錬金術師三人の立ち上がりはヤバい
「ハアッ!」
「…!」
ビブリア学園でもロストベルトでもない謎の亜空間では。
その空間の主と藤丸が、それぞれの魔力をぶつけ合っていたところだった。
すると、いつの間にか戦場にいた花の魔術師が喜びの声を挙げた。
「祝え!全人類を愛し、人類の未来を守る人理の防人。その名も藤丸立香・ガーディアンメイガスモード。今!生誕の瞬間である!!」
その妙に耳に響く声には、流石のアワリティア・トリニティも怒鳴る。
「誰に言ってるんだ!?」
「あぁ…いつものか。」
藤丸も、マーリンの演説を呆れながら聞いていた。
最初の火や電撃などが西部劇で流れる銃弾のように、四方八方に飛び散ったしのぎ削り合いをしてから、どのくらいの時が経ったのだろうか?
アワリティア・トリニティも藤丸も疲れているような気配は無いが、
「これでは拉致が開かない」
ということは、両者とも理解していた。
「出でよ、ブラッディムーン。」
「マスター。セイバーのサーヴァントたちとの修行の成果を見せる時だ!」
「あぁ。シルバー・ムーンV2ぁぁぁ!!」
藤丸は白く輝く剣を、アワリティア・トリニティは血のように紅い剣を取り出した。
そして紅い魔王は自身の剣に「起きよ」と、自身の剣に命じた。
「敵を殺せ」と命じた。
一方で藤丸は魔王の剣の秘密をどうにかして見抜いき、ある目的を以て魔王を静止させようと目論む。
「喰らえ、我がブラッディムーンの奥義。クレセント・スカーレット!!」
魔王はブラッディムーンから、複数の紅い斬撃波を放った。
「やっぱり、侮れないスピードだ…だが!」
アークミネルバと藤丸の心に、魔王の技に対する恐れは残ってはいなかった。
敵の剣の秘密を暴いたからだ。
そして、強化されたシルバームーンを縦に凪払った藤丸は、ただそれだけの動作でアワリティア・トリニティが放った全ての攻撃を防ぎきったのだ。
「なんだと!?」
「行くぞ!!」
藤丸の背後には、青い龍と金の戦乙女が背後霊のように現れていた。
そして、シルバームーンは青と金の光を発し、藤丸は円弧を描いた後でそれを振るった。
「『インフィニティ・アークスラッシュ』!!」
光の斬撃波がアワリティア・トリニティを斬る。
そして、魔王は背を地面につけた。
「ふっ…見事で…ある。」
「次が有るなどと、抜かすなよ?」
「待て、小僧。話は最後まで聞け。我…いや私は。この時を待っていた。真にアークミネルバによって、認められた人間に倒されるのを」
アワリティア・トリニティは不思議と落ち着いたそして、安堵したような表情を浮かべていた。
「……」
「どういうことだ?」
「……アークさん。コイツはな…」
アワリティア・トリニティは咳払いをし、再び話を続けた。
「そうだな、お前は…藤丸立香は…過去の私を見たな?」
「あぁ。アンタが…アークさんを造ったんだろ?そして、何かに追われていた。
だから、アンタは巻き込むまいとして。敢えてアークミネルバを突き放した。」
アワリティアは「正解だ、次は誰に追われていたのかを話そう。」と言って、
過去の彼の話を続けた。
アワリティア・トリニティは人間に興味を持ち、人間に化けていた頃。彼には便宜上、恋人と言うべき女魔道士がいた。便宜上、というのは。人間社会に溶け込むために、その女を利用していたということだ。そして、その女とある共同作業をしていた。それは、魔道書の創造そのものだ。
それをするために、沢山の魔道書、魔物そして動物が犠牲になった。
最初は、人間も材料にしていた魔王だが…ある女を愛してから
「人間を生け贄にするのは、なんだか気分が悪い。」
と考えた彼は途中でそれを止めた。
