名前を書いて欲しい?」

「うん。そうすればもう一度、立てると思うから」

 先日の放課後、香澄は鞄に入れてあったジャケットをベンチに広げ四人に頼み込む。

「私は香澄の意見に賛成だよ」

「おたえ⁉」

 たえはやる気になっておりそれに三人が驚く。

「だって香澄は本気で言ってるし、私達もそれに答えないと失礼かなって」

 そう言いつつたえはジャケット裏にマジックで文字を書き込んだ。

『花園たえ』

 次に動いたのはりみだ。

「香澄ちゃん」

「りみりん?」

「辛くなったら、私達に言ってね。それが約束」

「……うん! する」

「それじゃあ書くね」

 りみもまた、自身の名をジャケット裏に刻む。

『牛込りみ』

「……」

「……」

「二人共!」

 残ったのは、有咲と沙綾。

「……香澄、マジで後悔しないんだな?」

 先に動いたのは有咲だ。

「絶対しない!」

「……分かった」

 有咲は

『市ヶ谷有咲』

「さーや!」

「……分かった。私の負けだね」

 香澄に根負けし沙綾も名を刻んだ。

『山吹沙綾』

 

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「私は今、この背中に皆を背負ってるんだ!」

「それが何だ~!」

「ポピパを背負って、音撃戦隊として貴方と戦う! それが私の立てる理由!」

「私は……」

 香澄に続いて彩が語りだす。

「何度も危ない目に何度もあって来た。でも、最後まで諦めなかった! だから私は……」

 彩はコンパクトとDバレットを強く握りしめ叫びつつ装填し始めた。

「今の私を諦めない!」

『クローバー!』

 今の彩に答える様にDバレットが装填された。

「あたしは……立ち向かうよ」

 蘭はフォンとバレットを両手に、意識を集中させる。

「逃げて失うなんて絶対嫌だ!」

『サンセット!』

「リサ、貴女が私の代わりになる必要は無いわ」

 ブルーローズとバレットを拾って、装填をする。

「これは私に課せられた試練、だったら誇りを胸に越えるだけよ!」

『ローズ!』

「戸山さん、指揮は貴女に託すわ」

「はい!」

 改めて相手を睨んで指揮を出した。

「皆、行こう!」

「うん」

「うん!」

「ええ」

「ええ!」

 それぞれポーズを取り叫ぶ。

「音撃チェンジ!」

 五人全員が姿を変え一列に並んだ。

 予想外の展開に蛙怪人は震え声で漏らす。

「お、お前らは一体……」

「よくぞ聞いてくれたわね!」

 その質問にこころは意気揚々と説明をする。

「あたし達の名前は音撃戦士! 五人揃って音撃戦隊!」

「音撃戦隊……?」

「この間決まったのよ。さあ香澄、最初は貴女から言って頂戴!」

「任せて!」

 五人の真ん中に立つ香澄は

「キラキラのドキドキ!」

 ターンを決め右手を上に挙げ叫ぶ。

「ドリーマーピンク!」

 続いて蘭は、

「この景色、忘れない」

 

「ドリーマーレッド!」

 

「私達の歌、聞いて下さい!」

 

「ドリーマーグリーン!」

 

