結城 友奈は勇者である 神の揺り籠   作:ヴィルオルフ

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どうも。今月の更新です。
実は今回の話を書いている中で、「レオが火球のままだったら、涛牙が何もしなくても普通に勇者ズで倒せね?」と気づき、前回の話に一部追記をしました。後だしじゃんけんですいませんが、興味があれば読んでみてください。

話は変わりますが、5周年を迎えたゆゆゆいが10月で終了となるようです。
本筋のストーリーをあまり進めていなかったのですが、どうやらストーリーを読むのはフリーになったようなので、花結いの物語を急いで読み進めたいですね。
いや~、ステージクリアしないと読めない状態が続くとしたらどうしようと思いました。


第37話「サン・セット(太陽を墜とせ)」

 神樹へ迫る太陽と、それを阻もうと咲き誇る花弁。

 コートを風に煽られながら、神樹を背にして涛牙はその様子を見ていた。

「……………」

 ギリ、と軋む音を出したのは、食いしばった奥歯か、握り締めた剣の柄か。魔戒騎士では本来届かない次元の力の激突に、自身の力の不足を見せつけられる。

 それでも、涛牙はこの場を投げ出さない。投げ出せない。眼前に浮かべた魔導筆は、無力を理由に使命を疎かにすることを戒める。

 その魔導筆は、ひどく年季の入った物だった。軸に刻まれた手指の跡は、手入れをしながら長い年月振るわれてきた証で――この魔導筆は涛牙の物ではない。

 これは、海潮から涛牙に託された物だ。世界を――人を守る、そのために。

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 ゴウ、と刃が風を斬り、鋼の衝突音が樹海に響く。

 海潮と2体の狼狗(ローグ)、それに対する久那牙が駆け、跳ね、飛び交い、4つの影がぶつかり合う。

 飛び掛かる狼狗(ローグ)の爪を黒炎刀が切り払い、死角から放たれる狼狗(ローグ)の砲撃は大きく跳び退る。その着地間際を狙いすまして、鎧の隙間目掛けて戦旗の穂先が突き込まれる。

 キバの鎧は全身を覆うが、関節部分を始めとして隙間はある。隙間を埋めるように霊獣の革が用いられているが、強度は当然金属部分に大きく劣る。互いに動き回る剣戟の最中に、海潮は当たり前のようにその隙間を突いてきた。

 久那牙もそれをただ見過ごすわけもない。聊か強引に身体を捻って金属部分で穂先を受ける。隙間を抉られる事は避けたが、突かれた衝撃までは相殺できない。

 強引な防御故に崩れる態勢を見越して狼狗(ローグ)が死角から飛び掛かるが、それは久那牙の予想にあった。突かれた勢いに敢えて堪えず、狼狗(ローグ)の爪を紙一重でかわし、返す刃を狼狗(ローグ)の体躯に叩き込む。歪んだ体躯を更に軋ませて吹き飛ぶ狼狗(ローグ)を一瞥もせず、更に続けて切っ先を宙で躍らせれば、海潮が放っていた光弾の群れが切り払われる。

 不意打ちの術を阻まれて。しかし海潮もそれは予想の裡。戦旗を翻して久那牙に追撃をかける。突き、薙ぎ、払うごとに旗が翻り、発動した法術が或いは光弾、或いは縛縄、或いは海潮をテレポートさせて久那牙を攻め立て。

 久那牙もその全てを払い、弾き、先読みして切り結ぶ。

 ギシリ、と刀と戦旗が鍔迫り合うや、両者身体を翻しての回し蹴り。久那牙は後方回転の踵蹴りで首筋を狙い、海潮の地を這う足払いは踝を襲う。

 両者空振りに終わるが、そこからさらに斬撃、或いは薙ぎの追撃が走り、互いの攻め手を墜とし合う。

 久那牙の、体力と勢い、そして鎧の防御力を活かした攻め。

 海潮の、経験と手数、そして2体の狼狗(ローグ)を活かした攻め。

 激突する両者はちょうど拮抗していた。

 だが。

「ぬうっ?!」

 切り結んでいた海潮が、遂に大きく跳ね返される。

 狼狗(ローグ)を合わせて3体がかりの攻めを迎撃し続けるためには切っ先の速さが必要であり、それ故久那牙は揮う一太刀に力を込める余裕はない――はずだった。

 だが、その道理を覆し、海潮の薙ぎに合わせた剣閃は、片手斬りながら必殺を期すだけの力が込められていた。絶え間なく打ち合いながらその中で少しずつ力を蓄えていた、久那牙の一手だ。

