Fate/spider-verse 亜種特異点ブルックリン 作:fake
────オーケー、じゃあ説明しよう。僕の名前はマイルズ・モラレス。放射性物質を浴びた蜘蛛に噛まれて以来三ヶ月、この世でたった一人のスパイダーマンさ……いやちょっと待って、今の訂正、厳密に言えば"この宇宙ではたった一人"の間違い。
何を言っているのか分からない? まあそれも仕方ない。僕だって、ほんの百日前までは自分がこんなことになるなんて思いやしなかった。
けど実際なってしまったものはしょうがない。とにかく僕はスパイダーマンになって、この町、ニューヨークを何度も、何度も救った──もちろん迷子の仔猫探しも含むよ? 町の平和を守ることにはなんら変わりはないからね──ティーンエイジャーとヒーローの両立は簡単じゃない。
けど僕はやり遂げて見せる。あの人との約束も勿論そうだけど、僕は知っているから。
──スパイダーマンは、僕一人じゃないってことを
ほら、そんなことを言ってる側から"彼女"から
────────────────────────
Fate/grand order 亜種特異点ブルックリン???
────────────────────────
「そんなこんなでまたよく分からない地点が発見されたのだよ! 藤丸君、マシュ君」
「「またですか」」
まるで朝の日課のように次げた彼女──ダ・ヴィンチちゃんに藤丸立香とマシュ・キリエライトは嘆息した。
人理を救うこの旅にはやけに遠回りなイベントが多いのだと。そして厄介なことに、そのイベントは時に残酷で、時に明るく、全く以て予想が付かない。
新宿とかSE.RA.PHみたいな緊張感溢れるものから、ルルハワのように文字通りよく分からないものまで落差は様々。
とりあえず共通しているのは、最終的には相当きついことになるということ、それだけだ。
「それでダ・ヴィンチちゃん、今回は一体どんな感じなの?」
くどくど言っていても仕方ないと右手で顔を押さえながら藤丸が問いかける。
厄介事なのは目に見えている、だがそれ以上に、対処が出来るのも自分達だけだと言うことはもっと目に見えている。
YesorYes、選択権なぞ無いのだ。
「素晴らしい順応だよ藤丸君、今回はちと厄介かもしれないねえ……フォーリナーとかそっちの類いかも知れない。何せ今回は新しい地点を発見したというよりも、これまでの観測で今まで何もなかったことが立証されている空間に突如として出現した訳だからね」
「何もなかった空間に……? ですがダ・ヴィンチちゃん、宇宙創世のビッグバンでも起こらない限り、無から有を産み出すのは不可能なのでは?」
「それが分からないところなのさ。ただ最近気になる事象があってね。最近カルデアの観測で、通常では有り得ない揺らぎが計測されていた」
マシュの問いにダ・ヴィンチちゃんが神妙に頷く。
既にこの時点で、つい数分前までの弛緩した空気は消えていた。
藤丸、マシュ、二人とも真剣な表情で観測図を指でスライドするダ・ヴィンチちゃんを見守る。
「ここだ。遡ること三ヶ月前になる。この波形が分かるだろう? 揺らぎは二回、そこまで大きなものじゃなく、定点観測にも何も異変がなかったから私も見逃していたんだけど……今じっくりと見返してみるとこの反応はとても興味深い」
好奇心が抑えられないとでも言うようにダ・ヴィンチちゃんがニヤリと笑う。
それはただ面白がっているとか、そんな浅いものではなく、大いなる壁を前にして自らの知を更に引き出さんという学者のそれだった。
「異なる宇宙、ああ、それは私みたいな探求者にとっちゃ夢のような話さ。この世界には無限の可能性があるわけだと、その数えきれない可能性が更に果てしなく拡がる訳だからね
この形は正にその集合体だ。昔気紛れに仮説を立てた事がある。異なる宇宙が衝突した時に生まれる余剰、素晴らしい。本来ならずっと見ていたい位さ……けどそういうわけにもいかない。
このパターンは相場が決まってる。早いとこ対処しないとそれこそビッグバンで皆仲良く虚無へサヨナラさ
さあ、藤丸君、マシュ君、君達はどうするかね?」
「全く、レオナルドも人使いが荒い。まあ様々な要因が考えられる以上、君の単独パスでもそれなりに動け、一癖も二癖もある連中と比べれば色々な状況に対応出来るという意味で私が選ばれるのは納得の行く話だがね」
「ありがとうエミヤ」
「ご同行感謝します、エミヤ先輩」
──ぶっちゃけこの空間にカルデアからまともなパスが通るとは思えない。何せこれは違う宇宙だ。行ってみないと何も分からない。という事で今回は通常の聖杯戦争システムを用いてサーヴァントと直接契約を結んでもらうしかない。
当然自前での供給になるから一人が限度だろう
頭を抱えたくなるような事実を告げられた藤丸とマシュが向かったのはモーニングの食器を片付ける音が響く食堂、お目当ては紅い外套をたなびかせる弓兵だった。
サーヴァントエミヤ、何が起こるか分からないと言う事には、当然補給も含まれる。
デミ・サーヴァントであるマシュはともかく、藤丸は普通の人間である。戦闘力だけではどうにもならないことがある。そう考えれば人選はそこまで難しい話ではなかった。
「確かにエミヤなら真っ向勝負も隠密もなんでも出来るし、何より色んな意味で君達のケアが出来るからね──二人とも、気を付けてね。動けるようになったら私もすぐ駆け付けるから」
エミヤが先程まで着けていたエプロンを脇に抱えながら、ブーディカは納得したようにそう言うと、藤丸とマシュの頭を心配そうに撫でる。
「はい! 頑張ります!」
照れくさそうに顔を赤らめたマシュがふんす!っと胸を張る。
藤丸はと言えば少し気恥ずかしいのか顔を背け"マスターはまだ思春期なのか?"と問い掛けるエミヤに"煩いなと"肩を叩いている。
確して生まれた即席チーム、藤丸、マシュ、エミヤの3人は身支度を整え、新たなる特異点へとレイシフトを行い──
──────
「なんで!? なんで初っぱなからエミヤいないの!? 出るまではあんなに頼りがいあったのに全部台無しだよ!!」
「フォーウ、フォフォウ!(だからいつも言っている、イケメン程肝心な時には役に立たないと!)」
「フォウさんは何時も事ながらいつの間に──いえ、それよりも落ちついてください先輩! やはりここは不安定なのかレイシフトも上手くいかなかったようですが、エミヤ先輩もそこまで遠くにいるわけではありません!
