Hollow may cry   作:アストラの下級騎士

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ダンテの気ままなロスリック紀行、はーじまーるよー!


mission1-1 幕開け

灰の舞う寂しげな墓所。夥しい数の墓石に覆われた一角にそれはあった。

人1人が遊に入りそうな程の石棺が、小さな樹の根元部分に捨て置かれている。ずっしりとした重さを感じさせるそれは凡そ人の手では動かせないだろうと即座に思わせる程だ。

 

 

まぁその中にはそんな物関係ないとばかりに豪快に蓋を蹴り上げたコートの男がいたのであるが。

 

 

ビルの3階程の高さまでに蹴り上げられた石棺の蓋は名もなき墓石に着弾すると、辺りに石と石が砕け合う独特な破壊音を響かせた後に寂れた墓所を彩るガレキと化した。

開幕一番に派手に器物損壊を行ったこの男こそが、かのスパーダの息子でありそのスパーダすら越えるとされた伝説のデビルハンター、ダンテである。

まるで新しいおもちゃを与えられた子供のように目を輝かせている様を見ていると、あまり伝説感は無いのだが。

 

「まさか開幕一番に棺の中とは思わなかったな...今までの中で一番適当な入り口だなおい、全く唆らせてくれるぜ」

 

誰に話しかけるでも無くそう愚痴りながらダンテは衣服に付着した汚れを手でサッと払うった後に辺りを見回す。

正直文明が発達しているとは思えない荒廃感に右に見える世界遺産もかくやと言うような巨大な城。まるでファンタジーの世界に迷い込んでしまったようだった。

ふと、遠くから鐘の音が聞こえてくる。ゴーン...ゴーン...と静かな墓所に響き渡るその音色は、やはりどこか寂しさを感じざるを得ない物である。

 

「あのクリフォトの樹の時にも思ったが...もうちょっと賑やかな場所の方が好きなんだがね。開幕からマイナス1点だ」

 

もちろんこういった情緒のある風景も嫌いではないのだが...やはり性格的にはダンスクラブや大衆酒場のような賑やかさが欲しい所だとダンテは考える。何よりこんなのばかりではテンションが下がってしまう。これはあまり頂けない事だ。

 

「だがまぁ...与えられた物にしのごの言っても仕方ねぇか...さて、記念すべき第1村人を探しに.....っと、噂をすればなんとやらって奴だな」

 

棺の場所から少し先に行った十字路にそれはいた。黒い布を頭から被り、手には折れた剣のような物を持っている、一見すると怪しい事この上ないが、もしかしたら現地民はこういった格好が標準なのかもしれない。

そう思い直すと取り出しかけていたエボニーとアイボリーの2つの特注拳銃をホルスターに仕舞い、いつものように気さくに話しかけた。

 

「よぉ!そこのアンタ!ちょっとしたパーティーに誘われたんだが、ここが何処か知らな...い...か?」

 

ダンテのその言葉はクルリと振り向いたその黒布の男を見ると同時に尻すぼみに小さくなっていく。

それもそうだろう、眼球にあたる部分は落ち窪み暗闇しか見えず、肌は乾燥しきった生皮のように白くボソボソで、頰は痩せこけているなんてものではない位に削がれていたからだ。

例えるならばこれは正に、魔界に居るような亡者の姿形をしていた。

 

「Ah ha...ちょっと、栄養不足なんじゃないか?ちゃんと三食飯は食った方が良いぞ、そんで適度な運動だ。ま、俺がそれをやってるかって言ったら何とも言えないんだがーー」

 

そう言い終わる前にその痩せこけた男は奇声を発しながら剣らしき物を振り上げてこちらへと襲い掛かってきた、動作は緩慢、一般人がトチ狂ってこちらへと向かってきたレベルに過ぎないが...それでも剣は剣、敵は敵だ。

だがその一撃をダンテは甘んじて受ける。

折れた剣は確かに切れ味こそないがボロボロに傷み欠けたそれに切られてしまえば複雑な切り傷になってしまい、常人なら治るのには時間がかかるだろう。

 

「アアアアアァァァァァァァ!!」

 

胸の辺りに突き刺したそれを引き抜くとその男はやたらめったらに振り回して攻撃する。子供が駄々をこねるように見えなくもないが、やっているのはイカれた乱舞である。

ザク、ザクとダンテの皮膚に傷を作り、辺りには生暖かい赤い液体が飛び散る。それを見て弱っていると思ったのか、はたまたスタミナが尽きたのか、黒衣の痩せこけた男は大きく腕を振りかぶり渾身の一撃を放つ。

力に任せた素人の一撃、だがどこかタガの外れた一振りはダンテの頭に吸い込まれーー

 

「ダセェな」

 

