結城 友奈は勇者である 神の揺り籠   作:ヴィルオルフ

28 / 46
空模様が雨がちな時期になりましたね。
ただ、梅雨というには「雨の一日」感がない感じがしますね、スコールよろしくザッと降る感じで。

ジメジメした空気って、なんか憂鬱になりますね。


第27話「ラッシング・ダスト(群れ為す脅威)」

 地平の彼方から迫る、七色の花吹雪。それが通り過ぎる一瞬、瞼を閉じていた友奈が目を開き直すと、そこは色彩に満ちた樹海となっていた。

 ある種見慣れたその風景。だが、そこにいるはずのない人影があった。

 涛牙、海潮、そして黒尽くめの剣士、久那牙。

 勇者しか入れないはずの世界に割り込んできた3人。よく見ればその足元、光で編まれた陣の内側は樹海の地面ではなく、アスファルトとなっていた。

「……………」

 誰かが飲んだ固唾。それが合図になったように光の陣がほどけ、その場所も樹海と変わる。その上にいた者たちは、樹海に残したままで。

「これが、樹海か」

 反射的に、海潮が周囲の様子を視線で探る。その刹那に、久那牙は納めていた刃を抜き放っていた。

 刃の届く距離ではない。だが、すでに久那牙の斬撃は刃が届かずとも剣圧だけで相応の切れ味を宿す。

 鞘の中で刀身に込められていた魔導力を同時に解き放った居合抜き。その一閃は突風と化してその場にいた全員に襲い掛かる。

「くっ」

「きゃあ?!」

 咄嗟に目を庇って手をかざしながら、涛牙は不意打ちに対して全霊での迎撃態勢を取り――結果として久那牙の思惑通りになった。

 土煙が収まる時には、久那牙はすでに姿を消していた。

「……いない?」

 警戒を解かずに周囲の気配を探るが、感じ取れる範囲にはもう久那牙の、背筋を冷やすような気配は感じない。

「――壁の方へ向かったな」

 同じく警戒しながら呟いた海潮に頷き返して、涛牙は剣を納めた。

 勇者が使うスマホから響く警報。それが意味するのはバーテックスの襲来だ。勇者の力を取り込むことが出来る久那牙ならば、勇者の力で撃退出来るバーテックスの力もまた取り込めるだろう。

 いずれにしても、久那牙がどちらに向かったのか見当をつけようとバーテックスの姿を探す涛牙の耳に、呆けたような声が届いた。

「なに、これ」

 それは、スマホの画面を見ていた夏凛から洩れた呻き。

 何が起きたのかを確認しようと勇者システムのマップ機能を目にして、夏凛は自分の目を疑った。 

 海を示しているはずの青い場所に、赤い領域がじわじわと広がっていく。そしてその赤い範囲には名前が付けられていた。

『星屑』。

 その赤いマークは、これまでは12星座の名を冠するバーテックスに付けられていたもの。ならばこの『星屑』とやらもバーテックスで――それが、マップ全体を覆うほどに神樹の結界内に入り込んでいるという事。

「そんな……なんで」

 悪夢でも見たように夏凛が呻く。一方、友奈も同じようにマップを見て、別の事に気づく。

 樹海でも大きく目立つ四国を囲う壁。その壁の表示の上に、青いマークがあった。そのマークが示しているのは。

「東郷さんっ?!」

 ここにいない美森が、何故か壁の上にいる。しかも美森のすぐそばに星屑が入り込んでいるらしい穴もある。

「東郷さんが、囲まれちゃう!」

 言うや友奈は勇者に変身。止める間もなく跳び出していく。

「あ。ちょ、友奈?!待ちなさい!」

 正体不明の敵のど真ん中に突っ込んでいく友奈の後を追って、夏凛もまた跳びだそうとする。その夏凛に涛牙は一つ声を掛けた。

「三好。久那牙を見たら迷わず逃げろ」

「……わかったわよ」

 迂闊にやりあえばどうなるかは身に染みている。苦い顔をしながら、夏凛は友奈の後を追って飛び出した。

「ではバーテックスは勇者様に任せ、久那牙を追うか」

 槍を担いで歩き出す海潮に、2体の狼狗が付き従う。祖父の言葉に頷いて涛牙も樹海のどこかに――おそらくはバーテックスを狙って壁の方に、だろう――姿をくらました久那牙を探そうとして、

