Fate/spider-verse 亜種特異点ブルックリン   作:fake

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ピーターの事情とペニー・パーカー

 

 

 

「いてて……なんだ、こっちの世界じゃ助けてくれた恩人に不意打ちで蹴りを入れるのが礼儀なのか? 参ったな、そりゃスパイダーマンもいないわけだ。毎度こんな対応されてたら悪党に殺られる前に守るべき市民に殺られちまう」

 

「すまない。全身タイツの変質者がマスターとマシュに絡んでいるようにしか見えず……」

 

「もう! エミヤ先輩、お気持ちは嬉しいですが反省してください! 大丈夫ですかパーカーさん? まともな治療が出来ず申し訳ありません……」

 

「ピーターで良い……いや、いいっていいってほんとに。問題ない。こんなことスパイダーマンには良くあることさ。誤解は日常茶飯事。けどこりゃまずったなあ……帰ったらMJとデートだっていうのにどやされちまう」

 

「……」

 

 どうしてこうなった。

 目の前の光景に藤丸はどこか歪にゆがみ、重なりあう空を眺めた。

 自分とマシュを救ったピーター・パーカーと名乗る人物がスパイダーマンという聞きなれない言葉を発し、それについて藤丸が答えようとした瞬間、高速で飛び込んできた紅い弾丸に吹き飛ばされフェンスに顔面から突っ込んだのはほんの数分前の出来事である。

 

 弾丸の正体は遅れ遊ばせながら到着したエミヤだった。

 本来冷静沈着な彼と言えど今回の状況には焦りを感じざるを得なかったのか。

 普段なら有り得ない程の先入観と決め付けに身を任せて、彼の言うとおり恩人と呼んで差し支えないパーカーを敵と断定し、蹴り飛ばした。

 その後、一瞬呆然としたのち状況を把握したマシュが一喝し、ピーターの介護に走り今に至る。

 纏めてみれば非常にシンプルだ。ただ、その行動を行ったのが普段トラブルを起こす面々ではなく、カルデアの数少ない常識枠であるエミヤだったから余計ややこしく見えるいうだけの話。

 

 マシュの膝に頭を乗せ、蹴り飛ばされた左の頬を抑える──真っ先にフェンスに突っ込んだ左目には大きなリング状の青あざが出来て腫れ上がっている──ピーターの姿はなんというか……自己紹介の時に際に感じたカッコ良さとは程遠いと藤丸は苦笑いを浮かべる。

 どちらかと言えばダメオヤジに分類する方が近いんじゃないか?と

 よくよく見てみれば密着度の高いタイツだからこそわかる程度だが、若干お腹も出ている。

 

「少年、今俺の腹を見て蔑ずんだな? 30越えると筋肉の神様ってのは人間を見離す。今は分からないだろうが……これでもダイエットの3ヶ月で随分マシになった方だ」

 

 未だ心配そうにしているマシュにアピールするように、大丈夫だからと手を振りピーターが立ち上がる。

 そのまま歩き出したは良いが数歩もいかないうちに、おっとっと、なんて立ち眩んだ彼にすっと近寄ったエミヤが手を貸す。

 

 

「先程も言ったが……すまなかった。二人を助けてくれた事、感謝する」

 

「そう言ってくれれば問題ないさ。だがあんたも、保護者なら目を話すなんて事はしちゃいけない。ここが何だかおかしいって事はそっちの方がよく分かっているだろう?」

 

「そっちの方が、とはよく分からないな。ピーター……と言ったか? 君はここの住人ではないのか?」

 

「エミヤ、多分その人は──」

 

 どうも話が噛み合わない、向かいあったままお互いに?マークを浮かべるエミヤとピーターに、何となく合点がいった藤丸が割り込もうとする。

 だが間に入るその前に、ハッとしたような表情に変わったピーターがポンっと手を叩く。

 

「そうか……君達もこの世界の住人じゃないのか! まさか一番最初に出会ったのが同じ異邦人とはな」

 

「そう言うことか。では君も──」

 

「ピーターで良い、そっちの名前はまたおいおい聞くとしてだ。

 お察しの通り、俺はここの住人じゃない。確かに俺はニューヨーク、ブルックリンをずっと守り続けてはいるが、こんなしっちゃかめっちゃかな場所でもギャラリーがいない街でもない」

 