 大きく後退させられた海潮に、狼狗(ローグ)の1体がフォロー役として従いもう1体が飛び掛かるが、3人がかりで抑え込めていた久那牙を狼狗(ローグ)1体、それも万全でない状態で邪魔できるはずもない。飛び掛かってきた狼狗(ローグ)を、返す刃で正面から捉え、両断する。

 発声機能のない狼狗(ローグ)に、断末魔の悲鳴はない。ただ縦一文字に両断された体躯が、力なく樹海の大地に転がる。 

「これで――」

 狼狗(ローグ)が1体失われれば、海潮と久那牙の間の拮抗はもうない。あとは海潮がどれほど凌げるか、時間の問題だ。

「終わりだ」

 そして久那牙に時間を掛けるつもりはない。この戦いの後には、広い樹海のどこにいるか分からない勇者とバーテックスを探さなければならないのだから。

 一跳びで迫る久那牙に、海潮もさすがに追い詰められたか。法術で煙幕を張りその中に身を隠す。

「悪あがきを」

 毒づきはしたが、久那牙に焦りはない。姿が見えずとも、気配と、煙の流れを見れば、煙幕の中の動きを読むのは――不可能ではない。

 事実。

 横合いに振るった黒炎刀は、ちょうど煙幕を突き破って飛び掛かってきた狼狗(ローグ)を捉え、切り裂いた。同時、その逆サイドから海潮が突進してくる。

「隙を突いたのだろうが、甘い」

 強引にでも一撃を加えようとしたのか、両の戦旗を大きく振りかぶった海潮の態勢は常より隙が大きかった。そんな隙だらけの胴に、久那牙は滑らかに切っ先を突き出す。

 振り下ろそうとした戦旗を防御に回そうにももう遅い。

 切っ先は、海潮の腹に突き立った。

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 時はしばし遡る。

 樹海を焼き払うような爆発。

 炸裂の寸前に異変を察して無理やりに障壁を張ったが、それだけならレオの収束火球の前には薄紙程度にしかならない。

「ぐ、あ――」

 自身にのしかかっていた狼狗(ローグ)をどかした涛牙は、障壁と狼狗(ローグ)を越えて尚全身を蝕む痛みに呻いた。

 見れば狼狗(ローグ)はその全身が焼け溶けている。ソウルメタルとまでは行かずとも人界の金属とは比べ物にならない強度を持つ魔戒獣の装甲が余波でこれとは。つくづくバーテックスの強大さを思い知る。

「無事か、涛牙」

 かけられた声に振り仰げば、同じように爆発を逃れた海潮がいた。傍らの狼狗(ローグ)のダメージも同程度だが、海潮の動きには怪我を負ったような強張りはない。

「……どうにか。っつう」

 全身の痛みを感じながらも涛牙も立ち上がる。幸い、動けないようなダメージは涛牙も負わなかった。

「さっきのは?」

 海潮の問いに、涛牙は一度大きく呼吸をしてから答えた。

「多分、レオ・バーテックス。12体の対勇者級の中で最強、だったはず。強大な砲火力と、通常の勇者では傷つかない頑丈さを両立させたヤツだ」

 それを聞いて、海潮はしばし目を閉じて考えを巡らせた。

 涛牙が身体を動かして違和感を紛らわせる間、海潮は何をすべきかを考える。海潮が即断即決出来ないほどに事態は混迷を極めている。が。それでも方策を見出せるのが、海潮がベテランであることの証拠だ。

