ドールズフロントライン4.3 -IRIS- 作:仲村 リョウ
先ほど飛び立ったヘリの一機がしばらくして帰ってきた。砂塵を撒き散らしながら整備されているヘリポートのへ降り立ち、そこから出てきたのは負傷した人達………ではなく、戦術人形達だった。
血は出ているが本物の血ではないので、人間のように激痛で魘されているような様子は見えない。だが、酷い個体を見ると足や片腕がない人形もいた。負傷しながらも五体満足の人形は損傷の大きい者に付き添い、支えながらヘリを降りてくる。
そんな中降り立った一人の人間と思わしき人物。
人形達の装備とは違い、背も高い。体格的にも男だろう。恐らく人形を指揮していた人なのかもしれない。
彼は兵士のように軍服を着てプレートキャリアを身につけヘルメットとフェイスマスクを装着している。顔バレしてはいけない人物なのかもしれない。
彼は真っ先にある女性の方へと歩いていく。しかも、フードを被った女の子を連れて………
「ねぇ。貴方だれ?」
男の方へ注目してたばかりか僕の横には、警戒した様子でこちらを見つめる女の子がいた。
腰まで届く暗い茶色の髪に左側にサイドテールを施しており金色の瞳に左目に傷跡がある。
「ここ。関係者以外立ち入り禁止のはずなんだけど?」
「ああ、ごめん。僕はこういう者なんだ」
首にぶら下げていたパスを手に取り、彼女の方へと見せる。
「
「一応、カリーナさんという方から立ち入りの許可は貰ってるんだけど………今はまずかったかな?」
「ん~……まずくはないけど、カメラに収めるのはやめておいた方がいいと思うわ。状況が慌ただしいからね」
「そうなのか?」
もしかして先ほど負傷して帰ってきた人形達と関係があるのだろうか?
「もし、教えれる範囲なら教えてくれないかな?一体、なにがあったのか………」
僕はそう言うと少女は少しだけ考え込む。
すると………
「………空がね。落ちてきたの」
「空が………落ちる?」
この少女の言葉の意味を知るのはもう少し先のことだった。
-1時間前-
side UMP45
指揮官の指示に従い、私達404小隊はあるかも分からない地下を探す。指揮官達が鉄血工造の人形達を食い止めているため、あまりモタモタしていられず徐々に焦りが出てくる。しかし、こんな時だからこそ冷静に行動しなければならない。
「9。なにか見つけた?」
「ううん。まだ何も」
「本当にここに地下なんてあるの?」
416が言うことはもっともなことだ。
だけど、指揮官から渡されたデバイスのレーダには波形が強くなっている。指揮官の言う通りここに何か隠しているのは間違いない。なおさら、この命令は後に引けないものなってきた。
「地下があるないにしてもここに何かあるのは間違いないわ。特にこの部屋ね」
恐らくこの部屋は負傷した人達が集められていた部屋だろう。無残に散らばったストレッチャーがそれを物語っている。
「ねぇ、これって血かな?」
すると、一人離れていたG11がなにかを見つけたようだ。
「………血ね。しかも、人間のものじゃないわ」
真っ先に駆け寄っていた416が赤い液体を調べ、それは私達が使っている人工血液だということが判明する。
だとすれば、この病院の中には私達と同じ戦術人形がいるのかいたのか………
「付着的にこの棚へと繋がってるわね」
「えっ?じゃあ、もしかして」
「もしかしてかも」
私は力任せに棚を左へとずらしていく。予想通り棚の奥には地下へと続く階段があったのだ。当然電気は通っていない為真っ暗だ。
さーて………なにが隠れているのだろう。
私は銃を構えながら下へと降りていく。カツンカツンという足音だけが空間へと響き渡り、一層不気味さを漂わせる。別にそういった恐怖というものは私には持ち合わせていないためなんとも感じない。
下まで辿り着くと、そこは靴元が隠れるくらい水浸しになっている。ライトを照らすとそこは思わず人形の私達でも目を疑いたくなるような場所だった。
「なに………これ………」
無残に散らばった人間の骨と壁には乾いた血であろうものが塗装されたペンキのようにこびりついていたのだ。昔、ここでなにがあったのだろう。
(まだ、肉体が残っているよりマシね………)
昔なら大問題のことだろうが、今はそれよりも………
「45姉!今あそこでなにか動いたよ!」
「うん。見えた」
証拠に水紋がこちらまで伝わってきており、棚の後ろに何か隠れているのは間違いない。