「全てを賭ける覚悟はある?」

 ターンを決め左手を左横水平に伸ばす。

「ドリーマーブルー!」

 最後にこころが

「世界を笑顔に!」

 ターンを決め両手人差し指を顔に当てて元気よく叫ぶ。

「ドリーマーイエロー!」

 五人は右手親指と人差し指で銃の形を作り腕を大きく回す。

「放つは夢と希望と光の弾丸!」

 改めてその指を相手に突きつけて、

「音撃戦隊!」

 それに答える様それぞれポーズを取りつつ全員が叫んだ。

「バング・ドリーマー!」

「今の私達は誰にも止められない!」

 香澄が得意げになっている横でこころはハッピー砲にDバレットを装填。

『ビック!』

 音声と共にハッピー砲は大砲になり蛙怪人の前に鎮座する。

「こころん! 今日は私を飛ばしてよ!」

「ええ、いいわよ!」

 香澄は迷わず砲口に入り四人がターゲットに標準を合わせる。

「捕捉したわ!」

 相手を捉え発射準備に入る。

「発射!」

「いっけ―!」

 弾丸と化した香澄が蛙怪人を貫いた。

「ぐわあああああああああ!」

 香澄の直撃を爆散。

「やったね!」

 喜ぶ香澄に友希那が声を掛ける。

「いえ、まだよ」

『リカバリーシステム、起動』

 友希那の読み通り、相手が巨大化した。

「来たわね」

 その音声を聞いた友希那は、バラネコ呼び出し手の上に乗せる。

「待ってくれ」

 皆も自分のコドウを呼び出し手の上に乗せているとポップが呼び止める。

「今の我々なら新たな力が引き出せるかもしれない」

「本当⁉ だったらやってみようよ!」

 香澄は歓喜し、皆に聞く。

「ユッキーナ! これは乗るべきだよ!」

「言われなくてもそのつもりよ」

「蘭、どうするんだい?」

「いいよ。それに賭けてみる」

「彩……どうするの?」

「大丈夫! 覚悟は出来てるよ!」

「こころ、一応聞くけどさ」

「あら? あたしはいつでもオッケーよ!」

 全員既にやる気になっており、それぞれが叫ぶ。

「ポップ!」

「スカイ!」

「パスカル!」

「バラネコ!」

「プチミッシェル!」

 コドウ達は巨大化していき五人もそれに吸い込まれいくと変形を始める。

 ポップは人の形をとると、胸の部分にプチミッシェルの顔が付き、背中にパスカルを背負い、右腕がバラネコ、左腕にスカイが連結して一体のロボと化す。

 五人と五体の心が一つになった時、新たな力が目覚めた。

「完成! クインテットライブ!」

 コクピット内で五人が叫び、香澄は改めてその内装を見渡す。

「みんなが合体しちゃった!」

「五体でも変わらないだろうが~!」

 目の前の相手が突撃をしてきた。

「プチミッシェル! 行くわよ!」

 こころが操縦桿を動かすとプチミッシェルの口が開き、口から光弾、目からレーザーを乱射し蛙怪人にダメージを与える。

「今度は私が!」

 次に彩が動かすとクインテットライブは相手に背を向けると、背負っているパスカルの尻尾が伸びて何度も叩く。

「全員の能力を扱えるのね」

「あたしだって負けられない!」

「移動は任せて!」

 今度は友希那と蘭の出番、香澄は機体を動かすために、相手に近づいていく。

「く、来るんじゃね~!」

 蛙怪人は悪あがきに火炎放射器を振るがそれを軽々と回避し一瞬で後ろに回り込む。

「はぁ!」

 両腕の斬撃を同時に受け、吹き飛んでいった。

「みんな、行くよ!」

 香澄の号令にクインテットライブは佇むと胸の部分に光が集まっていく。

「オールスター・クラッシュ!」

 五人の掛け声と共に、光から五色の光線が飛び出し、直撃した。

「ぐわあああああああああ……うわらば!」

 そして、断末魔と共に倒れ爆散、跡形も無く消えた。

 

 

 

 日の沈みかけた公園、戦いを終え一行はここに着地し、空を眺めていた。

「みんな! 円陣を組もうよ!」

「円陣?」

 その時、香澄が提案を出し蘭が聞く。

「うん! 私達、音撃戦隊だけの!」

「とってもいい考えね! ぜひしましょう!」

「うん。悪くないと思う」

「ええ、やりましょうか」

「私も良いと思う! それでどうやるの?」

 香澄の提案に四人は賛同し早速始める。

「まずこうやって右手でピースサインを作って……」

 四人は言われるままに人差し指と中指を立てると、香澄は自分の右手を輪の中へ突き出す。

「みんなで繋げていく!」

「えっと、こう?」

 最初に動いたのは彩。香澄の中指に自分の人差し指を重ねる様に置く。

「はい!」

 一人一人が指を重ねていくと友希那はある事に気づく。

「あら? これは」

「星の形になってる!」

 彩の言う通り、五人の指の形が星となっていた。

「それで香澄。次はどうするの?」

「う~ん……」

 こころに言われ、考えた香澄はこんな事を言いだした。

「私達がキラキラを失わない為に!」

 香澄の台詞に反応した友希那を最初に全員が誓いを掲げていく。

「私達が戦士であり続けられる為に!」

「アタシ達が日々を守っていく為に!」

「私達が皆を守っていく為に!」

「あたし達が笑顔でい続ける為に!」

「音撃~」

 香澄の音頭に合わせ、一斉に手を空へ伸ばした。

「戦隊!」

 ピースサインを掲げたまま空を見ているとこころが口を開く。

「それじゃあ次は、テーマ曲も決めましょう!」

「曲?」

「ええ、あたし達の歌よ!」

「流石にそれは必要無いんじゃないかしら?」

「早速、うちに来て頂戴!」

「おー!」

「あっ、二人共待って!」

 ノリノリなこころと香澄、その後を追う彩。

「なんなのかしら?」

「さぁ?」

 蘭と友希那はそれを呆れつつもついていく。

 そんな様子を一匹の蝶は興味気に見つめるとどこかへ飛び立っていった。

 

 

 

 大敗と挫折、逃亡。しかし、五人は再び集う。

 誓いを掲げた五人組はこの日、一つのチームになった。

 音撃戦隊の戦いは始まったばかりだ。

ポピパの楽曲と言えば?(採用されたものがフォーム名になります)

  • STAR BEAT!~ホシノコドウ~
  • 二重の虹(ダブル レインボウ)
  • キズナミュージック♪
  • Returns
  • ティアドロップス
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