「え?」

 戸惑った風の声に、ふと振り返る。

 すでに勇者装束に身を纏った樹が不安と疑問が混ざった顔で、スマホをタップし続ける風を見る。未だ、私服から変わっていない風を。大赦のやり方がどれだけ気にくわなかろうと、ここは樹海、勇者たちの戦場だ。そこで無防備を晒すというのはあり得ないことだ。

「……犬吠埼?」

 涛牙が声を掛けるが、風は構う余裕もなくスマホの画面を叩き続ける。だが、どれだけ必死になってもスマホからはエラー音が鳴るばかり。

「なんで――なんでよっ?!」

 その画面には、勇者システムからの警告文が表示され続けている。

『勇者の精神状態が安定しないため、神樹との霊的接続を生成出来ません』

 それは、風が勇者として戦えないという宣告だった。 

 

「この、このっ、このぉっ!?」

 どれだけ必死にボタンを押しても勇者に変身できず、エラーが出続ける。それはつまり、風の闘志が折れてしまった事を意味している。

(無理もないか)

 その必死で――しかしその奥にある怯えと不安を隠す事が出来ていない表情を見て、涛牙は思う。

 世界のため、人類のためと大義を掲げた大赦。その正しさを信じるからこそ、風は勇者の御役目に向かうことが出来た。

 だが、その大赦が裏で勇者たちに幾つもの隠し事を重ね、その果てに風は怒りに身を任せて荒れ狂った。仲間である夏凛と切り結ぶほどに。

 友奈と樹が追いつき、どうにかその怒りを抑え宥めたところで、今度はその身に本当の傷を負わされた。急所を外さなければ命にさえ届きかねない、傷。

 一時に多くの事が起こりすぎて、風の心は未だ混乱のただなかだ。勇者として御役目に向かえるほどに安定するには、本来なら相応の時間が必要だっただろう。

 そこに突如として発生した緊急事態。慌てて勇者になろうとしてエラーが出て、更に心が千々に乱れてしまう悪循環に風は陥っていた。

「……放っておくわけにはいかんな。涛牙、貴様は残って守れ」

 遂に膝から崩れ落ちた風を目にして、海潮は静かに涛牙に指示する。言い返そうと向き直る涛牙に、海潮は不敵な笑みを返した。

「けど」

「お前、儂より強いか?」

 単純なその問いへの答えは、やはり単純。

「……じいちゃんのほうが、ずっと強い」

 唇を噛んで答えた涛牙に頷き返し、海潮は狼狗を従えて樹海の奥への歩を進めだす。

「彼女らを守れ。バーテックスを蹴散らすよりよほど我らの勤めだろうさ」

「――わかったよ、久那牙も譲る」

 不満げに返す涛牙に、海潮は苦笑した。

「奴は後回し、まずは世界と人を守るのが我らにとっても筋というものだ。――もう少し、心を落ち着けろ」

 言って、駆け出した海潮と狼狗の姿は、瞬く間に見えなくなった。

 その背中にしばしふくれっ面を向けてから、一つ深呼吸をして、涛牙は改めて風の方へ振り向いた。

 呆然とした表情で座り込んだ風の姿は、普段の快活な気配との反動もあって、惨めにさえ見える。樹が肩をゆすっているが、自失した瞳は焦点を結ばず、ただ虚ろに蹲るだけだ。

 反応を返さぬ風に樹の表情も切羽詰まっているが、涛牙が近づいてきたのに気づいて顔を上げる。

「犬吠埼を隠せる場所がない。ここで迎え撃つ」

 告げられて樹の顔が怯えに歪むが、涛牙にしても他の手がない。魔導筆と魔導札を取り出し、法術を発動させる。光の粒となった魔導札がフワリと風を囲むように広がり、半透明のドームを作り出した。

「?」

「隠れ身と防御の結界だ。……無いよりマシ、程度だが」

 首を傾げた樹に軽く説明する。隠れ身は人間なら気づかれることはなくなり、防御結界はホラーを押し退ける程度の効果はある。

 逆に言えばその程度。バーテックスの攻撃をどこまで防げるかは分からず、隠れ身もバーテックスがどう周囲を把握しているか分からない以上気休めと見るべきだ。

「手短に説明する。バーテックスは人間を襲う。俺が前に出てひきつけるからお前が仕留めろ」

「!」

 突然の説明に慌てふためいた様子を見せる樹だが、構わず涛牙は言葉を続けた。

「無理でもやらなければ喰われるだけだ。犬吠埼も、お前も、神樹も」

 その言葉に身体を硬くして。しかし、一度深呼吸をすると腹をくくったかおずおずと頷いた。

 その様子に頷き返して、涛牙が前に出る。スラリと剣を抜き放ち、軽く腰を落とす。

「犬吠埼は任せる」

 その言葉と共に、不意に樹海の陰から白い異形が現れた。

 

 ソレは、敢えて言うなら足のない昆虫、というのが近いだろうか?

