この小説ではまだ夏なんですがね。
人生初のナンパ話――或いは自身の女子力を証明する色恋話。
そのオチを真正面から暴露されて、風はただただどんよりとした空気を纏った。
ウゥゥ……と呻くその様子に、こういった時に場を和ませる友奈もさてどうしたものかと言葉を探すしかない。
「そ、そういえば」
と、話題を変えようと口を開いたのは美森だった。
美森にしてみれば、件の口説き落としに来た男の姿を見かけなかった事からの悪気のない質問だったのだが、それで風を傷つけ部屋の雰囲気を盛り下げたとあれば挽回せねばと思うのは自然だった。
「風先輩と涛牙先輩の馴れ初めはどうなんですか?コイバナではないですけど、興味があります」
「そーいえば、わたし達が入部した時にはもう2人とも一緒に活動してましたよね?」
友奈にもそう言われて、風は無茶苦茶渋い顔をしながらも話し出した。
「アタシが白羽くんとあったのは、讃州に越してきて少しした頃ね……」
『グアルディア』と看板を掲げた店に入って、風は店内を見渡した。
夕日が差し込む店内は、広くもないのに客もおらず、余計に閑散とした様子に見える。
ここに来るまでにネットで調べても、ホームページもなければさして評判も聞かないような料理店。何でこんな場所に風がいるのかといえば。
「――犬吠埼 風か」
不意に横合いから声を掛けられる。
振りむけば、夕日に照らされないカウンター席から立ち上がる影があった。
風よりも頭半分ほど上の背丈だが、その鋭い眼差しとニコリともしない表情が、普通の男子ではないことを証していた。
「……アンタが?」
不審な視線を崩さずに、風はポケットから手紙を取り出す。
「上から、お前の補佐をするよう命じられた」
その手紙を一瞥してそう答える男に、風は一瞬出入り口に視線を向けながら、挑みかかるように口元を歪める。
「補佐、ねぇ。こんな手紙一つで顔合わせさせるなんて、大赦って大したモンね」
学校帰り、玄関先に待ち構えていた神官から無言で手渡されたのだ。このくらいの皮肉は許されるだろう。そんな内心を滲ませながら言う。
「――ああ。大したものだ」
一方の男は、表情を何も変えずにそれだけ返す。
そして、そのまま黙り込む。特に話すことはないというように。
そんな男を睨みながらしばし。
ひたすら続く沈黙に、風の方が根負けした。ため息を一つついて、言う。
「補佐って、なにすんのよ?」
「お前の手助けを」
「……料理、とか?」
冗談半分の言葉に、初めて男の顔が変わる。眉間にしわを寄せて、困ったことを言われた様子だ。
「……味に期待するな」
真面目に受け取って真面目に答えてきた男に、内心あちゃあと思いながら言い返す。
「いや、今のは冗談よ。乙女の家に男子を入れるのは、ねぇ」
「そうか」
露骨にホッとした様子を見せる男に、
(これは厄介な付き合いになりそうね……)
そんな事を思いながら、それでも風は仕方ないと割り切る。
元より、見ず知らずの少女を丸め込んでグループを作るという厄介事を御役目として指示されている身だ。補佐――と言う名のお目付け役だろうが、まあ大目に見よう。
「ま、いいわ。じゃあこれからよろしく。えっと……」
そういえば手紙に名前が書かれていなかったと思い返す風に、男は一つ頷いて。
「白羽 涛牙だ」
そう名乗った。
「――で、それからは勇者部の事とかでアタシの手助けをアレコレしてもらったわけ」
そうして説明を終えて、風はフアァと欠伸を一つ。
「ね?コイバナ要素ゼロでしょ?」
「たしかに」
相槌を打ちながら美森が頷く。
「ホントーに無愛想なのね、アイツ」
夏凛も呆れた顔で言う。
「アハハ……。話してみると冷たいわけじゃないんだけどね」
