ドールズフロントライン4.3 -IRIS-   作:仲村 リョウ

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全てはここから始まった………


案件1-1:代役戦争

代役戦争

 

2061年 13:00

アヴェンジャー戦術指揮官

グリフィン&クルーガー

S07地区 グリフィンの基地から南西へ10km地点

 

ワスプ1≪こちらワスプ1。敵影は見当たらないがこのまま飛行しても大丈夫か?≫

 

「ああ。AR小隊によると作戦地点まで敵影の姿はないとの報告だ。ルートの変更はない」

 

ワスプ1≪ワスプ1了解≫

 

「416。いい加減この寝坊助を起こせ」

「起きなさいG11」

「んん~………あと5分………」

「んなに待ったら作戦時間余裕で過ぎるわ」

「あいて!」

 

ヘリに登場するなり俺の膝に頭を乗っけて眠っていた少女に俺は軽くチョップをくらわす。

しかし、少女は声はあげるものの起きる様子はない。

 

「………お前だけラムレーズンアイス抜きにするぞ」

「起きたよ」

 

上半身だけを向くっと起こしたG11。避ける準備をしていなかったら危うく顎に直撃するところだった。

 

「あんた………ちょろいわね」

「なんなりと~………おやつ抜きにされるのだけは勘弁」

 

そんな彼女の会話を聞いて思わずため息をこぼしてしまう。

人形にしてはよく人間に出来すぎている。味覚までつけなくてよかっただろうにと思うが今更。

それに、今では彼女達の個性が見られて飽きなくて済むという気持ちの方が大きいため俺の中ではどうでもいい話となっている。

 

「指揮官。さっき検問所にお客さん来てなかった?」

「みたいだな」

「一般の人みたいだったよ?」

「んなわけあるか。ここ民間軍事企業にやってくる連中なんてろくな奴がいねーよ」

「前みたいなハゲ親父とかみたいにね」

「9。言い方」

 

45の指摘に9は反省することなく、テヘッと舌をちょこんと出した。

 

「違いないな」

「指揮官も~」

「まあまあ。45姉も本音はキモいとか思ってたでしょ?」

「ん~………そうね」

「思ってたのね」

 

45の言葉に416が静かにツッコミをいれた。

実際、ハゲ親父だとかキモいと言っている人物は正規軍軍部の中では偉い人だ。まあ、俺にはどうでもいいが…………

 

しかし、うちの部下である彼女達戦術人形をいやらしい目で見てたのは別問題だ。あの時、ヘリアンがいなければ風穴空けていたところだった。

 

「AR小隊はちゃんとTCD(Tactical command device)を設置したのかしら?」

「じゃないと困る」

「連絡をとってみたら?」

「そうだな」

 

俺は無線の周波数をAR小隊の隊長であるM4へと無線を繋げた。

 

「M4。こちらアヴェンジャー。TCDの設置は完了したか?」

 

M4A1?≪はいはーい!設置終わったよー!≫

 

この声……SOPだな。

 

「おい。なんでお前がM4の無線に出てるんだ」

 

M4A1≪ちょっとSOP!無線機返してください!≫

M4A1?≪ああん!ちょっと待っ………≫

M4A1≪すみません指揮官≫

 

「ああ。気をつけろよ」

 

無線越しにはSOPが駄々をこねてる声が聞こえてくるがとりあえず無視だ。

 

M4A1≪CPの設置ですがSOPが言った通り完了しています。場所はマップで表示されているはずです≫

 

「確認したよー指揮官」

 

対面左斜めに座っていた45がヘリ内にあるモニターで確認し終えたのか、俺に手を振りながら報告してくる。

 

「確認した。これから………」

 

M16A1≪M4敵だ!≫

M4A1≪!?こんな時に……≫

 

「M4何があった?」

 

M4A1≪すみません指揮官。敵に増援を呼ばれていたようです………≫

 

「わかった。着陸地点を変える。お前らは俺達が到着するまで持ちこたえろ」

 

M4A1≪はい………SOP!前に出過ぎないで!≫

 

ここで通信は終わる。

 

「AR小隊は大丈夫かしら?」

 

416がなにやら棘かかった様子で声を漏らした。

 

「ああ見えてG&K(グリフィン&クルーガー)きっての精鋭だ。あいつらなら大丈夫だ」

「だといいんだけど」

「もうー………そんなにツンツンしないの416」

「抱きつかないで9」

「はぁ…………」

 

