ドールズフロントライン4.3 -IRIS-   作:仲村 リョウ

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この戦争のことを知りたい?


エピソード1:鉄血少女
プロローグ


僕はとある前線基地へとやって来ていた。ある一人の兵士を探しに……

ここ406戦術陸上部隊は通称"懲罰部隊"と呼ばれている。兵士達が罪を背負い放り込まれる犬小屋………一般の人達はそう言うだろう。

しかし、僕が探している兵士はそんな事を気にしないばかりか、自分の命を顧みる事なく戦場を縦横無尽に走っては何百人という人命を救ったという。正規軍なら最高の勲章を手に入れれる名誉だろう。

 

しかし、懲罰部隊は例え一人が英雄的行動をとったとしても記録には残らない。罪人は人間として見られておらず既に戦死扱いとなっているからだ。残念ながらそれが今の秩序というものだろう。

だが、彼の存在は僕が勤務している会社のある正規軍統制街では話題になっている。彼に救われた兵士が家族や友人に話してのが広まってのだろう。

 

"不死身の衛生兵"

 

"死者蘇生師(ネクロマンサー)"

 

"ビッグメディック"

 

彼の呼び名はいろいろあるのだが、不思議と名前は誰一人と知らなかった。

 

そんな英雄に興味をもった僕は彼を知ろうと406戦術陸上部隊へと足を運んだのだ………

 

そして僕の前には彼を知る男が……回しつ続けているカメラの前に座っている。

 

 

「彼か?ああ………ここじゃあ有名な奴だったよ。自分の命よりも他人を優先する………俺達は死に急ぎ野郎って呼んでいたな。ここが懲罰部隊ではなくガチの正規軍なら最高の衛生兵だったのは間違いないな。なにせ、あいつ一人で何百人という命を助けたんだからよ」

 

どうやら何百人もの命を助けたのは本当の話のようだ。

男はそう言いながらもどこか遠い空の向こうへと眺める。

 

「俺ら懲罰部隊の命なんざどうでもいいし、生きることすら期待されていない。人海戦術で突っ込むことなんざザラじゃない」

「銃での戦争でそんな事ありえるのか?」

「ありえるんだよ。罪人の数が増えれりゃあ、お偉いさんは縮小を図る。俺達は捨て駒なのさ」

 

それが本当ならその上官はとんでもない奴だろう。いくら罪を犯した人間とはいえ人間には変わりない。

 

「だが、奴はそんなこと御構い無しだ。俺達が何であれ命を助ける。それが奴のモットーなんだろう」

 

『実際に俺も助けられたしな』と男は笑いながらそう言った。

 

「どうして彼は懲罰部隊に?」

「さあな。いろんな噂があるがどれが本当だか………上官を殴っただか、政治家を殺しただとか………色々さ」

 

そんな笑えない事を男は平気で笑いながら言ったのだ。僕はただ苦笑いで返すしかなかった。

 

「それで………彼は一体どこに?」

「ここにいないことはあんたも分かってるだろ。ある日のことなんだが………いつものように戦場から帰ってきたら知らない服を着た連中がいやがったんだ。赤ワインみたいな色をしたトレンチコートを着てモノクルをかけた女性だ」

「それって軍部の人?」

「いや。俺が見た限りそうじゃないだろうな。見慣れない黒いワッペンをつけていたし、何より彼女の護衛がそうじゃなかったんだ」

 

護衛がいたということは立場的には上の人物なのだろうか?

 

「そいつら俺よりも体の小さい女の子だったんだ」

「女の子?」

「ああ。兵士みたいに銃を持っててな……なんつーか………」

「………戦術人形」

「戦術人形………ああ、そうか」

 

僕の言葉にピンときたのか男は何処か納得げに笑みをこぼした。

 

戦術人形………第三次世界大戦以降から高速に普及した人形ロボットだ。その中でも戦闘に特化したものは戦術人形と呼ばれている。

 

民間軍事企業(PMC)の連中か」

 

戦術人形を従えて連れ回るPMCが思い当たるなら一つしかなかった。

 

「ありがとう。これはお礼の物だ」

「おっ?」

 

僕はそう言って彼にある箱を放り投げる。

 

「煙草か………しばらく吸ってねーな………」

 

文明は残ってるものの世紀末と化したこの世界にとって金ではなく物々交換を行うのは珍しくもない。特に嗜好品は取引材料にはうってつけのため、欠かさず持っていることにしている。

 

「気をつけて行けよ。えっと………」

「イーサン……イーサン・アーネル」

 

こうして僕は戦術人形を指揮し戦っているPMC"グリフィン&クルーガー"社へと足を運ぶのだった。

 

 

グリフィンS09地区。

 

辿り着くとそこは軍事施設かと思えるくらい少し大きめな基地だった。飛行場もあり、ちゃんと検問所もある。

 

そこで僕はここに入るにあたっての身体検査を受けていた。私服の上からプレートキャリアを着用した社員が僕の全身をくまなく金属探知機で調べ上げている。そして、もう一人の社員は僕が変な動きをしないか両手にライフルを持っては警戒している。こちらに銃口を向けられていないだけ緊張的にマシだった。

しかし、彼らの行為は当然のものだ。ここは軍事施設も同然の場所なため、警備が厳重なのも頷ける。

 

身体検査が終わるとカメラは没収された。社員は『少し待て』とだけ言い残し、詰所へと入っていく。誰かと連絡をとっているのだろうか?

 

すると基地の方から軍用ヘリコプターが僕の方向へと二機飛んでくるのが見える。

日差しを一時的に遮ったヘリは僕が来た道の方へと飛び去っていった。

 

しばらくすると詰所にいた社員が出てきた。

 

 

………どうやら指揮官は不在らしい。




プロローグはとあるカメラマンの語りで進んでおります。次回から主人公である戦える指揮官のご登場です。
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