この時から彼は、徐々に魔王であることを忘れていた。終いには、人間の女を本気で愛してしまったのだ。
そして、アークミネルバを愛した女との間の娘のように可愛がっていた彼は魔王たちの目に留まってしまった。
「ただいま。…おーい、エマ?」
ある日、出稼ぎから帰ってきたアワリティア・トリニティは異変に気付いた。
「……!」
昨日まで、エマやアークミネルバと生活を共にした机の上に不審な手紙が置かれていた。
『愚かなアワリティア・トリニティへ告ぐ。
お前の愛しいエマは、我ら魔王同盟が預かった。
アークミネルバを置いていき、魔王同盟本部まで来い。
我ら偉大なる魔王同盟より』
その内容を見た、魔王はアークミネルバを置いていって家の近くの裏山に向かって走ったのだ。
それに気付いたアークミネルバは、幼い女の子の姿に変わって自分のマスターを追いかけた。
「何処へ行くんだよぉ、マスター!」
「アークミネルバっ…!」
アークミネルバとも、エマとも一緒にいたい。そう思っていた彼だが、魔王同盟からの要求に従わなければ大切な二人の命が危ない。
そこで彼は断腸の思いを秘めて、叫ぶ。
「来るなっ!!」
さらに、アークミネルバが処刑されそうになったとき助けたのはドラゴンへとその姿を変えたアワリティアそのものだった。
そして、彼はそれを終えると再び遠くの地で休んでいたという。
「で、エマはどうなったんだ?」
「あぁ…今のところ行方知らずだ。ただ一つだけ、手掛かりなのは。お前のサーヴァントの一人に似たような女がいる…ということだろうか。おっと、我が最も言いたかったことを言うのを忘れてた…」
するとアワリティア・トリニティは膝をついて「アークミネルバよ…申し訳無かった」と一粒二粒程の雨を降らしながら、謝罪をした。
「ったく、どいつもこいつも勝手過ぎるぜ……」
「………アワリティア・トリニティもこの世の理不尽な側面の被害者……という訳か。」
藤丸は冷静にアワリティア・トリニティを分析し、彼は自分自身以外の誰にも危害を加えていないことに気付いた。そして彼はアワリティア・トリニティを受け入れ、逃がすことにしたのだ。
「済まないな、ミネルバのマスターよ。我は直に月へ行く。」
「アワリティア・トリニティ。もう、何も言うことは無いな?」
「あぁ、そのことだが。ミネルバのマスター、貴様に挙げたいものがある。」
なんと、魔王は自身の剣を藤丸に与えたのだ。
「これは…?」
藤丸は紅い剣を手にして、首を傾げた。
「うむ。我が愛剣・ブラッディムーンである。」
「良いのか?魔王同盟に追われている身じゃ無かったのか?」
「フハハハ!飽くまでも、我はアークミネルバの力をある程度使えるようになった者のみに、試練を与えるように設計された分身みたいなもの!本体はそうだな…お前の中にいるぞ?」
その時、藤丸とアークミネルバの思考は止まった。
「おっと、正確には…年老いた俺だ。」
そして、二人は息を合わせるように声を挙げた
「「うそーん」」
そして、別れの時が来たと若いほうが告げながら、亜空間を解除しようとした。
「待ってくれ!最後に一度だけ!あの言葉を…」
アークミネルバが、エサを求める雛鳥のように要求をする。
そして、それに答えるように
「あぁ。元気でな、我が『娘』よ。」
そう言い残して、魔王は去ったのであった。
「う…んっ。」
藤丸はやっと自身の部屋で目覚めた。
すると、「藤丸リツカさん。至急、学園長室までお越しください。」
「呼ばれちまったか…。ってかどのくらい寝てたんだ?私は?」
「ま、そんなこと考えてる暇は無ぇよ。そら、行こうぜ?」
「あぁ。」
二人は再び、共に歩みだした。
The Birth Of Minerva 完