お前らも大丈夫かよと思ってしまう。

 

「聞いてたなワスプ1。着陸地点変更だ。そうだな………北東にある大通りにしよう」

 

ワスプ1≪ここにはヘリが降下できるスペースはありませんが………≫

 

「ヘリボーンで行く」

 

ワスプ1≪了解≫

 

ワスプ1がそう返答すると、先頭にいたヘリワスプ1が右へと傾斜させ進路を変える。俺が乗っているワスプ2も同じ動作に入り右へと傾斜し、ヘリは重力によってドアが全開した方へと引っ張られる。

 

「到達まで30秒だ。各自準備しろ」

「はーい」

 

俺はバラクラバを鼻元まで隠しヘルメットに装着してあるゴーグルを目へとかける。

 

「G11………寝てたわね?」

「お、起きてるし」

「ヘリボーンなんて久しぶり」

 

などと404小隊らは俺の言葉を聞いていないのか余裕の様子だ。まあ今回は仕方ない。

今回の任務は正規軍からで。鉄血工房の人形が廃墟となった街で活動があるとの報告を受け哨戒しろとの依頼。対して()な任務ではないのだ。

 

表向きはな………

 

「目標地点到達」

「よし。ヘリボーン開始!」

 

左右のドアからロープが降ろされ、俺はそれにしがみつき、スムーズに下へと降りていく。

 

下へ降りると俺は小銃を構え周囲を警戒する。

俺の次に降りてきたG11が地面に辿り着くと小さい体をトコトコと揺らしながら俺の方へとやってきた。

 

「全員降りたか?」

「うん。第一部隊の方も全員降りたみたいだよ」

 

G11がそう答えると、俺は載ってきたヘリに向かってハンドサインで行ってもいいぞという合図を出した。

 

ワスプ2≪ご武運を≫

 

パイロットはそう言って街から飛び去っていく。

 

ヘリのローター音がなくなるとそこは風が吹く音以外なにも聞こえない不気味な場所となった。かつてここでは人が生活を送っていたのが不思議と思うくらいの風景だ。恐らく第三次世界大戦以降から放棄されているのだろう。

 

「第一部隊は作戦通りに北の病院跡を目指せ。そこを拠点にし周囲を警戒しろ」

 

グリズリー≪了解、指揮官≫

 

「あと98。RFBをよく見張ってろ。あいつはすぐゲームの真似事をしたくなるからな」

 

Kar98≪了解ですわ指揮官さん≫

 

「頼む」

 

ここからはワスプ1に搭乗していた第一部隊とは別行動だ。俺はというと404小隊のメンバー、UMP姉妹の二人とG11、HK416と行動を共にする。

 

「404小隊はこれから俺と共にAR小隊の援護に向かう」

 

「「「「了解」」」」

 

リーダーであるUMP45を先頭に404小隊は行軍を始める。俺はG11と416に挟まれる形で歩くことになり、9は一番後ろに背後を警戒している。

 

「それにしても不気味な街ね。どうして正規軍は私達にここへ哨戒するよう依頼を出したんだろう」

「人が足を踏み入れない分、敵にとっては隠し事に適しているからな。それにあいつら正規軍は近いうちに鉄血工房の基地に向けて大規模侵攻を行うらしい。あまり自軍に損害を出したくないんだろう」

「なるほどね」

 

9の疑問については恐らくこの任務に駆り出された全員が思っていることだろう。俺も疑問だ。わざわざ俺達を出さずともこのような小さな街くらい正規軍ならどうとでもなる。

 

(ペルシカの言う通り………きな臭いな)

 

正規軍の中で俺達のような民間軍事企業をよく思っていない連中もいる為油断はできない。かといって奴らは鉄血工造と組んでまで俺達をはめようとする気は起きないだろう。

 

なにせ鉄血工造自体人間と組むことはないからな。

 

警戒はしておくか………上記通り敵は鉄血工房の人形だけとは限らないからな。

 

「TCDまでどのくらい?」

「ここから東へ300mね。銃撃も聞こえてるし近いわ」

 

俺はデバイスを取り出し、投射映像を映し出す。TCDの反応は416の言う通り東へ300m行ったところに反応を示してる。

 

