日曜日と月曜日は体調が優れなくて、ここに挙げる元気も無いほどでしたが、今日の午後からはやっと体調が戻ったのでこの二次創作を揚げたいと思います
この物語は藤丸とアラタがリーゼを止めた後で、リベル学園に向かう前の話である。
そして、これはサーヴァントの物語ではない。メイガスの物語でもない。
これは…一人の魔王とある女神の名前を冠した魔道書の物語である。
ここは多数の魔道士が住むビブリア学園の学生寮。
その庭で静かな夜を遮るように修行している者がいた。
名は藤丸立香。二十歳の青年であり、魔王候補の一人でもある彼は一人の少女を『闇』から救えなかったことを後悔していた。
彼は仲間の前では、平常に振る舞っていたがリーゼの消滅に過去での出来事を重ねていた。
それは、様々な特異点とロストベルトで救えなかった命だ。
「クソ…ッ!クソッ!!」
拳を振るいながら、救いたい者を救えなかった自分を責めていた。
しかし、彼にも限度が来たのか。暫くしていると、頭を叩かれたかのように背中から倒れてしまった。
そして彼は瞼を閉じた。
藤丸はその夜、悪夢を視た。
まず初めに、白いフードを被った男が現れた。
彼は、何かぶつぶつと呟いては何かを造っていた。
暫くすると、男は喜びの声を挙げた。
「やった…ついに!完成したぞ!!新しい魔道書だ!!!」
男が叫んだ途端、藤丸の意識は一旦途絶えた。
藤丸が目を開けると、そこは彼自身の部屋であった。
「アレ?」
藤丸が不思議そうにしていると。
「あーっ、かったりぃ。」と一人の幼女が、重い荷物を運んだあとかのように怠さを訴えた。
「……そうか。済まないな、アークさん。」
藤丸を部屋まで運んだのは、アークさんことアークミネルバだ。
「修行するなら勝手にしろ。だけどな……自分の健康管理ぐらいはちゃんとやれよな?」
「あぁ。ごめん」
この時、藤丸は最初に会ったアークミネルバの変化していることに気が付いた。
次の夜に藤丸はまた夢を見た。
昨夜に出てきた男は造ったばかりの魔道書を使って、魔物の軍隊と闘っていたのだ。
そして夢の中で、藤丸はあることに気が付いた。
「あの男の魔道書は…!」
それを藤丸は何度も見たことがある。紅色を基調とし、金の紋章を持った魔道書を。
「つまりこの夢は…アークさんの過去そのものなのか?」
それは、闘いに勝った後に男が言った言葉で確信へと変わった。
「お疲れ様。アークミネルバ」
そう言うと男はフードを取り、アークミネルバを我が子のようにじっくりと見つめる。
藤丸はフードを取ったその男を視て目を丸くした。
男は藤丸と瓜二つだったからだ。
「お…俺!?いや…そんなはずは…!」
この世の中には、似ている顔が三人いると言う。この時の藤丸は「偶々似ているだけだろう。」と思って夢から覚めた。
しかし彼が目覚めた場所は、藤丸の部屋と呼ぶには余りにも禍々し過ぎた。
「貴様。何処へ行くつもりだ?」
後ろから声が聞こえたのだ。
「なんだ?この魔力は!?」
後ろを振り向くと、また自身そっくりな男がいた。
ただし、これはただ者では無いことは一目瞭然だった。
男は、赤く岩のように険しいドラゴンの顔が彫られた鎧を纏っていた。まるで、藤丸のメイガスモードを禍々しくしたような見た目の鎧だ。
「お前は誰だ!?」
藤丸は自身のアナザーとも言える存在に率直な疑問をぶつけた。
「我の名は……アワリティアトリニティだ。」
そうヤツが答えた途端。アークミネルバは今まで藤丸に見せたことが無いくらいに感情を爆発させた。
「てめぇ…!どのツラ下げて来やがった!!?」
彼女はまるで、敵に突進しようとする猪のように鼻息を荒げた。
今の藤丸に分かるのは、彼女とアワリティアトリニティの間に何かが起きたことだけだ。
「お前は……やはりそうか…。」
アワリティアトリニティは一瞬、悲しそうな表情を浮かべた。
藤丸はそれに違和感を覚えた。
「さて、貴様らをどのように殺そうか。」
「…!」
アワリティアトリニティは、藤丸に殺気をぶつけた。それは、藤丸でも足をすくませる程強力な物だ。
藤丸の本能は彼に「アークミネルバを置いて行ってでもいい。逃げろ」
と警鐘を鳴らすが。
「いや。それは出来ない!」
藤丸は自分に言い聞かせるように、そう叫んだ。
アークミネルバに無理させたくないと考えた彼は、金色のオーラを放つ超カルデア人へ変身し敵に突進した。
しかし、効果は殆ど無いに等しかった。
「クソッ…!」
「なんだ。その程度か?」
アワリティアトリニティはその拳で、藤丸の腹部を貫いた。
「グハッッッ!」
「マスター!!」
藤丸の腹には風穴が開き、彼の口や腹の風穴からは大量の血が噴き出した。
