ダンジョンにTS少女()がいるのは間違っている 作:タンベリング
ここまでのあらすじ!
ある日急に目の前が暗くなったサラリーマンの田中太郎(31歳独身)は気が付いたら天国にいて目の前の神様に『間違えて殺しちゃったごみんにー☆』って言われちゃって激おこぷんぷん丸ストリーム!怒りに燃える田中だったけど逆ギレされて無理やり転生させられちゃうことになっちゃった!?
田中はこれから先、一体どうなっちゃうの!?お願い、転生(逝)かないで田中!寿命はまだ残ってた、神様一発ぶん殴ればきっとすっきりできるんだから!次回『田中死す!』!デュエル、スタンバイ!
「あんまりだ…」
迷宮都市オラリオの廃墟が連なる区画にて、一人の少女がぽつんと呟いた。
「あぁんまりだあああぁぁぁ…!」
否、泣き崩れた。涙をぼろぼろと流して鼻水を垂らして四つん這いになって大泣きし始めた。ぐずり始めた赤ん坊であってもまだ大人しいであろう。悲壮な姿に、朝の空気の中のんきにさえずっていた小鳥達が眉を潜めてどこかへ行く姿があった。
この少女…否、中身は田中(サラリーマン31歳童貞)である。
つい先ほど神に間違えて殺されて、そのことについて憤った田中に逆ギレした神に無理やり転生させられた姿である。
ちなみにこの姿は某カスタムなメイド系R18ゲームで田中が作った田中の性癖の粋が詰まった渾身の作品であった。身長140㎝程、胸はAランク。設定は魔法少女。手には可愛いステッキを持っていて、ドレスを着ているのだ。
このような残酷な事、人であればできようはずがない。実際に奴は人ではなく、神は神でも邪神の類であることを田中は確信した。このような公開処刑、断じて許されることではないのだ。
田中は不憫である。間違えて殺されて、ソレに怒ったら逆ギレされて転生させられ、そして転生後の姿が自分で作って何度もオカズにしたことのある少女の姿だったのだ。ぶっちゃけありえない。
何故、どうしてこんなことになったのか。田中の頭の中をあらゆる疑問が渦巻いては消えていったが、最終的にはあの神(クソ)がすべて悪いのではないか?という結論に至る。
そう、これから起こるありとあらゆる不幸は全てあのクソが悪いのである。柔らかい身体も微かに自己主張する胸も小さくて華奢な手も、ソレにゴリゴリと削られていく自分の大切なナニカも、全てあのクソが悪い。そう思う事で平静を取り戻した。
故に、田中はそういった困惑や疑問を全て取っ払ってこれからどうするかについて思考を向けた。何故ならここは確実に自分が知る世界ではない。所謂異世界と呼ばれる場所なのだから。空に天高く背を伸ばす長大な塔を見上げて、ため息を吐き出す。
どうするって…どうするよ?田中はぶっちゃけ分からなかった。
異世界に転生とか良くある話と思っていたが、いざ自分の番になると何をすればいいのか分からない。思考が停止する。そういえばこういう展開の小説は食わず嫌いしていて読んだことはあまりなかった。こうなると分かっていたら何が何でも勉強してきたのに。田中は悲しんだ。
そうだ、今の自分は魔法少女になっているのだろう。なら、魔法も使えるのでは?