ーーる事なく、右腕であっさりとそれを止めてみせた。

相手も相当な力を込めているはずなのにその振るおうとした両腕はビクともせず、逆にダンテの方はというと全く余裕な呆れた表情をしていた。

見れば先程受けた傷も衣服の破れも全て治っている、これこそがダンテが半人半魔である証であり、また伝説のデビルハンターであるという示しという事だろう。

ちなみに、こういった輩の攻撃は避けるのがめんどくさいので敢えて受けるようにしているとは、ダンテの談である。

 

「振り方に品がないぜ?そんなんじゃあ並み居るご婦人方は魅せられねぇな」

 

まるで余裕に、羽虫が肩についただけのように焦る事なくダンテは防いだ腕に力を込めていくと、徐々に徐々に男の両腕が上がっていき、同時にダンテと顔を顔を付き合わせるような形になっていく。

そして至近距離まで顔を近づけた後、不出来な弟子に教えるように笑みを浮かべてダンテが喋りかけた。

 

 

 

「剣ってのは、こう振らなきゃな!」

 

 

瞬間。空いていた左手に顕現したのは紛れも無い魔剣だった。鈍い銀色をした刀身には紅い魔力がチラつき、鍔元には厳つい髑髏の意匠が当てがめられている。およそ人が片手で振るうものではないダンテの背丈ほどもあるそれを軽々と肩に担ぐと、それを思いっきり右袈裟に振り下ろした。

高々と舞い上がる斜めに切られた男の上半身から血が吹き出し、その魔剣を彩っていく。

その魔剣の名は、「リベリオン」と言った。

 

「一応取り出せるかどうかやってみたが...案外上手くいくもんだ。アッチだと流石にイージーモードすぎるだろうからな、こっちの方が今は最適だ」

 

元々リベリオンは魔王ユリゼンとの戦いで一度砕けており、本来なら魔剣ダンテとなっていたのだが...どうやら魔剣スパーダと自分から融合を解除し複製出来たようだ。

そんな難しい芸当をこんな土壇場でやるあたりが、ダンテの人となりを表しているのだろう。

 

「またよろしくな相棒。今度は絶対折れたりしねぇから安心してくれ」

 

そう声をかけた後にダンテは昔のように背中に背負う。1年前から感じなかった重みを感じれる事に、年甲斐もなくはしゃいでしまいそうな気持ちに駆られる。いやもう既にはしゃいではいるのだが。

 

「で、あいつは一体何だったんだ?ちょっくらお顔を拝見っと.....うわ、ひでぇなこりゃ、魔界の住人達の方がまだマシな顔してやがるぜ」

 

死んだ後も貶されるこの男が不憫ではあるのだがダンテだから仕方ない。思った事を冗談交じりに空気も読まずに言ってしまう性格が無ければ今頃ダンテには誰かしら配偶者がいただろう。いや、女運が悪すぎる彼に限ってやっぱりそれは無いかもしれない。

 

「ん...?こいつは...」

 

ふと、身体の中に何か魔力とは違うものが入ってまくるのに気付いた。最初は呪いか何かかと思ったがどうも違う、これはどちらかと言えば暖かく、どこか力に漲っていた。

そうそれこそが「ソウル」である事に、今のダンテは気付いていない。

 

「なんだかよく分からない世界に来ちまったみたいだな...ま、知らない事が多い方がアトラクションとしては合格だから、それは良い事だな!」

 

やはりテンションを上げながらダンテは先へと進んでいく、ちょうど広場になっている場所の先に進むべき場所とーー1人の騎士の遺体が見えたからだ。

 

「それに最初から刺激的な事のオンパレードと来た。ある意味最高の歓迎だと思わないか騎士サマ?これ、借りてくぜ、また後で返すからよ」

 

そう言って騎士の遺体の懐に目敏く瓶を見つけたダンテはそれをひったくるように手に取る。すると不思議とその瓶の名前と使い道が頭の中に思い浮かんできた。

コイツは不思議な事もあるもんだ、と関心すると同時に今手に持っている物が中々にレアな魔道具である事にダンテは内心かなり喜んだ。

こういったレアなアイテムはモリソンに持って行かせて借金の担保に出来るという邪な考えが先に浮かんでいたのも付け加えておく。

 

(とは言えこいつは...かなり使えるな、即席の魔力回復薬と来たか。これがあれば魔人化も楽に出来るし正直苦戦する事も無いだろうが...)