普通なら絶命しても可笑しくはない。しかし、彼は立ち上がる。
「やはり立ち上がるか。流石は魔王候補…といった辺りか。」
「こんなところで倒れる訳には行かないんでね!」
藤丸は圧倒的な再生力で、腹部の風穴を防いでいた。
そして、他の特殊モードである抑止力モードでもビーストモードでも勝てないと悟った彼に残された手は只一つしか残されてなかった。
「アークさん!メイガスモードだ!これでなきゃ駄目だ!!」
「分かった…!」
アークミネルバは感情をどうにか圧し殺して、藤丸のメイガスモードの協力を示した。
「暴食『グラ』の書庫『アーカイブ』に接続!テーマを実行する!!」
すると、アークミネルバは小さなメカドラゴンへ変化して藤丸の腰部に装着される。そして、藤丸を包むように青白い竜の鎧が現れる。
「変身!」
「Get up!メイガスドラゴン!Year!」
「ほう…中々出来の良いメイガスモードではないか。小僧。」
「アンタのとそっくりな点だけが気に食わないがな。」
アワリティアトリニティは人差し指を強調した。
「嘗められたもんだな…!」
「アークさん。これは罠だと思う……だが勝負をかけるなら短期で決めるしかない…!!」
藤丸はアワリティアトリニティを囲むように高速移動を行う。
残像を作ってアワリティアトリニティの目を欺こうという算段だ。
「行くぜ…!」
藤丸は魔王を囲みながら、敵から見て八つの方向から青い光線を放った。
しかし、それらは簡単に吸収されてしまった。
「効いていない!?」
アワリティアトリニティは藤丸の動揺に漬け込むようにニッコリと笑い、刀身が長く禍々しい剣を取り出した。
藤丸は悪寒を感じ、白い短剣=シルバームーンを取り出した。
「起きよ、ブラッディムーン!!」
複数の赤い斬撃波が藤丸を襲った。
「グワァァァァッ!!」
藤丸の身体中は三日月の形をしたような傷が無数に付き、そこから大量の血液が流れ出した。
藤丸は背から地に落ちた。
「さぁ、アークミネルバよ。我の元へ来い…!」
「断るに決まってんだろ!!」
「なんだ?先程の戦でその小僧より、我のほうが強いことは分かったろう?まぁ、そこまで言うなら。その男の魔力を喰らうがな。」
アワリティアトリニティは、アークミネルバとの交渉が決裂したと見るや藤丸の魔力を吸収しようと迫る。
すると、謎の霧が立ち込めたのだ。
「なんだこれは!?」
アワリティアトリニティの視界は殆ど霧で埋め尽くされた。その間に、何者かが藤丸とアークミネルバを抱えて逃げたようだ。
藤丸は倒されて運ばれている間に三度目の夢を見ていた。
「私は…この山を越えなければならない。」
「待って…待ってくれよぉ。お願いだから…置いていかないで。」
「『甘えるな』!!」
藤丸にそっくりな男が、アークミネルバにそっくりな幼い女の子を突飛ばし何処かへと去っていったという内容の夢を見た。
一見その男は冷たいことを言ったが、何かわけがあって敢えてアークミネルバを突き放したように藤丸は見えた。何故なら、その男の目にはアメのようなサイズをした粒が溢れていたからだ。
「起きてくれたまえ、マスター。」
藤丸を夢から目覚めさせた声は、優しさを持ったお兄さんそのものだった。
「…マーリンか。……また、世話をかけちまったな…」
藤丸はゆっくりと起き上がった。
「全く。心配をかけさせる弟子だな、君は。」
「……この流れは修行だよな…。」
「うん、正解」
包み隠さずに、マーリンはそう言った。
藤丸はそれに対して落ち着いた態度で、修行に臨むことを決意したのだった。
「マスター。ここまで十分に強くなった君に足りないもの…それはね。剣技だ。」
「特殊技で勝てないなら、剣捌きで勝てってことか。」
「うん。それも正解だ。というわけで、今回の師範代を連れてきたよ。」
藤丸の目の前に現れたのは、和服を着た翁に青い鎧を着た少女そして、紫の鎧を着た青年だ。
「師範代セイバー三銃士を連れてきたよ。」
とマーリンがボケようとすると。青い鎧の少女がそれを制した。
「やめなさい、マーリン。そんなことをしている場合ではないでしょう。」
「ハハハ。アルトリアは相変わらずだねぇ。」
そして、ごく普通に三人のセイバーによる自己紹介が始まった。
「サーヴァント・セイバー。師範代として参上致しました。アルトリアと申します。」
「同じくランスロットでございます。」
「同じく柳生宗則。マスター…儂は手加減が苦手な故。覚悟するが良い。」
藤丸は柳生を視たときから、過酷な修行となる覚悟は決まっていた。
「では、アルトリア→ランスロット→柳生の順番で行こうか。」
マーリンの提案に乗っ取って、アルトリアとの剣技磨きを始めた藤丸であった。
前編完
本当に待たせてすみません