「……」
ステッキを振り回してみたり、集中してみたりするが何も起きなかった。見た目だけの張りぼてだったらしい。神へのヘイトが一つ増えた。
本当にこれからどうすればいいのか。こんなやわな身体じゃ冒険者なんてできないだろうし…まあ、異世界だから冒険者というのもいささか安直すぎるが。
それにしても、と今の自分について考えてみる。
力のない少女。無一文。身分も保証も無し、保護者も無し。あっ…(察し)。
田中は嫌な予感がした。この身体をそういう目的で作った製作者であるという事も不安を増長させた。想像するだけで吐き気がする。田中は生まれてこの方ずっとロリと百合を愛する変態なのである。男なんてノーセンキュー。当然であった。
取り合えず田中は歩き出した。何はともあれ長い間世話になるであろうこの世界を少しでも見て回ろうと思った。最低でもこの街がどんなふうに回っているのか、どんな職業があるのか。それくらいは知っておきたかったのだ。
見て回って分かったこと。この世界は、随分とファンタジーな世界だったらしい。
バベルの塔により封じ込められたダンジョン。それを中心に発展したこの街、迷宮都市オラリオ。そこでは、冒険者が日々ダンジョンに潜り、冒険したり金を稼いだりしているらしい。
それだけでも田中に夢を与えたが、しかしそれ以上に。冒険者っぽい恰好をしている人々の中には、今の田中のような少女の姿も見えた事が田中に希望を与えた。
あの子が行けるなら自分もいけるだろう。そんな感じだ。
田中はとりあえず冒険者ギルドっぽい所へと行くことにした。
「えっと…まず、ファミリアに入らないと冒険者にはなれないんですよ」
「はあ…」
ギルドの受付はそう宣った。少女の恰好には一切疑問を持たず、笑顔で教えてくれた。
なんでもこの世界の冒険者はファミリアと呼ばれる、ゲームで言うクランのような場所に入って初めてなる事が許されるらしい。大変そうだなぁ、と田中はちょっと唇を尖らせた。
「ファミリア…ですか。分かりました、自分で探してみます」
「はい、何かありましたら、遠慮せずにギルドまでお越しください。ファミリアのあっせんなども請け負っておりますので」
「ありがとうございます」
こうして田中のファミリア探しが始まった。
「お前みたいな嬢ちゃん、およびじゃねえよ」
「お家に帰ってパパに甘えてな」
「ダメダメ、うちは武闘派だから」
「何だいその杖は。なめてるのかい?」
否、その実態は田中の地獄めぐりであった。
田中は大変傷ついた。どこに行っても断られる事で自信が少しずつそがれていった。ただでさえ三十路独身ハートは傷つきやすいのに、ここまでガンガンにぶっ叩かれ続けると砕ける日も近いかもしれない。
「帰んな。あんたみたいな敗北者、必要ねえよ」
「ハア…ハア…敗北者…?」
ぱたん、と閉じられた扉の前で田中は血を吐くように呻いた。もう無理、誰か慰めてお願い。田中の胸中はそんな感じで埋まっていた。
「あのー…」
「…はい?」
暗い顔で声をかけられた方を見ると、田中は思わず首を傾げた。目の前にいたのは、赤い目をした白い髪の毛の少年だった。
「あ、いや…その、ちょっと見ていたんですけど、もしかしてファミリアを探していらっしゃるのではにゃいかな、と思っていましてですね…」
少年はしどろもどろに顔を赤くしてそう言った。
「まあ…その、はい。実はそうなんです。だけどさっきからどこに行ってもダメでして…困ったもんです…」
「あはは…僕もそうだったなあ…身体が細いからって、何度も放り出されたっけ…」
「あ、あなたも?実は自分もそんな感じでして…」
田中と少年は通じるところがあった。共通する話題があるというのは人の心を近づけるきっかけになりやすい。
「あの、実は僕のファミリア、人が少なくて。かなりの零細ファミリアなんですけど…その、よろしければ入りませんか!?」
「いいのですか?」
嬉しい提案だった。田中は思わず瞳を輝かせて尋ね返すと、「も、もちろん、その…よろしければ、ですけど…」と少年の言葉に、是非もないと二つ返事でうなずいた。
「その、僕はベル・クラネルって言います。君は…?」
「自分は…ミリスです」
流石に田中ですとは言えず、この身体の名前を使った。名付け親はもちろん自分。致す時はいつもこの名前を呼び続けていたし、発射した際もこの名前を呼んでいた。そんな名前を今は自分が名乗っている。悲しい話であった。
「それじゃあ、ホームに案内しますね!」
ベルはハイテンション気味にそういって、ふんすと鼻息を荒くして道案内を始めたのだった。おじいちゃん、おじいちゃんの言葉は間違いじゃなかったよ!勇気を出して良かった!と心の中で自分とおじいちゃんに喝さいを送りながら、英雄の卵は少女(テクスチャだけ)と共に帰路に帰るのだった。
「やあ!僕がこのファミリアの主神、神ヘスティアさ!君が新しい入団希望者かい?」
「アイエエエ!?神!?神なんで!?うーん…(気絶)」
「み、ミリスさああああああああああん!?」
その日、とある廃教会にて一人の少女がトラウマに苛まれ意識を飛ばしたが…日々冒険者により賑わいを見せる迷宮都市オラリオの中においては、些事であった。