「………不気味ね。AR小隊は接敵してると言うのにここは静かすぎる」

「そう?向こうに敵が集中しすぎてるんじゃない?」

「あなたは楽観すぎよG11。鉄血工造だってバカじゃないの。前のようになりたくなかったら少しは………」

「止まって」

 

先頭にいた45が拳を握りしめ俺達に止まるようハンドサインを促す。

 

「どうしたの?45姉」

「指揮官」

「ああ………」

「え?え?なに?」

 

どうやら状況が分かってるのは俺と45だけのようだ。

 

「………AR小隊は罠のようだな」

「そうみたい」

 

くそ。鉄血工造め………やってくれるな。しかもこのやり方………あいつしかいない。

 

「全員建物に避難しろ!」

 

そう叫んだ瞬間。前方の建物のバルコニーから機関銃が乱射される。

俺達は機関銃が放たれる前に走り出したお陰で被弾することなく近くの建物へと身を隠すことに成功する。

 

「くそっ!最初からはめられてたな!」

「ええ……この陰湿なやり方………」

「イントゥルーダー………」

「敵は!?」

「VespidとRipperね………ザコが」

 

といっても数的にはこっちが圧倒的に不利だ。作戦を変えるしかない。

 

「M4聞こえるか!」

 

M4A1≪はい!増援は………≫

 

「ネガテイブ。俺達も敵に遭遇し身動きが出来ない状態だ」

 

M4A1≪そんな………≫

 

「よってTCDを放棄。お前達は第一部隊がいる病院跡に向かえ」

 

M4A1≪しかし、TCDを放棄すると………≫

 

「戦術リンクがなくても何とかなる。それよりもお前達の方が大事だ。バックアップがとれないんだからな………」

 

AR小隊の構成員は他の戦術人形と違って俺指揮官がいなくても長時間独立して任務を遂行することが可能だ。その為、指揮能力及び戦闘力が高く設定されている分、戦術人形としてのバックアップがとれないというデメリットが存在する。

つまり、破壊されてしまい戦術人形として復旧されても彼女達は別人となってしまうということだ。

 

M4A1≪………わかりました≫

 

「そんな悲しそうにすんな。お前達の命は一つなんだ。だから無駄死にだけはよせ」

 

M4A1≪!?………はい!≫

 

「俺達も何とか切り抜けて病院跡へ向かう。ああ、TCDは破壊しておけ。敵に鹵獲されたら面倒なことになるからな」

 

M4A1≪了解です≫

 

さて、俺達も行動を起こそうと思うが………

 

「さっきから痛えぞ45」

「なーに熱いセリフ言ってるの?」

 

何故かドス黒いオーラを放ちながら俺の足を踏みつける45。人間の痛覚を考えて踏んでいるからマシだが。

 

「意味がわからん」

 

それが率直な本音だ。

 

「指揮官!私がいるのにぃー!」

「9は抱きつこうするな!状況分かってんのか!?」

 

逃げ道のない建物に乱射されている中、よくそんな行為が出来るなと思いつつ抱きつこうとする9をなんとか引き剥がす。

 

「指揮官。どうします?」

「全員を相手してる暇はない。逃げ道を作るぞ」

 

俺はバックパックの中からC4を取り出すと相手の射角に入らないよう後ろの壁へと貼り付ける。

 

「伏せろ!」

 

C4から離れ起爆させると耳をつんざくような爆音とともに瓦礫が飛びかう。その中、416が俺に覆いかぶさり彼女の胸が顔と密着してしまう形になってしまう。

 

俺を瓦礫から守ろうとした行動とはいえ………

 

「指揮官。行動がいつも大胆すぎます」

「この状況でそんなこと言ってられるか。45と9。先に行って索敵してこい」

 

「「了解!」」

 

416が俺から離れると45と9を援護する為、俺は自分の小銃を手に持ち、外にいる敵へとフルオートで発砲を始める。

 

「G11!手前のバルコニーにいる機関銃を片付けろ!」

「うん!」

 

事前に確認していたバルコニーには目立たないようにかボロボロな布で覆われていた。カモフラージュのつもりなんだろうが、それがかえって怪しかったのだ。

警戒せずにこのまま歩いていたら蜂の巣にされていたに違いない。奴らも昔のゲリラみたいな戦法をとるもんだ。

 

 