 サイズはワゴン車より一回りほど大きい。全身は大きな頭とつながった胴体で出来ていて、頭部はそのほとんどを口が占め、その口の両横に十字のようなパーツが目のように備わっている。

 これまで戦ってきたバーテックスとはまるで違う生物めいた、しかし致命的に生命とはズレた怪物。それが。

(これが、星屑……!)

 樹が心中で声を上げ、同時に星屑が樹に目を止め。

「――オォッ!」

 同時に涛牙の斬撃が星屑を両断する。

 数10メートルはあったはずの距離を一息で詰めて放った渾身の一振り。魔導力を込めて放ったその一撃は剣身以上の斬撃となって星屑を斬り伏せる。

 両断された星屑が光の粒子となって霧散する。その様子は、樹がこれまで戦ってきたバーテックスと同様だ。

(アレも、やっぱりバーテックスなんだ)

 納得と同時、背筋が冷たくなる。勇者アプリのマップ機能、その画面のほとんどを赤く染め上げたのがこの星屑ならば。

(星屑が――バーテックスがたくさんいるんだ……)

 その予想の通り、霧散した星屑の向こうから更に多数の星屑が姿を見せる。

 

 涛牙の姿を認めた群れが揃って歯を打ち鳴らし、そのうちの一体が突進してくる。

 その大きさからは想像出来ない速さ。だが、噛み合わせた歯は涛牙を捉えることは出来なかった。

 激突の一瞬前、涛牙は星屑をヒラリと跳び越えた。のみならず宙で身体を捻り、回転の勢いのままに星屑を数度斬りつける。

(……ダメか)

 だが、着地した涛牙は苦い顔をする。確かに星屑の身体に切り傷がついた。だが、その傷はユルリと修復されていく。

(両断しないと、俺では仕留めきれないか)

 元よりバーテックスには通常の武器は通じない。両断しきれば倒せるというだけでも御の字だが、多数を相手取っていては渾身の一撃はそうそう打ち込める余裕がない。

 事実、星屑の群れの中に着地した涛牙めがけて他の星屑たちが前後左右から突っ込んでくる。

 その突進に、涛牙は一度深く息を吸い、逆に星屑に向かって踏み込む。

 星屑同士が衝突しないように空けていた隙間。星屑自身のサイズもあってその隙間は、決して小さいものではない。そしてその隙間を突くことが、涛牙には出来た。

 星屑の身体に触れるか否か。その紙一重に己の身を滑り込ませ、星屑の攻撃をかわす。星屑の攻撃方法は顔の正面にある口による噛みつきのみ。正面にさえ立たなければ脅威はない。

 すり抜けた群れの最後の一体にはすれ違いざまに掌底を打ち込み――貼り付けた魔導札を更に圧し込む。炸裂した魔導力が星屑の体躯を突き飛ばし、涛牙に攻撃をよけられた他の星屑にぶち当たる。

