「特訓に使用する風景は…日本式の剣道場か…」
「えぇ。そこは私の好みにさせて頂きました。」
アルトリアと藤丸の剣技特訓が始まろうとしていた。
「では…投影品では無い、ごく普通の剣を。」
アルトリアは藤丸に、ごく普通の西洋剣を鞘付きで投げ渡した。
藤丸はそれを受け止めると、素早く抜いた。
「…流石は、あの赤いアーチャーの弟子でもある男。剣の扱いは伊達ではありませんね。」
「では胸をお借りします…騎士王様。」
アルトリアも同じように普通の西洋剣を持って構えた。
最初に斬りかかったのは、藤丸のほうだ。彼に迷いなど無く、素早く縦に剣を振り下ろした。
しかし、騎士王にとっては見きれるスピードそのものであった。
「………」
藤丸は見切られる前に次の手に移った。
その速度はわずか0.5秒。
その速度よりも速い横一閃を藤丸は放つが、これもアルトリアの跳躍力の前に避けられる。
「!」
しかし、藤丸はそれを読んでいたと言わんばかりに、騎士王が跳躍した方角へと凪ぎ払った。
剣を向けられた彼女は自身の剣でそれを受け流し、回避した。
その後、剣と剣がぶつかり合う。
その中で、彼女は自身の魔力を放出させた。
藤丸も膨大な魔力で、それに応えた。すると、道場の床や壁に皹が入る。剣にも同様の事が起きた。
「中々の剣捌きです…が、貴方に足りない者が今ので分かりました。」
「………!」
「それは…『精密さ』です。」
「…『精密さ』…か。」
藤丸は、精神的にも肉体的にも鍛え上げられていた。苦手な物を少しずつ直してきた…が、それでも苦手なものがあった。それは自身の技の『精密さ』だ。
魔術の『精密さ』は克服出来るようになった藤丸だが、剣捌きに関しては課題が残ってしまっていたのだ。
「確かに刀身の傷が、アルトリアのよりこっちの方が深い。」
「えぇ。魔力は精密さも純粋な質量も、私と互角以上でした。あとは…分かりますね?」
「……」
藤丸は黙って頷くと、今度は剣を垂直にし静止した。
「…では、こちらから行きます!」
アルトリアは、ジェット機のような勢いで藤丸に突っ込む。
意識を集中させた藤丸は一歩後ろに飛び移り、剣を少しだけ下に降ろした。
アルトリアの剣が藤丸のところに届く…と思われたが。
瞬時になったのは、肉を斬る音ではなく金属が斬れる音だった。
剣の刀身の一部が地面に刺さった。藤丸に振り下ろされる筈の剣は、そこには無かった。
アルトリアの手に残ったのは、刀身が完全に無くなった剣そのものだった。逆に、「チェックメイト」と呟いたのは藤丸の方だった。
「やりましたね、マスター。」
「『精密さ』にだけ、意識を集中させたから出来た結果だよ。アドバイス、ありがとうな。」
「私めも修行の師範代を務めさせて頂きます、ランスロットと申す。」
「よろしく、ランスロット。」
挨拶をした二人は、それぞれを見た。
「で、どんな内容の修行?」
「なに、騎士王との物とそうは変わりません。ただ、剣に制約が無いのみです。」
「なるほど。」
藤丸は、瞬時にメイガスモードへ変身した。
左手には愛剣・シルバームーンが握られている。
「では、参る!!」
そう言った途端に、藤丸は間合いを取られていた。それには、流石の藤丸も驚いたがどうにかそれを防ぐ。
「なるほど…ソードブレイカー型の剣でしたか。」
「円卓の騎士を相手にするとなると、強くなった今でも全く侮れないねぇ。」
ランスロットは、シルバームーンを落とそうと力を増した。
藤丸も力を出すが、シルバームーンの刀身が短いせいか押されていく。
「ヌォォォ!」
