あれから何とかして家に着いた、と言いたいところだが、
『ここどこや?』
見知らぬバスケのコートの場所まで来てしまった。ほんとにここどこ。
「すみません」
『うぉぉおっ!?なんやオバケか?幽霊なら君はもう死んでいる(?)』
びっくりした!気配がまるでなかった……。やはりこいつ…出来る……!?と、まぁ悪ふざけは置いといて。
『で?なんの用?ウチに話しかけたってことはなんかあるっちゅーことやろ?』
「1on1してもらってもいいですか。」
俺も表情筋のこと言えないけどこいつもなかなか無表情だな。
『ええけど…ウチ強いで?』
冗談抜きにしても。
「いいんです。ぎゃくにその方がいいです」
1on1してるんだけどこの影うっすい名も知らない少年めっちゃバスケ下手くそなんだよなぁ。大丈夫なのか?ていうか同い年か?質問は山ほどあるけどとりあえずハンデとして俺は動いてないんだ。1歩も。なのにボールが取れない、となると究極的にバスケに向いてないかあるいは"パス専門の選手"かのどっちかだ。
この少年としては普通の選手でいたいのだろうがこう言っちゃなんだが向いていない。だがその影のうすさは武器になる。むしろもう自分でも気づいているんじゃないのか?だったらなんの為に?まぁいいか。どうせたたきつぶすだけだ。跡形もなく。
「深紅には、わからへんねん。
凡人の言葉が耳につきささる。彼の言葉は俺を深く傷つけもしたがそれ以上に俺を癒してくれたのは事実だったのだから。写真越しで見つめる目と目は交わることは無い。わかっている、わかっているんだけれど。
『っと、集中しなあかんよな?』
でも君バテてるし今日はこれくらいで帰ろうかな。ちょうど体もあったまって来たところだけど。
『残念やけど時間切れや』
結局1度も俺からボールを奪うことなくこのゲームは終了した。
「はぁ、はぁ、君の名前はなんですか?」
疲れ切った様子の君をみて笑って
『姫柊 深紅。あだ名はよくヒメって呼ばれてんで。君は?』
僕は黒子テツヤです。そう言った君は相変わらずの無表情だった。なんか、すっごいバスケ好きなんだろうなって感じ。
『高校生?どこの高校なん?』
「誠凛です。姫柊くんは?」
『誠凛かぁ、聞いたことあらへんなぁ。ウチ?ウチは桐皇やで。』
「…青峰くんといっしょ、ですね。」
あおみねぇ?知らんなぁ。
『ウチ日本一なるのが夢やねん。夢って言うより目標、やな。』
突然話し出した俺をじっと見つめる黒子くん。
『なんや、キセキの世代って騒がれとるやつらいるんやろ?ウチより強いんかなぁ。ウチを本気にさせれるやつ、いるんやろうか。』
黒子くんに話しているようで話してないんだけどね、これ。