「涛牙」

 呼びかけられて。久那牙を追う事を考えていた涛牙の眼前に、海潮は魔導筆を差し出した。

「?これは?」

「これを使い、勇者様を助けろ」

「……なにを?!」

 何を言っているのか。そう言い返そうとして、しかし海潮の眼光に涛牙は口を噤んだ。

「久那牙は確かに討伐する敵だが、それは今日でなくてもいい。だが、明日を迎えるには、バーテックスを倒さねば」

「、けど!」

「涛牙。我らが為さねばならないことは何か」

 問われて。涛牙は唇を噛みしめて答えた。

「……ホラーを、討つこと」

「何のために?」

「……人を、世界を。ホラーから守るために」

「そうだ。ならば今やらなければならないことが何か。分かるな」

 その声に。涛牙は躊躇いながらも頷いた。差し出された魔導筆を受け取る。

「?何か結んで……」

 そこで、筆の軸に何か結わえられていることに気づいた。触れてみて、それが魔戒札とは分かったが、一体何の術が――。

『海潮、お前』

 察したのはディジェルだった。これでも長く海潮と付き合いのある魔導具だ。海潮がやりそうなことは察しがつく。

「やらなきゃならんことは、やってみせねばな」

 声に込められた感情を察して。涛牙もハッと海潮を見返した。

「じいちゃん。まさか」

 大きく目を見開いた涛牙に海潮が返したのは、どこか困ったような苦笑い。

「いつかその時は来るものだ。覚悟ならこの道を選んだ時にしている。それは、お前もそうだろう、涛牙」

「けど……っ」

「――まさか、人ではなく世界を護るとは思わなんだが。まあ、悪い気分でもないな」

 フ、と笑う。それは、全てを決めた者の微笑だ。

「涛牙。儂の孫よ。我ら魔戒士の使命を果たせ。それが、何よりも為すべきことだ」

 言われて、涛牙はしばし顔を伏せて。

「……わかったよ、じいちゃん」

 絞り出すように言うと、泣き出しそうになった顔を上げる。それでも涙を零さないのは、せめてもの意地か。

「行け、涛牙!」

 言われて涛牙は聳える神樹を目印に走り出し。

 その背を名残惜しむように眺めてから、海潮もまた樹海を走り出した。

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 黒炎刀に貫かれた海潮から、久那牙は確かに手ごたえを感じた。

 金属を削り抉るような手ごたえを。

「――なに?」

 海潮を刺したならばあり得ない手ごたえに、久那牙の動きと思考が一瞬止まる。

 それが、隙だった。

 背後から回された腕が首元を締め上げ、同じく戦旗の柄が膝関節を固めるように差し込まれる。

「ぬ、あ!?」

 視線だけで探れば、それは海潮の仕業だった。袈裟掛けに斬られた傷から血を零しながら、しかし凄絶な笑みで、キバの鎧ごと久那牙の身動きを封じていた。

 では、刺し貫いた海潮は?

 見直せば、黒炎刀に貫かれた海潮の姿が揺らぎ、解けた幻術の下から現れるのは、口から胴体をまっすぐに貫かれた狼狗(ローグ)の姿。

(幻術で……互いの姿を入れ替えた?!)

 煙幕で姿が見えなくなったあの瞬間だろう。気配と煙の流れは読めても、その向こうで何をしているかは分からない。姿を入れ替える術くらい、海潮は容易く使うだろう。それを察知出来なかったのは、あの煙幕に何がしかジャミングの仕掛けがあったのか。

 そもそも、煙幕に久那牙を巻き込まなかったのがおかしい。海潮は久那牙が生まれる前から戦ってきたベテランだ。我が身を覆っただけの煙幕では攪乱しきれないことは承知していたはず。

 そうして姿を入れ替えて。

 狼狗(ローグ)姿の海潮が先に飛び出し、後から海潮姿の狼狗(ローグ)が飛び掛かる。なるほど、狼狗(ローグ)に次いで海潮を斬ったとあれば久那牙も張り詰めていた注意が緩むという物。まして背後からなら組み付くくらいはわけもない。

「だが……何のために?!」

 敢えて命を危険にさらすような手を、何故選んだ?