「ニューヨーク! 新宿と並ぶあの世界的大都市の……!」

 

「マシュ、ステイ。気持ちは分かるけどちょっと待って」

 

「ニューヨークが分かるのか、ならある程度世界の大枠は一緒ってことか」

 

 ニューヨークと言う目を輝かせたマシュの反応が気に入ったのか、彼女に一つウインクを入れるとピーターはそのまま続ける。

 

 

「ここに来たのはまあ……簡単に言えば人探しだ。時空を越えてでも、探さないといけない奴がここにはいる。

 で、最初にあった二人をてっきりこっちの住人だと思ったんだが、そうじゃない。君達もまた違う次元の住人、そうだろ?」

 

「うん。俺達がここに来たのはこの空間の調査なんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

「ああ……なるほど、3ヶ月前ね。だとすると俺はその原因を多分だが知ってる」

 

 藤丸達がこの場へやって来た経緯を話すと、最初は興味深げに相槌をうちながら聞いていたピーターの顔が、ある1つの単語を聞いた途端、みるみる曇っていき、話が終わるととても歯切れ悪くこう言った。

 

「ほんとうに!?」

 

「勿論、ある意味俺がここにいるのもそのせいみたいなもんだ。丁度3ヶ月前だがとある世界の大馬鹿野郎が無茶なことをしてな、本来は互いに独立して、無関係であるはずの宇宙……マルチユニバースが混線するなんて厄介ごとが発生した」

 

「ダ・ヴィンチちゃんが聞いたら大喜びしそうな話だね」

 

「話の腰を折るなマスター」

 

「ダ・ヴィンチちゃん……? まあ良い。それによって俺を含め、異なる宇宙の何人かのスパイダーマンが1つの世界に集められるなんて訳の分からない事象が発生。長くなるから詳細は省くが、最後はブラックホールを生み出しかねないアホな実験を実行しようとしてた悪の親玉を力を合わせ倒して、物騒な装置も吹き飛ばして皆元の世界に帰って取り敢えずはハッピーエンド、の筈だったんだが……そうか、まだ俺達の預かり知らぬ所に迷惑が掛かっていたとはな」

 

「……えーと?」

 

「異なる平行世界の捻れと混線、先輩に分かりやすく例えるとイリヤさんの持っているカレイドステッキの機能を更に大袈裟に、そしてリスキーにしたものと」

 

「ありがとうマシュ。うわあ……何となくだけどどれだけ厄介なことなのか予想がついたよ……」

 

 アハハー、なんて笑う不良精霊を頭に浮かべ藤丸は頷く。

 あんな厄災の塊みたいなものの一機能が無差別に振るわれるとなれば、それはまごうことなき一大事であると。

 

「だがしかし腑に落ちない点がある。君の世界で起こった問題は既に解決したのだろう? 今回の件について知らなかったと言うなら、君は何故ここにいる」

 

「正確に言えば俺の知人の世界、だな。最初に言った通りだがここに来たのは人探しだ。丁度良いから話を続けるが、取り敢えずはハッピーエンド、とは言ったものの、なんもかんもが上手く言った訳じゃない。救えなかったものもある。良くあるパターンだが、死んではいけない人間が今回の事件に巻き込まれて死んだ……」

 

 いついかなる世界でもこの原則は変わらないらしい、とピーターは一度遠くを見る。

 

「何となくだが、紅いお兄さんには近しいものを感じる。この感覚、分かるんじゃないか……? おっとそれはそれとしてだ。死者は戻らない、それは俺達がどれだけ頑張ろうが覆せない絶対の事実だ」

 

「真理だな。君の言う通りだ」

 

「そうだろう? だが俺達の問題の事後処理をしているときにとんでもない事実が分かった。細かいことは俺も知らんが、本来次元の狭間ってやつは暴食でな。一度触れたら最後、チャンネルが繋がってる何処かの平行世界に恐ろしい勢いで吹っ飛ばされる、もしくはそいつを起点に新たなチャンネルが作られる、触れた人間が元の世界に留まることは基本出来ないんだそうだ。

 だが一人例外がいた。そう、俺が探してる人間さ。知人の話によると、そいつは次元の狭間に触れたが、とんでもない力で押さえ付けられていたことに加え、試作段階だったなんというか……次元移転装置と呼んでおくか。その装置が文字通りぶっ飛んだ事で、狭間に触れたにも関わらず世界に残留した」