友奈がフォローを入れるが、
「またまたぁ。友奈だって白羽くんと話すのに結構時間かかったじゃない」
『そうなんですか?』
樹がスケッチブックで驚きを表すと、友奈も苦笑いしながら。
「……話しかけようとするとジッと見返してくるから何だかプレッシャーがかかって……。涛牙先輩とお話しするのに勇気が必要だったのは内緒です!」
「マジか」
『友奈さんでさえ』
友奈の告白に夏凛と樹が心底驚き、美森も「慣れるまでは怖かったわねぇ」などとぼやく。
そんな話をしているうちに、眠気が近寄ってくる。ふと気づくと夏凛が寝落ちしていた。
夜更かしは身体によくないという事で、照明を消して友奈たちも眠りについた。
夜闇が深まるころ。
暗い道を進む男たちがいた。どこかよたついた足取りは酒に酔っているようにも見えるがその目だけは爛々と冴えわたっている。
ポツポツと並ぶ街灯が時に男たちを照らし出す。
日に焼けた肌に派手な色に染めた髪、耳にはピアスを付けた若い男たち。昼間、風をナンパした男たちだ。
真夜中に遊び歩いていても不思議ではない――のだが。しかし彼らは足元はおぼつかなくとも歩み自体にふらつきはない。何か、目的地があるように。
そうして、彼らはとある旅館にたどり着いた。
この地で長く愛される老舗の旅館。だが、この旅館に若者たちが宿泊しているわけはない。
今日は、讃州中学 勇者部の貸し切り状態なのだから。大赦が、そのように手配しているのだから。
若者たちはその建物を見上げて――ニヤリと口角を吊り上げる。見咎める者もいない中、若者の一人が駆け出し――
「ギャッ?!」
伸ばした手が虚空で弾かれる。強い静電気が奔ったかのような衝撃があった。
たじろぎ、訝しみ。しかし若者にそれ以上の行動は許されなかった。
物陰から飛び出した人影が、若者の背後を走り抜けざまに右腕を横に薙ぎ払う。その手に握られた剣が奔り、若者の首を刎ね飛ばす。
何が起こったかわからぬままの表情を浮かべたまま首は宙を舞い――地に落ちるより先に黒い靄となって身体もろとも霧散する。
「「!」」
突然の出来事にたじろいだ男たちが、飛び込んできた人影に顔を向ける。
丈の長いコートを翻し、手には鈍く輝く魔戒剣。
「アイツらもついてないな」
小さく呟き、白羽 涛牙は剣を構える。
実のところ。涛牙は勇者部一同とは別ルートでこの地を訪れ、離れた場所からずっと勇者部一行を見守っていた。
旅館の周りにホラーを退ける結界を張ったのももちろん涛牙だ。念のため、程度の備えではあったのだが、まさか本当に襲われるとは。
「ディジェル。こいつらは」
『分からん。だがお嬢ちゃんたちに目をつけてたのは確かだ』
ホラーは基本的に夜に活動する。が、人に憑りつき擬態しているならば昼でも動き回る事は出来る。
「ナンパしながら物色か。趣味が悪い」
涛牙が言い捨てると同時に、残る2人の男たちが獣の如く唸りをあげて跳びかかってくる。数メートルは離れていても、そんなものは一瞬あれば詰められる。
剣を揮って男たちの拳を切り払いながら、涛牙は小さく舌打ちした。
(完全な擬態型か。厄介な)
ホラーがゲートとなった人間を喰らい現世に現れるとき、その姿はいくつかのタイプに分かれる。
一つは、ホラー固有の姿を取る者。俗に力あるホラーが現世に現れた場合の姿とされ、憑りついた人間の陰我に応じて特殊な能力を発揮し、魔戒士を苦しめる。
二つ目は、素体と呼ばれる状態のままでいる者。あまり力のないホラーがこの姿を取るとされ、特異な能力こそ持たないが、背に生えた翼で空を飛び回ることが出来る。