 そうして生まれた猶予に、涛牙は取り出していたもう1枚の魔導札を剣で突き刺した。

「灯火――纏装!」

 カードに込められた術が発動し、剣身が白く燃え上がる。死角からの星屑の突撃を身をよじってかわすと同時、おかえしとばかりに斬りつける。

 やはり両断には至らぬ斬撃。だが。

「いけるな」

 焼かれたせいか治らない傷と、動きを鈍らせた星屑を見て小さく呟き、更に数度燃える剣で斬りつける。

 星屑は悲鳴を上げるようなことはない。だが、傷つけられた星屑はたじろぐように涛牙から離れた。その様子を見ていたのか、他の星屑たちも途端に動きを止める。

 だが、その停滞は涛牙にすれば隙でしかない。

 戸惑ったように動きを止める星屑の群れに、先ほどよりもなお速く斬り込む。

 すれ違いざまに薙ぎ、地を這うように身をかがめながら星屑の腹を裂き、前方宙返りと共に斬りつけつつ蹴りこんで地面にぶつける。

 燃える刃の一撃は星屑にとって致命傷ではない。だが、治らぬ傷を与えられて星屑たちの動きは固くなっていく。

 先ほどと同様に涛牙がジャンプ斬りから着地しても、星屑たちは突進しない。どころか距離を取る様に後退していく。まるで何かに怯えたように。

 そうして距離が離れれば、涛牙が次の手段を取るだけの猶予も生まれる。

 懐から魔導筆を取り出し、力を込める。

「索縄よ!」

 吠えれば魔導筆から魔導力の紐が伸びる。その一端を剣の柄尻と結びつけると、涛牙は剣を投げ放った。

 燃える剣が星屑の身体に突き立ち、その身を焼く。だが武器を無くしたのを好機と見た星屑が涛牙に襲い掛かろうとして。

「――おおっ!」

 魔導力の紐を引っ張れば、星屑の身体から剣が抜ける。そのまま紐を握る腕を縦横に振り回せば、それはさながら先端が刃で出来た鞭。宙を跳ね踊る刃が星屑たちの身体を焼き刻む。

 もちろん、その攻撃は必殺には程遠い。治らないといっても星屑の身体からすればそのダメージは微々たるもの。だが、だからといって迂闊に近づいていいものか。

 そんな星屑の逡巡を感じて、涛牙は一度剣を手元に戻すと、今度は上空へと投げ放つ。

 放たれた切っ先は、ちょうど涛牙をスルーして先に進もうとした一体の星屑に突き刺さる。思いもよらぬ攻撃を受けて、上空にいた星屑が身じろぎする。

 同時に涛牙が高く空へと飛び上がる。その急な動きを、ある星屑は慌ててその後を追いかけようと飛び上がり、またある星屑は呆気に取られたようにただ地上近くから見上げる。

 そこへ。

「樹!」

 涛牙の声に応じて、トドメ役の樹の攻撃が宙を切り払う。放たれたワイヤーの斬撃は、涛牙しか見えていなかった地上付近にいた星屑を寸断していった。

(あれ?すっごく脆い?)

 これまで戦ってきたバーテックスと遜色ない硬さと思っていた樹は、その手ごたえの軽さに驚きながらも更にワイヤーを操り星屑を切り裂いていく。

 一方、涛牙を追って飛び立った星屑たちはほどなく涛牙に追いつこうとしていた。当然だ、人間は空を飛べない。高く跳ねても後は落ちるのみ。

 だから涛牙も、魔導紐に込めた自身の魔導力に命じる。

(縮め)

 瞬間、魔導紐が縮まり、涛牙の身体を更なる高み――剣を突き立てられた星屑まで押し上げる。上空にいた星屑を足場代わりに、涛牙は、星屑の腹の上に立った。頭を下に、重力を無視して。

 更には剣から手を離し、自身の頭上に放った魔導札を魔導筆でなぞりあげていく。

 魔導札が燃え上がり、その炎が鏃と化す。8つの鏃を迫る星屑たちに向け、涛牙が詠唱と共に魔導筆を振るった。

「灼刃、穿牙!」

 刹那、放たれた鏃が迫る星屑たちに突き刺さり――内側から爆発する。涛牙が使うには隙が大きいものの、素体ホラーならこの一撃で討滅可能な程度の威力がある法術だ。

 体内から炸裂した法術にさすがの星屑たちも重篤なダメージを受けて動きが止まる。そんな星屑の合間を縫って、足場にした星屑から剣を抜き取った涛牙が地上へ向けて跳ぶ。傷ついた体躯で尚涛牙を追おうとした星屑たちは、やはり涛牙の揮う刃の鞭で接近を阻まれ。

(やあー!)

 既に地上の星屑を一掃していた樹の追撃であっさりと屠られていく。

 

 こうして、星屑の第一陣はさほどの時間もかからず殲滅されたのだった。

 

 星屑の姿が見えなくなったことに、樹はホゥ、と大きく息をついた。

 一度の攻撃で容易く撃破出来る相手、それも突入した涛牙へ星屑たちが集中したことで樹の方には近寄る事もなかった。それでも、たくさんの敵を相手にして涛牙にも注意しながら攻撃するのは、樹にとってはかなり負担だった。

「よくやった」

 涛牙も星屑がいなくなったことで一度樹の元まで戻ってきた。言葉少なにほめる涛牙は、星屑の群れの中に突入したというのにかすり傷の一つも負っていない。

(……何であの高さから飛び降りて平気なんだろう?)