 疑問に、海潮は答えず関係のない事を口にした。

「ウ、グ……。貴様こそ、なぜどちらも必殺を避けた?」

 その問いに、久那牙が固まる。

 最初の狼狗(ローグ)(中身は海潮)の迎撃は、ともかく速さをこそ優先した。だから必殺には至らなかった。では、海潮(中身は狼狗(ローグ))は?心臓でも首でもなく、なぜ脇腹を突いたのか。

 それは。

「外道に堕ち、最強を目指すと嘯きながら……人を殺すことは避けたいか」

「……………」

 その一言に押し黙る。

 その沈黙をどう思ったか。フン、と鼻で笑い、海潮は腕に力を込めた。

「最後の一線だけは守るか。律儀と捉えるか、もっと手前で守れというべきか……っ」

 傷の痛みに呻きながら、海潮は久那牙を取り押さえる。

「即死でなくとも、その傷……。放置すれば命を落とすぞ、師よ!」

「案ずるな。貴様に殺されることはないさ」

「なに?」

 ひどく落ち着いた言葉に不穏を感じた久那牙の問いにかぶせるように、

「やれ!涛牙!」

 海潮が鋭く叫んだ。

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 ジリジリと太陽が迫り、涛牙の周囲も次第に熱を上げていく中。 

 不意に、魔導筆が震える。

『ッ涛牙!』

 時が来たことを察したディジェルが叫び、

「ウ、アアアアアア!」

 咆哮を上げて涛牙が魔戒剣を振るいハガネの鎧を纏うと、剣を左逆手に握り魔導筆を剣の柄に据えた。まるで、矢を弓に番えるように。

 否。それは紛れもなく矢を放つ構えだ。

 証拠に、膨れ上がった魔導力が剣の柄から溢れて弓の柄のように形を成し、魔導筆を包む魔導力は、魔導筆自体を鏃と為した矢と化す。

 これこそ、魔戒騎士と魔戒法師が協力して放つ、魔戒の奥義が一つ――

「――光矢、流星!!!」

 放たれた一撃はまさに流星の如く弧を描き、太陽へと着弾する。

 魔戒法師が己の武器を騎士に託し、魔戒騎士は法師の信に応え自身と筆に込められた法師の魔導力を束ね増幅させて必殺の一撃と為す。両者の信頼と絆があって初めて使える奥義、『光矢流星』。

 その威力は魔戒騎士や魔戒法師の扱う技の中でも最上級に属し、涛牙が放った『光矢流星』も友奈の勇者パンチに匹敵する威力を有する。

 

 その程度では、太陽と化したレオ・バーテックスには痛痒とならない。

 池に小石を落としたような波紋を残して、必殺のはずの『光矢流星』が霧散する。鏃として放たれた魔導筆は当然に砕け、軸に結ばれていた魔導札も弾ける。

 そして。

 

 一瞬視界が暗転し、次に久那牙の眼前にあったのは太陽の如き灼熱。 

「な、にいぃぃぃ?!」

 さしもの久那牙が絶叫する。

 これこそが、海潮が魔導筆と共に涛牙に託した、救世の一手。

 魔導筆に結わえられていた魔戒札は緊急時にすぐ使えるように細工が施されたもので、破ったり潰したりすれば事前に込めていた法術が発動するようになっていた。

 そして込められていた術は『引き寄せ』。事前に指定したものを術者の手元に転移させる術だ。

 レオ・バーテックスに当たり砕けることで発動した『引き寄せ』は、相手を自身が砕けたその場所に転移させる。そしてその対象は術を刻んだ海潮本人で――海潮に組み付かれていた久那牙もまた、その転移に巻き込まれたのだ。

 キバの鎧を纏った状態では転移のためのマーキングを弾かれる。だが、海潮自身の転移に巻き込むことは可能だった。

「さあ、たんと喰らえ」

 狼狽する久那牙の背に向けて言うと、海潮はキバの鎧の背中に掌を当てる。デスメタルの鎧に直で触れたことで掌が裂け血が噴き出すが、構わず。海潮はありったけの威力をキバの背中に叩き込んだ。