そして三つ目。憑りついた人間の姿そのままでいる者。二つ目と同じく力のないホラーがこの状態になるとされ、特殊能力も飛行能力もないのだが、これはこれで厄介な相手でもある。
何しろ、ホラーとしての異形の姿を取らないままで活動し続けるのだ。人が多ければ多いほど、容易く人の波に紛れてしまえる。今の状態を傍から見れば、剣を持った涛牙に勇敢な市民が立ち向かっているようにさえ見られかねない。
「ふっ!」
挟み撃ちにしようとするホラーたちを、そうはさせじと涛牙も軽快に跳ね、蹴り、拳で打ち、剣を揮う。
だがホラーもさるもの。一人が突きこまれた剣を敢えて急所をずらして受け、剣身を掴みとめる。その隙に、ホラーの背後からもう1体が頭上を飛び越え、涛牙の背後を取った。これで完全な挟み撃ちとするつもりだ。
だから。涛牙はホラーが着地した時には剣を手放していた。ホラーが振り向きざまに放つ裏拳は上体を沈ませながら放つ海老蹴りでカウンターを取り、懐から取り出した魔導筆を揮って法術で追撃。剣を抱えたまま蹈鞴を踏んだホラーは、柄を握り直しながらの前蹴りで突きとばす。
「――これで決める!」
吠えて、剣を頭上に翳し切っ先で円を描く。
空間が裂け光が差し込む。誓いを捧げる騎士の如く剣を胸元に引き戻すと同時に光はひと際輝き、収まった時には涛牙は全身をハガネの鎧に包まれていた。
その姿にたじろいだ擬態ホラーが離れようとするが、涛牙はそれまで以上の踏み込みで間合いを詰める。
右片手の袈裟斬りで先に一度突いていたホラーを切り伏せ、勢いそのままに身を捻る。渾身の力を込めて法術でたじろいだホラーに突進、その心臓に魔戒剣を突き立てる。
「グオォォオ……」
怨念を感じさせるうめき声をあげながら、2体のホラーは霧散していった。
その様子を見届けてから、涛牙は鎧を解除した。ハガネが輝きと共に魔界へと送り返されると共に、涛牙も安堵の息をついた。
「フゥ」
完全な擬態型のホラーは、はっきり言えば弱い。徒党を組んでも、未だ一人前とは言えない涛牙が蹴散らせる程度ではある。これで数がもっと多ければ手にあまりもしただろうが。
「とりあえずは一安心」
そんな呟きを漏らしたのが間違いだったのか。
突如として影から伸びてきた触手が、涛牙の四肢を絡めとる。
「なに?!」
『しまった?!こいつらは――!』
ディジェルが慌てる声は、しかし涛牙の耳には入らなかった。
触手が涛牙を締め上げると共にとんでもない力で振り回し、手近な壁に叩きつけたからだ。
「ぐぁっ……」
苦悶の声を上げる涛牙を、闇の中から放たれた触手が厳重にからめとっていく。
身じろぎも出来なくなった涛牙に、闇から足音が近づく。鋭い視線を向けた先には――気弱そうな眼鏡の青年がいた。
「お前は……」
先ほどの擬態ホラーの顔ぶれと合わせて思い出す。
昼に風をナンパした男たち――擬態ホラーから少し離れて立っていた男だ。様子を見る限りではナンパ男たちの小間使いのようだったが。
動けなくなった涛牙を嘲笑うように笑みを浮かべて、眼鏡の青年の身体は弾け飛ぶ。
現れたのは、ホラーらしい禍々しい身体に、首から上がクラゲのような形に肥大した異形。頭から伸びた無数の触手は、涛牙を絡め取ったものと同じものと見える。
『こいつは……バーデス!そうか、さっきの奴らは端末か!?』
「なにっ!」
『こいつは人の魂だけを喰らう!そして魂の無い身体を操る事が出来るんだ!喰った魂の情報を基に動かすことで、生きてるようにな!』
ディジェルの説明を聞いて悟る
先ほどの、擬態ホラーと思っていたナンパ男たちは、獲物を探し、狩場へ誘い込み――或いは襲い――喰らうための端末であり、同時にホラーを倒したと思って油断した魔戒士を返り討ちにするための囮。涛牙はその罠に嵌ってしまったのだ。