 さっき涛牙が足場にした星屑は、真上を見るくらいには見上げないとならない高さだったのだが。

 そんな事を樹が訝しむ間に、涛牙は風の姿を見ていた。結界の中でうずくまったままの風の姿があった。

 体育座りの姿勢で、顔を膝に埋めたその様子は、復調には程遠い。

「……星屑がこっちを狙ううちは、神樹に向かわれることもないか?」

 風の様子に困ったように頬を掻きながら涛牙がボソリと呟く。樹海の奥、神樹に星屑の群れが向かえば手に負えないのは事実だ。基本的には人間を襲う性質のバーテックスなら、ここで迎え撃ち続ければ神樹には向かわれないだろう。

(もっとも、長くは保たないか)

 ここにいる人間を襲うよりも神樹に向かう方が良いと星屑が判断すればそこで破綻する思惑だ。

 それ以前に、延々と襲われ続ければいずれ涛牙は体力が、樹は集中力が尽きる。そうなれば、やはり終わりだ。

 そんな涛牙の考えを察したのか、樹の顔色は悪い。その泣きそうな表情に苦笑いを返して、涛牙は声を張り上げる。この場を維持する最大戦力は、勇者・犬吠埼 樹に他ならない。

「今のでやり方は分かったな?後は樹海が解除されるまで同じように続けるぞ」

 言われて樹が自身の頬をはたいて顔を引き締める様子を見て、本当に芯が強い、と涛牙は改めて思い、

『――涛牙、上だ!』

 胸元から響いた警告に、ハッ、と空を仰ぎ見る。樹は一瞬今の声が何なのかと目をパチクリさせて、しかし緊迫の気配を見せた涛牙を見て、自分も空を見る。

 いつの間にか、新たな星屑の群れが現れていた。

 群れがいるのは数10メートルほどの上空。樹ならともかく涛牙にはまともに手出しが出来ない高さだ。

(無視していくつもりか?!)

 あっさりとこちらの狙いが潰されたことに涛牙が息を呑むのと、上空の星屑たちが動き出したのが同時。

「?!」

 突如として共食いを始めた星屑に、樹が表情を歪める。声が出たなら、「ヒッ?!」とでも悲鳴が漏れたかもしれない。

「ディジェル、あれは?」

 涛牙も咄嗟には何が起きたのか分からず、胸元の魔導具に呼びかける。涛牙の疑問に、ディジェルが答える。

『聞いてはいるだろ?バーテックスの融合強化の話』

「――あれが、か」

 言われて思い出し、涛牙はギリ、と奥歯を噛みしめた。

 その視線の先で、お互いを喰らい合っていた星屑たちはやがて2つの球体となり、ユルリと高度をおろしていく。それなりの数の星屑が喰らい合って生まれたはずのその球体は、しかしサイズ自体は星屑とそう変わらない。

 睨みつける涛牙と足を竦ませる樹の目の高さまで下りてくると、不意に球体の表面に星屑のソレと似た目が浮かび上がる。だが星屑の時は顔面のほとんどを口が占めていたが、今度は口は現れない。

 浮かび上がった目をギョロギョロと動かし、涛牙達を見つけると、球体の一部が波打ち、更に形が変わる。

 球体から不意に伸びた2本の触手。ユラユラと動くうちにその先端は形を変えた。一本は鋭く尖り槍の穂先のようになり、もう一本は円形の板に形を変える。

 それらを球体の身体の前に構えれば、それは槍と盾を構えたような状態だ。さながらそれは、バーテックスの『兵士(ソルジャー)』。

「チイッ……」

 涛牙が苦み走った舌打ちを零す。涛牙が知る限り、融合強化されたバーテックスの力は融合前を当然上回る。

 そんな涛牙の焦りを感じ取ったか、ユラユラと動かしていた槍の穂先がふと動きを止め、次の瞬間、残像を残して放たれた。




春に始まったアニメもあっという間に最終回を迎える時期になりましたねぇ。
個人的に、ゴジラSPは当たりだった気がします。毎回ワクワクしながら見てました。
サンボルは、これまでのシリーズと比べると1話ごとのバトルが薄味だったかな?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。