ドールズフロントライン4.3 -IRIS-   作:仲村 リョウ

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ドルフロコメント

深層映写クリアできなかった……


エピローグ

暗くなった一室の中。スクリーンへと投射された映画を俺は片手にピザを持ちながら見ている。いつもなら執務室に篭って報告書やら書類やらを纏めているのだが、今日は事情があって俺には似合わない日常を過ごしているのだ。足の膝にはピザの 入った箱を置き、左の座席には無心に映画を見ているM4に右の座席には食い入るように鑑賞するアイリスの姿がある。

先程言った通り、こうなったのには事情があるーー

 

 

夜間作戦を終えた朝のことだ。俺がいない間にヘリアンがアイリスの尋問を進めており、それを(もと)に上層部へと報告を済ませると彼女の保護が認められたのだ。その報告を受けた俺はアイリスを預かっているペルシカの元へと向かった。ペルシカもアイリスの保護が認められたことを知っており、身体に何の異常もないことから俺と同伴するようアドバイスされたのだ。彼女曰く、ここの生活に慣れさせろということらしい。俺にはそんな観光を目的としたナビゲートは出来ないため他の奴らにやらせろと反論したのだが、そこはまたペルシカ曰く、彼女が一番信頼しているのは俺だという。

理由はどうあろうと、アイリスのことは俺に任せたい様子だ。

手錠が外されまともな服を着せられたアイリスは初めて見た時と印象が大分違って見えた。改めて見ると、本当に無垢で純粋な子供に見える。鉄血工造で目立つ白い肌もなく、戦争という文字も知らなさそうな容姿……彼女が鉄血工造にいたと忘れそうなくらいに。

 

そして、アイリスと共に基地内を歩くとペルシカが言った言葉の裏の意味を理解してしまう。基地内にいる人形達の目が痛く感じるのだ。それも当然だろう。元々敵であった人形がこんな早くに保護が認められて堂々と歩くなんて誰もが理解できるわけではない。もし、隣が俺でなければ言葉の暴力が始まっていたのかもしれない。そんな事はないと願いたいところだが。

 

施設を案内する過程で今日は映画の日だということを思い出し、観に行くことをアイリスに提案したところ、興味があったのか即肯定。気まずい視線の中で案内するよりは大分マシだ。

M4とは途中で出会い、誘ってみたところアイリスがいることも満更でもない様子で肯定してくれる。

 

そして、現在に至るーー

 

俺達が今見ている映画は金属生命体と地球人との友情を描いたアクション映画だ。車から二足歩行のロボットへと変形して闘うシーンは特に見ものであり俺でも面白く感じてしまう。

何十年も前ーー第三次世界大戦が始まる前にはこういった娯楽が無数にあったのだろう。映画、ゲーム、カジノ、音楽………日常にあった当たり前のものがなくなっていく瞬間を当時の人達はどう感じていたのだろうか。

 

「指揮官………」

「なんだM4」

「その……仕事はしなくてもいいのでしょうか?」

「たまにはいい。特にお前らは最近まで酷い状況の中、立たされていたんだろ」

「そうですが………」

「こちらとは迷惑とも思ってもいねー。もし、迷惑だと感じてんなら休んで次に備えてろ」

「…………」

「人間の感覚はまだ分からないと思うが休養は必要だ。まあ………細かいことを言うのは面倒だから簡潔に言う。休むことを覚えろ」

「善処………します……」

「善処ではなく覚えろ。いいな?」

「は、はい」

と言うが俺も人のことは言えない。指揮官をやっている以上デスクワークという仕事は避けられない道であるため休むという選択肢が中々出来ないのだ。

今こうして悠々と映画を鑑賞できるのもカリンのおかげだ。アイリスの件とのことを連絡すると彼女は「デスクワークはこちらでやっておきます」と言ったのだ。何かあれば副官であるスプリングフィールドもいるので大丈夫だろう。

 

しかし、俺が前線へ出てる分、事務仕事はカリンに任せてばかなりなため申し訳ない気持ちが出てくる。

 

「………あの、指揮官」

「ん?」

「それを一つ貰ってもいいですか?」

 

M4は俺の膝の上に載せているピザの入った箱へと指を差した。

 

「ああ。俺一人で食べるには多すぎる」

「ありがとうございます」

 

彼女はそう言うとピザへと手を伸ばして一つだけ取る。溶けるチーズの糸を引き剥がし、ゆっくりと口元へと運んでいく。

 