こちらへ高速で向かってくる気配を感じます! まずはとにかくこの場を切り抜けないと……!」
そこは大都会だった。天を覆う摩天楼の数々は世界有数の大都市を彷彿とさせる。
ダ・ヴィンチの言葉通り様々なものが入り交じっているが、原型が何かは判別が利く。
しかし、目下の問題はそこではない。この場にいたのは藤丸とマシュの二人……フォウを含めれば二人とも一匹、そう、肝心なエミヤがいない。
そこに加えて沸いてくるシャドウサーヴァントにこれまで戦ってきた様々なエネミー、よく分からない蜘蛛のような集団
一言で言えば大ピンチだった。
「この……!」
戦闘体制に移ったマシュがその両手に持つ盾を振り、敵を凪ぎ払う。
一体一体はそう手強くはない。だが、それでもマシュはこの状況に焦燥を覚えていた。
──このままではキリが……!
そう、いくらマシュから見れば大きな驚異で無かったとしても、マスターである藤丸は別だ。
マシュは本来専守防衛型のサーヴァントだ。大多数を一度に制圧できるような攻撃力は持っていない。
この状況で出来ることと言えば、先程反応を察知したエミヤが到着するまで耐えきるのみ。だがそれが出来るのか否か、はっきり言って分が悪い。
「先輩はとにかく身を守ることに専念してください! ここは私が何とかします!」
しかし、やる以外に選択肢は無い。
飛び上がったマシュは藤丸の目の前に降り立ち、盾を構える。
目前に迫る大量のエネミー、絶望的な状況にも僅かな希望を見据え、少しでも藤丸から離れた位置でぶつかり合うために一歩を思いっきり踏み込み
「おいおい、度胸は認めるがそりゃ無茶ってもんだぜお嬢さん」
「ふぇ!?」
猛烈なスピードで離れていくエネミーを呆然と"見下ろした"
「ああ、なんだこりゃほんとに。たしかに今日の俺は年頃の少年少女の引率で来たようなもんだよ。けど俺の連れはこんなナイスバディでもなけりゃチャイニーズ? ジャパニーズ? まあどっかのメカニックガールと同じような肌の色もしちゃいない。これは不味い。俺の第六感が言ってる。スパイダーマンには良くある状況だ。そう、世界の危機ってやつ」
マシュは自らが何か糸のようなものに全身を絡めとられながら空中を飛んでいること、藤丸も同じような状況に置かれていること、そして、全身を蜘蛛を意識したかのようなコスチュームに身を包んだ男がそれを為したと言うことに気付くのに数秒の猶予を要した。
想定の遥か外の出来事。しかしそれでも理解出来ることがある。それは、この悩ましげにぶつぶつ呟いている謎の存在が、少なくとも自ら達に危害を加える存在ではないと言うことだ。
「さーて……どこから話をすりゃいいんだ? 十代のガキはにが……いや、そういう偏見は捨てろよピーター、この間MJと話し合ったばっかりだろう? そうだ、落ち着け、マイルズやグウェンと変わらない」
不可解な飛行の果ては一際高いビルの屋上だった。
マシュと藤丸はポカンとしながら、顎に手をやりぐるぐると歩き回る男を見守る。
気がつけば、こんな感じで数分が経過していた。
「あの……!」
遂に意を決したようにマシュが立ち上がり男へ声をかける。
その声に男は、まるで二人がそこにいることに初めて気が付いたかのようにピタッと足を止めた。
「あー、うん。とりあえずこれだな。これだけ聞いときゃどうにかなるだろ」
男がマスクを取る。
その下の素顔はどこかくたびれたようで、それでいて強い決意ざ込もった瞳をしていた。
「俺の名前はピーター・B・パーカー、見ての通りスパイダーマンだ。さて、突然だが君達、君達の世界にスパイダーマンはいるかい?」
スパイダーバース素晴らしい……傑作ですね。けど一人救済したい人がいる。
という事で書いていきます。
感想がモチベーションになるタイプなので是非是非