私はその方向へ銃口を向けながらゆっくり近づいていく。
「大人しく出てきなさい。さもないと発砲するわよ」
待つこと数秒。私の警告に従うのか大きな水紋が伝い、水を弾く音が荒々しくなる。
すると、そこから出てきたのは子供だった。背丈はG11くらいだろうか。汚れたフードを被り私達に警戒しながらも両手を上げながらゆっくりとこちらへ近づいてくる。
「止まって。妙な動きを見せたら撃つわよ」
子供は私のいう通りにその場へと動きを止めた。
私は後ろで構えている三人にアイコンタクトを送ると、慎重に子供の方へと歩いて行く。フードへと手を伸ばし、一気に捲り上げた………
「女の子………」
しかも人間じゃない。ここへ来るまで追われていたのか、皮膚が裂けた箇所には金属のフレームが見えていた。恐らく先ほどの血はこの人形のものだろう。
「あなた何者?IOP?鉄血工造?」
「………ぞう」
「なに?」
「て、鉄血工造………」
その言葉を聞いた途端、私達の警戒の構えが一層強くなり、自然と指にかかっているトリガーの力が強くなる。
「何で鉄血の人形がここにいるのよ」
「イントゥルーダーの差し金?」
「ち、違う!ボクは………!?」
突然、この人形の表情が変わった。何かに怯えてくるのように一瞬で顔が青ざめたのだ。
「は、早く逃げて!」
「突然どうしたのよ。こいつ………」
「空が………空が落ちてくる………」
「…………」
………不服だけど、こいつの様子を見る限り嘘を言っている様子はなさそうだ。私はすぐに指揮官へと通信を行う。
(繋がらない………)
地下だから電波が繋がりにくいのか………面倒だけど。
「私は指揮官にこの事を伝えに行くわ。あなた達はこの人形を見張ってて」
「わかったわ」
私を銃口を下ろし、指揮官がいる地上へと走っていく。
(なにか………悪いことが起きなければいいけど)
-side Avenger-
「ちっ……キリがねーな………」
病院跡に立て籠もってから数十分が経過した。戦闘は依然に撃ち合いが続いておりイタチごっこ状態だ。しかも、もう残弾が少ないときた。404小隊が地下を発見したのならそこから離脱する手もあるのだが、妙なことに連絡が来ない。
「すみません指揮官。私がTCDを破壊したばかりに………」
「そのことはもう言うな。俺が命令したんだ。お前が気にすることじゃない」
だがM4が罪悪感を抱くのは無理もない。
逆にTCDがないと、人間のように無線でのやり取りによる指揮しかできなくなる為、一世代前の戦い方に逆戻り。今の時代、このように窮地に陥ることも珍しくはない。
それもそのはず。この世紀末のような時代に衛星なんて全て撃ち落とされているか機能しなくなっている。今や情報の習得はJ-STARSの情報にレーダーと電波頼りだ。このtもペルシカが作らなければどうなっていたことか。
「指揮官。敵部隊が撤退していきます」
「なんですって?」
15の言葉に反応したM4が慎重に外の様子を覗き込む。
「………指揮官。AR-15の言う通り、鉄血の人形達が撤退していきます」
「……有利な状況で撤退するなんざ、なにかしでかす証拠だ。M4。上にいる二人に降りてくるよう言ってこい」
「はい!」
無線が使えたら口頭で伝えなくて済むんだが。
「指揮官。敵は何故撤退していくのでしょうか?」
「………15。こういう時の悪い予感ってのはよく当たるもんだ」
「え?」
「指揮官」
「45か……」
先ほど地下の捜索を支持した404小隊の隊長が戻ってくる。顔色ひとつ変えないのは彼女らしいことだ。
「地下はあったのか?」
「ええ。だから………」
「まて………なにか聞こえなかったか?」
俺の言葉にその場にいた全員が口を閉じた。
間違いなく外から聞こえてくる。なにかジェットエンジンのような音だ。というより………
「くそ!巡航ミサイルだ!!」
「指揮官!!早くこっち!!」
45に手を引かれその場を離れる。誰もが焦りの様子を見せた。なにせ、鉄血の奴らが巡航ミサイルなど使った前例がないからだ。
人間が住む空域には対空レーダーが張り巡らされているため、奴らが巡航ミサイル等を飛ばしてきてもすぐ撃破されてしまうのだ。ここも一応対空レーダーの範囲に入っている。一体、どうやって突破してきたというのだろうか………
(新型しかありえねーな………)
そんな思考が最後に俺の意識は衝撃と共に失うのだった。