「………美味しいです」

「だろうな」

 

そう言いながら俺も一切れを口の中へと放り込んだ。酸味のあるトマトソースにまろやかなチーズの味が合わさってこれぞジャンクフードって感じの味だ。

 

「凄いね……昔ってこんなロボット達がいたんだ……」

「いや、これはCGというやつで実際には存在していないぞ」

「そうなの!?」

「ああ。俺も詳しくは分からないがパソコンでシーンに合わせて付け足しているらしいな」

「へぇ~……昔の人間って器用なんだね」

 

この一作を作るのに何億ドルという金がかけられているらしい。俺達にとったらそんなものに金をかけるのはあり得ないというのが本音だ。ジェネレーションギャップ……というよりは、時代や世界がそうさせたのだと思う。明日を生きるのに精一杯な今の人間は娯楽に金をかけるよりもELIDや鉄血工造に対抗するための兵器、インフラ、食料や水の確保に金をかけるだろう。こうして俺が片手でピザを食べれるのもグリフィンの功績も大きく金や物資が届いているからだろう。

 

(この後はどうするか……)

 

基地内について説明することはもうない。この映画も終わればもうやる事はないと言ってもいい。とはいえ、このまま映画を連続で見続けるのは流石に疲れる。なにより偏頭痛が酷くなるのだーー

 

 

「ここが……指揮官の部屋……」

「まあ、なにもないとこだが…ゆっくりしてくれ」

 

映画が終了し、最後にやってきたのは俺の自室だ。生活用品を除き、飾りものは写真立てやカレンダーくらいしかない殺風景な部屋だ。

 

「M4は来るのは初めてだったか」

「はい。他にも誰か来られるのですか?」

「ああ。あの作戦の後、M16が俺の部屋に飲みにきやがった」

「M16姉さん………」

 

M4は申し訳なさそうに頭を抱える。仕事に支障がない程度には抑えて飲んでいたが正直、作戦後のジャック◯ニエルのような度数の高い酒のロックで飲はキツイ。さすがの俺でもすぐに酔ってしまった。

 

余談だが俺はジョニー◯ォーカーが好みである。

 

「……M16姉さんと仲がいいのは少し驚きました」

「仲がいいというよりは……飲み仲間がいないのか、向こうから来るのが正解だ」

 

そのまま喫茶店でスプリングフィールドと話しておけばいいのにと思う。まあ、理性があるなら416よりはマシだと言える。あいつは飲ますと本当に面倒くさい。もう言葉にするほど面倒くさいのだ。なにが面倒くさいと気になるだろうが割愛させてほしい。

 

「……すみません指揮官」

「気にするな。正直、誰かと飲むのも悪くはないと思ってる」

 

ふと思えば誰かと一緒に酒を飲むのもしばらくはしていなかった。それに、酒を飲むこと自体も久しぶりだ。酔ってしまったのも、誰かに愚痴を言ったのもーー

昔の俺が見たらなんと言うだろうか。きっと、随分と甘ちゃんになってしまったと呆れられるだろうな。

 

「ねえ、アヴェンジャー。これは?」

 

ふと、アイリスの声で我に返った。視線を動かすと、アイリスはテレビに繋がれたゲーム機に興味を示している様子だ。

 

「ゲーム機だ。ったく、RFBの忘れもんだな」

「し、指揮官の部屋って他の人形の方達が訪れますね……」

「ああ……正直なところ困ってる」

 

UMP姉妹は夜這いまがいなことで忍び込み、RFBは呑気にできるという理由でテレビを占領してはゲームをしに来て、M16はただの晩酌の付き合いで飲みにくる……そんな様々な理由で俺の部屋へとやってくる人形は多い。おかげでそいつらの暇つぶしに付き合う羽目になる為、休みがあってものんびりと過ごせたことはない。

 

「……せっかくだからやってみるか?」

「えっ?」

「だ、大丈夫なのでしょうか?勝手に触って怒られたりしませんか?」

「大丈夫だ。あいつが怒ったところで怖くもない。それに、肝心のセーブデータに手を出さなかったらなにも言ってはこないだろう」

 

俺はそう言いながらゲーム機を起動させる。最初にメーカーのロゴが表示されると、ユーザー選択画面ーー俺のアイコンを選択して、メニュー画面を表示させる。中には様々なゲームタイトルが並んでおり、それを選択すればゲームを始めれるというものだ。過去にはディスクがあったのだが、RFB曰く今では現存しているものはないらしい。

