ドールズフロントライン4.3 -IRIS- 作:仲村 リョウ
「45と9はどこまで行ったんだ!?」
「UMP45応答して!」
隙をついて逃げだせたのはいいが街中での逃亡は苦しいものだ。後ろからは追っ手の鉄血人形。路地に出ると待ち構えていた鉄血人形がこちらへ乱射………何回撃たれかけたことか。
しかし、ゲリラで現れる敵を走りながら的確に仕留めていく416がいるもんだからさすが自称完璧というだけのことはある。こんなこと言えばこちらが風穴あけられそうだから言わないが。
「指揮官。次はどっち!?」
「左だ左!」
路地の突き当たりの角を左へ曲がると建物内へと繋がる扉が表れた。開くといいが………
「蹴り破るわ!」
「無茶すん………」
そう言いかけた瞬間だ。彼女の加減のない前蹴りが扉を蹴り破った。
そういや戦術人形だということすっかり忘れてたわ。
UMP9≪指揮官!その建物から表通りへ出て!敵はあらかた片付けておいたから!≫
「9か。45は一緒なのか?」
UMP45≪いっしょだよー≫
ったく。こっちは命がけで追いかけられているというのに呑気な口調だな。
「あいた!」
「G11!」
G11が建物へと入った瞬間、左足を撃たれたのか表情を歪ませながらこちらへと駆け寄ってくる。
「撃たれたの?」
「うん………痛かったけど大したことないよ」
銃弾の一発くらい大したダメージに入らないらしく、G11の表情はいつも通りダルげな顔になっている。
「走れるんだな?」
「うん。少なくとも指揮官よりはね」
「ったく。減らず口を」
そう言いながら表通りへつながるドアを開けて外に出る。
「指揮官こっち!」
向かいの路地から9が声を張り上げながらこちらへ手招きをしている。
「これ………あいつらがやったのか」
「みたいね」
9がいる路地と通りの間には鉄血工造の人形達が無残な姿でバラバラになっていた。地面には赤色の液体が無残に飛び散っている。
戦術人形にも血があるが人工血液というものを循環しており、いわば燃料みたいなものだろう。補給と言いかたは俺にとっては複雑なのだが、一度人工血液を輸血してしまえば数年は持つらしい。だったら食べ物も食わないでもいけるんじゃないかと思うが、ここはあいにく彼女達の気分ということになるので割愛させてもらう。
「指揮官!大丈夫だった!?」
「ああ」
「ごめんなさい!呼びに行こうと思ったら敵に遭遇しちゃって………」
「いい。今は合流できたわけだ。前のことは気にするな」
すると後ろの壁に銃弾が弾ける音が鳴り響く。
危ねぇ………もう少しでヘッドショットくらところだった。
「指揮官は隠れて!貧弱なんだから!」
「貧弱で悪かったな!」
彼女達が銃撃戦をするなか俺はデバイスを取り出し目標である病院跡の場所を確認する。
「このまま路地を突っ切れば近いな」
「当然だけど敵さんも簡単には行かしてくれないわよ?」
45の言う通り。病院跡へ向かうにはこの路地から出て大通りを走るしかない。
「かといって回り道する暇もないわよ」
「416の言うこともごもっともだ。時間をかけるほどこっちの状況は悪くなるだけだ」
「そうなると?」
「強行突破だ」
-side M4A1-
「ねぇねぇ!指揮官達はまだなの!?」
「さっきから通信で呼びかけてるけど応答がないな」
「やられ………ちゃったとか?」
「ないない。指揮官って悪運強いから無事よ」
「証拠にさっきから銃声が鳴り響いてますわ」
私達AR小隊が敵と交戦し、CPを放棄してから10分が経過しました。
指揮官が撤退するよう指示を出した病院跡へ無事に辿り着くと、第一部隊がすでに確保しており何とか無事に合流………したのはいいですが、肝心の指揮官がまだ来ません。無事だといいのですが………
Avenger≪………たい!こ………アヴ……ジャー!≫
すると私の無線から指揮官の声がノイズ混じりに聞こえてきます。
「指揮官!」
Avenger≪……と……がったか!≫
間違いなく指揮官の声です。
Avenger≪………そ!……ぱが悪い………≫
すると無線越しから何かが殴ったのような音が鳴り響きました。
「指揮官!?」
Avenger≪やっとまともに聞こえるようになったか……≫
「あの……さっきの音は………」
Avenger≪気にすんな。無線機を殴っただけだ≫
