「起きろこの寝ぼけジジイ」
バギィと言う鈍い音が電気の切れた暗い事務所内に鳴り響く。
便利屋「Devil mey Cry」の中に堂々と入ってきてダンテの頬に一発かましたのは銀色の短髪と義手が特徴的な青年、ネロであった。
以前レッドグレイヴ市で起きたクリフォト事件を解決した彼らは各々の生活に戻っていたが、ネロに力を証明されたダンテは自分の店の看板を受け渡した事もあってかなり悠々自適な生活を...というか自堕落な生活を送っていた。
毎日毎日ストロベリーサンデーとピザのオリーブ抜きを頼んで食べる毎日を繰り返していたらあっという間に金も尽きやる事が無くなっていたらしい。幸いダンテは半人半魔であり、年は取るが餓死とかはしないわけであるが。
レディは自分の溜まった仕事が忙しいらしかったりして依頼を回して来ず、トリッシュも暇だからとレディに勝手に付き添っているらしい。ちなみにダンテは歯応えが無い悪魔の相手は依頼じゃない限りやめておくとの事である。
だからこその救いの手、だからこそのネロ。万が一金が尽きた場合はネロに何でもいいから仕事を回すようにとモリソンがネロに秘密裏に頼み込んでいたのだ。勿論ダンテの取り分は全てツケを払うのと住居維持費に回される。
一発殴られたダンテは眠たそうにしながらも大きく伸びをしてネロを見やる。
...相変わらず生意気そうな目をしてやがる、と思ったと同時に、今まで以上に垢抜けた雰囲気になったとしみじみと思っていた。
「何だよジロジロ見やがって、そっちの気でもあるのか?」
「おいおい、そんな事したらお前の所のべっぴんさんに泣くほどぶん殴られちまう。看板通りの事になりたくは無いんでお断りだ」
「キリエは殴ったりしねぇよバカ!!んな事よりほら、依頼だぞ依頼、こっちからの斡旋だ」
乱雑にダンテの座っていたテーブルに投げ渡されたのは、しっかりと封がされた手紙だった。このご時世ここまでしっかりしているのは中々無い、ダンテは多少の興味を抱きながらベリッと勢いよく封を外すとそのままテーブルに叩きつけ、慣性によって飛び出てきた紙切れを器用にキャッチして中身を確認した。
「.....その動作いらねぇだろ」
「普段は要らないような物を兼ね備えてるのが真のイイ男の条件だぜ?ま、まだ坊主気分が抜けてないお前には、ちと分かりづらい話かもな」
ニヤリと顔を上げてネロを見るダンテの表情は、年齢に似合わないやんちゃな雰囲気を醸し出していた。まだまだ現役のおっさんの寝起きとは思えないテンションに若干頭を痛くしつつもネロは指を突きつけて急かす。
「はいはいご教授どうも、さっさと読んでくれ」
「いいじゃねぇかちょっとの話くらい、暇すぎたんだからよ」
「それはアンタが仕事サボってるからだろ!忘れてんのか?伝説のデビルハンターも歳には勝てないってか。ハッ、笑えるぜ」
この軽口の応酬に多少は満足したのか、ダンテははいはいと適当に返事をすると手紙を読み進めていった。
本来は電話での依頼が多いのだが、今回はネロからの斡旋、それに電話依頼ではない珍しい依頼と来た。それだけでも暇潰し程度にはなるのだろうと興味津々で読み進めていく。
「...........」
「で?なんて書いてあるんだ?」
「.................」
「おいダンテ」
「...................」
「なぁおい耳イカれ『読めねぇ』......何だって?」
ネロがパッと手紙をダンテの手から取り見やるとそこに書かれていたのは...見た事も無い、記号のような文字列だった。ともすれば、サインのように見えなくもないようなーー
「うおっ!!おい何だこれ!?」
ネロが手紙の中身を確認した瞬間、二人の足元に奇妙な円陣が現れていた。白く輝くそれは自分達が知る悪魔の物でも、噂に聞いていた天使の物でも無い。まるで全く別の世界から現れたような、そんな異物感を醸し出していた。
それを見てダンテは焦るネロとは違い、今まで以上にニヤリと表情を破顔させる。それもそうだろう、奇妙な招待状、からの謎の円陣、これ以上の無いパーティーの予感が頭をよぎる。
マレット島ともテメンニグルとも違う新たな戦いへの期待を胸に抱きながら、ダンテは勢いよく立ち上がった。
「これはこれはcrazyな招待だな!あの兄貴が何時ぞやに送ってきた招待状よりもクレイジーだ!!いいねぇ、燃えてきた!」
「言ってる場合かよ!いいか!アンタと違って俺は忙しいんだ!これからニコの所に行って新しい芸術品とやらの試運転もしなきゃいけねぇし、何よりキリエが家でシチューを作って待ってるんだよ!年がら年中暇なアンタとは...クソッ!身体が透けてきやがった!」
「ヒュゥ!スケスケとは大胆だな!.....ま、俺も透けてるわけだが...で、これなんだ?」
「アンタに分からないなら俺に分かるわけが無いだろうがーー」
そうこうしている間にネロの身体は瞬く間に陣から溢れた光に呑まれてしまっていた。何か言いたそうにしていたし実際不憫だとは思うが、そんな些細な事は今のダンテには関係ない。さっと身体の内に秘めていた魔力を解放し魔剣ダンテを握るとそのまま肩に担ぎ、流れに身を任せる。ネロのあの様子を見る限り恐らくは転移魔術に近い物、つまりこことは違うどこかへと行けるという事だろう。正に願ったり叶ったりだ。であればーー
「アリスも行かねぇようなお茶会への出発か...ハッハッハッ!楽しすぎて狂っちまいそうだ!!」
ーーそれを余す事なく楽しむ、ただそれだけだ
「....shit...」
そして蒼の魔剣士もまた、その世界へと誘われているのであった。
皆様お久しぶりです、そうでない方は初めまして、長期連載としてとりあえずプロローグだけ置かせていただきました。
続くかどうかは未定!です!