「くそっ!」
舌打ちをする涛牙を嘲るように、バーデスは踵を返して旅館へと向かう。無力化した魔戒騎士にとどめを刺すよりも目を付けたエサ――勇者部の面々――を喰らう事を優先したのか。
涛牙が張っていた結界はすでに効果を失っている。バーデスは悠然と門をくぐり――
「グォ?!」
先ほどの涛牙の結界など足元にも及ばぬ強力な結界で弾き飛ばされた。
「油断大敵、ね」
涼やかな声が聞こえる。見ると門の陰から、魔戒法師の装束を纏った美女が気配も感じさせずに現れていた。
「だな」
次いで聞こえたのは青年の声。同時に緋色の影が涛牙の視界を駆け抜け、バーデスを更に大きく弾き飛ばす。
地面に叩きつけられたバーデスは、それでも身軽に立ち上がり、触手を放つ。銃弾にも匹敵する速度のそれを、しかし緋色のコートを纏う男は手にした剣を一閃、容易く叩き落す。
「気を抜くのは、明るくなってからだぜ」
言いながら、男――魔戒騎士は迎撃に揮った刃を止めることなく自身の左右に円を描く。
魔戒騎士を挟み込むように現れた空間の裂け目から輝きが溢れ、次の瞬間、騎士は鎧を身に纏っていた。
ルビーの如き赤い鎧は、重厚さよりも軽快に立ち回る事を求めたスマートな姿。その手に握るはレイピアのような細身の直剣。
その騎士の名を、涛牙は知っていた。
この地域を管轄する番犬所に属する中でも有数の実力者――称号持ちの魔戒騎士。その名は。
穿 裂 騎 士
バーデスは、たじろぎながらもやはり触手を放つ。先ほどよりも遥かに多くの触手が頭から放たれ、しかしシュラは優美な身のこなしと剣捌きで軽々と打ち弾く。
のみならず、攻撃の隙間を見極めると風の如く駆け寄り斬撃を放つ。甲高い風切り音が鳴り、バーデスの四肢を切り裂いていく。
怒涛の攻撃にバーデスが後退すると、シュラは左の半身に構えた。矢を引くように右手を引き絞り、左手は弓に見立てたように正面に突き出す。
次の瞬間。
シュラは文字通り烈風と化した。
涛牙にさえその突進は残像しか見えず。
大気を揺らす轟音が響いてそちらを見やれば、刺突を放った姿勢のシュラと、胴体に大穴が空いたバーデスの姿があった。
切り裂き、穿つ。まさに称号の通り。固有の姿を以て出現したホラーに対してまるで危なげなし。
「さすがだ……」
そんな涛牙の呟きを背に、シュラは鎧を解除した。そこにいたのは、風をナンパから助けた男だ。
「ったりめーだ。一人前の騎士なめんなガキ」
涛牙の呟きを聞いていたらしく声を掛けてくるが、その様子は風に見せていた好青年とはまるで違うチンピラらしき口調。だがそこに悪意の類を感じさせないのは、いつもこの態度なせいか。
「その子供相手に喧嘩腰になるんじゃないわよ、
そんな男――緋柳をたしなめるように美女が口を挟む。
「ンだよ、
「あら。私の覚えてるかぎりじゃ、アンタは15の頃は師匠のシゴキから逃げたがってたと思うけど?」
「うっせーなー。ホラーに殺されかかっちゃいねーよ。――戦ってもなかったけど」
そんな言い合いをしながら、しかし2人はまるで警戒を解いていない。少なくとも涛牙には気を抜いたようには感じられなかった。
「――危ないところをありがとうございます」
言い合う2人に、涛牙は膝をついて礼を述べる。緋柳は巳鈴との話を止めて涛牙に向き直った。
「大したこっちゃねーよ。奴は元々こっちで狩る予定だったんだ。テメーが割り込んで痛い目みただけだろ」
口ぶりに呆れをにじませながら緋柳が言うと、巳鈴は肩をすくめた。
「まあ、私たちも奴の動きを読み誤ったところがあるんだけどね」
『ほう、そりゃどういう事だ?』
ディジェルが尋ねると、緋柳が頷いて答えた。