と、自分がピンチな状況にも関わらず落ち着いた口調で話してくれます。
Avenger≪それよりもこれから大通りを突っ切る。援護してくれ≫
「みんな!指揮官がもう少しで大通りから出てくるみたい!援護します!」
私が声をかけると病院跡にいる全員が慌ただしく配置に着きます。
Avenger≪もう出るぞ!間違えて撃つなよ!≫
指揮官がそう言った瞬間、スコープの先には指揮官ともう一つの部隊が路地から飛び出してこちらへ走ってくるのが見えました。
すると、その後ろからは鉄血工造の人形達が指揮官達を逃がさないと言わんばかりに銃を撃ちながら追撃しているのが見えます。
「撃ち方開始!」
敵の距離は約150m………レティクルの中心から少しだけ上と向け鉄血工造の人形へ向けてトリガーを引きました。
フラッシュハイターから放たれる閃光と同時に銃弾が発射され硝煙の香りが漂う………
弾丸は重力の影響を受けながらも人形の頭部を撃ち抜き、人工血液が霧のように飛び散りその人形は地面へと倒れピクリとも動かなってしまいます。
「ごめんなさい………あなた達にチャンスはないわ……」
指揮官を守る為に私はトリガーを引き続ける………
-side Avenger-
第一部隊とAR小隊の援護によって無事に病院跡へと辿り着くと、勢いよく窓を突き破って建物内へと入る。銃弾が飛び交うなかわざわざ玄関から入るやつなんていないだろ?それに、撃たれるよりガラスの破片で切り傷ができる方がマシだ。
とは言え安心はできない。敵の射線から身を隠す為、俺は窓の下の壁へと身を隠す。
「はぁ~………なんとか辿り着いたわね………」
「ああ。なんとかな………15とM4。一階に降りてきて手伝ってくれ」
M4A1≪了解です≫
「第一部隊は西に見えてるビルへと回り込んで援護してくれ」
グリズリー≪了解です指揮官≫
それぞれの部隊に援護の要請を指示すると、俺は小銃の弾倉を外してリロードを行う。
「ちっ………正規軍のクソどもが。なにがただの哨戒任務だ。割りに合わん事ばかり要請しやがって」
ここ最近の正規軍から来る任務はどれも割りに合わない案件ばかりだ。そのくせ報酬はケチるくせにこちらの行動に文句ばかり垂らしやがる。
「でも、確証は得たわね」
「不服だがそうだな」
だが、そのおかげで敵が何故ここへ部隊を展開しているのかなんとなく分かってきた。
イントゥルーダーが統率しているということはこの街にはなにかあるということだ。奴は普段俺らを挑発はするが好きらしく何度翻弄されてきたことか。しかし、奴は自ら動くことはあまりない為タチが悪い。ていうか悪趣味だ。
(さてと………なにを隠してるのか……)
俺はデバイスを取り出すと投射映像を映し出す。
「………指揮官。遊んでないで応戦してよ」
「遊んでるように見えたならそれは心外だ」
投射映像で映された波のような波形が一気に赤く染まるとともに大きく揺れる。ビンゴだ。
「404小隊。ここに地下がないか調べろ」
「えっ?」
「俺がなんの考えもなしにここを制圧すると思ったのか?」
そんはずはない。指揮官という慣れてない職業とは言え、考えもなく拠点を制圧しろだなんて馬鹿がやることだ。
それに正規軍からこの案件を嫌々請け負ったのは理由がある。それは"16LAB"のマッドサイエンティスト"ペルシカ"のお願いでわざわざ嫌な正規軍の案件を了承したのだ。
「ていうか地下なんかあるの?」
「ここは元々民兵の隠れ家らしいからな。大戦中地下を掘って色んな場所へと繋げていたらしい。ペルシカの情報源によるとここもその一部があるみたいだ」
「憶測なのね」
「まあ。なにか隠してるのは事実みたいだがな」
俺は手に持っていたデバイスを45へと渡した。
「これって………」
「それを参照に探してくれ………まだ容量配分が悪くてすまないが」
「いいわ。それを支えるのも私達の役目だし」
「苦労をかける」
分かってると言わんばかりに微笑む45の姿を見てこちらも思わず口角を上げてしまう。彼女達には見えていないだろうけど。
「聞こえていたわねみんな。地下を探すよ」
「はーい!/ええ/え~……」
おいコラG11。
「さてと……頼むぜペルシカ。あんたの頼みだけで俺達を死なせてくれるなよ…………」
そうボヤきながら俺は小銃を構え、アイアンサイトを敵に照準を合わせるのだった。