 

 とてつもない情報量だが、まるでアメコミを流し読むかのようにパラパラと頭の中にピーターの言葉が入ってくる不思議な感覚を覚えながらも一同は聞き入る。

 

「続けるぞ? その時には誰もが気付かなかったし、本人も知らなかっただろうが1つ副作用が発生していた。そいつが狭間に触れることでその情報が読み込まれ、チャンネルが開き、俺達が違う宇宙から呼び寄せられた。だがそいつ本体は残留、となると一番最初に読み込まれた情報は行き場を無くす。

 そして漸く本題にたどり着いたが、その結果として起きたのが副作用。正規の形に、器に収まらず漂う情報はバグみたいなもんだ。流れを、歪めちまう。その異物を排出する為に次元が取った手段。それが本題。」

 

「ピーターさん、そろそろ先輩の処理能力が限界そうなのでなるべく簡潔に」

 

「了解した。結論から言うと、出来上がったのは完璧な複製、クローンとも少し違うな。遺伝子情報は勿論の事、記憶、感情、身体についた傷なんかも全部一緒。その時を完全に再現した、もはや同一人物としか表現のしようのない人間が新たに生まれ、そしてこの次元に吐き出された。そいつこそが俺が探している人ってことになる」

 

 

 

 

 

 

 SF映画を思わせるようなぶっ飛んだ背景に藤丸もマシュも言葉を無くす。

 そうして続いた沈黙の中、切り出したのはエミヤだった。

 

 

 

「おおよそだが概要は掴めた。だが一つ君には問わねばならないし、その返答次第では私は君を殺しにかかることになる」

 

「「エミヤ(先輩)!?」」

 

「おいおい、穏やかじゃないな。その場合俺も全力で抵抗しないといけないが……良いぜ、聞いてみな」

 

 明らかに今までとは違う空気に、藤丸とマシュはエミヤの発言が本気であると悟る。

 それはピーターにも伝わったのか、彼の雰囲気も鋭く変わる

 

「ああ、君の話では次元を越えて移動すると言うのはかなりリスキーな話のはずだ。ブラックホールなんてものが生まれてしまえば何が起こっても不思議はない

 だがそれなら"君は一体どうやってここへきた?"もしも君の言うところの悪の親玉と同じようなリスクを取ってきていると言うのなら看過する事は出来ない」

 

「あ──」

 

 藤丸とマシュは同時に息を呑む。

 確かに言われてみればその通りである。ピーターの言葉通りであれば、次元の移動はとてつもなくリスクを伴う事象のはずである。だと言うのなら、この世界にどうやってやって来たのか

 

「なるほど……そういうタイプか。それなら安心してくれて結構だ。俺達はそんなリスクは犯しちゃいない。だからその剣を下ろしてくれ。俺達には"1000年先のテクノロジー"がついてる──

 ──ペニー! 出てきてくれ、彼等に説明したい!」

 

 そんなエミヤに対し、ピーターはボソッと小さく呟くと、また軽妙な語り口に戻り両手を挙げ、背後の虚空へ向け声をかける

 

 

【了解! ハロー! 違う世界のヒーローさん! 私の名前はペニー・パーカー、3145年のニューヨークを守ってるスパイダーマンだよ!!】

 

「「「!?」」」

 

 エミヤ達は絶句した。

 ピーターの言葉に呼応するように、空間にホログラムスクリーンが浮き上がる。

 そしてそこに写し出された快活そうな少女はどこからどうみても通常の女子高生──それも日本人の──にしか見えなかったのだから。

 

【あー、うん、そりゃ順応するのに時間かかるよね……ってことで。取り敢えず話進めちゃうね! 取り敢えず、見て ! 質問はまた後から!】

 

 ペニーと名乗った少女が苦笑いをすると同時に画面が暗転する。loading、なんて画面に切り替わった後、写し出されたのはベッドに横たわる黒人少年の驚愕に満ちた表情だった。

 

 

 

 

 

【グウェン! どういうことなの!? パーカーさんが生きてるって本当に!?】

 

 

 

 

 

 




1話の反響が思ったより多かったことに喜びの更新。
基本的にFGOキャラメインのときはFGO映像、スパイダーメインのとき(今回なんか)はスパイダー映像で脳内変換していただけると分かりやすいかなと

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