しばらく撃ち合いをしていると急に奴らの銃撃が止まり、先ほどの不気味な静けさが漂う。

 

「やっぱり貴方ならここに来ると思ったわ………アヴェンジャー」

「ちっ………イントゥルーダー………」

 

顔を見なくても声だけで分かる。この食えない口ぶり………間違いなくイントゥルーダーだ。

ということは、この地域での指示系統は全てこいつが行なっているのだろう。面倒くさい………

 

「派手な出迎えじゃないかイントゥルーダー。そこまでして俺達に何の用だ?」

「ふふふ。気に入ってくれたかしら?貴方達を出迎えるならこれが一番かと思って」

「………違いない」

 

俺はバックパックから片手鏡を取り出し416へと手渡すとイントゥルーダーの方へ向けるよう指示を出す。

 

「用という用はないんだけど………貴方達にここにいてもらっては邪魔だから歓迎してあげたのよ」

「言ってること矛盾していないか?」

 

これからやる事を悟られないように俺は自然にイントゥルーダーと話しながら元折れ式グレネードランチャーを取り出す。

 

「あら。私なりの善意よ?」

「わけが分からんな」

 

苦笑いを浮かべながらそう言うと。

 

(416。合図を出したら逃げるぞ)

(了解)

 

小声でそう言うと416はG11にハンドサインで俺がしようとしてることを伝える。

 

「………ところで提案なんだけど」

「なんだよ」

「アヴェンジャー。私達(鉄血工造)の元へ来ない?」

「「なっ!?」」

「…………」

 

416とG11は驚いた様子だ。俺も内心驚いたものの顔には出さなかった。俺が動揺してしまっては二人の行動に悪影響が出るかもしれないからだ。

 

「唐突だな。お前ら鉄血工造は人間を虐殺することしか脳がないんじゃないのか?」

「心外ね。まあ、そう思うのも無理はないわ。以前の私達ならこうして貴方と話すこともなく蜂の巣にしてたわけだし」

「さっきまでされかけたがな」

「貴方達ならどうとでもなるじゃない」

 

敵ながら買いかぶりすぎだ。人間は当たり前だが戦術人形だって撃たれどころが悪ければ死ぬんだぞ。

 

「でもね。今の私には感情がある。有効活用出来そうなものがあれば利用するものよ」

 

有能じゃなくて有効か。あくまでもこいつらは人間と組んだとしても利用しているだけの概念でしかないのか。

 

「で、どうするの?アヴェンジャー………」

「期待されているようで嬉しく思えばいいのか複雑だが…………断るに決まってんだろバーカ」

「!?」

 

俺がそう言い放った瞬間、身体をカバーしたままグレネードランチャーだけをイントゥルーダーへと向けて迷わず発砲した。

奴に命中したかは分からないが爆音と衝撃が伝わってきたということは少なからず命中しただろう。少しだけだが隙は出来たはずだ。

 

しかし………

 

「いってぇ!くそっ!」

「そんな撃ち方するからよ」

 

何十年前かくらいの漫画でこのような撃ち方をしてピンチを乗り切った場面を思い出してやってみたが………散弾銃と擲弾発射器が反動が違いすぎだな。どっちもどっちだが下手すれば指の骨が折れる。

 

「いいから行くぞ!あいつがそんなに待ってくれるわけがない!」

 

俺はそう言うと先ほどC4で吹き飛ばした壁穴から裏路地へと飛び出したのだ。

 

 

 

 

 

「まったく………やってくれるわねあの指揮官………そこがいいんだけどね。はぁ………やっぱり私は貴方が欲しいわアヴェンジャー…………ふふ。さてと、競争の時間かしら。彼らより先に奴を見つけなさい。出来たらだけどアヴェンジャーも捕まえてね。殺さない程度に……ね」




用語

TCD:"戦術指揮装置 Tactical command device"の略。戦術指揮官が戦術人形を指揮するのに必要な装置。設置することでJ-STARSとの情報を連携して地形や敵の位置などを把握し、指揮官が持つデバイスや拡張視(オーグメント・アイ)として映し出すことができる。通称戦術リンクと呼ぶ。しかし、データをリンクするには一度TCD本体に接続する必要があるため敵に狙われやすいという危険が伴う。
簡単に言えば、ゲーム本編マップのリアルバージョンだと思ってください。
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