「バーデスは餌場に相手を誘い込む習性があってな。で、さっさと討滅しようと餌場に殴り込んだらもぬけの殻だったわけだ」
「慌てて周囲を探ったら、その子――涛牙、だったかしら?あなたが潜んでいるのが見えてね。で急いで来たわけ」
「よほど勇者が美味そうに見えたのかねぇ」
そして、巳鈴は難しい顔をしながら後を続けた。
「番犬所も何を考えているのかしらね……。年が近いから近くに置きやすいというのは分かるけど、これで守り切れるの?」
その言葉に、涛牙は言い返せなかった。
一つの油断が生死を分けるホラーとの戦いで、自分が死にかけたのは事実だ。
これまで倒してきたホラーは、半ば不意打ちで主導権を握った上で仕留めてきた。正面からホラーとかち合って常勝出来るほどには、涛牙はまだ強くない。
その沈黙に肩をすくめて、巳鈴は言う。
「まあ、より一層の修練に励みなさいな」
言うと巳鈴は踵を返す。緋柳もフン、と鼻を鳴らすと涛牙に言い捨てる。
「大体、守るってんならもちっと傍にいてやりゃいいだろ。それを遠間から監視なんぞ。なんだ、薄着の美人は目の毒だ~てか?」
「ッ……」
その軽口にカッとなりながらも、涛牙は沈黙を返す。
(あ。マジ?)
冗談のつもりだった緋柳はその反応で色々と察した。これは、深入りすべきじゃなさそうだ。
「ま、まぁ頑張れや若造」
言いおいて、緋柳も巳鈴に続いて立ち去った。
日の出前。夜空が白み始めるころ。
美森は部屋の椅子に腰かけ、夜が明ける様子をじっと見ていた。
と。
「……東郷さん?」
不意に呼びかけられて振り向くと、寝ぼけ眼の友奈が傍に立っていた。
「友奈ちゃん。起こしちゃった?」
「ううん。何となく目が覚めちゃって」
そういって友奈も美森の向かいの椅子に座る。と、ふと気づいた。美森の手には使い古したリボンが握られている。
「肌身離さず、だね。そのリボン」
そのリボンが、いつも美森の長く美しい髪を結わえているものだと、友奈は知っている。
「ええ。私が、記憶を無くす事故に遭った時に握っていたものだって」
その言葉に、友奈は少し驚いた。
美森が事故に遭い、足の自由と2年ほどの記憶を無くしていることは、友奈も聞いている。だがリボンもその事故に関わっているとは思っていなかった。
「誰のものか分からないけど……これはとても大切なもの。そんな気がして」
だから、使い古しても新しいものに変える気になれなかったのだと美森は言う。
「そうだったんだ……」
そうして2人、海を眺めて。
「――戦いは、終わったのよね」
不意に、美森は呟いた。
「バーテックスの名前は、12星座になぞらえられていたわ。でも、星座って他にもあるでしょ?」
「あ~うん。わたしも詳しくないけど……」
困ったように言いながら、友奈も美森が言いたいことを察した。
「……本当に、終わったのかな……」
そう呟いた美森に、友奈はそっと立ち上がると背中から抱き留めた。
「大丈夫。もう戦いは終わったんだよ。ほら、勇者システムが入ったスマホは大赦に渡してるんだし」
「それは、そうだけど」
「なら、変に考え込んでもしょうがないよ。わたしたちには分からない事はいっぱいあるんだし」
「――そうね。確かに友奈ちゃんの言うとおりね。一人で考え込みすぎたかも」
「アハハ。わたしはあまり考え込まないから、東郷さんがいると助かるけどね」
「もう。友奈ちゃんったら」
他の部員たちを起こさないように小声で笑いながら、2人は明るくなる空を見やった。
きっと今日も快晴。楽しい夏はまだまだ続くだろう。
かくしてゆゆゆ夏イベントは終了。
ここからは世界の真実が顔を見せる不穏な展開になっていきますよ~。
尚、今回出てきたオリ騎士ですが、今後顔を見せる予定は実はありません。