「くっ、どうすれば……?……そうだっ。」
藤丸は身体に流れる魔力の一部を、シルバームーンを包むように使う。
それを見たランスロットは目を丸くした。
「こ、これは…!」
ランスロットが見た光景。それは、シルバームーンの刀身が長くなったというものだ。
「なんだこれは?」
「そうか…そういうことか!」
ランスロットと藤丸の修行を柳生らと見ていたアルトリアは、気付いた。
シルバームーンは、先程の藤丸とアルトリアの修行を記録し、成長したのだ。
「これなら…イケる!」
剣の成長のおかげで、今度は藤丸が有利になった。彼は刀身が長くなったことで、防御力だけではなく攻撃力も挙がったシルバームーンでランスロットの剣=アロンダイトを退かせた。
「なんとっ!」
「シルバー・ブレイク!!」
藤丸は、アロンダイトを素早くも重い太刀筋でランスロットの手から取り除いたのだ。
「見事です、マスター。」
「あぁ。次で最後…だな。」
「では、この日本刀を受け止めよ。」
「はい。」
藤丸は、修羅場を潜ることを覚悟した目付きで柳生を見据えた。
「因みに、これは生身での修行とする。」
藤丸は黙って頷く。
修行のはずなのだが、どちらかというと戦場のような緊張感が走る。
両者共に、迂闊には動けない状況であった。
時々、柳生は藤丸に殺気を送ることで彼を試す。
藤丸もそれを感じてからか、殺気をかわそうと逆に睨み返す。
そうしているうちに、十分は過ぎていた。
「「では…こちらから行かせて貰(お)う(か)!!」」
藤丸と柳生は阿吽の呼吸で、斬り合った。
藤丸は先程までに西洋剣を使っていたが、睨み合っている間にこっそりと日本刀の構造を読み込んでいた。そうすることで、どうすれば先程まで鍛えた剣業を生かせるのかをひたすらに考えていたのだ。
二つのしなやかな金属がぶつかる音がする。両者ともに、相手を傷つけられずにいたのだ。
そうしているうちに、両者の刀身は細い木の枝と殆ど変わらない物へとなっていた。
「次の一撃で全てが決まる…」
「あぁ。」
場に新たな緊張感が走る。そして、両者は再び斬り合った。
そして。
「お互い同じ箇所に、斬り傷が出来たようだな。それに…」
完全に折れ、地に伏したのは柳生の剣のみであった。
「うむ、ギリギリ合格…といったところか」
「何でだよ…何で…。『魔王』なんかになっちまったんだよ……」
藤丸はまた夢を見た。聞き覚えのある声の持ち主の独り言の内容を聞いて、全てが確信へと変わった。
「そうか……やっと分かったぞ。アワリティア・トリニティの正体が。」
すると、今度は場が何度も変わったのがわかった。
次の場面では丸い机に座った、魔術界のトップらしき人物たち。
「この魔道書は私でも扱えきれぬ。」
「どうする?これはどう考えても……処分案件じゃないか!」
「処分の方法は…十字架に縛り付けて火で炙るしかあるまい。」
これは、寝ている間に捕らえられた彼女が聞いた内容そのものだった。
アークミネルバは民衆の前で、公開処分されることに。
「では、『魔王に呪われた魔道書』ことアークミネルバを……数多くの人命を奪った罪で火刑に処す!!」
彼女はその声を聞いた途端に、頭の中で抑えていた何かが切れた。
「人間を憎んではならない。」造られている時に聞いた、彼女の父親とも呼べる男から言われた言葉は一気に崩れた。
「そうか……まるで人間に憧れて、好意を抱いていた俺がバカみてぇじゃねぇか。」
十字架に縛り付けられながら、彼女は集まる人間たちを侮蔑の目で見ていた。
その時、彼女の頭にある声が響いた。