 当然、踏ん張る足場もない久那牙は正面に吹き飛び、灼熱の中に叩き込まれる。

 そして、キバの鎧が太陽を――レオ・バーテックスが変じた灼熱を喰らいだす。

 言うまでもないが、この太陽はあくまでレオ・バーテックスが姿を変えただけのもの。太陽の如き姿は、実のところバーテックスの力の塊でしかない。故に、バーテックスの“力”を無尽蔵に喰らうキバの鎧が放り込まれれば、太陽は揺らぎ、歪み、黒い鎧に少しずつ呑まれていく。

「グアアアアアアッ!!」

 灼熱に叩き込まれて、久那牙もたまらず苦悶の声を上げる。熱そのものも堪えるが、鎧になだれ込む“力”の奔流が鎧そのものは壊せずとも久那牙の肉体に大きな負荷を与えてくる。

 どうにかここから離れねば、と魔導力を放って態勢を変える久那牙に向けて、海潮は更に大技を放った。

 揮う戦旗の旗と穂先が方陣を描き、宙空に刻まれた陣が白く燃え上がる。その中心点の先、藻掻く久那牙に向けて、海潮は渾身の力で以て戦旗を投げ放った。

「緋鳥――炎陣!!!」

 方陣を突き抜けた戦旗が纏う白炎は鳥の姿を為し、その羽ばたきで更に加速。久那牙に激突するとその暗黒の鎧を更に太陽の中へと押し込んでいき、太陽は更にその形を崩していく。

 

 レオ・バーテックスが突然勢いを失った事は、死に物狂いで踏みとどまっていた美森たちも察した。

「圧が……」

 ギリギリで拮抗がやっとだった光の花弁が、いつしかレオ・バーテックスをじわじわと押し戻していく。

「全部――出し切れぇぇぇえええ!!!」

 風の叫びに呼応するように。満開装束から光を零しながら、4人の勇者が力を振り絞ってレオ・バーテックスを押し返す。

 それは、レオ・バーテックスの背後から迫る友奈にとっても助け船だった。美森たちが押し返す分、レオ・バーテックスの中心まで早く到達できる。

「う、おおおおおおおおお!!!」

 勇者の力をありったけ手甲に載せて、友奈は太陽の中へと突撃していく。

 

 レオ・バーテックスが変じた火球。その中はこれが紛い物と思えないほどに太陽そっくりだった。灼熱を宿す力が奔流となって荒れ狂い、中に飛び込んだ友奈に襲い掛かる。

 強固なはずの満開装束も、これほどの力に晒されることは想定していなかったのか。端の方から焼け焦げ、砕け、塵と化し。遂には背部から伸びた巨大なアームまでもが砕け、通常の勇者装束に戻ってしまう。

(それでも!何が何でもバーテックスを、倒すっ!)

 失われる装備を目にしながら、友奈が咄嗟に考えたのはそれだけだ。自分も含めて全員が限界なのだ、この機を逃せばそこで終わりだ。そんな結末、認めない!

 精霊バリアを全力で展開しながら灼熱の世界を進む友奈の前に、やがて目指したものが現れた。

 巨大な逆三角錐。

 バーテックスの心臓部にして唯一の急所。御霊。  

 もはや勇者装束さえ維持しきれず、光と散って私服へと戻っていく中で。

 それでも、桜色の手甲はまだ残っていた。

「と、ど、けぇぇぇぇぇぇぇ!」

 その拳を御霊にぶつける。

 

 瞬間。

 一瞬の静寂を挟んでレオ・バーテックスが極大の爆発を起こし、光が樹海に満ち溢れたのだった。




ようやく……。
ようやく、風暴走から続く連戦に区切りがつきました。見返してみたら実に10話もかけてたんですね。長かった……。
鈍足更新にお付き合い下さりありがとうございます。
ゆゆゆ第一章も大詰めです。
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