 

「どれかやってみたいかはあるか?」

「う~ん……アヴェンジャーに任せようかな?」

 

お任せかーー

 

最近やっていたFPSは難しいだろうな。なら、はじめての奴でもできるパズルゲームを選択するか。

 

「これは?」

「ランダムに落ちてくる色の付いた二個のブロックを四つ組み合わせて消していくパズルゲームだ」

「へぇ~……面白そうだね」

 

コントローラーを手に取るともう一つの方をアイリスへと手渡す。ゲームが起動するとメニューから対戦を選択する。

 

(最初のうちは少しだけ手加減しておくか)

こう見えてもRFBに巻き込まれる形で共にゲームをすることが多い為、腕に自信はある。かといって、初心者に本気を出すほど俺も大人気なくはない。負ける気もないが。

 

ゲームが始まると左右に二分された画面からそれぞれ色の違うブロックが落ちてくる。

 

「ボタンを押したら横にもできるんだね」

 

アイリスはそう言うとボタンを何度も押してはブロックを回転させる。

 

「あっ。消せた」

 

同じ色を四つ揃えれたのか効果音と同時にブロックは消され、こちらへ邪魔となるブロックが送られてくる。

 

「なるほど……ルールは大体分かったかな」

「結構シンプルなんですね」

「最初のうちは……な」

 

しかし、何度もやっているとどんなシンプルなゲームでも奥が深いものだ。

俺はあえてブロックを消さずに積み上げていき、次第にはゲームオーバーラインへと迫ってくる。

 

「なにしてるの?」

「まあ見てろ」

 

俺はそう言うと、ギリギリのところでブロックの色を揃えて消した。すると、消されたところに落ちてきたブロックがまたも色が揃っては消していきそれを繰り返している。

 

「えっ?えっ?ちょっと待って!そんなこともできるの?」

「パズルゲームって言っただろ?ただ単に一つずつ消していくんではなく、どう積んでいけば効率よく次々と消していくのかが重要だ」

「へぇ~……って、ボク負けてる!?」

 

このゲームの特徴は消していけば消していくほど邪魔となるブロックを落とせるというものだ。

俺もアイリスの気持ちはよく分かる。RFBと初めてやった時は少しだけ驚いてはいた。まあ、2~3回目以降から普通に勝てるようになったが。

 

「M4。お前もやってみるか?」

「えっ?私は………や、やってみます」

 

俺からコントローラーを受け取るとM4は俺の横へと座る。

 

「よーし。負けないぞ」

「わ、私も負けません」

 

左右にいる二人が軽く火花を散らしたのだった。

 

 

 

「やった!勝った!!」

「むぅ~……」

 

初めてやるゲームに勝利したアイリスは両腕を上げて喜んでいる。しかし、対照的に負けてしまったM4はコントローラーを握りながら頬を膨らませて悔しそうにしている。

しかし、M4が悔しそうにするのは少しだけ意外だった。

 

「もう一回です」

「よーし。次も勝つぞー」

 

この後両者とも勝ち負けを繰り返しては何度も勝負を挑み、日が暮れるまで対戦を続けたのだった。途中、ソファーに行って寝てしまったが、沈みゆく意識の直前に笑い合う二人の姿を見て思わず笑みを浮かべたのは内緒だ。

 

人形もーー本当はこのようにあるべきなのだと……

 

エピソード1:鉄血の少女END




用語集

≪ジャック◯ニエル≫
アメリカの有名な酒造メーカー。M16の好物でもあるウィスキー。第三次世界大戦が始まる前まではスーパーなどで売られていたが、現在は貴重な嗜好品の一つとして扱われており物々交換としても用いられることもある。

≪ジョニー◯ォーカー≫
こちらも世界的に有名なウィスキーメーカー。上記の通り大戦以降から貴重な嗜好品でもある。アヴェンジャーはこちらの方が好みらしい。

≪理性があるなら416よりはマシ≫
アヴェンジャーの言葉からとるに、HK416は酒癖が悪いらしい。以前に彼女と飲んだ以降からカフェ&バーには直々に"DO NOT Sell Liquor To HK416!"と張り紙を出すくらい……余談だがそれを見たHK416 は赤面してアヴェンジャーを追いかけ回したとかなんとかーー
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