 

「.....まぁ使わないでおくか、ズルはあんまり好きじゃないんでね」

 

そう言うとダンテは魔力へと還元して身体へとしまい込む。数多ある魔具を咄嗟に使うにはこれが一番だからだ。

と、同時に風切り音と共にダンテに飛来する物が一つ。

それはダンテの達が居る時代には余りにも異質な物、火の付いた矢であった。

こんな物は何百年前と言ったレベルで使われなくなった物であり、今では東方の国くらいでしか使われなくなったと聞く。

それが自分の頭に直撃する前に人差し指と中指で挟み込むようにキャッチすると構え直し、ダーツをするかのようにその矢を放ってきた射手へと向けた。

 

「中々良い腕してるなアンタ!将来の夢は恋のキューピッドか?その顔なんとかすりゃ行けると思うぜ!」

 

そして相手が次の矢をつがえている隙を突いて裂孔の気合と共にそれを思いっきり投げつける。当たれば岩すら弾け飛ぶのではないかと思うほどの勢いを付けてボウガンの矢はその射手の頭部分を綺麗に避けてその先の断崖絶壁へと虚しく落ちていった。

射手はそれに一瞥もくれずに矢をつがえ直して構えるとーー同時に頭に鉛玉を食らって永遠に沈黙する。所謂ダンテの照れ隠し、というやつだ。少し過激にすぎるが。

 

「今のモリソンが見てたら大笑いしてただろうな...クソッ、考えただけでイラつくぜ...」

 

ダンテ自体は別にダーツが苦手という訳ではないのだが勝負事にはてんで弱かったりする。例えばさっきのように勢い付けすぎて外したりレディに邪魔されたり何かと金が絡むと運が無くなる男がダンテだ。今の外し方は完全に素であるのは秘密である。

そこから正面に行けば崖沿いの景色が良さげな道に、右に行けば水浸しの道に繋がっていた。どちらに行きたいかと言えばそりゃあ景色の良い方であってコートが濡れるような道には行きたくないのだが...どうもあっちには何かある気がすると直進する予定だったのを変更して水路へと向かう。

すると地面からぼうっと橙色をした文字の羅列が現れる、不思議と読み取る事が出来るそれは何かしらのメッセージであるのだろう。

そこにはこう書かれていた。

 

 

引き返せ

 

 

「成る程、『どうぞお通り下さい』か。ご親切にどうも」

 

どこからともなく薔薇を取り出してそのメッセージに投げつけ先へと進む、と、そこには青い結晶を携えた巨大な生き物が佇んでいた。

一見すると小山のように見えなくもない青い生物はダンテの気配に気付いたのかのっしりと振り向きこちらを見る。全身から余す事無く殺意を振りまきながら。

 

「トカゲか...こっちにいる奴よりもデカイな。後綺麗だ、パリコレ出場予定だったのか?こりゃ邪魔して悪かったな」

 

ペラペラとダンテが喋っている間にもそのトカゲは身体を持ち上げていく、小山ほどであった大きさは伸びをする事で更に大きさを増しており、更にダンテの興味を引いた。ニヤリとダンテは笑うと背からリベリオンを抜きはなちゆっくりと構えていく。それを待たずして結晶のトカゲはこちらへと勢いよく身体を丸めて車輪の様に迫ってきた。

ガリガリと地面が削れていく様を見るに相当あの結晶は硬いのだろう。だからこそダンテはアレを敢行した。

そう、魔剣教団でメガスケアクロウ相手に放ったあれを。

 

「ダンテ選手、大きく振りかぶって...」

 

脚を一本にしてリベリオンをバットのように構え、その車輪を待ち構えるその様子は正にメジャーリーガーだ。無論見よう見まねの為に色々と違う場所はあるのだがそんなものは気にしない。大事なのは、結果だ。

 

「ーー打った!!」

 

リベリオンと結晶の車輪がぶつかり合い、大きな火花がリベリオンから飛び散る。また結晶の方からも青いつぶさな破片が勢いよく弾けていた。

と同時に余りの衝撃に耐えきれなかったのか背に生えた結晶を砕け散らせながらそのトカゲは墓所の遥か向こうへと飛んで行ってしまった。ダンテは知る由もないがアレは結晶トカゲという臆病な生き物が結晶を喰らい過ぎて大きく成長した物。

確かに巨大で力強いが過酷な魔界を生き抜く魔物達と比べるとまだ少し弱かったのである。

そうとも知らずにかなりの力を込めてリベリオンを振るったのだから、あのトカゲが綺羅星となってしまったのは当然だろう。

 

「これは...場外ホームランって奴だな、そして景品はこの綺麗な結晶か...悪くない」

 

そう言って上機嫌に結晶を魔力還元して身体にしまうとその場を後にした。

全く面白い世界だ、そう考えながら断崖絶壁の道へとダンテはゆっくり向かっていくのであった。

 

 

 

 

「あったけぇ...」

 

 

尚、篝火を見つけて一瞬でその歩みを止めてしまったのだが




ダンテさんはなんか苦戦するビジョンが全く浮かばないので薪の王あたりまでは苦戦のくの字も無さそう(小並感)
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