ドールズフロントライン4.3 -IRIS-   作:仲村 リョウ

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人間の命は一つだけ………


案件1-5:帰投してから

「やあアヴェンジャー。なにか収穫はあった?」

「ああ」

 

ヘリのローターで舞う砂塵の中、S09地区へと帰還するなりヘリポートにはある人物が待っていた。

 

気だるげに話して来たのは何故か猫耳があるマッドサイエンティスト………

ペルシカリア。第二世代戦術人形の開発者だ。俺は気軽にペルシカと呼んでいる。

 

「痛手な成果だがな」

「それは本当にごめん。まさか、向こうが巡航ミサイルを所持しているなんてね」

「ああ。俺達も予想はしてなかった」

 

降り立ったヘリから負傷した人形達が抱えられて降りてくる。すると、すぐ側には側面に赤十字のマークが描かれたハンヴィーが用意されていた。

 

「修復の手筈は整っているから、明日には全員回復してるよ」

「助かる」

 

せめての詫びなのかペルシカは頭を掻きながら気まずそうに言った。

 

「それで……こいつの件だが」

「こいつ?ああ………今回の収穫ね」

 

アイリスをペルシカの前に連れてくる。

 

「鉄血工造の人形ね」

「ああ」

 

俺はアイリスを連れてきた理由を話した。ペルシカはなんとなく納得した様子で軽く頷くと。

 

「なるほどね。そういうことなら任せて。一度、今の鉄血工造の人形を調べてみたいと思ったんだ」

「おい、マッドサイエンティスト………改造するんじゃねーぞ」

 

ペルシカの言葉にビビったのかアイリスは俺の後ろへと涙目を浮かべながら隠れる。

 

「分かってるって」

「はぁ………おいVector」

「なんだい?」

 

たまたま近くにいたVectorへと声をかける。

 

こいつ(ペルシカ)がいらんことしねーか見張っといてくれ」

「分かった」

「ちょっとぉ……信用してよ」

「いいからとっとと行け」

 

足にしがみついていたアイリスを引き剥がし、ペルシカとVectorと供に歩き去っていく。

 

「指揮官さま~!」

 

やっと話が終わって解放されたかと思った矢先。ある少女がこちらへ走りながら叫んでいる。

 

「カリンか。どうした」

「お戻りになられたのですね。丁度よかったです」

 

タブレットを片手に親しげに話してくる女の子。

カリーナ。俺が入社してから親しくしてる人物の一人であり、この世界で信頼できる一人でもある。立場的には秘書的な立場で俺がいない間は代理を務めてもらっている。

 

「CIMの方が来られているのですが………どうします?」

「あの情報誌の奴が?」

「なにか、話を聞きたいご様子でしたので」

「悪い………今日は断ってもらってくれ」

 

今日はなにかとゴタゴタしすぎたのだ。この後、報告書やら色々やらないといけないことがあるため今日は対応できないだろう。あと、疲れがピークに達するためそれどころではない。

 

「わかりましたわ」

「宿舎の一部でも貸してやってくれ。その辺のことはお前に任せる」

「はい。お任せください」

 

いい笑顔で頷くものだ。

 

(さて………早めに終わらしてとにかく休むか)

 

明日ごろにはヘリアンから今回の間に関して詳しい連絡が来るだろうからな。

 

 

 

 

俺は昔の綺麗な地球の姿を見たことがない。生まれて物心がついた時にはこの世界は瓦礫と死体で地面が埋め尽くされていた。

その時から人の死を見てもなんの抵抗もなく現実を受け入れた。だって、それが今の世界の姿なのだから。

ただひたすら………屍の道を歩むしかないのだ。

 

フロントライン(前線)という名の道を………

 

 

 

 

「っ…………」

 

薄っすらとした意識……微睡みの中から徐々に意識が覚醒していく。カーテンの隙間からは日の光が木洩れており、あれから1日が経ったのかと思うと複雑な気分になってしまう。

 

それにしても嫌な夢を見てしまった………

 

(PTSDも患ってんのか………俺は………)

 

魘されていたのか額に触れると汗でべっとりとしている。

 

シャワーでも浴びよう………

 

そう思い立ち上がろうとすると、布団の中に違和感が伝わってくる。

何故、右側の掛け布団が膨らんでいるのだ?呼吸するのような動作もしている。

 

(またか………)

 

思わず頭を抱えてため息を吐いてしまう。なにせ、心当たりもあり前例もありまくりだからだ。最初は声を上げて驚いたものの、今では呆れる一方。

 

「おい、9………テメェ、いい加減人の部屋に入るのやめろ」

 

バサっと勢いよく掛け布団を捲り上げる。そこには横向きで寝ながらアヒル口で何のことやらと惚ける9の姿があった。

 

「いや~………昨日のことで落ち込んでるかなと思って来ちゃいました」

「来ちゃいましたじゃねーよ」

 

んな可愛い顔をして許されると思うなよ。てか、電子ロックで閉めてるというのにどうやって入ってきてんだこいつは………

 

「指揮官~………これなに?」

「…………」

 

ベッドの下からヌーッと出てきたのは45………ホラーだ。

両目の瞳に光が灯っておらず、なにかご立腹な様子。なにせ、45が両手に持っているのは成人雑誌だからな。

 

(はぁ………面倒な性格が裏目に出たか………)

 

俺はこう見えても面倒くさがりな性格だ。といっても、部屋の整理整頓などは日頃からは心がけているのだが、私物の管理に関してはズボラなところもある為よく無くすことがある。ちなみにだが、45が持っている雑誌は俺のものではなく前にいた部隊の奴に貰ったものだ。あまり興味がなかったため放ったらかしにしておいたのだが………まさかこんな所で見つかるとはな。

 

「言っておくが、俺のじゃないぞ」

「ふ~ん………」

 

こいつ信用してねーな………

 

「第一そんなものに俺が興味あると思ってんのか?」

「男なんだから興味ないわけがないよね?だって、この時代にどうやって性欲を処理してるわけ?」

「うるせーよ」

「指揮官!私がいるのにどうしてあんな本なんかに浮気するの!?」

 

9は半身を起こして俺に詰め寄りながら雑誌へ指をさして叫んだ。

そんな言葉どこで覚えたんだか………

 

「いいからお前らとっとと自分のセーフハウスに帰れ。なんでまだここ(グリフィン)にいやがんだ」

「いいじゃない別に」

「だって、ここ居心地がいいからね」

「だったら用意した宿舎に戻れ」

 

深いため息を吐くと、俺はベッドから降り、シャワー室へと向かう。

 

「………お前ら入ってきたら分かってるだろうな?」

「「…………」」

「…………」

 

まあいい………一応こいつらを信用するとして早く汗を流すか………この後ブリーフィングをしないといけないからな。

 

 

 

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