「その苦しみ……我が背負ってやる。お前は、再び善きマスターを探すのだ。」
アークミネルバはその声は走馬灯だと思っていた。
しかし。
「教皇様!向こう側から、魔王クラスの魔力を持ったドラゴンがやって来ます!!」
「なんだと!?」
公開処分場の上空を、一匹の紅きドラゴンが旋回していた。
「まずい、迎撃しろぉ!」
人々が紅いドラゴンに集中している中。そのドラゴンの配下であろう魔物たちがこっそりとアークミネルバを拘束から解いた。そして二度と多くの人間の目が届かない、別の場所に置いたのだ。
「………あぁ……この世は地獄だな……人間なんて、ゴミみたいなもんだぜ。」
「マスターは起きそうですか?」
「うん。直に…ね。」
藤丸は夢から目覚めると、その頬に川を流していた。
「おい、なんだよマスター?男がなぁに泣いてんだ。」
アークミネルバはぶっきらぼうにそう言った。
そこで、藤丸は答えた。
「あのな、アークさん…。辛い時は辛いって言ってくれよな…。」
「お前…まさか。あぁ、分かった分かった。本当の私なら、ここで突き放すところだがよぉ………今回は許してやるよ。」
アークミネルバの頬にも長い川が流れていた。
一方で。
「…おっと。あまりにも長い旅だったな、アークミネルバよ。」
赤竜の魔王は余裕な表情を浮かべて、現れた藤丸とアークミネルバを玉座から見下ろす。
「相変わらず、血の色が好きな魔王様だ。」
「良いぜ、マスター。私が言ってやるよ。」
「ほう、この前の答えをか?勿論、我に…」
アワリティア・トリニティは自慢気に、自分の所こそふさわしいだろう?と言おうとするが。
「残念ながら、俺はコイツを本当の意味で気に入った。てめぇなんぞに、構いたくねぇんだよ!!」
アワリティア・トリニティはアークミネルバの一言に動揺した。
「…なんだと…?その小僧の何処が良いのだ!?」
「納得がいかないみたいだな…。まぁ、その面が見たくてウズウズしてたがなw」
とアークミネルバは更に挑発をする。
「ならば、貴様らを仲良く地獄へ落としてやろう!!」
アワリティア・トリニティは玉座から跳躍して、藤丸たちにのし掛かろうとした。
しかし、それを見抜けない藤丸とアークミネルバでは無かった。
大きく後ろに下がって、魔王の攻撃をかわしたのだ。
魔王の攻撃を回避した藤丸。そしてその腰には、アークミネルバ変化した一本のベルトがあった。
「行くぜ、アークさん!」
「OK!マスター!!Start your Theme!」
アークミネルバの掛け声とともに藤丸は手に握った袋入りのゼリーを、一本のベルトの挿入口に入れた
「変身!」と藤丸が叫んだ。
「メイガスモード!タイプ・ガーディアン!!」
大いなる力に対する藤丸の恐れが潰れる。藤丸の魔力が全身に際限なく流れる。藤丸の体の中から無限に魔力が溢れ出る。
藤丸のメイガスモードは青白い鎧の上に、鮮やかな紅色をした外套を纏った物へと変化したのだ。
「行くぞ、アワリティア・トリニティ!今の俺は…俺たちは!負ける気がしねぇ!!」
「俺は、マスターとのひとっ走りに付き合ってやる!だから…お前もひとっ走り付き合えよ!!」
藤丸の姿を見て、アワリティアは叫んだ。
「そうか…やっと手にいれたんだなぁ!藤丸立香ぁ!!」
後編へ続く。
どうも、超ローマ人です。
この崩壊危惧学園聖ビブリアが終わったら、用語解説集Ⅱをやりたいと思います。
理由としては色々な用語が並び過ぎて、私でもたまに訳が分からなくなっているってのと(おい)、トリニティセブンもFGOも初めてだよって言う人にも分かりやすくしたいので。では、また来週